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猫の肥満を助長しているのは飼い主の甘やかし~健康リスクに対する認識不足が危機感を鈍らせる

 猫の肥満に関する危険因子はたくさんありますが、猫の側の原因だけでなく飼い主の甘やかしにも原因があるようです。

猫の肥満と危険因子

 調査を行ったのはオーストラリアにあるシドニー大学を中心としたチーム。2016年11月から12月の2ヶ月間、国内でインターネットを介したアンケート調査を行い、猫の肥満に影響を及ぼしている危険因子が何であるかを検証しました。集まった有効回答数は1,390で、全体の89%に相当する1,186名は女性、全体の51.8%に相当する720名は25歳から44歳という内訳になったと言います。
 「太っちょ猫は可愛い?」「デブ猫は可愛い?」という設問に対し、「そう思う」もしくは「強くそう思う」と回答した人の割合に関してはそれぞれ26.0%(362名)と18.1%(252名)であることが明らかになりました。ここで言う「太っちょ」(原文:chubby)はBCS4の太り気味、「デブ」(原文:fat)はBCS5の明らかな肥満に相当します。 5段階評価のBCSで見たときの「太り気味」と「明らかな肥満」
 また飼い主の回答傾向と猫の肥満の関係性を検証したところ、以下のような結果になったといいます。「オッズ比」(OR)とは標準の起こりやすさを「1」としたときどの程度起こりやすいかを相対的に示したもので、数字が1よりも小さければ猫の肥満リスクが小さいことを、逆に大きければリスクが大きいことを意味しています。
飼い主の意識と猫の肥満リスク
  • 太っちょが即、不健康というわけではない→OR1.83
  • 猫が太っちょでも構わない→OR2.06
  • 太っちょの猫はたいてい幸せに見える→OR2.35
  • 太っちょ体型は猫の生活が充実している証拠→OR3.75
  • デブ体型は猫の生活が充実している証拠→OR4.98
Positive attitudes towards feline obesity are strongly associated with ownership of obese cats
Teng KT, McGreevy PD, Toribio JALML, Dhand NK, PLOS ONE 15(6): e0234190. DOI:10.1371/journal.pone.0234190

飼い主の危機意識不足

 肥満体型に対して寛容な飼い主をもつ猫においては、軒並み肥満リスクが高まる傾向が確認されました。これと合わせ、猫の側の因子として「しばしば食事の催促をする」→OR3.41、「いつも食事の催促をする」→OR5.19、「好きなときに餌を食べられる」→OR2.34という肥満リスクも確認されました。両方のデータを合わせて考えると「猫の催促に応じて飼い主が適当に餌を与える→猫が肥満体型に陥る」という状況が見えてきます。
 猫に対する飼い主の「甘やかし」の理由としては、肥満に関連した疾患の発症リスクに対する認識が欠落していることや、太った猫が持つベビースキーマが関係しているのではないかと推測されています。「ベビースキーマ」(Baby Schema)とは人間の赤ん坊が見せる「丸っこい顔立ち」「短い手足」「たどたどしい歩き方」といった幼児的な特徴のことです。こうした特徴は人間の母性(父性)本能をくすぐり「可愛い!」という感情を喚起しますので、「太っちょの猫は可愛い?」に対する肯定意見が26%、「デブ猫は可愛い?」に対する肯定意見が18%という高い割合を占めたのだと考えられます。また調査チームは漫画などに登場する猫たちの丸っこい姿が、肥満体型に対する44%という極めて高い寛容な態度を助長しているのではないかとも指摘しています。 まるまると太った猫の体には「かわいい」という感情を惹起するベビースキーマが含まれている  肥満が各種の疾患を引き起こす引き金となり、猫の健康や福祉を損なうことが明らかなため、飼い主への適切な教育と根本的な意識変換が必要だと警鐘を鳴らしています。 猫の顔やしぐさが可愛い理由は? 猫の肥満・太り過ぎ
キャットフードは計量カップで厳密に測った上で必要量だけ与えるようにしましょう。猫の催促に応じて目見当で給餌していると、高い確率で肥満(BCS4~5)に陥ってしまいます。ドライタイプのペットフードを計量カップで正確に計るコツは?