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猫は極端にやせていても極端に太っていても寿命が短くなる

 さまざまな体型に属する2千頭を超える猫を対象とした調査により、極端なやせと極端な肥満はともに寿命の短縮化と関係していることが判明しました(2018.2.22/オーストラリア)。

詳細

 調査を行ったのはオーストラリア・シドニー大学のチーム。2005年1月から2015年6月の期間、シドニーにある猫専門病院を最低2回受診した猫を対象とし、体型を9つのクラスに分類した「BCS」(Body Condition Score)の値と寿命との間に何らかの関係性があるかどうかを統計的に検証しました。合計2,609頭におよぶ猫の医療記録を精査したところ、以下のような関係性が確認されたと言います。数字はハザード比(HR)で、「BCS6」という条件における死亡率を「1」としたとき、「BCS(6以外)」という条件における死亡率がどの程度になるかを表しています。つまり数字が大きいほど死亡リスクが高いということです。
猫のBCSと死亡リスク
  • 1歳以上3歳未満BCS4→HR4.15/BCS5→HR1.75
  • 3歳以上11歳未満BCS3→HR6.09/BCS9→HR2.27
  • 11歳以上BCS7→HR1.49
猫のBCS~3から9の比較図 Strong associations of 9-point body condition scoring with survival and lifespan in cats
Kendy T Teng, et al., Journal of Feline Medicine and Surgery 2018, doi.org/10.1177/1098612X17752198

解説

 1歳以上3歳未満の猫においてはBCS4と5において死亡リスクの上昇が確認されました。これはやせたから死亡リスクが高まったと言うよりは、若齢猫に多い感染症のせいで体重が減少し、死亡率が高かったものと考えられます。この場合、BCS6からやや体重が落ちた状態は死亡率を直接的に高める「リスクファクター」ではなく、ただ単に死亡率の上昇を示唆する「リスクマーカー」と考えた方が妥当でしょう。
 3歳以上11歳未満の年齢層においては極端にやせたBCS3において死亡リスクの上昇が確認されました。体型が寿命に影響を及ぼしたのか、それとも悪性腫瘍など全く別の疾患が体重減少を引き起こし見せ掛けの関係性として現れたのかはわかりませんが、若齢猫のように致死性の感染症にかかる割合が少ないという事実と考え合わせると、人医学の領域で確認されている「年配者ではスリムな体型が死亡リスク」(Gulsvik AK, 2009)といった関係性が猫においても当てはまるのかもしれません。
 3歳以上11歳未満の年齢層においては極端なやせと同時に、極端に太ったBCS9において死亡リスクが上昇するという関係性が確認されました。BCS7のHRが1.34、8のHRが1.11と低い値にとどまっている理由としては「不健康だけれども寿命の短縮という形では現れていないだけ」や「飼い主が猫を甘やかして太らせていると同時にちゃんと病院にも行っている」などが考えられています。BCS9でHRが2.27に急上昇した理由は、猫のホメオスタシスや獣医師によるケアでもフォローしきれないような健康上の問題が影響したのではないかと推測されています。具体的には心臓への負担や糖尿病などです。
 すべての年齢層を通し、もっとも死亡リスクが低いと判断されたのはBCS6に属する猫たちでした。9段階評価のBCSの場合、1~3が「やせ」、4~6が「普通」、7~9が「肥満」と大別されますので、BCS6は人間でいう「ややぽちゃ」に該当すると考えられます。人医学においてはスリムな体型(BMI18.5~24.9)の方が健康的と考えられていますが(→出典)、猫においては多少脂が乗っていた方が有利なのかもしれません。ただし「寿命」という観点から見たときだけで、変形性関節症糖尿病といった慢性的な疾患にかかるリスクとは全く別の話です。人間でも猫でも重要なのは、ただ単に長生きすることではなく、病気や苦痛を抱えずに生きる「健康寿命」の方ですから。 猫の肥満