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黄色脂肪症(イエローファット, 汎脂肪組織炎)~症状・原因から予防・治療法まで

 猫の黄色脂肪症(おうしょくしぼうしょう)について病態、症状、原因、治療法別に解説します。病気を自己診断するためではなく、あくまでも獣医さんに飼い猫の症状を説明するときの参考としてお読みください。なお当サイト内の医療情報は各種の医学書を元にしています。出典一覧はこちら

黄色脂肪症の病態と症状

 猫の黄色脂肪症とは、猫の腹部や胸部にたまった皮下脂肪が酸化して変性し、炎症を起こした状態のことです。
 この病気にかかった猫の脂肪が黄色く変色して見えることからイエローファット(直訳すると”黄色い脂肪”)、また脂肪組織の炎症であることから汎脂肪組織炎(はんしぼうそしきえん)とも呼ばれます。
 猫の黄色脂肪症の主な症状は以下です。
黄色脂肪症の主症状
  • 下腹部のしこり
  • しこりの発熱
  • 奇妙な歩き方
  • 腹部へのタッチを嫌がる
猫の下腹部に見られる「プライモーディアルパウチ」(原始袋)  ちなみに猫の下腹部には、性別や避妊・去勢手術の有無にかかわらず、たぷたぷとしたたるみがあります。これは「プライモーディアルパウチ」(primordial pouch, 直訳すると”原始の袋”)と呼ばれるもので、中には脂肪が蓄えられています。大型のネコ科動物であるライオンにも見られる正常な組織ですが、ここがゴリゴリと硬くなっていたり、触ると妙に痛がるようなときは、内部で炎症を起こしている可能性が大です。念のため獣医さんに相談しましょう。

黄色脂肪症の原因

 猫の黄色脂肪症の原因としては、主に以下のようなものが考えられます。予防できそうなものは飼い主の側であらかじめ原因を取り除いておきましょう。
黄色脂肪症の主な原因
  • 偏食 多くの場合不飽和脂肪酸(ふほうわしぼうさん)の過剰摂取によって引き起こされます。不飽和脂肪酸はマグロ、かつお、アジ、サバなど、青み魚に多く含まれており、これらの食材を日常的に摂取している猫に多発します。「猫の主食は魚だ」という思い込みを抱いている飼い主や、猫の好き嫌いに合わせて魚ばかり与えている飼い主が間接的に本症を引き起こしているとも言えるでしょう。 猫と脂質
 なお以下は、生の魚100g中に含まれる不飽和脂肪酸の含量一覧です。黄色脂肪症を引き起こす不飽和脂肪酸にはいくつかの種類がありますが、体内において特に酸化しやすいのは、「n-6系不飽和脂肪酸」に属するリノール酸、γ-リノレン、アラキドン酸だといわれています。「n-3系不飽和脂肪酸」にはα-リノレン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸などが含まれます。単位は全て「g」です。食卓になじみ深い魚の中では、脂の乗った「サバ」が断トツで危険なことがお分かりいただけるでしょう。 魚に含まれる不飽和脂肪酸含量一覧 食品成分データベース(文部科学省)

黄色脂肪症の治療

 猫の黄色脂肪症の治療法としては、主に以下のようなものがあります。
黄色脂肪症の主な治療法
  • 対症療法  まずは症状の軽減を目的とした治療が施されます。具体的には腹部の炎症を抑えるために抗炎症薬などが投与されます。
  • 食事療法  脂肪の酸化を抑えるビタミンEを投与したり、不飽和脂肪酸の過剰摂取を防止するため、フードの切り替えなどを行います。回復には数週間~数か月かかることもしばしばですが、正しい栄養バランスさえ取り戻せば、予後は良いとされます。