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猫の多発性嚢胞腎~症状・原因から予防・治療法まで

 猫の多発性嚢胞腎について病態、症状、原因、治療法別に解説します。病気を自己診断するためではなく、あくまでも獣医さんに飼い猫の症状を説明するときの参考としてお読みください。なお当サイト内の医療情報は各種の医学書を元にしています。出典一覧はこちら

猫の多発性嚢胞腎の病態と症状

 多発性嚢胞腎(PKD, polycystic kidney disease)とは、腎臓の中に1mm~1cm超の多数の嚢胞が発生し、腎機能を低下させてしまう病気。「嚢胞」(のうほう, cyst)とは、単層上皮に覆われた液状成分が小さなボールのように組織内にとどまった状態のことを指します。 腎臓内に形成された多発嚢胞  嚢胞は左右両方の腎臓に形成されることもあれば、どちらか一方にだけ形成されることもあります。腹部にしこりが見られたり症状として現れるまで存在に気づかれないということもしばしばです。診断は超音波検査を通して下します。多発性嚢胞腎の主な症状は以下です。
多発性嚢胞腎の症状
  • 腹部のふくらみ
  • 腎炎や腹部臓器圧迫による腹痛
  • 慢性腎不全
 なお人間における多発性嚢胞腎では、全身性高血圧、膵臓や子宮の嚢胞形成、頭蓋内動脈瘤、心臓弁の形成異常などが二次的に発生すると報告されています。猫で同様の病変が生じるという証拠はありませんが、可能性としては否定できません。

猫の多発性嚢胞腎の原因

 猫の多発性嚢胞腎の原因としては、主に以下のようなものが考えられます。予防できそうなものは飼い主の側であらかじめ原因を取り除いておきましょう。
猫の多発性嚢胞腎の主な原因
  • 遺伝 ネコE3染色体に含まれる「PKD1」と呼ばれる遺伝子の変異で引き起こされることが判明しています。両親のどちらか一方から1本の変異遺伝子を受け継いだだけで発症する常染色体優性遺伝で、両親から1本ずつ受け継いだホモ型は母体内で死亡すると考えられています。好発品種はペルシャエキゾチックショートヘアシャルトリュー 、および好発品種の血統が混じったすべての猫です。
  • 体内環境 嚢胞の形成は遺伝子だけで説明できるわけではなく、副甲状腺ホルモン、バソプレッシン、サイクリックAMP、腸内細菌が産生する毒素などが複雑に絡み合っていると考えられています。
  • 体外環境 ジフェニルチアゾール、ノルジヒドログアヤレット酸、ジフェニルアミン、トリクロロフェノキシ酢酸などとの接触・摂取が危険因子と考えられています。

猫の多発性嚢胞腎の治療

 猫の多発性嚢胞腎の治療法としては、主に以下のようなものがあります。なお当疾患の遺伝子検査に関しては日本国内においても可能です(→検査機関1 | 検査機関2)。商売で繁殖を行っているブリーダーであれ、趣味の延長で繁殖を行っている素人であれ、猫の繁殖に関わっている全ての人が責任持って疾患予防に努める必要があります。
猫の多発性嚢胞腎の主な治療法
  • 液体成分の吸引  嚢胞が巨大化して他の臓器を圧迫したり痛みを引き起こしているような場合は、中に含まれる液体成分を吸引してサイズを縮めることがあります。しかし月に数回の割合で定期的に行う必要がありますので、猫にとって負担になることは間違いありません。
  • 投薬治療 腎臓が細菌感染によって炎症を起こしているような場合は抗生物質が投与されます。
  • 外科手術 嚢胞が片方の腎臓にだけ存在し、なおかつ腎不全の症状が見られないような場合は、嚢胞がある方の腎臓を摘出してしまうことがあります。しかし残された方の腎臓に障害が起こると終わりですので、慎重に判断しなければなりません。また多くの症例が両側性であるペルシャでは推奨されません。
  • 腎不全のコントロール 嚢胞の数が増えたりサイズが大きくなると、腎実質を圧迫して濾過機能を低下させ、慢性腎不全を引き起こします。腎臓の中から嚢胞だけをきれいに切除することはできませんので、腎不全をコントロールしながら病気と付き合っていく必要があります。猫の慢性腎不全