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子猫の正常な成長曲線・去勢避妊手術をしていない場合

 WHOが公開している子供の標準的な成長曲線と同じものは、猫にもあるのでしょうか?暫定版ではあるものの、3千頭を超える猫たちのデータから不妊手術を受けていない短毛種(非純血種)におけるそれが発表されました。

未手術子猫の成長曲線

 調査を行ったのはペットフードメーカー「Waltham Petcare Science Institute」のチーム。不妊手術を施していない普通の短毛種(純血種でないの意)における標準的な成長曲線を明確化するため、2つの異なる母集団を対象とした統計調査を行いました。
 まず調査対象となったのは1994年7月から2016年11月までの期間、北米を中心に900超の一次診療医院を展開するBanfield®Pet Hospitalを受診した子猫たち(2004年以降が3/4を占める)。一般家庭で飼育されている短毛種(非純血種)であること、やせすぎでも太り過ぎでもない普通体型であること、体重に影響を及ぼす医学上の問題を抱えていないこと、不妊手術を受けていないことを条件に絞り込みを行い、最終的にオス3,103頭、メス3,987頭の体重データを経時的に解析しました。
 その結果、生後8週齢をスタートラインとし78週齢をゴールとした以下のような成長曲線が得られたといいます。グラフ中「%」はパーセンタイルのことで、「50%」と記載されている赤い曲線が母集団のちょうど中央(≒標準的)という位置づけになります。なお不妊手術を行った時点で解析対象から除外されましたので、時間が経過すればするほど母集団は小さくなっています。 未去勢オス猫の標準的成長曲線(8~78週齢) 未避妊メス猫の標準的成長曲線(8~78週齢)

子猫の肥満とやせの目安は?

 次に調査チームは英国にあるウォルサムの研究施設内で飼育されていたラボ猫たち(未手術の短毛種)を対象とした経時的な体重観測を行いました。
 こちらの調査では標準体重の他「肥満・太り過ぎ」および「やせ」という体型区分も合わせて解析対象となりました。具体的には肥満オスが7,943頭、やせオスが175頭、肥満メスが6,060頭、やせメスが255頭という内訳です。
 体型ごとに得られた成長曲線と、米国で得られた標準的な成長曲線とを重ねてみたところ、以下のような特徴が見られたといいます。標準曲線(グレー)より上にある赤い曲線が「肥満」、下にある青い曲線が「やせ」です。 肥満およびやせ体型の未去勢オス猫における成長曲線 肥満およびやせ体型の未避妊メス猫における成長曲線  なお標準体型の猫を重ねたところ、以下のグラフが示すようにオスでもメスでも米国より英国の猫の方が重いことが明らかになりました。 英国と米国における普通体型の未去勢子猫(オス)の標準的な成長曲線比較グラフ 英国と米国における普通体型の未避妊子猫(メス)の標準的な成長曲線比較グラフ  この乖離に関し調査チームは、生活環境、気候のほか、研究所内では健全な個体が何世代にも渡って繁殖されてきたため快食快便バイアスがかかり、いつの間にか体が大きくなってしまったのではないかと推測しています。
Growth standard charts for monitoring bodyweight in intact domestic shorthair kittens from the USA
Salt C, German AJ, Henzel KS, Butterwick RF (2022). PLoS ONE 17(11): e0277531. , DOI:10.1371/journal.pone.0277531
生後間もない子猫を拾ったときや、子猫の里親になった時に役立ちそうですね。不妊手術を施した子猫の成長曲線はこちらにまとめてあります。また育て方に関しては以下のページをご参照ください。子猫の育て方・準備編子猫の育て方・基本編子猫の育て方・実践編