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スピルリナ~安全性と危険性から適正量まで

 キャットフードのラベルに記された「スピルリナ」。この原料の成分から安全性と危険性までを詳しく解説します。そもそも猫に与えて大丈夫なのでしょうか?また何のために含まれ、猫の健康にどのような作用があるのでしょうか?

スピルリナの成分

 スピルリナ(spirulina)とは微細藻類(マイクロアルジェ)と呼ばれる小さな藍藻の一種。アルカリ度の高い熱帯地方の湖などに自生している植物プランクトンで、内部に含むクロロフィルで光合成を行います。健康食品素材として登場した1970年代以降、たんぱく質やミネラルの良質な供給源として市場に出回っています。キャットフードの成分として用いられる「スピルリナ」 日本ではスピルリナ色素(スピルリナ青色素、スピルリナ青)が厚生労働省によって既存添加物の「着色料」として認可されています。食品添加物としての定義は「スピルリナ(Spirulina platensis Geitler)の全藻から得られた、フィコシアニンを主成分とするもので、デキストリン又は乳糖を含むことがある」です。使用基準は特に設定されていません。

スピルリナは安全?危険?

 スピルリナを猫に与えても大丈夫なのでしょうか?もし大丈夫だとするとどのくらいの量が適切なのでしょうか?以下でご紹介するのはスピルリナに関して報告されている安全性もしくは危険性に関する情報です。

重金属とミクロシスチン

 スピルリナで問題となるのは内部に含まれる重金属(水銀、カドミウム、鉛、ヒ素)やミクロシスチンと呼ばれる肝毒性をもった成分です。
 2017年、フランス食品環境労働衛生安全庁(ANSES)はスピルリナを含むサプリメントが、行政によって適切に管理・監視された販売ルートを経ていることをしっかり確認するよう公的な推奨を行いました出典資料:食品安全委員会。安全庁によると、スピルリナサプリの摂取による多くの有害作用がANSESの栄養監視システムに報告されているとのこと。個々の事例の明確な摂取用量は不明ながらも、消化器障害、アレルギー、筋肉の損傷、肝障害など様々なパターンがあるといいます。使用する際は不純物が入り込まない環境で栽培されたもの、もしくは販売前にメーカーが自主的な成分検査を行ったものを選ぶよう推奨されています。
 なおラットに経口投与したときの最小中毒量は体重1kg当たり180mgで12日間です。

嗜好性・食いつき

 イタリアにあるパドヴァ大学のチームは2020年10月から2021年5月までの期間、 一般家庭で飼育されているペット猫30頭(単頭・完全室内飼い | 56%が標準体型 | 臨床上健康 | 2割が純血種)を対象とし、体重1kgあたりの摂取量が2週間ごとに増えるよう調整しながら、合計6週間に渡る給餌試験を行いました(体重1kg当たり1日40→250mg)。
 最終的に残った24頭(80%)を対象とし、試験の前後で健康状態を定時観測したところ便スコア、排便回数、下痢、嘔吐、皮膚ひっかき、流涙、行動(活発さ | 落ち着き)といった観察項目に大きな変化は見られなかったといいます。一方、毛艶に関しては「良くなった」という回答が統計的に有意なレベルで認められました。また食いつきに関しては、タブレットの形でもフードに混ぜ込むという形でもおおむね良好と判断されました出典資料:D. Stefanutti, 2023
 この調査でわかったのは「飼い主の主観ベースで毛艶が改善する(プラセボ込み)」および「スピルリナが強く拒絶されることはない」ということだけであり、数ヶ月~数年という長期にわたって給餌した際の健康増進効果もしくは副作用に関しては不明なままです。なお中途脱落した被験猫で見られた症状は拒絶と耳の皮膚炎でした。
猫におけるスピルリナの安全性、危険性、および適正量に関するデータはまったくそろっていません。腎臓ではなく肝臓の方が毒性を受けやすいようですので、来歴が怪しいサプリメントなど成分が濃縮された形で与えることは危険です。