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ごま油~安全性と危険性から適正量まで

 キャットフードのラベルに記された「ごま油」。この原料の成分から安全性と危険性までを詳しく解説します。そもそも猫に与えて大丈夫なのでしょうか?また何のために含まれ、猫の健康にどのような作用があるのでしょうか?

ごま油の成分

 ごま油(sesame oil)はごまの種子から作られる食用油の一種。高温で焙煎したごまの種子を圧搾して採取されます。 キャットフードの成分として用いられる「ごま油」  飽和脂肪酸(パルミチン酸やステアリン酸)はおよそ15%、残りはほぼ不飽和脂肪酸で、オレイン酸が40%、リノール酸が44%程度です。その他、微量成分としてビタミンA、B、E、カルシウム塩などを含んでいます。
ごま油ができるまで
 以下でご紹介するのは、ごま油の製造工程を収めた動画です。ごま油にとうがらしで辛味をつけると「ラー油」になります。 元動画は→こちら

ごま油は安全?危険?

 ごま油を猫に与えても大丈夫なのでしょうか?もし大丈夫だとするとどのくらいの量が適切なのでしょうか?以下でご紹介するのはごま油に関して報告されている安全性もしくは危険性に関する情報です。

ごまリグナン

 ごまリグナンは植物エストロゲンの一種。代表的なものには「セサミン」「セサモリン」「セサミノール」「セサモール」などがあります。
 一番有名なセサミンに関して言うと、ごまの種子中に0.67~6.35mg/g、ごま油中に約1%程度含まれるとされています。
 動物を対象とした調査では、セサミンやセサミノールにラジカル消去、脂質過酸化抑制、ビタミンE低下軽減、LDLおよびDHAの酸化抑制作用があるとされています。またセサミンにはコレステロールの吸収抑制、胆汁中への排泄促進、合成抑制作用があるとも。一方、人間を対象とした調査では結果のばらつきが大きく、今ひとつ効果がはっきりしていません。

ごま油不けん化物

 ごま油不けん化物は、ごまの種子から得られたセサモリンを主成分とするもの。日本では厚生労働省によって既存添加物の「酸化防止剤」として認可されています。

ごまペプチド

 ごまペプチドは、ごま由来のタンパク質を酵素で分解して得られるタンパク分解物。
 血管を収縮させる働きを持った「アンジオテンシンII」の生成に関わる酵素(ACE)を阻害することにより、間接的に血圧の上昇を抑えるとされています。
 日本国内で流通している特定保健用食品の中には、ごま蛋白質分解物(ごまペプチド含有)を関与成分とし「血圧が高めの方に適する」という保健用途の表示が許可されているものがあります。

リノール酸

 リノール酸(linoleic acid)はオメガ6脂肪酸に属する多価不飽和脂肪酸の一種。ごま油中には44%程度含まれています。
 動物はパルミチン酸までの脂肪酸を合成できるものの、他の系列に属する脂肪酸(ステアリン酸やオレイン酸など)からリノール酸やαリノレン酸を合成できません。ですから食餌として摂取する必要のある必須脂肪酸に位置づけられています。
 AAFCO(米国飼料検査官協会)が2014年に公表した基準では、フード100kcal中の最少栄養要求量が140mgとされています。成長期や妊娠・授乳期にある猫でも同様に140mgです。 猫に必要なアミノ酸・脂肪酸一覧

オレイン酸

 オレイン酸(oleic acid)はラード(豚脂)やタロー(牛脂)などの動物性脂肪やオリーブオイルを始めとする植物油に多く含まれている脂肪酸の一種。必須脂肪酸であるリノール酸やα-リノレン酸の前駆物質です。ごま油中には40%程度含まれています
 一般的に「悪玉コレステロール」と称されるLDLコレステロールを減らし、逆に「善玉コレステロール」と称されるHDLコレステロールを増やす効果があるとされていますが、完全には証明されていません。またオリーブオイルが持つ降圧作用の原因物質として想定されていますが、こちらも証明はされていません。
オレイン酸を皮膚に直接塗りつけた場合、表面にある角質層の脂質構造が崩れ、バリア機能が弱まる危険性が指摘されています。