トップ猫の文化猫の浮世絵美術館国芳以外の浮世絵師猫三びきの唄

猫三びきの唄

 猫の登場する江戸時代の浮世絵作品のうち、猫三びきの唄について写真付きで解説します。

作品の基本情報

  • 作品名猫三びきの唄
  • 制作年代1849年(江戸・嘉永2)
  • 作者歌川芳藤
  • 板元未詳
猫三びきの唄のサムネイル写真

作品解説

 「猫三びきの唄」(ねこさんびきのうた)は、「狐拳」(きつねけん)と呼ばれる当時流行したじゃんけん遊びをモチーフとした歌川芳藤(うたがわよしふじ)の作品です。「狐拳」は猟師と庄屋(しょうや=江戸時代の町役人の一種)とキツネからなり、猟師は庄屋に頭が上がらず(猟師は庄屋に負け)、庄屋はキツネに化かされ(庄屋はキツネに負け)、キツネは猟師に撃たれる(キツネは猟師に負け)という関係性がじゃんけんに取り入れられています。それぞれの身振りは以下。
「狐拳」の身振り
  • 庄屋正座した膝の上に手を添える
  • 猟師両手で握り拳を作り、前後をずらして胸の前に構える
  • キツネ手のひらを頭の上に相手に向けて添え、狐の耳を作る
 さて、この知識を踏まえて絵を見てみると、半裸の男性が庄屋、猫がキツネ、カエルが猟師であり、三者とも三すくみの状態にあることが分かります。なお、「狐拳」に関しては歌川国芳(うたがわくによし)も「猫のけん」といううちわ絵で扱っています(写真下参照~左が猟師・右がキツネ・中央が庄屋)
歌川国芳「猫のけん」
歌川国芳「猫のけん」
 三すくみの上部には文字と小さな絵が並んでいますが、これは狐拳をするときの伴奏唄のようなもので、小さな絵は唄うときの振り付けのようです。今で言うと野球拳の前奏のようなものでしょうか?振り付けとともに書かれた文章の後半は ゆんべよばいしてねこ三疋ふみころしたぢやないかこをてもどしやれ
みけねこぶちねこ白ねこ おまけにどら猫
と読めます。どうやら半裸の男性は夜中に猫を誤って踏み殺してしまった犯人のようです。一方猫は殺された猫3匹(三毛猫・ブチ猫・白猫)の代表でしょうか。また文章の前半には おけらけむしげじありぼをふら せみかにかハずくつハはめくぢ
かまきりきりぎりすニとんぼ ほたるにてうてう
とあり、「ケラ・毛虫・ゲジ・アリ・ぼうふら・セミ・カニ・カエル・クツワムシ・ナメクジ・カマキリ・キリギリス・トンボ・ホタル・チョウチョ」と小動物を羅列しています。右下にいるカエルの着物にはこれらの生き物が模様として描かれていることから、カエル(かわず)は動物たちの代表なのかもしれません。