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カツオ~安全性と危険性から適正量まで

 キャットフードのラベルに記された「カツオ」。この原料の成分から安全性と危険性までを詳しく解説します。そもそも猫に与えて大丈夫なのでしょうか?また何のために含まれ、猫の健康にどのような作用があるのでしょうか?

カツオの成分

 カツオ(bonito)はスズキ目サバ科に属する魚の一種。体長は40cm~1m、体重は18~20kg程度です。紛らわしい魚としてソウダガツオやハガツオがいますが、これらは名前に「カツオ」が入っているものの厳密な意味でカツオではありません。混乱を避けるため、正真正銘のカツオを「本ガツオ」と呼び分けることもあります。キャットフードのラベルに「カツオ」と記載されている場合、それが本ガツオなのか偽ガツオなのかは、各フードメーカに問い合わせて確認する必要があるでしょう。
 一般的なラベル表記例は以下です。「ミール」や「パウダー」は素材となる魚をまるごと砕いて粉状にしたもののことです。
かつお系統
  • かつお
  • かつおパウダー
  • かつおミール
  • かつお節
  • かつお節パウダー
キャットフードの成分として用いられる「カツオ」  「本ガツオ」はお刺身、たたき、かつお節といった形で食されます。しかしキャットフードに含まれるカツオはこうした美味しい部分ではなく、多くの場合人間向けの食用部分を取り除いた後の不要物です。例えば缶詰の製造工程で出る、骨の周りに付着した血合肉(ちあいにく)などが用いられます。

カツオは安全?危険?

 カツオを猫に与えても大丈夫なのでしょうか?もし大丈夫だとするとどのくらいの量が適切なのでしょうか?以下でご紹介するのはカツオに関して報告されている安全性もしくは危険性に関する情報です。

ベンゾ[a]ピレン

 かつお節の中にはベンゾ[a]ピレンと呼ばれる発ガン性物質が含まれています。さまざまなデータを元に検証すると、よほど大量にどか食いしない限り健康への悪影響はないと推測されるものの、猫に対しては与えないほうが安全だと考えられます。
 ベンゾ[a]ピレンは炭素を含む有機物質が不完全燃焼する過程で生成される多環芳香族炭化水素(PAHs)の一種。国際がん研究機関(IARC)の発がん性分類リストによってグループ1、すなわち「ヒトに対する発癌性が認められる」物質として分類されています。
 具体的な含有食品はウィスキー、コーヒー、茶やオリーブオイルやココナッツオイルなどで、特にかつお節は製造過程で用いられる燻煙や、原料であるかつお自身に含まれる油脂の燃焼煙に多環芳香族炭化水素(PAHs)が多く含まれており、大量摂取によって発がんリスクが高まると考えられています。欧州、カナダ、中国、韓国などではかつお節に含まれる「ベンゾ[a]ピレン」の食品中における許容最大基準値が設定されており、日本産のかつお節をヨーロッパに輸出できない理由も、こうした健康上の懸念があるからです。かつお節の製造工程で行われる焙乾  JECFA(食品添加物専門家会議)が設定しているベンゾ[a]ピレンのベンチマーク用量信頼下限値(BMDL=有害影響が現れ始める濃度)は、体重1kg当たり「1日100,000ng」です。かつお節1kgに含まれるベンゾ[a]ピレンの濃度は19,000~27,000ngと推計されていますので、理論上は15~21kgという莫大な量を食べない限り影響は出ないはずです。最も含有濃度が高い「削り粉」(120,000ng/kg)だったとしても、3kg近くひたすら食べ続ける必要があります。
 一見無害に思えますが、実は発生したベンゾ[a]ピレンの代謝産物を無毒化して体外に放出するための「グルクロン酸抱合」と「グルタチオン抱合」が、猫では他の動物に比べて極めて弱いという特徴があります。猫に対するベンゾ[a]ピレンの発がん性がよくわかっておらず、またかつお節を通してしか摂取できない栄養成分は含まれていませんので、食材リストから削るに越したことはないでしょう。かつお節の安全性(危険性)に関する詳しい情報は以下のページで詳しくまとめてありますのでご参照ください。 猫にかつお節を与え続けるとがんを発症するというのは本当か?

かつお節オリゴペプチド

 かつお節オリゴペプチドとはアミノ酸複合体の一種です。かつお節に含まれるペプチド結合が、テルモリシンと呼ばれる物質の作用で加水分解さて形成されます。また日本では「かつお節オリゴペプチド」を関与成分とし、「血圧が高めの方に適した食品です」というトクホ表示が許可されています。
キャットフードにかつお節オリゴペプチドが含まれていることはないでしょうが、実は人間を対象とした調査でも明白な健康増進効果は確認されていません。「毒でも薬でもない」と言ったところでしょう。