トップ猫の健康と病気猫の筋骨格系の病気猫の筋ジストロフィー

猫の筋ジストロフィー~症状・原因から予防・治療法まで

 猫の筋ジストロフィーについて病態、症状、原因、治療法別に解説します。病気を自己診断するためではなく、あくまでも獣医さんに飼い猫の症状を説明するときの参考としてお読みください。なお当サイト内の医療情報は各種の医学書を元にしています。出典一覧はこちら

猫の筋ジストロフィーの病態と症状

 猫の筋ジストロフィーとは、細胞骨格を形成するタンパク質「ジストロフィン」が不足しているか全く欠落しているため、筋肉が正常に働かない状態を言います。
 筋ジストロフィーには多くの種類がありますが、猫においては「X連鎖型筋ジストロフィー」の症例が散見されます。「X連鎖型」とは、性染色体である「X」に関連して発症するという意味です。
 猫の筋ジストロフィーの症状としては以下のようなものが挙げられます。多くの場合、子猫の頃から症状を見せ始めます。猫では体幹や四肢近位筋(太ももや上腕の筋肉)の肥大が見られることから、「肥大型筋ジストロフィー」(HFMD)と呼ばれることもあります。
猫の筋ジストロフィーの主症状
  • 進行性の筋肉の弱化
  • 四肢近位筋の肥大
  • 成長が遅い
  • 食事に時間がかかる
  • よだれが異常に多い
  • あまり動かない
  • 筋肉が固い
  • 筋肉が震える
  • 歩き方がおかしい(うさぎ跳びのよう)
  • 足や背中がたわんでいる
  • 体側や側頭部の筋の萎縮
  • 舌の肥大

猫の筋ジストロフィーの原因

 猫の筋ジストロフィーの原因としては、主に以下のようなものが考えられます。予防できそうなものは飼い主の側であらかじめ原因を取り除いておきましょう。
猫の筋ジストロフィーの主な原因
  • 性別  ほとんどがオスに発症します。メスで発症した場合は、染色体の突然変異がかかわっています。
  • 遺伝(?) 短毛種とデボンレックスにやや多いとされます。

猫の筋ジストロフィーの治療

 猫の筋ジストロフィーの治療法としては、主に以下のようなものがあります。
猫の筋ジストロフィーの主な治療法
  • QOLを高める  遺伝的、かつ進行性の疾患であるため、病気を根治する方法は今のところありません。多くは食道、呼吸筋、心筋の機能不全で生後1年以内に命を落とします。ですから生きている間の生活の質(QOL)をできるだけ高めるのが飼い主のすべきこととなります。またブリーディングする際、種牡・台牝からはずし、遺伝子プールから原因となる遺伝子を根絶します
  • 対症療法  疾患の原因を取り除くよりも、症状の軽減を目的とした治療が施されます。具体的には肺炎を起こさないような管理が重要です。特に食べ物を飲み込む筋肉が弱いため、食道ではなく気管に入り込み、そのまま肺に炎症を起こしてしまうという誤嚥性肺炎に気をつけます。