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猫の耳かきの仕方

 猫の耳かきの仕方について写真や動画付きでまとめました。耳の健康チェックをかねて定期的に掃除してあげるようにしましょう。

猫の耳かきの必要性

 そもそも猫に耳かきは必要なのでしょうか?

頻繁な耳掃除は控えて

 耳の中にたまる耳垢(みみあか)の役割が完全に解明されているわけではないため、しょっちゅう耳掃除するのは控えたほうがよいでしょう。
 猫の耳の中にはたくさんの皮脂腺とアポクリン汗腺とが分布しています。皮脂腺からはトリグリセライド(中性脂肪)、コレステロールエステル、リン脂質が、そしてアポクリン汗腺からはタンパク質と少量の色素が分泌され、両者が混じり合って粘っこい塊を作ります。これに皮膚の残骸が混じり合ったものが猫の耳垢の正体です。 猫の黒っぽい耳垢  猫の汗腺は全身にありますがそのほとんどは休眠組織で、まったく活動していません。例外は唇の外側、肉球そして外耳道(がいじどう=耳の管)にある汗腺で、唇のものは「臭い付け」、肉球のものは「すべり止め」という重要な役割を担っています。外耳道にある汗腺の役割は定かではありませんが、進化の過程で休眠状態にならなかったということから考えると、何らかの機能を果たしていると判断するのが自然でしょう。
 毎日耳かきをして常にきれいにすると思いもよらないトラブルを招く危険性がありますので、過度な耳掃除は控えたほうがよいと思われます。

耳垢の機能・役割

 猫の耳垢には一体どのような役割があるのでしょうか?人間の耳垢を対象とした調査の中にそのヒントがあります。
 耳を過剰に掃除してしまうのは、実は逆効果人間の耳の中を内視鏡で見てみると、耳垢が溜まっているのは入り口から1cm付近の細かい毛の部分だけで、そこから奥の鼓膜周辺には耳垢が一切ありません。そもそも耳あかの正体は、鼓膜の中心から新しく出来た耳の皮膚が、新陳代謝のために入り口へと移動して剥がれ落ちたものが、耳の入り口付近にある耳垢腺(じこうせん)と皮脂腺(ひしせん)の分泌物と混じったものと考えられています。ですから必然的に、耳あかが溜まるのは入り口から1cm程度の入り口近辺に限られるのです。
 さらに、黄色ブドウ球菌のいる培地の中心に耳あかを置いて24時間培養すると、耳あか周囲の菌が繁殖しなくなるというデータがありますが、これは、耳あかが含んでいる「リゾチーム」という抗菌力の高い物質が、菌の繁殖を妨げているためだと言われています。
 このように耳垢は、抗菌薬として機能することで耳の入口を細菌感染から守っている可能性があるのです。猫における耳垢の役割を研究した人はいませんが、耳道の表面を皮脂で覆うことによって過度な乾燥を防いでいるのかもしれませんし、人間と同じように菌の繁殖を抑えているのかもしれません。あるいは動物の場合、匂いのコミュニケーションに役立っている可能性もあります。いずれにしても何らかの重要なミッションを担っている可能性がうかがええます。

耳掃除が必要な時

 過度な掃除は避けた方がよいことは確かですが、耳かきをした方がよい時もあります。 猫の耳が黒ずんでいるときや耳をしきりにかくときは耳掃除を  例えば、食事が合わなかったり体質的に皮脂を分泌しやすい場合、耳の中が真っ黒になってしまうことがあります。そのまま放置すると外耳炎を引き起こしてしまうかもしれませんので、あらかじめ耳かきしたほうがよいでしょう。あるいは耳垢を取ろうとして猫が後ろ足で「カキカキ」することがあります。そのまま放置すると自分の爪で傷をつけ、そこからばい菌が入って炎症を引き起こすかもしれません。そうした場合もあらかじめ耳かきをして綺麗にしてあげた方がよいと思われます。
 耳かきの頻度は1週間に1度が目安です。耳の中をチェックして、あまりにも黒ずんでいるようだったら軽く掃除してあげましょう。
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猫の耳垢のとり方

 猫の耳掃除の仕方を動画付きで解説します。1週間に1度くらいのペースで猫の耳をチェックし、あまりにも黒ずんでいるようだったら軽く拭き取ってあげましょう。

コットンを用いる耳かき

 猫の耳の中をのぞいてみて、余りにも汚れているようでしたら、指先でコットンをつまみ耳の入り口付近を軽く拭き取りましょう。この時、動物病院などで売られている耳掃除用のクリーニングローションを染み込ませておくと、角質溶解作用や殺菌作用もありスムーズに耳掃除できます。なお耳の中に注ぎ込むタイプの液体洗浄液が市販されていますが、ポリープなどが原因で猫の鼓膜に穴が開いている場合、中耳に流れ込んで中耳炎の原因になってしまいます。薬剤を用いたいわゆる「耳洗浄」を行う際は、必ず事前に動物病院で鼓膜のチェックを行ってください。
 以下でご紹介するのは、コットンと指先を用いて猫の耳を掃除する時の動画です。あまり強くこすると皮膚の表面を傷つけてしまいますので、やさしくゆっくりと拭き取るようにします。 元動画は⇒こちら

綿棒を用いる耳かき

 綿棒を使って奥まで丁寧に耳掃除しようとすると、汚れを奥の方に押し込んでしまうこともあります。また猫が突然動き出したときに耳の中を傷つけてしまう恐れがありますので、入り口近辺だけ行うのが基本です。猫の外耳と耳道の解剖学的な構造  耳の内部には複雑なうねりがありますので、うねりの隙間を縫うように綿棒を通し、たまった汚れを拭き取ります。猫の耳の奥は途中で急に折れ曲がっており、指や綿棒が届きません。奥の領域に関しては獣医さんに任せたほうがよいでしょう。
 以下でご紹介するのは綿棒を用いて猫の耳を掃除する時の動画です。あらかじめ濡れているウェット綿棒なども売られています。 元動画は⇒こちら

アロマオイルは猫に有毒!

 殺菌効果や香り付けのため猫の耳にアロマオイルを塗布するという行為は厳禁です。
精油・アロマオイルは猫に有毒  「エッセンシャルオイル」(精油)とは、植物から抽出した100%天然物質で、「アロマオイル」とは、このエッセンシャルオイルをアルコールやキャリアオイルで薄めたものを指します。たくさんあるエッセンシャルオイルの中でも特に問題になりやすいのは、フトモモ科の植物から抽出した「ティーツリー」と呼ばれる精油です。
 2002年~2012年の10年間、アメリカの「ASPCA Animal Poison Control Center」(中毒管理センター)に寄せられた、100%のティーツリーオイルが関わる中毒事故を集計したところ、以下のような出来になったといいます(→出典)。
ティーツリーオイルの中毒事故
  • 犬=337頭
  • 猫=106頭
  • 使用された量=0.1~85ml
  • 意図的に用いられたケース=395件(89%)
  • 皮膚への塗布=221件(50%)
  • 経口摂取=67件(15%)
  • 塗布+経口摂取=133件(30%)
 オイルとの接触後、2~12時間で症状が現れ、最大で72時間続いたといいます。主な症状は唾液の増加、中枢神経系の機能不全と倦怠、麻痺、運動失調、ふるえなどです。また体が小さく、若い猫で重症化する傾向があったとも。中毒事故の内、9割近くが「意図的に与えた」となっていることから、人間に有効なら動物にも有効だろうという単純な思い込みが根底にあるものと思われます。
 猫の耳は医薬品を吸収しやすく、経皮麻酔薬を塗る場所としても利用されているくらいです。そんなデリケートな耳に毒性のあるティーツリーオイルを塗ってしまうと、簡単に中毒に陥ってしまう危険性があります。耳掃除に際してはティーツリーオイルを始めとしたアロマオイルやエッセンシャルオイルを間違って使わないよう十分ご注意ください。
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猫の耳の健康チェック

 猫の耳を掃除するのと同時に、耳の中に現れる変化もチェックします。以下は猫の耳によく見られる異常と、それに関連した疾患の対応一覧表です。もし猫の耳に以下で述べるような異常や変化が見られた場合は、念のため疾患の可能性を疑い、場合によっては獣医さんに診てもらいます。 猫の耳の病気
猫の耳の異常と病気
 上記した疾患のほか、特に老猫では耳垢腺腫が見られることがあります。これは耳の中に分布しているアポクリン汗腺が腫瘍化したもので、初期段階では立体的なホクロのような様相を呈しています。主な治療方法は二酸化炭素レーザーによる切除です。もし見つけたらすぐ動物病院に相談しましょう。 猫の外耳に発生した初期の耳垢腺腫  また猫が延々と後ろ足で耳をカキカキするような場合は、耳の中にノギや中耳ポリープといった異物がとどまっている可能性があります。耳の奥の様子は「耳鏡」を用いないと見えませんので、速やかに獣医さんに相談して確認してもらいましょう。
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猫の耳垢の特徴

 人間の耳垢には、まるでペットフードのように「ドライタイプ」と「ウェットタイプ」があります。猫にも同じようなタイプがあるのでしょうか?

人間の耳垢タイプ

 2006年、日本の長崎大学の調査チームが行った大規模な遺伝子調査により、耳垢のドライとウェットを決定している遺伝子の候補が明らかになりました(→出典)。
 人間の耳垢(ウェットタイプ)調査チームは、耳垢がじとっと湿ったウェットタイプ54人とパサパサに乾いたドライタイプ64人に協力を仰ぎ、両者の耳垢のタイプを決定している遺伝子がどこにあるのかを検証しました。その結果、ヒト16染色体上にある「ABCC11」という遺伝子の変異(538G→A/rs17822931)が関わっている可能性が浮上してきたといいます。具体的には「AA」という遺伝子型の時にドライタイプ、「GA」と「GG」という遺伝子型の時にウェットタイプになるという常染色体優性遺伝です。ドライタイプの人では、細胞内にある環状グアノシン一リン酸(cGMP)の働きが弱く、これが巡り巡って耳垢の水分含有量減少につながっている可能性があるとのこと。
 ちなみにドライタイプの「AA」という遺伝子型を保有する人の割合は人種間で大きな格差があり、東アジアの人では80~95%、ヨーロッパやアフリカの人では0~3%と推定されています。

猫の耳垢タイプ?

 人間で確認されたようなドライタイプとウェットタイプは、猫の耳垢にも当てはまるのでしょうか?
 長崎大学の調査チームによると、ABCC11の相同分子種(共通祖先からの種分化によって生じた遺伝子)はチンパンジー、オランウータン、シロテテナガザル、ニホンザル、イヌでは見つかったものの、マウスやラットでは見つからなかったといいます。残念ながら猫においては未確認なため、現段階では猫の耳垢にドライとウェットがあるのかどうかはわかりません。
 しかし過去に行われた調査では、ある種の猫では脂質の代謝に特徴があり、皮膚の常在菌が繁殖しやすくなるという可能性が示されています。例えば2007年にイタリアで行われた調査では、イースト菌の一種であるマラセチアの保有率に関し、全体における保有率が61%だったのに対してデボンレックスでは平均を遥かに上回る100%という保有率が確認されたといいます。この格差について調査チームは、遺伝的に皮脂を分泌しやすいのではないかと推測しています(→出典)。またデボンレックスの爪の隙間で頻繁に見られる黒っぽい汚れは、分泌された皮脂とそれをエサにして繁殖した菌の塊ではないかとも。 デボンレックスの爪の根元に見られる脂っぽい塊  上記したように、猫の品種や体質によっては皮脂の分泌の仕方に違いがあるようです。これが耳垢に当てはまるかどうかわかりませんが、耳の中がすぐ黒くなるような猫は、体質的に皮脂腺やアポクリン汗腺が活発で、普通の猫よりも脂質やタンパク質を分泌しやすい可能性があります。湿った耳垢のことを「べた耳」とか「猫耳」と呼ぶのは、こうした体質の猫が比較的たくさんいることを示しているのかもしれませんね。
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