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猫の放し飼いはネグレクトという動物虐待

 猫を蹴飛ばしたりお湯をかけるといった積極的な虐待は多くの人から蔑まれます。その一方、適切な飼育を怠る「放し飼い」という消極的な虐待には気づいていない人が多いのではないでしょうか?

猫の交通事故統計(英国版)

 イギリス国内で猫の交通事故に関する統計調査が行われ、非常に多くの猫たちが命を落としていることが明らかになりました。
 調査を行ったのは英国王立獣医大学が中心となったチーム。「VetCompass」と呼ばれる疫学プログラムに参加している夜間救急外来病院から電子医療データを収集し、交通事故が原因と考えられる患猫の数、および事故に遭う危険因子が何であるかを統計的に精査しました。
 その結果、2012年1月~2014年2月の期間で合計33,053頭の猫が受診し、そのうち4.2%(1,407件)が交通事故によるものあることが判明したといいます。受傷部位の数は1頭につき1.6ヶ所、年齢の中央値は2.6歳でした。また事故に遭うリスクファクターとして浮かび上がってきた項目は以下です。数字は「オッズ比」(OR)で、標準の起こりやすさを「1」としたときどの程度起こりやすいかを相対的に示したものです。数字が1よりも小さければリスクが小さいことを、逆に大きければリスクが大きいことを意味しています。
年齢
猫の交通事故リスクファクター~年齢別に見たオッズ比一覧
  • 6ヶ月齢未満=0.99
  • 6ヶ月齢~1歳=3.02
  • 1~3歳=2.47
  • 3~6歳=1.65
  • 6~10歳=1
  • 10~15歳=0.37
  • 15~20歳=0.35
  • 不明=3.95
性別
  • メス=1
  • オス=1.28
  • 不明=0.82
品種
  • 純血種=1
  • 雑種=1.9
  • 不明=1.61
季節
猫の交通事故リスクファクター~季節別に見たオッズ比一覧
  • 春=1
  • 夏=1.17
  • 秋=1.19
  • 冬=0.83
Epidemiology of road traffic accidents in cats attending emergency‐care practices in the UK
M. Conroy, D. O'Neill, A. Boag, D. Church, D. Brodbelt, Journal of Small Animal Practice, doi.org/10.1111/jsap.12941

交通事故の危険因子~年齢

 6~10歳という年齢層を基準(=1)としたとき6ヶ月齢未満、および10歳以上の年齢層において事故に遭うリスクが低下する傾向が見られました。これは単純に外に出る機会が少ないからだと推測されます。
 逆に6ヶ月齢~6歳の年齢層では1.6~3倍という高いリスクが確認されました。猫の身体能力が十分に発達したのを見て、屋外へのアクセスを許してしまう飼い主が多くなるのでしょう。また年齢が低いほど交通事故に遭うリスクが高い理由は、外の世界に慣れておらず向かってくる自動車やオートバイのスピード感をつかめないからかもしれません。

交通事故の危険因子~季節

 春(3~5月)を基準としたとき、夏(6~8月→17%増)と秋(9~11月→19%増)において、交通事故に遭うリスクが高まる傾向が見られました。
 夏は外気温が高いため、飼い主が家の窓やドアを開けやすくなります。そうした隙間から外に出てしまう猫が増えてしまう可能性が考えられます。
 冬では逆に17%ほどリスクが低下することが明らかになりました。冷たい外気が入らないよう飼い主が家の戸締まりを強化すること、および外が寒いので単純に猫が出たがらないことが主な理由でしょう。

交通事故の危険因子~性別

 メス猫を基準としたとき、オス猫の交通事故に遭うリスクは28%ほど高いことが明らかになりました。
 オス猫に特有の「メスを求めて放浪する」という行動パターンが車との接触リスクを高めているものと推測されます。一方、不妊手術の有無とリスクの上下動は連動していませんでした。ひょっとすると、たとえ去勢手術を施しても、手術のタイミングがあまりにも遅い場合は先天的な行動パターンが残りやすくなってしまうのかもしれません。

交通事故の危険因子~品種

 純血種を基準としたとき、雑種では2倍近いリスクが確認されました。高いお金を出して購入した猫の場合、飼い主はそれだけ大事にするということでしょうか?
 一方、雑種猫の場合、野良猫を拾ったとか餌付けしているうちに家の中に入ってきていつの間にかペットになったといった出会い方が想定されます。飼い主の心中に「たかが猫だから」とか「どうせ拾った猫だし」といった潜在意識があるのだとしたら悲しいことです。

交通事故の危険因子~受傷部位

 腹部に怪我を負っていない場合と比較して、負っている場合の死亡リスクは2.8倍と推定されました。また骨盤を含む脊柱に怪我を負っていない場合と比較して、負っている場合の死亡率は2.5倍になると推定されました。
 怪我が原因となって死亡するパターンもあれば、予後を悲観して医師が安楽死を遂行するというパターンもあります。いずれにしても車やオートバイとぶつかってしまうと骨折や内臓破裂といった重症につながりやすくなりますので、猫にとっていいことは何一つありません。

猫の放し飼いは動物虐待

 猫の死亡率を高める「放し飼い」という行為は動物虐待です。蹴飛ばしたりお湯をかけるといった積極的な虐待が蔑まれる一方、適切な飼育をしない消極的な虐待に気づいていない人が多いように感じられます。
 イギリス・ブリストル大学を中心としたチーム。2010年5月~2013年12月の期間、イギリス国内に暮らしている猫の飼い主1,264人を対象とし、生後12ヶ月齢なるまでの間、いったいどのような猫が交通事故に遭いやすいのかを前向きに調査しました。その結果、交通事故遭遇率は3.9%だったといいます。また軽症例が8.5%、要治療の重症例が17%、死亡例が74.5%に達したとも。 猫が交通事故に遭うリスクを高める要因  3万頭を超える猫の医療データを用いた今回の調査でも、屋外における交通事故が猫の寿命を著しく縮めることが明らかになりました。
 病院に運ばれてきた時点ですでに死亡していた猫の数は6.7%(94頭)、かろうじて生きていた猫1,313頭のうち33%に相当する433頭が病院内で死亡したといいます。そのうち、状態があまりにも悪く、猫の苦痛が甚(はなは)だしいとして最初の診察で安楽死が決行された割合は60.2%を占めていたそうです。
 日本においても交通事故が原因の犬や猫の路上死が相当数に登ることが示されています。そこには野良猫のほか飼い主が放し飼いにしているペット猫も含まれます。  繰り返しになりますが、猫を放し飼いするのは動物虐待です。また屋外のリスクを把握せず外猫を美化する写真家や、外猫を集客に利用している施設も同罪です。お金と「いいね」で目がくらんだ人たちには、自分の行為がもたらす意味が見えなくなっていますので、猫好きたちがこうした「隠れ動物虐待者」にモラルプレッシャーをかけていく必要があるでしょう。 猫を放し飼いにしてはいけない理由