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猫の耳疥癬~症状・原因から予防・治療法まで

 猫の耳疥癬(みみかいせん)について病態、症状、原因、治療法別に解説します。病気を自己診断するためではなく、あくまでも獣医さんに飼い猫の症状を説明するときの参考としてお読みください。なお当サイト内の医療情報は各種の医学書を元にしています。出典一覧はこちら

猫の耳疥癬の病態と症状

 猫の耳疥癬とは、耳の中でダニが繁殖した状態を言います。「耳ダニ症」とも呼ばれます。
ミミヒゼンダニの顕微鏡写真  猫の耳に寄生するのは主としてミミヒゼンダニと呼ばれる体長0.3mm~0.5mmのダニです。紛らわしいものとして疥癬を引き起こすネコショウセンコウヒゼンダニがいますが、こちらが全身に寄生するのに対し、ミミヒゼンダニは主に耳の中に寄生するという特徴があります。栄養源は耳の中の耳垢や傷ついた皮膚のカサブタ、リンパ液、血液などです。ネコショウセンコウヒゼンダニのように皮膚を食い破って中に侵入することはないものの、耳垢を分泌する腺組織を刺激するため、耳の中が次第に耳垢とダニの排せつ物で埋め尽くされていきます。かゆみを引き起こしているのは、ダニが血を吸うときに付けた小さな傷と、その傷口に集まってきた免疫細胞が放出する各種の化学物質です。 猫の耳の中で繁殖した疥癬  猫の耳疥癬の症状としては以下のようなものが挙げられます。感染率は品種や性別とは関係ありませんが、成猫よりも子猫で多発します。
耳疥癬の主症状
  • 耳の黒ずみ
  • 耳から悪臭が漂う
  • 耳垢がたまる
  • 耳をかく
  • 頭を振る
  • 外耳炎
  • 耳血腫

猫の耳疥癬の原因

 猫の耳疥癬の原因としては、主に以下のようなものが考えられます。予防できそうなものは飼い主の側であらかじめ原因を取り除いておきましょう。
耳疥癬の主な原因
  • 耳の手入れ不足 飼い主が耳の手入れを怠ると、耳の中に耳垢がたまり、ミミヒゼンダニにとって住みやすい環境が整ってしまいます。また日常的に耳の中をチェックしないことは、ダニの感染を見落とすことにもつながります。
  • 感染動物との接触 ミミヒゼンダニはすでに感染している動物から他の動物へと容易に移ります。不衛生な環境における多頭飼育が増悪因子です。また母猫から子猫へと感染するケースも多く見受けられます。

猫の耳疥癬の治療

 猫の耳疥癬の治療法としては、主に以下のようなものがあります。
耳疥癬の主な治療法
  • 局所治療  まずたまった耳垢を洗浄剤を用いてきれいに除去します。その後耳用の抗ダニ薬を局所的に塗布します。
  • 駆虫薬の投与  殺疥癬効果のある薬を投与します。近年は、ミミヒゼンダニに対して高い効果を持つセラメクチンという成分を含んだスポット式の薬剤(レボリューションなど)が流通しており、首筋に垂らすだけで治療効果が期待できます。
  • 耳の手入れ 飼い主が日常的に猫の耳の中をチェックしてあげることが予防につながります。また感染動物との接触を減らすため、安易に猫を外に出さないなどの配慮も重要でしょう。 猫の耳かきの仕方
駆虫薬の効果、安全性、副作用に関しては「猫の寄生虫対策・完全ガイド」にまとめてあります。