トップ猫の栄養と食事キャットフード成分・大辞典糟糠類サイリウム

サイリウム~安全性と危険性から適正量まで

 キャットフードのラベルに記された「サイリウム」。この原料の成分から安全性と危険性までを詳しく解説します。そもそも猫に与えて大丈夫なのでしょうか?また何のために含まれ、猫の健康にどのような作用があるのでしょうか?

サイリウムの成分

 サイリウム(psyllium)はオオバコ科オオバコ属(プランタゴ)の種子の皮のことです。吸水することで数十倍に膨張することから主に食物繊維源として用いられます。 キャットフードの成分として用いられる「サイリウム」  種類にはインド原産のブロンドサイリウム(ホワイトとも)や地中海地方原産のブラックサイリウム(フレンチやスパニッシュとも) がありますが、特定保健用食品として許可されているのはブロンドサイリウムの方です。表現としては「血清コレステロールを低下させるよう工夫している」「コレステロールが高めで気になる方」「おなかの調子を整える」などが許可されています。

サイリウムは安全?危険?

 サイリウムを猫に与えても大丈夫なのでしょうか?もし大丈夫だとするとどのくらいの量が適切なのでしょうか?以下でご紹介するのはサイリウムに関して報告されている安全性もしくは危険性に関する情報です。

アラビノキシラン

 アラビノキシラン(Arabino xylan)は植物に含まれるヘミセルロースの一種。サイリウムにおける主要な食物繊維源で、水分を吸着する作用を有しています。
 消化管内で水分を吸収することにより、便の水分含有量が増え、結果として便秘の改善につながると考えられています。また消化管内に過剰な成分がある場合は、余分な水分を吸着することによって下痢の予防に役立っていると考えられています。
 その一方、十分な水分を取らない状態であまりにも大量のサイリウムを摂取すると、喉に詰まったり、胃拡張、胃石、腸内ガスの過剰生成が引き起こされる危険性が示されています。

サイリウムシードガム

 サイリウムシードガムはブロンドサイリウム(Plantago ovata Forsskal)の種皮から得られた、多糖類を主成分とするもの。「サイリウムハスク」とも呼ばれます。日本では厚生労働省によって既存添加物の増粘安定剤として認可されています。
 1990年、米国内においてサイリウムを含む下剤を取り扱ってきた看護婦が、サイリウム種皮を含む食品を摂取したことによりアナフィラキシーショックを起こしたという症例報告がなされたことから、アレルギー反応を引き起こす危険性が示されました。一方、1991年に行われた調査では、高度に精製されたサイリウムの場合、体内の抗体とアレルゲンとの間で結合が起こらないとの結果が示されています。
 こうした知見から厚生労働省の内部部局である生活衛生局は、サイリウム製品を使用する場合は高度に精製されたものを選ぶこと、および必要に応じてアレルギーの危険性を周知するよう呼びかけています出典資料:生活衛生局

毛球症予防?

 サイリウムハスクには長毛種の毛球症(ヘアボール)を予防する効果があるかもしれません。
 短毛種と長毛種の猫を対象とし、サイリウムハスクを6%、11%、15%の割合で含んだキャットフードを用いた給餌試験が行われました出典資料:Weber, 2015。その結果、短毛種においては糞便中の被毛量に変化は見られなかったのに対し、長毛種においては含有比率11%のときが181%、15%のときが213%に増加したと言います。こうした結果から調査チームは、フードに含まれるサイリウムは、猫が飲み込んでしまった被毛をスムーズに糞便中に排出する効果があり、ヘアボール(毛球症)の予防に寄与する可能性があると結論付けています。ただし効果は長毛種限定です。
 別の調査では、1週間で複数回の嘔吐、えづき、咳込みが見られる猫24頭(年齢中央値8.7歳/長毛種67%)を対象とし、ヘアボール軽減おやつとプラセボおやつを用意し、飼い主にどちらかがわからないようにデザインした上で2週間ずつ(1粒2gのおやつを1日2回)給餌してもらいました出典資料:Dann, 2004。ヘアボール軽減おやつに含まれている主成分はサイリウムハスクとアカニレ(スリッパリーエルム)です。その結果、ヘアボールおやつを与えられていた期間における嘔吐、えづき、咳込みの回数がトータルで29%減少したと言います。

便秘の改善?

 サイリウムハスクやサイリウムの種子ごと粉にしたものを含んだキャットフードは、便秘の改善に役立ってくれる可能性があります。
 24時間以上排便をしないとか、便が異常に硬いといった便秘症状を示した猫を対象とし、サイリウムを含んだフードが症状の緩和に役立つかどうかが調査されました出典資料:Freiche, 2011
 フランスで行われた第1の調査では15頭の猫が参加し、便秘用の特別療法食(総繊維11.5%/粗繊維2.9%)を2ヶ月間に渡って食べ続けた段階での改善率は93%(14頭)でした。またカナダで行われた第2の調査では、複数の動物病院で合計55頭の猫が参加し、便秘用の特別療法食(総繊維11.3%/粗繊維2.7%)を2ヶ月間に渡って食べ続けた段階での改善率は82%(42頭) でした。
 食物繊維源としてサイリウムを含む療法食の嗜好性は良好で、ほとんど全ての猫が忌避することなく口をつけました。 こうした結果から調査チームは、比較対象群を設けていないという実験上の欠点はあるものの、サイリウムは猫の便秘改善に役立ってくれるかもしれないという予備的な結論に至りました。
想定されているメカニズムは、サイリウムが水分を吸着して糞便の水分含量が増えたとか、サイリウムが腸内細菌叢を刺激して短鎖脂肪酸の生成量が増えたなどです。ちなみにサイリウムの吸水力を利用した猫砂もあります。