トップ猫の心を知る猫の習性顔やしぐさがかわいい

顔やしぐさがかわいい

 猫の習性の一つである顔やしぐさがかわいいという点について解説します。
 「ネズミ捕り係」として人間と共に暮らし始めた猫は、数千年の年月をかけて「ペット」という地位に上り詰めました。この出世街道の裏には、猫が持つ「かわいさ」という武器が深く関わっているようです。

「かわいい」を生むベビースキーマ

 人間が何かを見て「かわいい」と感じる時、そこにはある法則性があると言われています。この法則性は早くも1943年、動物学者コンラート・ローレンツによって「ベビースキーマ」(別名=baby schema, 幼児図式, Kindchenschema, キントチェンシェマetc)という表現で提唱され、その後50年の間に様々な実証テストが行われてきました。
 「かわいい」という感情を生み出すベビースキーマの一般的な特徴をリスト化すると、以下のようになります。
ベビースキーマの構成要素
  • 広い額
  • 幅の広い顔
  • 平坦な顔
  • 大きな目
  • 浅い彫り
  • 小さな鼻
  • 幅の広い鼻
  • 小さな上顎
  • 小さな下顎
  • 小さな歯
  • 短い手足
ベビースキーマの典型とされるキューピー人形  上に列挙した項目のうちどれかが関わっているとき、私たちの中には「かわいい」という感情が芽生えると考えられています。国際的な例を挙げると「ベティちゃん」や「キューピー人形」があてはまるでしょう。また日本向けの例を挙げると「キティちゃん」(幅の広い顔+平坦な顔)、「ピーポくん」(大きな目+小さな鼻)、「ドラえもん」(短い手足)などが好例です。このように、目でとらえたときに胸がキュンとなり、思わず「かわいい!」と叫んでしまいたくなる要素、それが「ベビースキーマ」なのです。
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動物とベビースキーマ

 「かわいい」という感情は、人間だけに対して抱くものではなく、犬や猫といった動物に対しても抱くことが実験によって確認されています。このことはすなわち、動物にもベビースキーマがあることを物語っています。

犬のベビースキーマ

 2014年に行われた実験で、犬の顔は人間の子供と同じくらいのかわいさを持っているという可能性が示されました。
 調査の対象となったのは、3~6歳の年齢層に属する、27人の男の子と23人の女の子。「大人」、「幼児」、「成犬」、「子犬」、「成猫」、「子猫」という6種類の写真を見せられ、それぞれの「かわいさ」に関して1~5までのランク付けを行いました。なおこれらの写真はデジタル処理により、「子供っぽい顔」(ベビースキーマを多く含む顔)と「大人っぽい顔」(ベビースキーマをあまり含まない顔)という2種類に調整されています。つまり写真は合計12種類あるというわけです。その結果が以下。
テスト写真
幼児・子犬・子猫の通常の写真と、ベビースキーマを高めた写真
成人・成犬・成猫の通常の写真と、ベビースキーマを高めた写真
子供が感じる「かわいさ」の度合い
子供が「人・犬・猫」を見たときに感じる「かわいさ」の度合い  このように、「大人」の顔に対しては「かわいさ」の評価が低い一方、「幼児」、「成犬」、「子犬」、「成猫」、「子猫」では軒並み高くなっています。また青い棒グラフの方が高い値を示していることから、「かわいさ」の度合いは「子供っぽさ=ベビースキーマ」の度合いとある程度比例しているようです。なお同様の実験を大人を対象として行った結果が以下で、特に「子犬」と「子猫」に関しては、人間の「幼児」を凌ぐほどのかわいさを持っていることがうかがえます。
大人が感じる「かわいさ」の度合い
大人が「人・犬・猫」を見たときに感じる「かわいさ」の度合い Baby schema in human and animal faces induces cuteness perception and gaze allocation in children

猫のベビースキーマ

 2012年に行われた実験で、犬のみならず猫の顔もまた、人間の子供と同じくらいのかわいさを持っているという可能性が示されました。
 調査の対象となったのは、72人の女性と29人の男性からなる101人。年齢は16歳から60歳までバラバラです。被験者たちは「幼児の顔」、「大人の顔」、「猫の顔」をランダムに見せられ、それらの「かわいさ」について1~7までの間でランク付けを行いました。なお実験に用いられた写真には、デジタル処理によって「子供っぽい顔」(ベビースキーマを多く含む顔)に近づけられたものと、逆に「大人っぽい顔」(ベビースキーマをあまり含まない顔)に近づけられたものが均一に混じっています。その結果は以下。
テスト写真
幼児・大人・猫の通常の写真と、ベビースキーマを高めた写真
かわいさの度合い
被験者が「幼児・大人・猫」の写真を見たときに感じるかわいさの度合い  このように、大人の顔が低い値を示しているのに対し、幼児の顔と猫の顔は、ほとんど同じくらい「かわいい」として認識されることが明らかとなりました。またその「かわいさ」は、子供っぽさの度合い、すなわちベビースキーマの度合いと比例していることもうかがえます。 Manipulation of Infant-Like Traits Affects Perceived Cuteness of Infant, Adult and Cat Faces
ゴリラと子猫
子猫のオールボールを可愛がるゴリラのココ 人間のみならず、ゴリラも猫を可愛いと感じるようです。1971年生まれの「ココ」(Koko)は、世界で初めて手話を通じて人間と会話をしたことで有名なローランドゴリラ。1984年の7月、誕生日のお祝いとして贈られた「オールボール」(All Ball)という名の子猫をとても可愛がっていました。ところが同年12月、不運な交通事故に巻き込まれてオールボールが死んでしまったことを伝えると、手話で「よくない・悲しい」という気持ちを伝えたそうです。その日、ココのいる檻からは悲しげな叫び声が響き渡りました。子猫と遊ぶココの様子(YouTube)
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猫がもつ「かわいい」

 さまざまな実験により、ベビースキーマは「かわいさ」の源であること、そして動物にも備わっていることがわかってきました。では具体的に、猫のどこに、このベビースキーマが隠されているのでしょうか?

外見的ベビースキーマ

 まず猫の見た目に含まれるベビースキーマ、すなわち「外見的ベビースキーマ」について考えてみましょう。

大きな目

 猫のかわいさの一つとしてまず挙げられるのが「大きな目」です。2009年に行われた実験では、顔の中における目の割合が大きければ大きいほどかわいさが増し、その結果「保護したい」という衝動に駆られるという事実が明らかになりました。試しに典型的な猫の顔と赤ん坊の顔を比較してみると、かなり重なる部分があることが見て取れます。私たちが猫を見て本能的に「かわいい」と感じるのは、顔の中における眼球の割合が比較的大きいからなのでしょう。 赤ん坊の顔と猫の顔の比較写真  よく考えると人間の女性も、自分の目を大きくしようと必死に努力しています。例えば、「目を二重にする」、「つけまつげを付ける」、「目の下にホワイトのアイライナーを入れる」、「デカ目プリクラを撮る」、「カラーコンタクトを入れる」、「猫目メイクをする」などです。こうした努力は、顔の中における目の比率を大きくしてベビースキーマを高め、「かわいいね!」と言ってもらえるようにしているのかもしれませんね。 目に斑点があるパンダと無いパンダとでは、受ける印象がまるで違う Baby Schema in Infant Faces Induces Cuteness Perception and Motivation for Caretaking in Adults

小さな口

 猫のかわいさの一つとして口も忘れてはいけません。猫の口を前から見ると、おちょぼ口とへの字口が合体したような感じになっており、ベビースキーマの一つである「小さな口」の条件を満たしています。さらに猫の顔を横から見ると、口角がキュッと上がってまるで笑っているかのようです。1982年に行われた実験では、泣いている子供よりも笑っている子供の方が、「かわいい」と評価される傾向が強いとの結果が出ています。つまり猫の口は、前から見ても横から見ても、人間に対して「かわいい」と感じさる要素を持っているのです。
 人間の女性も口をぎゅっと閉じておちょぼ口にしたり、口角を上げて「あひる口」をすると可愛くなります。しかし「意図的に口を作っている!」とばれてしまうと逆効果になりますので要注意です。 猫の口を正面から見たところと横から見たところ Adults' responses to infants varying in facial expression and perceived attractiveness

丸い手

 猫の手もかわいいと感じさせる重要な要素です。骨格だけ見ると鋭い爪のせいもあって恐ろしく感じますが、その上に被毛が乗っかるとまるで赤ちゃんの手のようにまんまるくなりかわいさを醸(かも)し出します。さらに表側にある肉球は、ムチムチの赤ちゃんの手のひらを彷仏(ほうふつ)とさせます。人間と同じ肌色でプニプニ柔らかいというのも大きなポイントでしょう。冬場、ミトンをつけた女性の手をかわいいと感じる理由は、そこにベビースキーマが含まれているからかもしれません。 赤ん坊の手と猫の前足

頭と体

 猫の体は、ベビースキーマの重要な要素である「大きな頭」と「短い手足」を自然に含んでいます。
 人間と猫の骨格を比較したときの大きな違いの一つとして、「猫には鎖骨がない」という点が挙げられます。厳密に言うと、ほんの小さな鎖骨が申し訳程度についているのですが、それでも人間のように肩が顔の両側にせり出すということはありません。その結果、肩幅と頭の幅との間で対比が行われたとき、猫の頭は相対的に大きく見えてしまいます。この骨格が「大きな頭」というベビースキーマを生み出す要因になっています。
 また猫は体が小さく、人間の足元にいることが多いため、どうしても人の顔を見上げるという姿勢が多くなります。その結果、人間の目から見たとき、遠近法によって遠くにある足が小さく見え、頭と体が1:1くらいの割合、つまり二頭身くらいに見えます。これが「短い手足」というベビースキーマを生み出している要因とも言えます。 猫の顔幅と肩幅を示す写真と、上から見たときの二頭身化を示す写真  「大きな頭」と「短い手足」というかわいさの二大要素を生まれつき備えている猫たちは、言うなれば「生まれついてのゆるキャラ」といったところでしょう。またこの観点から考えると、肩幅の広さや背の高さを気に病む女性が少なからずいることもうなづけます。なぜなら、「小さな頭」と「長い手足」は、大人びたカッコよさを作り出すものの、子供っぽいかわいさとは対極にあるものだからです。

行動的ベビースキーマ

 見た目に含まれる子供っぽさを「外見的ベビースキーマ」と言うならば、動作やしぐさに含まれる子供っぽさはさしずめ「行動的ベビースキーマ」とでも言えるでしょう。以下では猫が持つ「行動的ベビースキーマ」について見ていきたいと思います。

しぐさ

 猫の「行動的ベビースキーマ」を示すものとしては、2006年に行われた実験が好例です。この実験では、「子供の外見だけでなく、しぐさや行動といった要素もかわいさの評価に影響を及ぼしているはずだ」という仮定の下、さまざまな観察が行われました。実験の予備段階で、107人の大学生に43個の「子供が持つ代表的なかわいい要素」を評価してもらったところ、強く「かわいい」と感じさせる行動として、以下のようなものが選抜されたといいます。
「かわいい」と思わせる子供の行動
  • 無邪気に驚く
  • 微笑みながら見つめてくる
  • 照れて隠れる
  • よちよち歩く
 上記項目は、人間の子供のみならず、猫たちもよく見せる行動であることがお分かりいただけるでしょう。猫たちは知らず知らずのうちに「行動的ベビースキーマ」を周囲の人間に示し、そのたびごとに「かわいい!」という感情を喚起しているのです。 猫が見せる可愛いしぐさの数々  なお、上記「行動的ベビースキーマ」(かわいいしぐさ)を大人が実践しようとすると、以下のようになるでしょう。これらの行動を自然に出せるようになると、異性の好感度が上がるかもしれません。ただし、実際にやるかどうかは自己責任でお願いいたします。
「かわいいしぐさ」を大人がやると?
  • 無邪気に驚く→大げさにリアクションする
  • 微笑みながら見つめてくる→上目遣いをする
  • 照れて隠れる→恥じらう
  • よちよち歩く→不器用アピールする
Assessing the Cuteness of Children: Significant Factors and Gender Differences

ツンデレな態度

 普段はツンツンしているのに、時と場合によっては急にデレデレするような態度は、よく「ツンデレ」と表現されます。猫が見せる「ツンデレ」な態度の例としては以下のようなものが当てはまり、見る者の「かわいい」という感情を喚起します。
猫の「ツンデレ」いろいろ
  • 猫なで声で人を呼んでおいて、なぜか逃げる
  • ゴロゴロのどをならしていながら、急に噛みついてくる
  • 夜は一緒に寝ていたのに、朝になると一目散に隠れる
 こうした一貫性のないあまのじゃくな態度にかわいさを感じてしまうのは、そこに子供っぽさとリンクした「行動的ベビースキーマ」が含まれているからかもしれません。
 一方、人間の女性の中にも「ツンデレ」、「小悪魔」、「猫系女子」と称される人たちがいます。彼女たちの特徴は、何を考えているのかわからないミステリアスな面を持ち、いつもマイペースで、他人に対して容易に心を開かないという点です。また普段は素っ気ないけれども、特定の状況になると甘えてくるというのも大きな特徴の一つです。ひょっとすると彼女たちは、ニャンコ先生が見せる元祖「ツンデレ」をお手本にしているのかもしれません。
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