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猫マッサージの実践

 猫にマッサージを施す際の具体的なテクニックについて解説します。部位によって適したテクニックと不適切なテクニックがありますので、それぞれの特徴を事前に抑えておきましょう。

基本テクニック

 以下でご紹介するのは、マッサージの基本テクニックです。むやみやたらに触るよりも、一定のルールやリズムがあった方が、猫は安心してくれます。なお、アロマオイルは用いないで下さい。少数ながら中毒にかかったという症例があります。 Complete Dog Massage Manual
基本手技
  • パッシブタッチ 「パッシブタッチ」(Passive Touch)とは、手の平を乗せたまま静止させるテクニックのことです。手の平の温度が、30~90秒かけて猫の皮膚の表面に伝わる様子をイメージしながら行います。触られることに慣れていない猫の場合、まずこのパッシブタッチから行うことをお勧めします。
  • エフララージ 「エフララージ」(Effleurage)とは、体の表面に手の平を密着させ、軽く圧を掛けながらゆっくりと毛並みに沿って動かすテクニックのことです。いわゆる「なでる」に近い動きと言えるでしょう。強く押し付けたり、シャカシャカと激しく動かすことは避けるようにします。
  • ジェントルニーディング 「ジェントルニーディング」(Gengle Kneading)とは、皮膚の表面を一方向にずらしてからリリースするテクニックのことです。ちょうどパン生地をこねる(knead)動きに近いことからこの名が付いています。皮膚の「遊び」が大きい頬や首、背中などに用います。
  • ジェントルリンギング 「ジェントルリンギング」(Gentle Wringing)とは、左右の手を用いて、お互いに対向する力を加えるテクニックのことです。皮膚の「遊び」が大きい頬や首、背中などに用います。
  • スキンローリング 「スキンローリング」(Skin Rolling)とは、皮膚を指先でつまみ上げてからリリースするテクニックのことです。人間の体で言うと、肘の皮を指先でつまんでグイッと引っ張った状態に似ています。皮膚の「遊び」が大きい頬や首、背中などに用います。
  • プラッキング 「プラッキング」(Plucking)とは、指先で被毛をつまみ、そのままゆっくりと引き上げるテクニックのことです。人間の体で言うと、髪の毛を指先でつまんで引っ張り上げた状態に似ています。適切な力で行えば、皮膚の血行を促すと同時に、非常に心地よい感覚を生み出します。
  • パッシブムーブメント 「パッシブムーブメント」(Passive Movement)とは、脱力した猫の前足や後足を、施術者の力で動かしてあげるテクニックのことです。うまくいけば、猫が自発的に行うストレッチ体操を、人間の手で行うことができます。しかし、猫は体をなかなか委(ゆだ)ねてくれない動物ですので、犬に比べるとかなり難しいテクニックと言えるでしょう。
  • テイポットメント 「テイポットメント」(Tapotement)とは、リズミカルにポンポンと叩くテクニックのことです。人間の体で言うと、「肩たたき」に近い動きと言えます。しっぽの付け根辺りに行うと、無上の喜びを感じる猫がいます。
  • アキュプレッシャー 「アキュプレッシャー」(Acupressure)とは、指先で皮膚の深部に圧力を加えることです。人間の体で言うと、ちょうど「指圧」に相当し、東洋医学でいう「ツボ」と組み合わせて用いることもあります。
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猫の顔マッサージ

 施術者がマッサージを行う上で、事前に抑えておきたい猫の顔周辺における特性は以下です。
猫の顔周辺のポイント
  • 顔の触覚の処理 皮膚で受容された刺激は、神経を通じて脳内に入り、そこで処理されます。しかし、脳内における触覚情報の処理領域には、部位によって大きな開きがあります。下の図で示したとおり、顔の触覚を処理する領域が非常に広いことがお分かりいただけるでしょう。つまり、猫の顔は非常にデリケートな部位であり、上手にマッサージすれば優れた効果を発揮する一方、下手に行えば強い不快感となってしまうのです。 猫の脳内における触覚支配領域
  •  猫の鼻には機械受容器が豊富に分布しています。これは風向きを把握するためだと考えられます。機械的刺激のみならず痛みにも敏感ですので、面白半分で「鼻ピン」をしてはいけません。
  • ひげ 猫のひげは「触毛」(vibrissae)と呼ばれ、人間で言うと手の延長のような働きをしています。むやみに切ったり抜いたりしないようにしましょう。詳しくは猫のひげをご参照ください。
  •  耳のやや前方にある毛の薄い部分には「側頭腺」(そくとうせん)があり、フェロモンを発しています。猫が自分の顔を洗うとき、しきりに前足をこすりつけている場面を、一度は目にしたことがあるでしょう。ここを人間の指でなでてあげると、まるで顔を洗っているような感覚になり、猫は気持ちよさを感じます。
  • 顎の下 顎の内側にはリンパ節があり、口の中に何らかの病変があると、コリコリと触れるくらい硬くなることがあります。マッサージを行う際は、常にここを触診するようにします。
 こうした注意点を踏まえ、猫の顔にマッサージを施す際の一例を以下で述べます。体を触ると同時に、皮膚や被毛の病的な状態のほか、目の異常耳の異常鼻の異常口の異常にも目を光らせるようにします。
猫の顔マッサージ
  • エフララージ 猫の毛並みに沿って優しく指先を這わせていきます。「側頭腺」のある耳前の薄毛部分も念入りになでてあげましょう。顎の下をなでる際は、顎の内側にある「下顎リンパ節」を触診するようにします。ここが腫れていたり、口元へのタッチを異常に嫌がるようなときは、口の中に何らかの病変がある可能性があります。念のため獣医さんに相談しましょう。また顎と胸の間、ゴロゴロ鳴っている下辺りには甲状腺があります。ここが異常に腫れているときも獣医さんに報告します。 マッサージ実践動画⇒こちら マッサージ実践動画⇒こちら 顔をマッサージするときは、毛並みに沿ってゆっくりと手を動かします。顎の下のリンパ節も忘れずにチェックしましょう。
  • ジェントルニーディング 猫の顎(耳の下辺り)には、咬筋と側頭筋という大きな咀嚼筋が付着しています。疲労の溜まりやすい部位ですので、この辺りを指先で円を描くようになでてあげましょう。 マッサージ実践動画⇒こちら 耳の下にある咀嚼筋は疲れやすいので、指先で円を描くようにマッサージしてあげます。
  • スキンロール 猫が嫌がらないようでしたら、顔の横にある皮膚の「遊び」を左右に引っ張ってあげましょう。引っ張るときもリリースするときも、ゆっくり行ってください。 マッサージ実践動画⇒こちら 猫の頬付近にある遊びを左右にゆっくりと引っ張り、緩やかにリリースします。
  • アキュプレッシャー 猫の顔周辺で指圧が適用できるのは、下の図で示した部分です。指先を5秒程度押し付け、ゆっくりと離してみましょう。猫が痛がっていないかどうか、常に確認しながら行うようにします。猫の顔周辺で指圧が適用できる部位 また額から後ろのエリアも意外と好まれるスポットです。頭のてっぺんから後頭部にかけては物を噛む咀嚼筋が付着しており、耳の周りには耳を動かす数多くの小さな筋肉が付着しているため、疲労がたまりやすいのでしょう。硬めの頭皮マッサージャーを用いたり、握りこぶしの第二関節部分を使ってゴリゴリしてみます。猫がうっとりと目を閉じたり、頭をグイグイ押し付けてくる「ネコブリッジ」で反応してくれたら気持ちいいという証拠です。 猫の頭皮マッサージはやや硬めの器具や握りこぶしを使って
猫の眼窩
猫の眼窩は一部が途切れ、線維性の組織に置き換わっている 眼球周辺を取り囲んでいる骨のことを「眼窩」(がんか)と言います。人間の眼窩は硬い骨で取り囲まれ、内部の眼球を手厚く保護するようデザインされていますが、犬と猫の眼窩はなぜか一部が途切れ、線維性の組織に置き換わっています。目尻の延長線上に当たるこの部分は、骨によって覆われていない分、構造的に弱くなっていますので、あまりゴリゴリといじらない方がよいでしょう。目の上の部分や人間でいう「エラ」の部分なら大丈夫です。
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猫の背中マッサージ

 猫の背中にマッサージを施す際の一例を以下で述べます。皮膚や被毛の病的な状態がないかどうかをチェックしながら試してみて下さい。
猫の背中マッサージ
  • エフララージ 毛並みに沿ってゆっくりと手の平を動かしていきます。手の代わりにブラシやスリッカーを用いても構いません。だたし、皮膚や被毛の異常をチェックするため、必ず手で触ってからにします。また、あまり速いスピードでマッサージを施すと静電気が発生して不快感が生じます。1秒間に10~20センチメートル動かすくらいのスピードで充分です。 マッサージ実践動画⇒こちら 背中をマッサージする際は、静電気が発生しないよう、1秒間に10~20センチメートル程度のスピードで動かします。
  • ジェントルニーディング 背中の皮膚は「遊び」が多い部分です。指先でゆっくりと大きな円を描くように皮膚を動かしてみましょう。ただし、背中にマイクロチップを埋め込んでいる場合は、上から押さないよう注意します。これは「靴の中の小石」のように、不快な痛みの原因になることがあるためです。
  • スキンローリング 指先で皮膚をつまみ上げ、ゆっくりとリリースします。特に首筋の皮膚を引っ張ると「不動化反射」が起こり、猫の全身から力が抜けますので、リラックス効果が期待できます。ただし、あまり引っ張り続けると、突っ張った皮膚によって首の前面にある頚静脈が締めつけられますので、5~10秒程度に制限して下さい。長くやりすぎると窒息の原因になります。 マッサージ実践動画⇒こちら 猫のうなじ付近の皮膚を大きくつかみ、そのまま5~10秒間引っ張り上げます。
  • プラッキング 指先で毛をつまみ、軽く引っ張ります。無駄毛を処理できると同時に血流も促進できますので、一石二鳥です。
  • アキュプレッシャー 猫の背中周辺で指圧が適用できるのは、下の図で示した部分です。猫の背中周辺で指圧が適用できる部位 後頭部の骨(後頭骨)と肩甲骨の間、及び肩甲骨間は疲労が溜まりやすい部位ですので、表面をなでるよりも強めの刺激が効果を発揮することがあります。指先を5秒程度押し付け、ゆっくりと離してみましょう。猫が痛がっていないかどうか、常に確認しながら行うようにします。
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猫のお尻マッサージ

 猫のお尻やしっぽにマッサージを施す際の一例を以下で述べます。体を触ると同時に、皮膚や被毛の病的な状態のほか、お尻の変化や異常にも目を光らせるようにします。
猫の臀部マッサージ
  • エフララージ 猫の中には、しっぽの付け根辺りを触られることを好む個体がいます。毛並みに沿って軽くなでてあげましょう。ただし避妊手術を受けていないメス猫の場合、反射的に「ロードーシス」と呼ばれる交尾体勢に入ることがあります。なでる場合は不妊手術を済ませておいた方が無難です。また嫌がらないようでしたら、しっぽを軽く握ったまま、毛並みに沿って先っぽまで移動させます。だたし、強く握ってしっぽを引っ張ることは絶対にしないで下さい。 マッサージ実践動画⇒こちら 猫のしっぽの付け根をくすぐるように軽くなでてあげます。
  • テイポットメント 猫の中には、お尻を軽く叩かれることを好む個体がいます。しっぽの付け根あたりを、手の平でリズミカルに叩いてあげましょう。ただし、「パンパン!」と音が鳴るほど強い力で叩いてしまうと、大阪名物「パチパチパンチ」のように皮膚が内出血してしまいます。強さに関しては「ポンポン」と軽く音がするくらいがベストです。 マッサージ実践動画⇒こちら 猫のしっぽの付け根をリズミカルに叩いてあげます。
皮膚無力症
 「皮膚無力症」(ひふむりょくしょう)とは皮膚を構成しているコラーゲン線維に異常があり、皮膚が病的に伸びてしまう病気のことです。「エラースダンロス症候群」とも呼ばれます。猫の皮膚無力症の目安 上の図のように、しっぽの付け根から頭蓋骨の下端までの距離を100%としたとき、お尻の皮膚が19%以上伸びるような場合は異常と判断されます。滅多にない遺伝病ですが、あまりにもお尻の皮膚が伸びるような場合は、裂けてしまう危険性があるため、面白半分で引っ張らないほうがよいでしょう。
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猫のおなかマッサージ

 猫のおなかにマッサージを施す際の一例を以下で述べます。体を触ると同時に、皮膚や被毛の病的な状態のほか、腹部・胸部の異常生殖器の異常にも目を光らせるようにします。
猫の腹部マッサージ
  • エフララージ 猫が気を許しておなかをさらけ出してくれるようでしたら、毛並みに沿ってゆっくりと手の平を動かします。手の代わりにブラシやスリッカーを用いても構いません。だたし、皮膚や被毛の異常をチェックするため、必ず手で触ってからにします。また、あまり速いスピードでマッサージを施すと静電気が発生して不快感が生じますので、1秒間に10~20センチメートル動かすくらいのスピードで充分です。 マッサージ実践動画⇒こちら 猫のおなかの毛並みに沿ってゆっくりと手を動かします。
  • ジェントルニーディング 猫の腹部は皮膚の「遊び」が多い部位ですので、手の平で大きく円を描くように動かすのも効果的でしょう。マッサージのついでに、乳房や乳首に妙なしこりが無いかどうかを確認するようにします。なお、下腹部(特に左側)にコリコリという膨らみがある場合は、便がたまっている可能性があります。腫瘍と鑑別するため、猫がウンチをした後にもう一度同じ場所を軽く触ってみてください。それ以外の下腹部が異常に膨らんでいたり、タッチを痛がるような場合は、念のため獣医さんに診てもらうようにします。 マッサージ実践動画⇒こちら
猫の四次元ポケット
 性別や避妊・去勢手術の有無にかかわらず、猫の下腹部にはたぷたぷとしたたるみがあります。これは「プライモーディアルパウチ」(primordial pouch, 直訳すると”原始の袋”)と呼ばれるもので、大型のネコ科動物であるライオンにも見られます。決して異常なものではありませんが、触って痛がるようでしたら、黄色脂肪症の可能性がありますので、一度獣医さんに診てもらいましょう。猫の下腹部に見られる「プリモーダルパウチ」(原始袋)  このたぷたぷとした皮の役割については定かではなく、「腹部の保温」、「攻撃から守る」、「走る時に役立つ」、「たくさん食べた時に伸びる」、「ラクダのコブのようにエネルギーを蓄えている」などの可能性が考えられます。なお、このたるみが、ドラえもんの「四次元ポケット」のモデルかどうかは定かではありません。
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猫の手足マッサージ

 施術者がマッサージを行う上で、事前に抑えておきたい猫の手足周辺における特性は以下です。
猫の手足のポイント
  • 肉球 前足と後足の肉球には機械受容器が豊富に分布しています。これは、地面に接したとき、素材が柔らかいか硬いかを瞬時に判断し、安全度を測るために発達したのでしょう。また、走っているときのスピードメーターとしても機能していると考えられます。猫がベランダの縁などを器用に歩けるのは、肉球内に豊富に存在しているセンサーのおかげと言うわけです。「敏感だからこそ気持ちいい」と感じるか、「敏感だから不愉快」と感じるかは、猫の好みや施術者のテクニックによって変動します。
  • 後足の裏 後足の裏には、被毛の動きを感知する受容器が体中で最も多く分布しているといいます。うまくマッサージすれば、人間で言う「足裏マッサージ」のような気持ちよさを感じてくれるかもしれません。
  •  猫の爪の根元には、SA神経が豊富にが存在しています。これは「爪をどの程度出しているのか」や、「横方向へどの程度ずれているのか」などを感知するための構造でしょう。多くの猫が指先へのタッチを嫌うのは、これが理由かもしれません。
  • 触覚の処理 皮膚で受容された刺激は、神経を通じて脳内に入り、そこで処理されます。しかし、脳内における触覚情報の処理領域には、部位によって大きな開きがあります。下の図で示したとおり、前足と顔の触覚を処理する領域が非常に広いのに対し、胴体や後足の処理領域がとても狭いことがお分かりいただけるでしょう。これは、「猫の前足はとてもデリケート」であることを意味しています。 猫の脳内における触覚支配領域
 こうした注意点を踏まえ、猫の手足にマッサージを施す際の一例を以下で述べます。体を触ると同時に、皮膚や被毛の病的な状態のほか、足の変化や異常にも目を光らせるようにします。
猫の四肢マッサージ
  • エフララージ 猫が脇の下を見せてくれるようでしたら、毛並みに沿ってゆっくりと手の平を動かします。特に前足の付け根は、歩くときの推進力を生み出す「広背筋」が付着しているため疲労の溜まりやすい部分です。 マッサージ実践動画⇒こちら 前足の付け根には広背筋が付着しており疲労が溜まりやすいため、マッサージしてあげます。
  • ジェントルニーディング 前足の甲や肉球に指先を置き、ゆっくりと円を描くように動かしてみます。猫の肉球には神経が豊富に存在しています。ゆっくり円を描くように動かしてあげると喜ぶことがあります。 先述したとおり、猫の前足は非常に敏感にできています。猫がやめてサインを見せたらすぐ中断しましょう。また後足のかかとから肉球までの区間には、神経が豊富に存在しています。足裏マッサージのように、指先で優しくなでてあげるのも効果的です。
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