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猫が草を食べる理由は?~消化管内の寄生虫を体外に出す説が有力

 猫の前に草を出すと、多くの場合目をランランと輝かせて食いついてきます。完全肉食動物のはずなのに、猫はなぜ草を食べるのでしょうか?

どのくらいの猫が草を食べる?

 調査を行ったのはカリフォルニア大学デービス校獣医学校のチーム。メインオーサーは著名な動物学者であるベンジャミン・L・ハート博士です。インターネットを介して猫の飼い主たちに20分ほどで完了できるアンケートを行い、猫が見せる植物食行動の頻度や理由に関する統計調査を行いました。 猫で頻繁に見られる植物食(草食べ)行動  調査対象となったのは少なくとも猫を11ヶ月以上飼育しており、1日3時間以上猫の行動を観察できる生活環境にある飼い主たち。逆に「猫の外出時間が長すぎて摂食行動をモニタリングできない」とか「室内飼いだけれども家の中に食用植物を置いていない」という家庭は除外されました。

調査1

 最初の調査は2006年に行われました。調査目的を知らせない状態で猫の飼い主全般に働きかけてアンケートへの協力を求めた結果、最終的に2,245件の回答が寄せられました。すべての人がすべての質問に答えたわけではないため、実際の有効回答数は項目ごとに1,872~2,036の間で変動しています。主な結果は以下です。 最低週に1回は植物を食べる猫の割合(2006年) 植物を食べる前に体調不良の兆候を見せる猫の割合(2006年) 植物を食べた直後に嘔吐する猫の割合(2006年) 植物の中でももっぱら草を食べる猫の割合(2006年)

調査2

 2回目の調査は2016年に行われました。調査目的を知らせない状態で猫の飼い主全般に働きかけてアンケートへの協力を求めた結果、最終的に2,296件の回答が寄せられました。しかし除外基準で絞り込んだ末、有効回答は1,021件にまで目減りしました。主な結果は以下です。 植物を食べる猫の割合と頻度(2016年)
  • 1=10回以上食べるのを見た
  • 2=6回以上食べるのを見た
  • 3=食べるのを見たことがない
  • 4=食べる前は具合が悪そう
  • 5=食べた直後に吐く
被毛の長さが猫の草食べ行動に及ぼす影響(2016年) Characteristics of Plant Eating in Domestic Cats
Hart, B.L.; Hart, L.A.; Thigpen, A.P.; Willits, N.H., Animals 2021 11 1853, DOI:10.3390/ani11071853

猫はなぜ草を食べるのか?

 10年の時を隔てて行われた2つのアンケート調査を通じ、猫の草食べ行動に関する興味深い事実が浮かび上がってきました。

具合が悪い時に食べる?

 どちらの調査においても「草を食べる前、猫の調子が悪そう」と回答した飼い主の割合は1割未満でした。この事実から考えると「体調不良がある時に草を始めとした植物を食べようとする」という仮説はあまり支持されないでしょう。

吐くために食べる?

 2006年の調査では、1歳以上の猫たちのうち69.4%(1,421/2,048)では嘔吐物の中に食べた植物の痕跡が見られたといいます。また3歳以上の猫たちに限定すると、少なくとも3割超(36~57%)が食べた後に吐くことが明らかになりました。さらに2016年の調査でも、全体の27%が植物を食べた直後に吐くことが確認されています。猫にとって繊維質に富む植物は、嘔吐を促す催吐剤として機能している可能性が伺えます。

毛の排出を促す?

 2016年の調査では猫の被毛の長さが草食べ行動に及ぼす影響が検証されました。お腹に溜まった被毛を効率的に吐き出すために猫が植物を食べているのだとすると、短毛種よりも長毛種の方が頻繁に植物を食べるはずですが、意外なことに短毛種と長毛種を比較しても、毛が短いシャムとシャムの長毛バージョンであるバーミーズを比較しても、植物を食べる頻度に格差は見られませんでした。
 こうした事実から「胃の中に十分量の毛が溜まったタイミングで草を食べようとする」という仮説にはそれほど信憑性がないということになります。

寄生虫を体外に出す?

 2006年に行われた調査では、高齢猫よりも若い猫の方が頻繁に植物を食べるという格差が確認されました。また2016年に行われた調査でも、3歳以上の猫のうち植物を毎日食べると回答した割合が27%だったのに対し、3歳未満のそれが39%という歴然とした差が見られました。
 年齢と草を食べる行動との間で見られた負の相関関係に関し調査チームは、繊維性の植物を体内に取り込むことで消化管内に生息している寄生虫を絡め取り、体外に排出しているのではないかと推測しています。例えば胃に生息しているものは嘔吐物とともに、十二指腸以下に生息しているものは便とともに排出するなどです。実際、野生動物の食事内容に関する9つの調査では、オオカミやジャコウネコが食べた草やスゲ属に寄生虫が絡まっていたとの報告もあります。
 年齢が若い子猫たちは体が小さく、少量の寄生虫でも重大な健康被害が出てしまいます。子猫において草を食べる頻度が高い理由は、寄生虫が宿主に悪さをする前の段階でなるべく量を減らそうとしているからではないかとのこと。

室内の植物に注意!

 2006年に行われた調査では、頻繁に植物を食べると評価された1歳以上の猫たちのうち34.4%(704/2048)は便の中、69.4%(1,421/2,048)は嘔吐物の中に食べた植物の痕跡が見られたといいます。また野生の肉食動物の便を対象とした352の調査を網羅的に解析したレビューでは、124種の肉食動物が繊維質を含む植物を食べており、ネコ科動物であれイヌ科動物であれ植物を食べることは普通であると報告されています。 猫に限らずネコ科動物は普通に草を食べる  こうしたデータから総合すると猫にとって植物を食べる行動は本能に刻まれた普通の行動であるというのが真実に近いのかもしれません。理由として最も有力なのは、寄生虫が消化管内で過剰に増殖する前に繊維と絡めて体外に排出(嘔吐 or 排便)することです。
完全肉食というイメージとは裏腹に植物を食べることも猫が持つ食習慣の一部です。ユリの花を始め、毒性植物を室内に置かないよう注意しましょう。与える際は安全な猫草だけにしてください。猫のユリ中毒~原因・症状から治療・予防法まで 猫草の種類と栽培方法