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保護施設の黒猫は白猫よりも収容期間が長くなる

 保護した猫たちを無期限で預かるノーキルシェルターを対象とした調査により、黒猫の収容期間は他の猫に比べて長くなるという傾向が確認されました(2017.11.28/チェコ共和国)。

詳細

 調査を行ったのは、チェコ共和国にある「University of Veterinary and Pharmaceutical Sciences Brno」を中心としたチーム。2011年1月ら2015年12月の期間、チェコ郊外にある3つのノーキルシェルターを対象とし、猫が保護された日から里親に引き取られるまでの収容期間に影響を及ぼす因子が何なのかを検証しました。調査期間中に引き取られた合計1,407頭の基本データと、猫たちを引き取った里親の基本データを元にして統計的に調査を行ったところ、以下のような傾向が浮かび上がってきたといいます。
譲渡数と関連因子
  • 譲渡数は秋から冬にかけて多い
  • 11月と12月の譲渡数が最も多い
  • 3~12ヶ月齢の譲渡数が最も多い
  • 平均収容期間は春が最も長い
  • 10歳以上の収容期間が最も長い
  • 黒っぽい被毛の猫の収容期間は長い
  • 里親は女性の方が多い
  • メス猫の方が譲渡数が多い
 上記した傾向には「保護された猫たちの構成にそもそも偏りがあった」という因子が関わっている可能性が大きいとのこと。とは言え、収容期間に影響を及ぼす純粋な因子である可能性も否定できないため、ノーキルシェルターのスタッフは季節ごとに見られる譲渡数の上下動や猫の属性による譲渡率を念頭に置き、適切なプロモーションしていく必要があるとしています。
Investigating Some of the Factors that Affect the Selection of Shelter Cats by Adopters in the Czech Republic
Katerina Kubesova, Eva Voslarova, Vladimir Vecerek & Marijana Vucinic(2017) , Anthrozoos, 30:4, 623-633

解説

 譲渡数が秋から冬(11~12月)にかけて増えるという傾向が確認されました。クリスチャンが多い国いおいては、クリスマスシーズンが近づくとチャリティーに対するモチベーションが高まり、身寄りのない動物を引き取ろうとする人が増えるのかもしれません。あるいは夏場になると長期休暇でどこかに出かける人が増え、動物を迎えることを先延ばしにする人が増えることが、季節による振幅を拡大している可能性もあります。
 里親は男性よりも女性の方が多くを占めていました。過去に行われた調査では、動物の保護活動に関わっている人は女性の方が多いとか、猫から得る喜びは女性の方が大きいといった報告があります。ですから男性よりも女性の方が生理的に猫を好む人が多いのかもしれません。あるいは「男らしさ」という社会通念に縛られた結果、猫は好きだけれどもかわいがっている姿を見られるのが恥ずかしいと考える男性が増え、結果としてシェルターに足を運ぶ男性の数が減っているのかもしれません。 猫を撫でる喜びは男性よりも女性の方が大きい?
 子猫(3~12ヶ月齢)よりも成猫や老猫の譲渡数が少ないという傾向が確認されました。幼すぎる子猫(3ヶ月齢未満)に対しては「しつけが大変」、「部屋の中が騒がしくなる」、成猫(5~10歳)や老猫(10歳以上)に対しては「子猫特有の可愛さがない」、「医療費がかかる」、「看取りの日が近い」といった考えが頭をよぎり、消去法で子猫を選ぶという判断に落ち着くのでしょうか。この傾向は欧米で行われた過去の調査とも部分的に一致しています。 猫の譲渡率が悪いのかどうかは明確に証明されていない  黒っぽい被毛を持つ猫の収容期間が他の猫に比べて1ヶ月ほど長くなるという傾向が確認されました。黒っぽい色(黒 | 黒+白いマーク | タビー | タビー+白いマーク)が積極的に避けられたのか、それとも明るい色が積極的に選ばれたのか定かではありませんが、もし前者の仮説が正しいのだとすると、以下のような理由が考えられます
黒猫は嫌われ者?
  • 黒が持つネガティブなイメージ
  • 黒い猫は不吉であるという迷信
  • 写真映えしない
  • 表情がわかりにくい
 被毛の色と保護施設における収容期間に関しては、今回の調査のように関係があったという報告があったり、逆に関係なかったという報告があったり明確な結論が出ていません。しかし逸話的には「黒猫の譲渡率は白猫の2/3でタビーの半分」(→出典)といったものがしばしば聞かれますので、やはり何らかの理由で忌避される傾向があるのかもしれません。WHOがうつ病のことを「黒い犬」と例えていることからも、「黒」という色がいかにネガティブイメージとリンクしているかがうかがえます。 黒猫は不幸をもたらす?
 今回の調査は保護した猫たちを無期限で預かる「ノーキルシェルター」を対象としたものでした。こうしたシェルターで黒っぽい被毛を持つ猫たちが味わう災難は「収容期間が延びる」というものですが、日本のように一定期間が過ぎたら猫たちを殺処分していく「キルシェルター」だったら、「被毛が黒いために引き取り手が現れず殺される」というものにグレードアップしてしまいます。日本国内において黒っぽい被毛を持つ猫が引き取られにくいという傾向があるのかどうかは確認されていません。しかしもしあるのならば、譲渡率を高めるため積極的にプロモーションしていく必要があるでしょう。猫の殺処分の現状