トップ猫の心を知る猫の習性動くものに夢中になる

動くものに夢中になる

 猫の習性の一つである動くものに夢中になるという点について解説します。
 猫は猫じゃらしやねずみのおもちゃなど、小さくてちょこまかと動くものに飛びつこうとしますが、猫はなぜこのような行動を取るのでしょうか?

動くものに夢中になる理由

ちょこまかと動くものにつられて、猫の狩猟本能が目覚める  猫はピンポン玉、壁に照らされた懐中電灯の光、ネコじゃらし、飼い主のくるぶし、果ては自分のしっぽなど、目の前でちょこまかと動くものを見ると我を忘れて夢中になります。この行動の理由は、動く獲物を捕らえようとする狩猟本能です。
 ちょこまかと動くものは、地面を這う小動物、空中を飛ぶ虫や鳥、水中の魚など、野生環境で暮らす猫にとってはえさになるものばかりです。ですから細かく動くものを見ると、「おっ!えさを見つけたぞ!」となって興奮してしまうのでしょう。特に長い紐状(ひもじょう)のものを猫の目の前でひらひらと動かすと、目の色を変えて追いかけてきたり猫パンチを繰り出したりしますが、これは細長い紐がヘビ、ヤモリ、イモリなど、えさになりそうな小動物のしっぽを彷彿(ほうふつ)とさせるからです。 猫の目・視覚
 以下でご紹介するのは、動く光の点を追いかける猫の動画です。レーザーポインターの光を獲物と勘違いして本能的に追い回してしまいます。なお、レーザーポインターは、捕まえたりかじりついたりすることができないため、猫はストレスに感じてしまうことがあります。猫と遊ぶときは、ネズミのおもちゃなど実体のあるものの方がベターです。 元動画は→こちら
 ちなみにアメリカでは、猫の動くものを追いかけるという習性を利用した「猫の運動促進術」(Method of exercising a cat)という特許が認められていました。これは1995年から2007年まで、アメリカ特許商標庁(USPTO)によって公開されていた実在する特許で(U.S. Patent No. 5443036)、内容は「レーザーポインターから発せられる光を不規則に動かして猫に有酸素運動をさせる」というものです。アメリカの猫好きの間ではアホらしい(goofy)特許として知られています。なお2007年に失効したのは、維持費用の支払いが滞ったからだとか。もし猫をレーザーポインターで遊ばせたとしても、特許の無断使用にはなりませんのでご安心を。 Method of exercising a cat

狩猟行動の引き金

 本能的な行動を引き起こす要因を解発因(かいはついん, リリーサーとも)といいます。人間で言うと、「子犬や子猫の姿を見ると、抱きしめたくなる」といった例がわかりやすいでしょう。この場合、「子犬や子猫」が解発因、「抱きしめる」が本能的行動に相当します。
 一方、猫の捕食行動に関連した解発因は以下です。
猫の捕食行動の解発因
  • ひっかく音や高周波の鳴き声
  • 視野に入ってきた、大きすぎず、早過ぎない対象物
  • 獲物の頭部と胴体の間のくびれ部分
 猫にじっとしていて欲しいときは、こうした解発因を生活環境の中から取り除き、逆に猫の狩猟本能を思う存分満たしたいときは、これらの解発因を有効利用します。
 また、猫が獲物を捕らえるときの行動は、おおむね以下のようなものです。上記した解発因に刺激されると、猫は条件反射的に目を見開き、以下に述べるような行動を開始します。特に「後足で足踏み」のモーションは、猫と遊んでいるときの「お尻フリフリ」として観察されますので、なじみ深い方もいらっしゃるのではないでしょうか。
猫が獲物を狙うときの流れ
猫は獲物を見ると、身をかがめて忍び寄り、狙いを定めてお尻を振る
  • 腹を地面につけるようにして忍び足で近づく
  • 後足で足踏み
  • 尻尾の先端がわずかに動く
  • チッと舌打ちのような音を出す
  • 上半身をかぶせるようにして獲物のうなじ部分にくらいつく
  • 前足は爪を出して指を開き、獲物をがっちり捕らえる
  • 後足は獲物の逃走に備え、地面につけて踏ん張る