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猫の安楽死

 耐え難い苦痛にあえぐ猫を解放するため時として行われる「安楽死」について解説します。

安楽死の流れ

 「安楽死」とは、飼い主の判断でペットの命を断つことです。たまに「殺処分」と混同されることがありますが、両者は全く別物です。「殺処分」とは、行政機関である保健所や動物愛護センターの中に収容された動物を、炭酸ガスによって一度に大量に殺す処置のことです。用いられる炭酸ガス(二酸化炭素)は、犬では「濃度30~40%/1~2分」、猫では「濃度60%/1分以内」で麻酔効果が現れるとされていますが、苦しむことに変わりはありません。一方「安楽死」は、主として薬剤を投与することにより一瞬で眠るように動物の命を断ちます。脳の機能が一瞬で停止するため、殺処分のように苦しみを感じることもありません。法律上「命あるもの」として規定されている犬や猫といった動物に対する安楽死は、正当な理由がある場合に限り容認されており、人間に対する安楽死のように罪に問われる事はありません。
 以下は、犬や猫に対して行われる一般的な安楽死処置の流れです。なお、一部の行政機関が炭酸ガスの代わりに行っている安楽死に関しては、この限りではありません。
安楽死の流れ
  • 動物を安楽死用の処置室に連れて行く
  • 通常は後ろ足の被毛の一部を刈り取り、静脈にカテーテルを挿入する
  • カテーテルの状態を確認するため、体内に生理食塩水を注入する
  • 動物をリラックスさせるためバルビツール剤を投与する
  • 安楽死用の薬剤を注入する
  • 数秒で死が訪れる
  • 死亡宣告がなされる
 カテーテルを後ろ足に挿入するのは、付き添った飼い主がペットの頭や足を撫でたり抱いたりしやすくするためです。安楽死用の薬剤としては、安価で効果が早いと言う理由から「ペントバルビタールナトリウム」が多用されます。この注射は動物の中枢神経に作用し、心臓、脳、その他の身体の機能を一瞬で停止させるため、動物に苦痛を与えることなく安らかに送り出すことができます。死後、動物の体から尿や便が出たり、一時的に痙攣したり、少しため息をつくことがありますが、それらはまだ生きているという意味ではなく、通常の生理学的な反応です。
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安楽死を選ぶ理由

 安楽死処置の中で最も難しいのは、犬や猫に安楽死を施すかどうかを決定する時です。動物が安楽死させられる時の主な状況を分類すると以下のようになります。
ペット安楽死の理由
  • 重傷や重病による動物の苦痛を取り除くため
  • 病気や老齢で低下した動物の生活の質に対処するため
  • 矯正するのが難しい問題行動を抱えているため
  • 飼い主の都合のため
 動物に対する安楽死はちょうど人間に対して行う「積極的安楽死」に相当すると考えられます。「積極的安楽死」とは、治療を行わないことで間接的に死に至らせる「消極的安楽死」とは違い、医師が積極的に患者を死に至らしめる安楽死のことです。
 オランダやベルギー、アメリカの一部の州など、積極的安楽死を合法化している国や地域においては、実施に際して「患者の心身に耐えがたい苦痛がある」、「患者による明確な意思表示がある」、「患者の肉体的苦痛を緩和するために安楽死以外の方法がない」といった条件が課されています。一方、動物に対する積極的安楽死には、実施に際して上記したような制限が設けられていません。「問題行動を抱えているため」や「飼い主の都合のため」といった人間の都合による安楽死がしばしば行われてしまうのはそのためです。

選択理由とそれぞれの難点

 安楽死が最善の選択であるかどうかを判断することは、どの選択理由においても極めて困難です。
 「動物の苦痛」を理由にする場合、動物の痛みを正当に評価できているかどうかが問題となります。獣医師に「この動物は苦しんでいる」と言われると、一般の人は信用してしまうかもしれません。しかしその言葉の根拠は一体何なのでしょうか?動物用のペインスケールやQOL評価基準を用いて客観的に判断した結果なのでしょうか?それとも担当獣医師の単なる勘によるものなのでしょうか?もし獣医師の勘で動物の苦痛の度合いが判断されているのなら、病院Aでは安楽死を勧められたのに、病院Bでは鎮痛剤を用いた経過観察が勧められるという状況も起こり得るでしょう。患者の抱えてる苦痛を判断することは、認知症などによってコミュニケーション能力を失った人間の患者においても極めて難しいとされています。まして、人間のような表情筋を持たない動物を相手にした時、果たして正確に痛みの有無を確認することができるのでしょうか?
 「動物の生活の質」を理由にする場合、考慮しているのが本当に動物の生活の質なのか、それとも飼い主自身の生活の質なのかを熟考する必要があるでしょう。例えば変形性関節症を患い、トイレに行くのも一苦労という猫がいたとします。よぼよぼ歩いている姿を端から見ていると、ついつい人間の感覚を動物に投射し「しんどそうだなぁ…」といった印象を抱いてしまいます。もし、そうした同情心の結果として「いっそのこと楽にしてあげよう」という考えを抱いて安楽死を選んだのだとすると、それは動物の生活の質を考えているのではなく、「しんどそうな動物の姿を見るのがあまりにも辛い」という、飼い主自身の生活の質を考えていると言えなくもありません。当の猫は「ちょっと足が痛いけど、まあ仕方ないか」くらいにしか思っていない可能性もあるわけです。
 「動物の問題行動」を理由にする場合、それが本当に最後の選択肢かどうかを考える必要があります。プロのトレーナーによるしつけ直し、投薬治療による鎮静、去勢・避妊手術によるホルモンバランスの変化など、問題行動の解決につながりそうなありとあらゆる選択肢を全て試した上で安楽死を選択したのかどうかを、事前に十分に自問自答する必要があるでしょう。例えば「トレーナーに頼むお金がない」ことが理由で犬や猫の問題行動を放置し、結果として安楽死を選択した場合、それはもはや「動物の問題行動」が理由なのではなく、「飼い主の都合(経済力)」が主な理由になってしまいます。
 「飼い主の都合のため」を理由にする場合、ペットを他の家にリホーム(rehome)するためのあらゆる努力を尽くしたかどうかが問題となります。例えば「突然失業してペットを飼う経済的な余裕がなくなった」という飼い主の都合があったとしましょう。その場合、友人や知人に頼んでペットを飼ってくれそうな人を探すだとか、ネット上の里親募集サイトに応募して広く里親を募るといった解決策があります。こうした解決策を実行しないまま、安易な気持ちで「安楽死」という選択肢を選んだのだとすると、それはもはや動物愛護法が禁じている「みだりに動物を傷つけたり殺したりする行為」に相当するといっても過言ではありません。
 上記したように、どの理由にも非常に難しい問題が含まれており、安楽死を選択する飼い主には事前の十分な考慮が求められます。残念ながら、万人に共通する明確な答えはありません。また、ソロモンの指輪をはめて犬や猫に「どうして欲しい? 」と尋ねるのも叶わぬ夢です。ただ1つ言えるのは、十分な考慮もないまま安易に「安楽死」という選択肢を選んでしまうと、動物に対して不当な死を与えると同時に、後々になって酷いペットロスに陥る危険性があるという点です。

動物の苦痛をどう評価する?

 安楽死を選択する理由の中でも特に難しいのが、「動物の苦痛を人間が判断する」というプロセスです。この難問に対して少しでも客観的な要素を加えることを目的とし、いくつかの評価基準が考案されてきました。それが「ペインスケール」と「QOL評価票」です。
 「ペインスケール」(Pain Scale)とは、猫が感じている肉体的な苦痛を評価する時の基準です。患部の治癒と共に3ヶ月以内に収まる「急性痛」と、患部が癒えた後もなお3ヶ月以上継続する「慢性痛」とに分かれており、それぞれに対応したスケールが設けられています。具体的には「猫の急性痛を見つける」、「猫の慢性痛を見つける」をご参照ください。猫が「耐え難い苦痛」を味わっており、なおかつその苦痛を取り除く方法が他に見つからない場合、人間における「積極的安楽死」同様、動物に対する安楽死が最良の選択と判断されることもあります。極端な例を挙げれば、交通事故に遭って腰から下がなくなって苦しんでいる猫などです。
 「QOL評価票」とは、猫の生活の質(Quality Of Life)を評価する時の基準で、「HHHHHMM Scale」とも呼ばれます。2004年、アリス・ヴィラロボス獣医師によって考案されて以来、幾度かの改変を経て広く用いられるようになりました。飼い主と担当獣医師の両者が、以下の項目に関して「0~10」(最低が0)までの採点を行い、合計点を出します。合計点が35以上であれば、生活の質が保たれていると判断されます。 HHHHHMM Scale
QOL評価票
  • HURT 「HURT」(痛み・苦しみ)では適切な痛みのコントロールと呼吸能力が評価されます。動物に痛みがなく、自力で呼吸できてる状態が理想です。「動物が痛がっている」、「呼吸が苦しそう」といった要素によって減点されます。
  • HUNGER 「HUNGER」(飢え)では食生活が評価されます。食欲があり十分食べている状態が理想です。「飼い主のサポートが必要」、「チューブによる給餌が必要」といった要素によって減点されます。
  • HYDRATION 「HYDRATION」(体水分)では脱水の度合いが評価されます。首筋以外の皮膚を摘み上げ、指を離してから2秒未満で元の位置に戻るのが理想です。「水をあまり飲まない」、「皮膚の戻りが遅い」といった要素によって減点されます。
  • HYGIENE 「HYGIENE」(衛生)では体の清潔さが評価されます。被毛がセルフグルーミングで整えられているのが理想です。「被毛がボサ付いている」、「肛門周辺が汚い」、「床ずれができている」といった要素によって減点されます。
  • HAPPINESS 「HAPPINESS」(幸福)では満足度が評価されます。家族、おもちゃなど、周囲の環境に対して興味を示すのが理想です。「家族に対する反応が薄い」、「沈んだ感じである」といった要素によって減点されます。
  • MOBILITY 「MOBILITY」(運動性)ではどのくらい動くかが評価されます。手助けなしで起きたり歩いたりするのが理想です。「自力で起きられない」、「歩いてる最中につまずく」といった要素によって減点されます。
  • MORE GOOD DAYS「MORE GOOD DAYS」(調子の良い日)では、調子の良い日よりも悪い日の方が多ければ生活の質が低下していると判断されます。

評価基準の危うさ

 上で紹介した「QOL評価票」(HHHHHMM Scale)は、あくまでも人医学の分野で認められている苦痛の目安を動物に当てはめているだけであり、その内容が本当に動物の内面を反映しているかどうかまではわかりません。近年行われた調査によると、むしろこうした評価が時として「大きなお世話」になりかねない危険性をはらんでいることが示唆されています。
 2015年、カニシアス大学のジェームズ・P・ドネリィ准教授は、死期の近づいた人間がよくみる「末期(まつご)の夢想」(End-of-Life Dreams and Visions, ELDV)に関する調査結果を発表しました。調査内容は、2011年1月から2012年7月にかけ、ホスピスで終末ケアを受ける患者66人を対象とし、死ぬ前の1週間にどのような夢を見るかを聞き取るというものです。その結果、最も多かったのは「既に他界した家族や友人」の夢想で、死に近づくに連れてその出現頻度が高くなったといいます。またこうした夢想は、薬によって引き起こされる幻覚や幻想、精神錯乱などでは無く、しっかりとした現実感があり、患者に心地よさを与えるとも。中でも最も患者に対して心の平安を与えたのは、死んだ友人、家族、ペットなどに関する夢想だったそうです。こうした事実からドネリィ准教授は末期の夢想は死にゆく過程で感じる恐怖を軽減させる現象であり、いたずらに医療的な介入をするのは望ましくないとの結論に至りました。 End-of-Life Dreams and Visions: A Longitudinal Study of Hospice Patients' Experiences
 上記したような「末期の夢想」が動物の世界にもあるのなら、「ベッドに横たわって弱々しく息をしている=苦しみにあえいでいる」という単純な図式でとらえるのは早計ということになります。ひょっとすると動物は、幼いころに生き別れた親や兄弟姉妹の夢を見て、心地よさに浸っているのかもしれません。そうした心地よい夢想の中にいる動物を、人間の勝手な解釈で「苦しんでいる」と判断して安楽死させてしまうのは、見方によっては「大きなお世話」以外の何物でもないでしょう。
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安楽死における注意

 よくよく考えた末に「安楽死」という選択肢を選んだ飼い主は、ペットとの別れの瞬間から可能な限りネガティブな要素を排除する必要があります。これはペットロスを予防するという意味で極めて重要です。残念ながら、すべての獣医師が安楽死を遂行するための適切な知識を持ち合わせてるわけではありませんので、選ぶ病院によっては安楽死がポジティブな思い出になることもあるし、逆にネガティブな思い出になってしまうこともあります。以下では、配慮のある病院とそうでない病院を見分けるときのヒントについてご紹介します。

安楽死に対する病院のスタンス

 安楽死に対して否定的なスタンスを見せる動物病院も少なくありません。主な理由として、以下のものが考えられます。
獣医師にとっての安楽死
  • 獣医師になったのは、そもそも命を救うためだ
  • ペットの死を目の当たりにして、飼い主がひどく苦しむはず
  • 飼い主が気絶したり、ヒステリー起こしたりする
  • 強烈な死の記憶が他の良い思い出を全て覆い隠してしまう
  • ペットの死を担当獣医師と結びつけて考えてしまう
  • モンスタークライアントになって訴訟を起こされる
  • 時間がかかりすぎる
  • 獣医師とそのスタッフが感情的に疲れ切ってしまう
  • 自分自身が泣いてしまうかもしれない
  • 「安楽死を行う病院だ」というネガティブな噂が立つ
  • 噂を聞きつけた飼い主が安易に動物を持ち込む
 上記した様々な理由により、すべての動物病院が安楽死に対して前向きな姿勢を見せてくれるわけではありません。少なくとも、突然電話して安楽死を依頼したとしても、なかなか受け付けてはくれないでしょう。

配慮のある病院を選ぶ

 安楽死に対して配慮のある動物病院とは、ペットを無駄に死なせないため事前によく考えることを勧めてくれる病院、およびペットの死に立ち会えなかったことが、時として飼い主のペットロスにつながってしまうことを知っている病院です。ペットと飼い主の両方に配慮できる病院と言ってもよいでしょう。
 獣医師の中には、ペットの死を目の当たりにした飼い主が多大なる苦痛を被ると勝手に誤解している人もいますが、近年は逆に、ペットの死に立ち会うことが、むしろ飼い主の病的な悲嘆反応を減らしてくれるとの考え方に傾きつつあります。ですから、正当な理由と入念な熟慮を持って安楽死を選択した飼い主に対しては、少なくとも「ペットの死に立ち会いますか?」という時代に見合った選択肢を提示してくれるはずです。
 安楽死を決断した飼い主は、全く予備知識を持ち合わせていないことがほとんどですので、配慮のある病院ならまず丁寧な解説をしてくれます。やや理想論を含んでいますが、具体的には以下のような項目です。
事前のインフォーム
  • 判断材料の提示 そもそもペットに安楽死が必要なのかどうかをもう一度考え直すための材料を提示してくれます。それは獣医師個人の経験からくる主観的な苦痛の評価かもしれません。あるいは、前のセクションで解説した「ペインスケール」や「QOL評価票」のような客観的なデータかもしれません。いずれにしても、飼い主が事後になって後悔しないよう、事前に思う存分考えるためのいろいろな材料を提示してくれます。
  • 処置の手順 安楽死処置を円滑に行うために用いる機材やその手法についての詳しい解説です。ちょうどこのページの最初のセクションで解説した内容に相当します。
  • 心構え 安楽死処置の間に起こりうることについて心構えが説明されます。例えば動物の生理学的な反応(痙攣・ため息 etc)や飼い主の感情の表出についてなどです。
  • 選択肢の提供 飼い主が処置の現場に立ち会うかどうかを提案してくれます。立ち会いを拒絶したり、逆に強引に薦めるようなことは基本的にはしません。
  • 計画 安楽死処置をいつどこで行うかとか、遺体を何に入れてその後どこに運ぶかなどが説明されます。
  • 資料の提供 安楽死処置に関する冊子、動画、院内見学の機会などを提供してくれます。
  • 書類の作成 飼い主が十分考慮した上で安楽死を決断したことを確認するため、承諾書類を作成して意思を最終確認します。
 安楽死に対して配慮のある動物病院ならば、ペットの喪失に伴う飼い主の心的なダメージを考慮し、上記したような項目を詳しく説明してくれます。逆に、こうした事前インフォームのない場合は、あまりいい病院とは言えないかもしれません。飼い主はこの種の病院を早い段階で見抜き、可能な限り避ける努力をしなければならないでしょう。さもないと「ペットとの別れ」という一世一代の出来事が、ネガティブな思い出になってしまいます。例えば以下のような経験をした飼い主はどのように感じるでしょうか?
配慮に欠ける病院の対応
  • 待合室や安楽死処置室で長く待たされる
  • 処置の前後で何の注意も説明も与えられない
  • 隣室から笑い声が聞こえる
  • ペットの遺体を粗雑に扱う
  • ペットの遺体を段ボール箱やビニール袋に入れる
  • 最後の抱擁を交わしているときに「もういいですか?」などせかされる
  • 新しいペットを入手するよう助言される
 ペットに対しても飼い主に対しても配慮のない動物病院に当たってしまうと、上記したような腹立たしい行為を平気でしてしまうかもしれません。病院側からすると些細なことなのでしょうが、飼い主の側からすると、一生にわたって繰り返し思い出す嫌な思い出の一部になってしまいます。こうした病院を避けるためにも、事前に担当の獣医師と十分に話し合い、納得のいくインフォームをしてくれるかどうかをしっかり確かめておきましょう。
同情疲労
 「同情疲労」(Compassion Fatigue)とは、悲惨な状況を数多く見聞きすることにより、初回に感じた純粋な同情心が徐々に薄れていく心理現象のことです。病院施設で働くスタッフは、日常的に衰弱した動物や憔悴した飼い主と接しています。こうした状況が知らぬ間に「同情疲労」へとつながり、飼い主からすると無神経とも思える言動につながってしまうこともあるでしょう。

安楽死に際してやっておきたいこと

 ペットとの別れをポジティブな思い出にするためにやっておくべきことがいくつかあります。以下は基本項目ですが、自分なりにアレンジしても良いと思われます。
別れ際の思い出作り
  • 最後にペットの好きだったおやつや水を与える
  • 体をなでたりキスしたり、自分なりの別れの挨拶をする
  • 形見として毛を切ったり首輪をはずしたりする
  • 最後のスナップショットを撮る
  • 紙やインクあるいは速乾性の粘土を使って足型を取る
 十分に計画された安楽死を経験した飼い主のほとんどは「あんなに安らかなものだとは思いませんでした。あの子は苦しまなかったのこの目で確かめるのは、すごくほっとすることでした」 といった印象を語ると言います。死の瞬間、無上の思いやりに包まれていたことを自分の目で確かめることが、ペットが天国へ旅立ったことへの確信につながるのでしょう。逆にペットの死に立ち会えなかったことが原因で「安らかに眠りに就いたのだろうか? 」、「自分はペットを見捨てたことにならないだろうか? 」という疑問が終生頭にこびりつき、ペットロスにつながってしまう人もいます。例えば以下は「ペットロスと獣医療」(チクサン出版社)の中で紹介されている一例です。
 飼い猫のミトンが安楽死させられたとき、私はそこにいてやる勇気はありませんでした。夫はミトンを獣医師に渡し、後は彼に任せるよう勧めました。その通りにしたとき、獣医師は私と話す時間も取ってくれませんでした。スタッフが私の猫を受け取り、そのまま奥の部屋に消えてしまったんです。それ以来、あの子を見たこともありませんし、その獣医師からも何の連絡もありません。もし今くらいの知識があったら、あんな風にミトンを死なせたりはしませんでした。あの子にしてみれば怖かったでしょうし、私に見捨てられたと思ったことでしょう。あの件に関しては、自分を一生許すことができません。 ペットロスと獣医療(チクサン出版社)
 安楽死は、飼い主がペットに与える最後のプレゼントになることもあれば、ペットの生命と飼い主の心の両方をボロボロにするボディブローになることもあります。前向きなものにするために必要な動機が、「耐え難い苦痛にあえいでいるペットを解放してあげる」ことであり、決して「新しいペットを飼いたいから」とか「赤ん坊が生まれたから」とか「家の中でおしっこをするから」といった動機でないことは、言うまでもないでしょう。
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