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猫エイズウイルス(FIV)の感染率および危険因子

 オーストラリア国内に暮らしている猫を対象とした調査により、猫エイズウイルスと猫白血病ウイルスの感染率および危険因子が明らかになりました(2016.7.25/オーストラリア)。

詳細

 調査を行ったのは、シドニー大学の獣医学チーム。3つの母集団を対象として全血検査を行い、猫エイズウイルス(FIV)と猫白血病ウイルス(FeLV)の陽性率を確認したところ、以下のような結果が出たと言います。
母集団1
  • 西オーストラリア州パース
  • 保護施設に収容された猫
  • FIV陽性率=6%(対象2,151頭)
  • FeLV陽性率=1%(対象2,241頭)
母集団2
  • オーストラリア全土
  • 外出自由の飼い猫
  • FIV陽性率=15%(対象2,083頭)
  • FeLV陽性率=2%(対象2,032頭)
母集団3
  • マードック大学附属動物病院
  • FIV陽性率=14%(対象169頭)
  • FeLV陽性率=4%(対象166頭)
 さらに、オーストラリア全土から集められた母集団2のデータを精査したところ、FIVとFeLVそれぞれの危険因子が明らかになりました。
FIV感染の危険因子
  • 3歳以上である
  • オス猫
  • 未去勢
  • 西オーストラリア州在住
FeLV感染の危険因子
  • 持病を持っている
  • 西オーストラリア州在住
 こうしたデータから研究チームは、FIVとFeLVはオーストラリア国内においていまだに重要な感染症の1つであり、西オーストラリア州におけるFIVの高い陽性率は、去勢手術を施していないオス猫の割合に連動しているとの結論に至りました。 Seroprevalence of feline immunodeficiency virus and feline leukaemia virus in Australia
Mark E Westman, Amanda Paul, et al.2016 クリエイティブ・コモンズ・ライセンス

解説

 今回の調査では、猫エイズの感染リスクとして以前から指摘されていた「未去勢のオス猫」という項目が追認される形となりました。背景にあるメカニズムは「未去勢のオス猫は男性ホルモンの濃度が高い→メス猫に対する欲求が強い→放浪癖が生ずる→他のオス猫と出くわす→メスをめぐって喧嘩する→噛み傷や引っ掻き傷からウイルスが侵入する→感染!」というものです。飼い主は猫の健康に対して全責任を負いますので、事前に去勢手術を施して性衝動を弱めておく必要があります。そうすれば、外に出てナンパしたいという衝動も減り、結果として他のオス猫と喧嘩する機会も減ってくれるでしょう。 猫の去勢と避妊手術 猫エイズウイルス感染症 猫白血病ウイルス感染症 猫エイズ(FIV)への感染リスクを高めているのは、創傷を伴うオス猫同士の喧嘩