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外猫の狩猟捕食行動は野生動物と生態系への脅威

 猫による狩猟行動を「自然な行動」として容認し、放し飼いにしている人がいます。しかしその行為は島だろうと大陸だろうと、郊外だろうと都市部だろうと、小動物の個体数減少や絶滅につながっています。

猫はどのくらい動物を捕食している?

 屋外を放浪する猫はペット猫だろうと野良猫だろうとハンティングをします。鳥やネズミを好むイメージがありますが、狩りの対象となるのはタンパク質を含んだ生物全般で、哺乳類や鳥類だけでなく、両生類、爬虫類、魚類、無脊椎動物(昆虫・軟体生物)などほぼ全ての動物が捕食されることが確認されています。
 猫を放し飼いにしている人の中には「狩猟は猫の自然な行動」「猫のストレス解消」と主張し、その行為が招く結果をまったく考えていない人も少なくありません。以下でご紹介するのは世界各地で行われた猫の捕食行動に関する調査報告です。少しは見方が変わるのではないでしょうか。
ざっくりまとめると
  • 島などの閉鎖された空間では1頭の猫が捕食する獲物の数が増える
  • 比較的ひらけた都市部においても小動物の個体数減少に関わっている
  • 食事を十分に与えられているペット猫でも放し飼いにすると捕食行動を行う
  • 人に対する依存度が低いほど猫の捕食率・捕食数は高まる
  • 鳥類の死因に限ると、人為起源のものより猫の捕食のほうが甚大
  • 捕食率はおおむね暖かい季節に高まる
  • 猫は仕留めた獲物の全てを自宅に持ち帰るわけではない
  • 猫が自宅に持ち帰った獲物の全てを猫が殺したとは限らない
  • 脊椎動物も無脊椎動物も捕食の対象となる

猫の捕食行動・エビデンス集

 以下でご紹介するのは猫の捕食行動に関する調査報告です。出典も添えてありますので気になるデータがあったら原文を当たってみて下さい。

オーストラリア

 オーストラリアは大陸であると同時に非常に大きな孤島という側面も持っています。固有種も多く、猫による生態系への影響が深刻な問題として捉えられている国の一つです。

オーストラリア(1998)

 キャンベラにおいて放し飼いにされている猫の飼い主に協力を仰ぎ、猫が自宅にお土産として持ち帰った動物を1年間に渡ってカウントしてもらいました。
 その結果、持ち帰る動物の数に対して猫の性別、不妊手術を受けた時の年齢、品種、鈴の装着、1日の食事回数は大きな影響を及ぼしていなかったといいます。一方、年齢と夜間に屋外で過ごす日数は獲物のバリエーションに対し11%の影響を及ぼしていました。また猫の家から動物の生息地までの距離と猫の生息密度が外来生物のバリエーションに対し43%の影響を及ぼしていたとも。
 猫が持ち帰るお土産の数に関し、70%は10未満でしたが6%は50以上に達し、年間の平均数は10.2と推計されました。
Predation by house cats, Felis catus (L.), in Canberra, Australia. II. Factors affecting the amount of prey caught and estimates of the impact on wildlife
D.G.Barratt, Wildlife Research 25(5) 475-487, DOI:10.1071/WR97026

オーストラリア(2017)

 オーストラリア野生生物保護区は、屋外を自由に放浪できる猫が1年間でどのくらいの鳥を捕食しているかを推計しました。
 その結果、本土よりも島しょ部における捕食率が10倍ほど高く、また温暖で乾燥した地域で高くなる傾向が確認されたといいます。自然が残る地域では1年間に2億7200万羽が犠牲となり、乾季に続く期間では1億6100万羽、雨季に続く期間では7億5700万羽と大きな振り幅を持っていました。
 人間との接点を持たないノネコによる捕食数は、1平方km当たり年間35.6羽で、そのうち99%は土地の固有種と推定されました。また人の手が加わった地域においても4400万羽の鳥が犠牲となり、放し飼いにされているペット猫によるものは推計6100万羽だったといいます。
 これらのデータを加算し、オーストラリア全土において年間3億7700万羽もの鳥が猫によって捕獲されているとの結論に至りました。
How many birds are killed by cats in Australia?
J.C.Z.Woinarskia, B.P.Murphy, S.M.Legge et al., Biological Conservation Volume 214, October 2017, DOI:10.1016/j.biocon.2017.08.006

オーストラリア(2017)

 オーストラリア野生生物保護区は、屋外を自由に放浪できる猫が1年間でどのくらいの爬虫類を捕食しているかを推計しました。
 その結果、自然が残る地域では、人間との接点を持たないノネコにより1年間で4億6600万匹が捕獲されている計算になったといいます。捕獲数は特に乾燥地域で多く、1平方kmあたりでは年間61匹、ノネコ1頭あたりでは255匹になったとも。
 一方、人の手が加わった地域における捕獲数は、ノネコによるものが年間1億3000万匹、放し飼いにされているペット猫によるものが5300万匹と推計されました。
 これらのデータを加算し、オーストラリア全土において年間6億4900万匹もの爬虫類が猫によって捕獲されているとの結論に至りました。少なくとも258種が捕獲の対象になっており、そのうち11は絶滅危惧種だったとも。
How many reptiles are killed by cats in Australia?
J.C.Z.Woinarskia, B.P.Murphy et al., Wildlife Research 45(3) 247-266 DOI:10.1071/WR17160

アメリカ・カナダ

 アメリカやカナダを含む北米地域でも、猫による捕食が野生生物に対して甚大な影響をもたらしている可能性が示唆されています。一瞬、目を疑うような天文学的な数字が出てきますが、屋外にいる野良猫やノネコの数が膨大なため、それに連動して推計値も大きくなってしまいます。

カナダ(2011)

 カナダの環境・気候変動省は屋外を自由に歩き回ることができる外猫により、いったいどのくらいの鳥類が捕食などの犠牲になっているかを推計しました。
 国内でペットとして飼育されている猫の数を850万頭(屋外にアクセスできる割合40~70%)、人間との接点を持たないノネコの数を140~420万頭とし、過去に行われた捕食行動に関する推定値から犠牲数をシミュレーションしたところ、年間で1億~3.5億羽に達することが明らかになったといいます。このシミュレーションでは、都市部の放し飼い猫による持ち帰りの数が年間0.6~6.7羽、郊外の放し飼い猫によるそれが2.8~14羽、ノネコによる殺傷数が24~64羽と設定されました。
 カナダ南部における鳥類の死因のうち、猫によるものは2~7%を占めており、最低の値をとったとしても人為起源の死亡率のうちで最大であると推計されました。
Estimated number of birds killed by house cats (Felis catus) in Canada.
Blancher, P. 2013. Avian Conservation and Ecology 8(2): 3. http://dx.doi.org/10.5751/ACE-00557-080203

アメリカ(2013)

 「Smithsonian Conservation Biology Institute」の渡り鳥センターはヨーロッパ、オーストラリア、ニュージーランドなどで行われた調査結果を元に、アラスカとハワイを除いたアメリカ全州において、年間どのくらいの動物が猫によって捕食されているかを推計しました。飼い主のいない猫の数を3000~8000万頭と見積もった場合の結果が以下です。
屋外猫による捕食・米国
  • 鳥類→13~40億(中央値24億)
  • 哺乳類→63~223億(中央値123億)
  • 爬虫類→2.28~8.71億(中央値4.78億)
  • 両生類→8600万~3.2億(中央値1.73億)
 鳥類の69%、哺乳類の89%は飼い主のいない野良猫によるものと推計されました。これらの数値は人為起源の死因(車や飛行機などとの衝突、窓や建物への衝突、通信塔との衝突、殺虫剤への暴露 etc)を遥かに上回ったとのこと。
The impact of free-ranging domestic cats on wildlife of the United States
Loss, S., Will, T. & Marra, P., Nat Commun 4, 1396 (2013). https://doi.org/10.1038/ncomms2380

アメリカ(2013)

 ジョージア大学の調査チームは、放し飼いにされている55頭の猫に「KittyCam」というビデオカメラを取り付け、1年間(2010年11月~翌10月)に渡って狩猟行動をモニタリングしました。
 1頭につき7~10日間カメラを装着し、平均38時間の行動データを収集したところ、44%の猫で狩猟行動が見られたといいます。主な獲物は爬虫類、哺乳類、無脊椎動物で、狩りに習熟した猫の場合7日間で平均2.4の獲物をとらえたとも。狩猟の85%は3月~11月までの比較的温暖な季節に集中しており、家に持ち帰った割合は23%、その場に放置された割合は49%、その場で捕食された割合は28%でした。
 自宅に「お土産」として持ち帰る率が全体の1/4程度であることから、これまで飼い主への聞き取りに頼って世界各国で行われてきた猫の捕獲行動に関する調査は、かなり控えめな値なのではないかと推測されています。
Quantifying free-roaming domestic cat predation using animal-borne video cameras
Kerrie Anne T.Loyd, Sonia M.Hernandez, John P.Carroll, Kyler J.Abernathy, Greg J.Marshallc, Biological Conservation, Volume 160, April 2013, Pages 183-189, DOI:10.1016/j.biocon.2013.01.008

アメリカ(2020)

 ノースカロライナ自然科学博物館はアメリカ、オーストラリア、ニュージーランドなど世界6ヶ国に暮らす合計925頭のペット猫にGPSを取り付け、屋外行動をトラッキングしました。
 その結果、頻繁に移動する範囲(ホームレンジ)は3.6ヘクタールほどであることが判明したといいます。75%の猫たちはもっぱら人の手が加わった環境内を移動し、1ヶ月に持ち帰る生物の数は3.5(4.25~11.6)と推計されました。さらにこれを1年あたりに換算すると1ヘクタール14.2~38.9でしたが、野生の捕食動物と比較したところ、単位範囲内における影響は4~10倍に達すると推計されました。
The small home ranges and large local ecological impacts of pet cats
R.Kays, R.R.Dunn, A.W.Parsons et al., Animal Conservation, DOI:10.1111/acv.12563

ヨーロッパ

 ヨーロッパでは放し飼いにされているペット猫の比率が非常に高いため、人間が生態系に対して間接的に影響を及ぼしているという側面を強くもっています。さまざまな法を検証した結果、猫の室内飼育を義務化するのが妥当という意見も出始めています出典資料:A.Trouwborst)

イギリス(2003)

 1997年4月1日から8月31日までの期間、618世帯で飼われている986頭の猫を対象とし、いわゆる「お土産」として自宅に持ち帰った生物がカウントされました。
 その結果、獲物の総数が14,370にも達し、哺乳類69%、鳥類24%、両生類4%、爬虫類1%、魚類1%未満、無脊椎動物1%という内訳だったといいます。また確認された動物種は最低でも哺乳類で20種、鳥類で44種、爬虫類で4種、両生類で3種だったとも。
 上記したデータから平均値を割り出し、英国内で900万頭の猫が飼育されていると仮定した場合、屋外にアクセスできる猫が家に持ち帰った生物の数は、調査期間中(=5ヶ月間)だけでトータル9,200万にのぼると推計されました。推計値は哺乳類5,700万、鳥類2,700万、爬虫類と両生類併せて500万というものです。なおこれらの数値には、人によって飼育されていない野良猫や野猫による捕食行動は含まれていません。
Predation of wildlife by domestic cats Felis catus in Great Britain
Michael Woods, Robbie A. Mcdonald, Stephen Harris, Mammal ReviewVolume 33, Issue 2, DOI:10.1046/j.1365-2907.2003.00017.x

ポーランド(2016)

 ワルシャワ大学の生物科学部が中心となったチームは2002年10月から2007年12月の期間、ポーランド中央部に位置する「田舎エリア」と「都会エリア」合わせて26地域に暮らしている猫の飼い主にお願いし、外を自由に出歩くことができる猫が自宅に持ち帰ってくる「お土産」の数と種類をカウントしてもらいました。
 その結果、「田舎よりも都会において鳥が大きな割合を占める」「季節ごとに小動物の構成が変わる」「田舎と都会とでは獲物の構成が大きく様変わりする」という傾向が確認されてといいます。チームは、猫が生態系に対して大きな影響を及ぼすのは春(鳥類)と秋(げっ歯類)である可能性が高いとの結論に至りました。なおこの調査の詳しい内容は「猫が自宅に持ち帰るお土産の内容は季節によって変わる」にまとめてあります。
Annual variation in prey composition of domestic cats in rural and urban environment
Krauze-Gryz, D., Zmihorski, M. & Gryz, J. Urban Ecosyst (2016). doi:10.1007/s11252-016-0634-1

ポーランド(2019)

 ワルシャワ大学の調査チームはポーランド中心部にある田舎エリアの農場を対象とし、農家で飼育されているいわゆる「納屋猫」による野生動物への影響を検証しました。
 その結果、1つの農家で飼育されている猫の頭数は平均0.84頭で、78.5%が人間の残飯やゴミを与えられていることが判明したといいます。戸別の聞き取り調査を通して見えてきた年間推計値は、農場に持ち帰る動物の数に関し哺乳類が16.4、鳥類3.0。捕食する数に関し哺乳類198.9、鳥類46.3でした。
 この推計値をポーランド全土における農場290万戸(2002年統計)に当てはめた場合、猫が持ち帰る哺乳類の数は年間4,810万、捕食する数は5億8,340万、猫が持ち帰る鳥類の数は890万、捕食する数は1億3,570万に達すると推計されました。なおこの推計値はあくまでも「農場で飼育されている納屋猫」に限ったものであり、一般家庭で放し飼いにされている猫や人間から独立した野良猫は含まれていません。また両生類や爬虫類に対する影響も除外されています。
Cats kill millions of vertebrates in Polish farmland annually
DagnyKrauze-Gryz, Jakub Gryz, Michal Zmihorski, Global Ecology and Conservation Volume 17, January 2019, DOI:10.1016/j.gecco.2018.e00516

イタリア(2019)

 125世帯で飼育されている145頭の猫を対象とし、屋外から自宅に持ち帰る「お土産」の数をカウントしたところ、脊椎動物に限った場合、総数は207種に属する2,042に達したといいます。そのうち34種(16.4%)は国際自然保護連合(IUCN)および「イタリアンレッドリスト」において「準絶滅危惧」(Near Threatened)~「絶滅危惧」(Threatened)に指定されている動物でした。
 さらに21頭に焦点を絞って1年に渡る長期観察を行ったところ、お土産として特に多かったのは哺乳類(40%)と鳥類(35%)で、全体の73%は春から夏に集中、居住地域が田舎から遠ざかるほど獲物の数も減っていったとのこと。なお猫に鈴を付けても獲物の数に変化はなかったそうです。
License to Kill? Domestic Cats Affect a Wide Range of Native Fauna in a Highly Biodiverse Mediterranean Country
Mori E, Menchetti M, Camporesi A, Cavigioli L, Tabarelli de Fatis K and Girardello M (2019), Front. Ecol. Evol. 7:477. DOI: 10.3389/fevo.2019.00477

猫の捕食が招く動物の絶滅

 世界各地で報告されている猫の捕食行動。人と接点を持たないノネコだろうと、人に飼われている放し飼い猫だろうと、その中間に位置するノラネコ(地域猫含む)だろうと、屋外にいる限り獲物をとらえることはもはや否定できない事実のようです。では、猫による捕食は代償性の捕食(=被食動物の死亡率を高めるけれども、個体数を減少させない範囲内の捕食)なのでしょうか?それとも付加性の捕食(=被食動物の死亡率を高めた結果、個体数が減少してしまうような過剰な捕食)なのでしょうか?
 猫の捕食が生態系にもたらす影響に関しては数多くの調査が行われており、ほぼすべてにおいて「付加性の捕食」、すなわちある動物種の個体数を減少させるレベルの捕食であることが示唆されています。以下は一例です。

イギリス(2008)

 レディング大学のチームはブリストルの10地区で調査を行い、猫の飼育密度を1平方km当たり348頭と推計しました。また5つの家庭を対象とした1年に及ぶ長期調査から、およそ40%の猫が鳥の捕食に関わっており、1頭が年間に捕獲する鳥の数は成鳥で1.17、幼鳥で3.07と推計しました。
 この推計値と鳥の繁殖率を比較した結果、前者が上回っていることが少なくなく、放し飼いにされているペット猫が都市部における鳥の個体数減少に関わっている可能性が明らかになりました。
 ただし猫が持ち帰った鳥の体は、窓などへの衝突で死亡した鳥と比較し脂肪や胸筋の付き方が悪かったため、猫が捕食のために殺したのではなく、別の理由で弱っていた個体をただ単に捕獲しただけという可能性も否定できないとしています。
Cats about town: is predation by free‐ranging pet cats Felis catus likely to affect urban bird populations?
Philip J.Baker, Susie E.Molony, Emma Stone, et al., Ibis Volume 150, Issue s1, DOI:10.1111/j.1474-919X.2008.00836.x

フランス(2010)

 エクス=マルセイユ大学の調査チームは世界中に点在する40の島々において行われた猫の捕食に関する70以上の調査報告を参照し、土着の固有種に及ぼす影響を検証しました。
 その結果、猫が獲物として捉えた可能性がある動物は27種の哺乳類、113種の鳥類、34種の爬虫類、3種の両生類、2種の魚類、69種の無脊椎動物に及ぶことが判明したといいます。またそのうち3種の哺乳類、29種の鳥類、3種の爬虫類はIUCNのレッドリストで「絶滅のおそれのある」(絶滅寸前・絶滅危機・危急のいずれか)種として指定されていたとも。
 緯度が高まるほどウサギの捕食率が高まり、爬虫類と無脊椎動物の捕食率が低くなるという関係性が確認されました。また陸塊(広大な土地)からの距離が遠くなるほど鳥類の捕食率が高まり、爬虫類の捕食率が低くなるという関係性も併せて確認されました。島に生息している猫は特に、捕食生物に対する防衛機構が発達していないような固有種に対して大きな影響を及ぼしうると結論づけています。
The diet of feral cats on islands: a review and a call for more studies
E. Bonnaud, F. M. Medina, E. Vidal, M. Nogales, B. Tershy, E. Zavaleta, Biological Invasions volume 13, pages581?603(2011)

スペイン(2011)

 「Island Ecology and Evolution Research Group」を中心としたチームは、120を超える島々で報告されている猫の生態系への影響をメタ分析しました。その結果、島の固有種の中でも特に哺乳類の個体数に対して大きな影響を及ぼしていることが明らかになったといいます。また猫の捕食対象となるような別の外来生物がいる場合に影響が大きくなるとも。
 鳥類、哺乳類、爬虫類をひっくるめると、島に生息する猫たちは少なくとも14%の種の絶滅に関わっており、また絶滅寸前(絶滅危惧IA類)に指定されている鳥類、哺乳類、爬虫類に限定すると、その8%に対して現在進行型で脅威になっているとの結論に至りました。
A global review of the impacts of invasive cats on island endangered vertebrates
Felix M. Medina, Elsa Bonnaud, Eric Vidal, Bernie R. Tershy, Erika S. Zavaleta, Global Change BiologyVolume 17, Issue 11, DOI:10.1111/j.1365-2486.2011.02464.x

イギリス(2012)

 レディング大学の調査チームは、レディング在住の猫の飼い主に協力を仰ぎ、放し飼いにされている猫が自宅に持ち帰る「お土産」の数をカウントしてもらいました。
 その結果、年間に4体以上の小動物を持ち帰る率は20%程度だったといいます。概して、生息している猫の密度が高まるほど捕食率が下がる傾向が見られ、猫1頭に換算した場合、時間と地域によって大きな開きがあったものの、年間に持ち帰る(捕食する)数は18.3体と推計されました。都市部で一般的に見られる鳥類に限定してシミュレーションした場合、猫の捕食によって個体数の減少が起こる危険性が浮上しました。
 一方、猫の飼い主たちは概して猫の捕食を問題とは捉えておらず、捕食を予防する何らかの道具を自主的に使用している割合はわずか24%にとどまりました。なお放し飼いの率は日中だけ許可が2%、夜間だけ許可が27%、そして常時許可が71%という非常に高い数値になっています。
Spatio-Temporal Variation in Predation by Urban Domestic Cats (Felis catus) and the Acceptability of Possible Management Actions in the UK
Thomas RL, Fellowes MDE, Baker PJ (2012) , PLoS ONE 7(11): e49369. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0049369

オーストラリア(2014)

 オーストラリア野生生物保護区は25ヘクタールの土地を4つに分け、2つを猫が出入りしやすい低フェンス区画、残りの2つを猫が出入りできない高フェンスの区画とし、猫による捕食圧を調査しました。
 各敷地の内部にケナガクマネズミ20匹を放ち、18ヶ月間に渡って個体密度をモニタリングしたところ、猫が出入りできないキャットプルーフの区画においては個体数の大きな変動が見られなかったといいます。それに対し猫の頻繁な侵入が確認された区画では、わずか3ヶ月間で根絶状態になったとも。また猫の侵入がさほど頻繁ではなかったもう1つの区画では根絶まで16ヶ月間を要したそうです。
 こうしたシミュレーションから調査チームは、オーストラリア北部における小型哺乳動物の個体数減少には、屋外を自由に放浪できる猫(ノネコ+ノラネコ+放し飼い猫)が少なからず関わっているとの結論に至りました。
Experimental evidence that feral cats cause local extirpation of small mammals in Australia's tropical savannas
Anke S. K. Frank, Chris N.Johnson, Joanne M. Potts, Alaric Fisher et al., Journal of Applied EcologyVolume 51, Issue 6, DOI:10.1111/1365-2664.12323

オーストラリア(2015)

 オーストラリアにおいて過去200年間で絶滅した陸生哺乳動物、および現在絶滅の恐れがある陸生哺乳動物合計138種をピックアップし、いったい何が脅威になっているのかが検証されました。
 その結果、通常は人間による開発や狩猟が主な原因となるはずなのに、オーストラリアでは人間の居住区域から遠く離れた場所で個体数の減少が起こっていたといいます。さらにその原因を追求したところ、侵略外来生物であるイエネコとアカギツネ、および森林火災が主な脅威であることが判明したといいます。
 ネコとキツネに関しては捕食による直接的な影響、森林火災に関しては小型哺乳動物の生息域が火事によって焼け野原となり、捕食動物にとって格好の狩場になってしまうという間接的な影響でした。
The Pattern and Drivers of Terrestrial Mammal Decline Since European Settlement of Australia
John C. Z. Woinarski, Andrew A. Burbidge, Peter L. Harrison, Proceedings of the National Academy of Sciences Apr 2015, 112 (15) 4531-4540; DOI: 10.1073/pnas.1417301112

オーストラリア(2015)

 公園・野生生物局は2つの保護区に生息するフサオネズミカンガルーに無線機を取り付け、個体数の増減に影響を及ぼしている外的な要因が何であるかをモニタリングしました。
 調査の結果、アカギツネの個体数調整が始まった1980年代から罠にかかるカンガルーの数が20倍に増えたものの、2000年に入ってから急に減り始めたといいます。2006年から2009年までの間に98頭の個体が殺され、首輪や遺体に付着したDNAから少なくとも65%において猫が関与していることが判明したとも。この値はキツネ(21%)の3倍でした。アカギツネの減少によって空いた隙間を猫が埋め、新たな捕食動物になっていると推測されています。
Cats (Felis catus) are more abundant and are the dominant predator of woylies (Bettongia penicillata) after sustained fox (Vulpes vulpes) control
Nicola J. Marlow, Neil D. Thomas, Andrew A. E. Williams, et al., Australian Journal of Zoology 63(1) 18-27 https://doi.org/10.1071/ZO14024

オーストラリア(2016)

 ディーキン大学を中心とした調査チームは、過去に報告された千近い論文を精査し、外来捕食哺乳動物が在来種に対してどの程度の影響を及ぼしているかを分析しました。
 在来種を鳥類、哺乳類、爬虫類だけに限定した場合、絶滅種と絶滅危惧種は以下のような内訳になったといいます。
絶滅種142種
  • 鳥類=87
  • 哺乳類=45
  • 爬虫類=10
絶滅危惧種596種
  • 絶滅危惧IA類=156(近絶滅種23種含む)
  • 絶滅危惧IB類=223
  • 絶滅危惧Ⅱ類=217
 上記した合計738種に対する外来哺乳動物の影響を調べた結果、少なくとも以下のような割合で個体数の減少に関わっている可能性が見えてきたといいます。
外来哺乳動物の影響
外来捕食生物によるさまざまな生物種への影響
  • 猫→420種
  • げっ歯類→430種
  • イヌ→156種
  • ブタ→140種
  • マングース→83種
  • アカギツネ→48種
  • オコジョ→30種
 さらに絶滅種に焦点を絞ったところ、げっ歯類が関わった絶滅種は75種(鳥類52+哺乳類21+爬虫類2)、猫が関わった絶滅種は63種(鳥類40+哺乳類21+爬虫類2)に達することが判明したとも。それに対し、アカギツネ、イヌ、ブタ、ジャワマングースが関わっていた動物種の数は9~11種程度でした。
Invasive predators and global biodiversity loss
Tim S. Doherty, Alistair S. Glen, Dale G. Nimmo, Euan G. Ritchie, and Chris R. Dickman, PNAS October 4, 2016 113 (40) 11261-11265, DOI:10.1073/pnas.1602480113
放し飼いにされているペット猫による捕食は人間の責任です。間接的に生態系を破壊してしまわないよう、室内飼育を徹底しましょう。猫を放し飼いにしてはいけない理由