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甲状腺機能亢進症の猫は筋肉量が減る

 甲状腺機能亢進症を発症した猫を対象とした調査により、90%以上の患猫で見られる体重減少は、脂肪ではなく筋肉の目減りによって引き起こされていることが明らかになりました(2016.12.15/アメリカ)。

詳細

 調査を行ったのは、ニューヨークのコーネル大学と「Animal Endocrine Clinic」からなる共同チーム。2013年6月から2015年12月の期間、放射性ヨード治療を受ける前に内分泌疾患の専門病院を訪れた猫を対象とし、甲状腺機能亢進症の発症前後で体重がどのように変化するかを調査しました。 猫の甲状腺機能亢進症では主症状としてるいそうが見られる  選別基準をクリアした462頭の体重変化をモニタリングしたところ、発症前1~2年の時点における体重の中央値が5.45kgだったのに対し、発症後における中央値は4.36kgにまで減少していたと言います。また調査対象となった猫のうち、154頭(35.3%)は「やせ気味」もしくは「やせている」と評価され、357頭(77.3%)では筋肉量の低下が観察されました。
 一方、治療によく反応して甲状腺の機能が正常化した117頭の猫を追跡調査したところ、体重は「4.1kg→5.0kg」、BCS(体型)は5段階評価(1~5)で「3→3.5」、MCS(筋肉のつき具合)は4段階評価(0~3)で「2→3」に改善したといいます。しかしおよそ45%の猫では、軽度から中等度の筋肉量減少が残ったとも。 甲状腺機能亢進症の猫で見られるBCSの変化 甲状腺機能亢進症の猫で見られるMCSの変化  こうしたデータから調査チームは、甲状腺機能亢進症を発症した猫の体重減少のうち、およそ75%は筋肉量の目減りによって引き起こされているという事実を明らかにしました。また、発症に伴って体重減少は見られるものの、「やせ」というレベルにまで至るものは全体の3分の1程度にすぎず、病気を適切に治療すれば体重の回復を見込めるとも。ただし、約半数では筋肉量を元のレベルにまで戻す事は難しいとしています。
Successful treatment leads to weight gain and increase of BCS in most cats, but almost half fail to regain normal muscle mass
Peterson, M.E., Castellano, C.A. and Rishniw, M. (2016), J Vet Intern Med, 30: 1780?1789. doi:10.1111/jvim.14591

解説

 猫の甲状腺機能亢進症では、これまで「体重減少」が症状として非常に多く報告されてきました。例えば以下は、今回の調査で得られた主症状のリストです。体重減少が90%以上の猫で見られることがお分かりいただけるでしょう。 甲状腺機能亢進症の猫における主症状一覧リスト  体重減少は症状としてよく現れるものの、それが脂肪の減少によるものなのか、それとも筋肉の減少によるものなのかに関しては今までよく分かっていませんでした。今回の調査により、人間の患者におけるのと同様、体重減少が主として筋肉量の低下によって引き起こされていることが明らかになりました。また同時に、適切な治療によって体重は回復するものの、約半数では筋肉量を元のレベルにまで戻す事ができないという事もわかりました。これはちょうど、無理な断食ダイエットをしてリバウンドを起こした人と同じ状態です。筋肉量が減った分、脂肪がつきやすい体質になっていると考えられますので、甲状腺機能亢進症を患った猫の飼い主は、食餌中のヨウ素の濃度と同時に猫の肥満度にも目を光らせておく必要があります。調査で用いられた「BCS」(肥満の度合い)と「MCS」(筋肉量の度合い)の目安は以下のページで解説してありますのでご参照ください。 猫のダイエットの基本 猫の甲状腺機能亢進症