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セルロース~安全性と危険性から適正量まで

 キャットフードのラベルに記された「セルロース」。この原料の成分から安全性と危険性までを詳しく解説します。そもそも猫に与えて大丈夫なのでしょうか?また何のために含まれ、猫の健康にどのような作用があるのでしょうか?

セルロースの成分

 セルロース(cellulose)は植物細胞の細胞壁を構成している炭水化物の一種。β-グルコース分子がグリコシド結合により直鎖状に重合した構造をしています。糖質と食物繊維からなる炭水化物のうち、生体内で消化されないことから後者の「食物繊維」の方に分類されます。化学構造式は以下です。 キャットフードの成分として用いられる「セルロース」  日本では厚生労働省によって数種類の「メチルセルロース」が指定添加物として認可されており、「糊料」として利用されています。使用基準は2%までです。また同時に「微結晶セルロース」が既存添加物として認可されており、増粘安定剤や製造用剤として利用されています。こちらの使用基準は特に設定されていません。
 海外ではJECFA(FAO/WHO合同食品添加物専門家会議)でもEFSA(欧州食品安全機関)でも一日摂取許容量(ADI)や使用基準は設定されておらず、国際がん研究機関(IARC)によって発がん性も確認されていません。

セルロースは安全?危険?

 セルロースを猫に与えても大丈夫なのでしょうか?もし大丈夫だとするとどのくらいの量が適切なのでしょうか?以下でご紹介するのはセルロースに関して報告されている安全性もしくは危険性に関する情報です。

毛球症予防?

 セルロースには猫の毛球症(ヘアボール)を予防する効果があるかもしれません。
 24頭の猫を12頭ずつランダムで2つのグループに分け、一方には重量中4%のセルロース(平均繊維長200μm/直径20μm)を含んだフード、他方には重量中1.8%の粗繊維を含んだフードを28日間給餌しました出典資料:Beynen, 2011。その結果、セルロース含有フードは嘔吐の回数を79%、えづきの回数を91%、咳込みの回数を70%減少させ、比較対照フードとの格差は統計的に有意とみなされたといいます。

腸内細菌の発酵を受けない

 セルロースは動物の体内で消化されない食物繊維の一種ですが、腸内細菌叢の発酵を受けるわけでもないようです。
 猫の糞便を採取して実験室内に腸内環境を再現し、食物繊維が持つ発酵性を有機物消失率(OMD)と呼ばれる指標を用いて調べました。その結果、ビートパルプのOMDが35~42%だったのに対し、セルロースのそれは0~1%止まりだったと言います。
 また猫に実際に給餌した時の発酵性を全消化管消化率という指標を用いて調べたところ、ビートパルプでは38%だったのに対し、セルロースでは9%だったとも出典資料:Godoy, 2013
 これらのデータが示しているのは、セルロースが腸内細菌による発酵作用をほとんど受けないということです。腸内細菌の数を増やしたり細菌の代謝産物である短鎖脂肪酸の量を増やしたりするのではなく、糞便の水分含有量を増やして便通を良くする効果が強いと考えられています。

満腹感を促す

 キャットフードにセルロースを添加してボリュームを高めると、猫は「お腹いっぱい」と誤解してくれるようです。
 6頭の猫を対象とし、セルロースを様々な濃度で含んだフードを給餌して摂食量や接触エネルギーがどのように変化するかが検証されました(Prola, 2006)
 食物繊維を添加しないフードからスタートし、セルロースの含有比率を2%→4%→6%と高めていったところ、摂食量および摂取エネルギーに以下のような変化が見られたときます。
セルロースと摂食量の変化
キャットフードの中のセルロース含有比率を高めても摂取量自体は増えない
セルロースと摂取熱量の変化
キャットフードの中のセルロース含有比率を高めると摂取エネルギー量が総体的に減る  セルロースの含有比率が6%に高まったにも関わらず食べる量に関してはそれほど増えませんでした(15.5≒16.5g/kg)。それに対し体重1kg あたりの摂取エネルギーは統計的に有意なレベルで減少しました(0.27>0.19MJ/kg)。
 こうした結果から調査チームは、体内で消化吸収されないセルロースを添加することにより猫の満腹感に影響を及ぼし摂取エネルギーを減らす効果を得られるかもしれないと結論づけています。
セルロースは減量やダイエットを目的とした療法食などに添加されています。狙いは食物繊維で胃袋を拡張し、十分なエネルギーを摂取していなくても「もうおなかいっぱい」と誤解させることです。