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猫の疥癬~症状・原因から予防・治療法まで

 猫の疥癬(かいせん)について病態、症状、原因、治療法別に解説します。病気を自己診断するためではなく、あくまでも獣医さんに飼い猫の症状を説明するときの参考としてお読みください。なお当サイト内の医療情報は各種の医学書を元にしています。出典一覧はこちら

猫の疥癬の病態と症状

 猫の疥癬とは、皮膚にネコショウセンコウヒゼンダニが寄生して炎症を引き起こした状態を言います。犬でよく見られるイヌセンコウヒゼンダニが感染することもありますが、猫ではまれです。 猫の疥癬~皮膚を穿孔しながら進むため、広範囲にわたって激しいかゆみと炎症を引き起こす  ヒゼンダニのメスは短い足を使って皮膚の最外層である角質層に穴を掘り、そこで産卵しながら数週間生息します。ネコセンコウヒゼンダニ(notoedres cati)その間、皮膚の破壊、刺激性分泌物の放出、糞の排泄といった要因が免疫細胞を呼び寄せます。これが「炎症反応」です。免疫細胞は異物を除去しようとして各種の化学物質を放出しますが、異物だけでなく周辺の神経も刺激してしまいます。このようにして激しいかゆみが引き起こされます。
 疥癬に感染した猫の主症状は以下です。通常は耳の根元から上部へと広がり、さらにそこから顔、まぶた、首へと症状が広がっていきます。なおミミヒゼンダニが引き起こす「耳疥癬」に関してはこちらをご参照ください。
疥癬の主症状
  • フケ
  • かゆみ
  • 発疹
  • かさぶた(痂皮, かひ)

猫の疥癬の原因

 猫の疥癬の原因としては、主に以下のようなものが考えられます。予防できそうなものは飼い主の側であらかじめ原因を取り除いておきましょう。
疥癬の主な原因
  • 感染動物との接触  すでに疥癬を保有している他の犬や猫と接触、およびブラシやバリカンの共用などによって感染します。疥癬に感染した猫を抱くと、人間にも移り、激しいかゆみを引き起こしますので要注意です。動物の保護施設、ペット同伴の宿泊施設、ペットホテル、ペット美容室、そして動物病院でさえ、しっかりとした予防策を講じていないと感染源になりえます。

猫の疥癬の治療

 猫の疥癬の治療法としては、主に以下のようなものがあります。
疥癬の主な治療法
  • 薬浴  殺虫効果のある薬剤を溶かしたお湯に体を浸してダニを殺します。2~4%の硫黄化石灰に週1回入浴などです。
  • 投薬  ネコショウセンコウヒゼンダニにはセルメクチンを含んだ薬剤が有効です。近年はスポット式の製品(レボリューションなど)も流通しています。その他、続発性の膿皮症を予防するため、抗生物質の投与が行われることもあります。
  • 生活環境の改善  こまめに掃除したり部屋中を消毒するなどして、疥癬の繁殖を抑えます。感染していても症状を示さない猫もいるため、たとえ同居動物が無症状でも検査が必要です。