トップ猫の心を知る猫の習性しょっちゅう毛づくろいする

しょっちゅう毛づくろいする

 猫の習性の一つであるしょっちゅう毛づくろいするという点について解説します。
 猫がわき目も振らず、一心不乱に自分の被毛を整えている姿をよく見かけますが、猫はなぜこのような行動を取るのでしょうか?

猫が毛づくろいする理由

 飼い猫だろうと野良猫だろうと、猫は暇さえあれば毛づくろい(グルーミング)をしているように思われます。猫が毛づくろいする理由は色々ありますが、「これ!」という決定的な答えはありません。代表的なものは以下。
猫が毛づくろいする理由
  • 抜け毛や体毛についたごみを取り除き、毛の根元の感覚を鋭敏に保っている
  • 唾液が気化するときの気化熱で体温調整している(夏場)
  • 布団の打ち直しのように、体毛の間に空気を入れてふかふかにしている(冬場)
  • 体毛についた食べ物の臭いや飼い主の臭いを消している
  • 細かなフケをなめとり、皮膚炎を予防している
  • 高ぶった気持ちをリラックスさせる(転位行動)
  • なめることで皮膚の血流を促進する
  • 静電気を除去している
 動物行動学者のB.Hartは、「猫の体からの熱放散のうち、およそ1/3はグルーミングに伴う唾液の蒸発によるものだ」としています(1976)。この見識は、毛づくろいの「体温調整説」を補強しています。
 猫が誤って机やイスの上から転がり落ちたりした場合、周囲を確認してからグルーミングすることがあります。これは、高ぶった気持ちをリラックスさせるための「転位行動」の一例と言えるでしょう。 歯や舌で行うオーラルグルーミングと、後肢を用いるスクラッチグルーミング  門歯や舌で行う毛づくろいをオーラル・グルーミング(oral grooming)と言うのに対し、後肢で行う毛づくろいをスクラッチ・グルーミング(scratch grooming)と言います。後者に費やす時間は、オーラル・グルーミングの2%程度です。ノミが蔓延している環境でオーラル・グルーミングをできなくすると、ノミの数は2倍に増え、代わりにスクラッチ・グルーミングが7倍に増えるそうです。また、グルーミングが72時間制限されると、その後12時間におけるグルーミングが67%も増加するとか(Eckstein, 1997, 2000)。こうしたデータは、グルーミングの「ノミ予防効果」を示しているのかもしれません。

アログルーミング

 単独で行うグルーミングをセルフ・グルーミングと言うのに対し、複数の猫がお互いにグルーミングすることをアログルーミング(allogrooming)と言います。
 一般的なセルフ・グルーミングの順番は、1:前足をなめて湿り気をつけ、顔を拭く→2:体をくねらせて前歯で背中の毛をとくようになめて整える→3:足を上げて肛門の周りや腰、足、足先などをなめる、といったものです。 猫の毛づくろい手順~前足→顔→背中→股間  一方、アログルーミングは、親しい猫の間でのみ見られる親和行動の一種です。しかし、メス猫は性別を問わず、親しい仲間にグルーミングするのに対し、オス猫はメス猫だけにしかしないとか。また、仲良く毛づくろいしていたはずの猫が、突然攻撃行動を見せることがあります。こうした攻撃性は、約1/3の猫に見られ、多くの場合は毛づくろいの直後です。理由ははっきりしませんが、優位性を誇示しているのかもしれません。2匹の猫が互いにグルーミングする場所は、自分で手入れすることが困難な頭や首がメインで、人間が猫をなでるときも、こうした場所を中心に行うと猫は喜びます。 2匹の猫が見せる行動 単独で行うセルフグルーミングと、複数の猫同士で行うアログルーミング

猫の舌とグルーミング

 猫の舌はのどの奥に向かって小さな突起がびっしりと生えており、ブラシのような構造になっています。この舌で抜け毛やごみを絡めとり、 飲み込んだ毛はいわゆる「毛玉」として吐き出しますが、吐き出すときに嘔吐が続いて脱水症状を起こすことがあります。毛玉をウンチと一緒に出させるフードなども市販されていますので、利用してみましょう。
 また、飲み込んだ毛玉を上手に吐き出せない毛球症(もうきゅうしょう)という病気や、被毛を過剰に舐めてしまう舐性皮膚炎(しせいひふえん)といった病気もあります。その場合は速やかに獣医さんにご相談下さい。 猫の毛 猫の舌と味覚・完全ガイド 猫の舌の中央はざらざらしており、のどの奥に向かってびっしりと突起(とっき)が生えている
猫の舌と掃除機
猫の舌をヒントにしてシャープが開発したサイクロン掃除機のフィン表面 動物の持つ特性を科学技術に応用することを「バイオミミクリ」(Biomimicry)といいますが、シャープから発売された掃除機にも、このバイオミミクリが生かされています。見本となったのは「猫の舌」で、スクリューのフィン表面に猫の舌のような突起をつけることで、吸い込んだゴミを固め、再膨張を防ぐ効果を実現しました。 サイクロン掃除機