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猫向けノミダニ駆除製品「フロントライン®」の効果と副作用

 猫のノミダニ駆除と予防を目的として販売されている「フロントライン®」シリーズ。含まれている成分の効果から副作用までを論文と出典付きで詳しく解説します。

フロントライン®とは?

 フロントライン®とはフィプロニル(fipronil)を有効成分とする猫向けのノミ・マダニ駆除製品。日本国内ではスポットオン(ピペット滴下式)とスプレータイプが動物医薬品として認可されています。

フィプロニルの効果

 フロントライン®の有効成分であるフィプロニルは、動物の神経にある塩素イオンチャンネルのガンマアミノ酪酸(GABA)受容体および2種類のグルタミン酸受容体(GluCl-DおよびGluCl-N)に結合する性質を有しています。GABAは神経に対する抑制作用を持っていますので、この働きがなくなることで中枢神経が過剰興奮となって最終的に死亡してしまいます。GABA受容体は人間を含む哺乳動物も持っていますが、フィプロニルは無脊椎動物の受容体に特異的に結合するのが最大の特徴です。 フィプロニルの分子構造と作用機序の模式図

フィプロニルの危険性・副作用

 フロントライン®に関しては海外でも日本国内でも死亡例を含めた重大な副作用事例が散発的に報告されています。しかし製品との因果関係があやふやだったり、偽ブランド品や使用法を遵守しないいわゆる「オフラベル」の使い方が原因になった可能性もあるため、本当に死の引き金になったのかどうかはよくわかっていません。一例を挙げると「用量を守らなかった」「産まれて間もない若齢の猫に使った」「使用期限の過ぎた古い商品を使った」などです。
 アメリカのEPA(環境保護局)ではペット向けのスポットオン(滴下式)製品に関し、使用基準さえ遵守すれば総じて安全であるとの見解を示しています。

誤飲誤食による猫での副作用

 公式データシートではフィプロニルのヒトおよび動物に対する毒性が公開されています。なお「半数致死量」(LD50)とは動物への毒性試験において半数が死に至る用量、「無作用量」(NOEL)とは動物への毒性試験において影響が認められない最高の暴露量のことで、摂取量は体重1kg当たりです。 フロントライン®プラス・技術資料
フィプロニルのLD50とNOEL
  • マウスLD50→49~57mg
  • ラットLD50→92~103mg
  • イヌNOEL→640mg超
 猫を対象とした試験はないようですが、ピペットを間違ってかじってしまうとか、同居猫が滴下部をなめてしまうといった誤飲誤食ケースが容易に想定されます。犬のデータを転用すると、1ピペット(0.5mL)に含まれるフィプロニルはおよそ50mgですので、猫の体重が4kgだとすると2.6gを超える量を一気に経口摂取した場合に急性毒性に陥る危険性があります。ピペットに換算すると52本です。
 めったに起こりそうもない状況ですが、フィプロニルは肝臓のシトクロムP450と呼ばれる酵素で代謝されます。猫の体質や基礎疾患によっては少ない量で中毒に陥ったり、不活性成分として含まれているエタノール(アルコール)、ポリソルベート、ポリビニルピロリドンなどによる危険性もありますので、製品の管理は油断せずに行う必要があります。また同居犬や同居猫がいる場合、滴下部位をなめてしまわないようしっかり監督しておく必要もあるでしょう。

皮膚接触による猫での副作用

 2000年から2003年の期間、世界中で使用されたスポットオン、スプレー、フロントライン®プラスのトータル数に対する副反応の発生率は0.001%未満(4,534件)だったという報告があります。具体的には以下のような症状です出典資料:APVMA)
フロントライン®製品の副作用
  • 皮膚の副作用発赤, 痛み, かゆみ, 自傷, 脱毛, 変色, すりむき
  • 神経の副作用運動失調, 元気消失, 攻撃性の上昇
  • 消化器の副作用下痢, 嘔吐
 報告された副作用のうち皮膚症状が86.3%と大部分を占めていました。公式データシートでは猫の皮膚に対する毒性が明示されていませんが、犬を対象とした調査ではフィプロニルが表皮の角質層に限局され真皮層には浸透しないことが判明しています。ですからフィプロニルは皮膚のバリアに阻まれてほとんど血中に入り込まないため、少なくとも経皮的に吸収された成分による中毒は起こりにくいと考えられます。 フィプロニルの代謝産物スルホンと光反応生成物デスルフィニルの分子構造  ただしフィプロニルやその代謝産物であるフィプロニルスルホンおよびGABAとの結合力が10倍ほど強いフィプロニルデスルフィニルの皮膚に対する刺激性はよくわかっていません。世界中で逸話的に報告されている皮膚症状から考えると、全く無害というわけではないのでしょう。ちなみにウサギの皮膚はフィプロニルへの感受性が犬や猫に比べて10倍ほど高いため、1990年代半ばから使用しないよう警告されています。

誤飲や吸引による人での副作用

 カリフォルニア大学の調査チームは2001年から2007年の期間中に報告されたフィプロニルに関連した中毒症例を集めて内容を精査しました出典資料:S.J.Lee, 2010)。その結果、全体103件のうち37%ではペット向けの製品が関わっていたといいます。液体の誤飲やエアロゾルの吸引が原因と思われる症状としては、神経症状(頭痛・めまい・感覚異常)が50%と最も多く、目の症状(44%)、消化器症状(28%)、呼吸器症状(27%)がそれに続きました。症状はおおむね軽症でしたが、フィプロニル製品を使うときは室内の換気を十分に行うよう注意しています。
 なお製品の添付文書においても、特に3歳未満の乳幼児がいる家庭においては子供が誤って滴下部を触ってしまわないよう注意書きがなされています。この年齢層の子どもたちが高い確率で指をなめてしまうからです。

皮膚接触による人での副作用

 人における接触性皮膚炎の症例も報告されています。ペット犬に「フロントライン®スポットオン」を滴下してから12時間以内のタイミングで、飼い主の女性(30歳)が被毛をなでたほか、犬が足元で眠ったため成分との物理的な接触が起こり、手首および足首に皮膚炎が発生しました。2日程度で治癒する軽いものでしたが、メーカーに問い合わせても具体的な成分を「企業秘密」を理由に開示してくれなかったとのこと出典資料:Mackley, 2005)
 またケンタッキー州のマリー州立大学が行った調査により、犬の被毛に付着した有効成分(フィプロニル)は24時間後のタイミングにおける濃度が589.3ppmと最も高く、2週間ほど漸減が続いた後、時間の経過とともに薄くなって5週間後には検知不能レベルになることが明らかになっています出典資料:Jennings, 2002)。滴下後の2週間程度は被毛に触れることで衣服や手にフィプロニルが付着し、接触皮膚炎のほか誤ってなめてしまうなどして中毒に陥る危険性が否定できませんので、覚えておいたほうがよいでしょう。製品の添付文書にも「滴下部に直接触れないこと」という注意書きがあります。

フロントライン®スポットオン

 フロントライン®スポットオンはフィプロニルを有効成分とする猫向けのノミ・マダニ駆除製品。ピペット滴下式でノミやダニに対しては1ヶ月程度の駆除および新規の寄生防御効果があるとされています。なおまったく同じ有効成分を含んだジェネリック(後発)商品としては「フィプロスポットキャット」と「マイフリーガード猫用」がありますが、添加剤まで同じとは限りません。 【公式】フロントライン®スポットオン・キャット 猫向けフロントラインスポットオンの製品パッケージ一覧

フロントライン®スポットオンの使い方

  • いつから使える?使用条件は12週齢以降で体重制限はありません。
  • 使用頻度は?ダニに対する効果が1ヶ月であることから毎月の使用が望ましいとされています。逆に安全性(危険性)の検証が十分でないことから「最低4週間あけること」という注意書きがあります。
  • 使用期間は?ノミやダニは通年性で生息していますので1年中使用することが望ましいとされています。
  • 値段は?動物病院や使用頻度によって合計費用は変動しますが、病院で処方される1ピペットの値段は700~800円程度です。なお要指示薬には指定されていませんが、基本的には獣医師による診察と処方が理想とされます。
  • 付ける場所は?猫の肩甲骨間の被毛をかき分け、使い切りのピペットを皮膚に直接滴下して使います。【公式動画】フロントラインの使い方
  • 使用量は?液剤1mL中に含まれるフィプロニルは100mgです。犬とは違い体重に合わせた製品のサイズ区分はなく、1頭につき1ピペット(0.5mL)を全量滴下します。
  • 使用上の注意は?使用する際の注意点は「皮膚炎がある部位に使用しない」「ウサギには使用しない」「完全に乾くまで投与部位に触れない(4時間程度)」「滴下前後2日間はシャンプー・お風呂禁止」「人もペットも滴下部をなめない」「使用期限が過ぎたものを使わない」などです。誤って口に入った場合は嘔吐や食欲不振が引き起こされる危険性が示されています。

フロントライン®スポットオンの効果

 イギリスの王立獣医大学の調査チームは猫たちを6頭ずつからなる3つのグループにランダムで分け、1つにはフィプロニルの10%溶液を0.5mL、1つにはフィプロニル溶液とメトプレン含有の首輪、残りの1つは何もしない状態で、ネコノミの成虫40匹+虫卵100個+幼虫100個+さなぎ100個に暴露しました。試験開始日および試験開始から28→56→84→112→140日後のタイミングでフィプロニルをうなじと肩甲骨間に滴下し、168日間に渡って観察を行ったところ、合計8回の評価ポイントのどこにおいても、フィプロニルを滴下した2つのグループではノミが1匹も検出されなかったといいます出典資料:Hutchinson, 1998)
 ジョージア大学の調査チームはノミ皮膚炎を抱えたペット猫42頭を対象とし、フィプロニルの10%溶液の効果を検証しました。試験開始日および試験開始から30と60日後のタイミングでフィプロニルを滴下した上で、滴下から14→30→60→90日後における症状の重症度を評価したところ、各評価ポイントにおけるノミ生息数の減少率(駆除率)はそれぞれ75%、73%、85%、94%だったといいます。またかゆみの度合いは統計的に有意なレベルで減少し、31頭(78%)では症状の消失が確認されたとも。さらに粟粒性皮膚炎と脱毛の度合いでも改善が確認されました。試験開始から90日後における効果を総合的に検証した結果、大変良いが70%、良いが15%、まあまあが7.5%、よくない7.5%と評価されました出典資料:Medleau, 2002)
 ファイザーの調査チームは臨床上健康な猫16頭をランダムで2つのグループに分け、未吸血のネコノミ100匹に暴露した上で一方にだけフィプロニル(7.5mg/kg)を滴下して効果を検証しました。試験開始日および試験開始から30→60→90→120日後のタイミングで液剤を滴下し、合計150日間に及ぶ観察を行った結果、試験開始から14日後におけるノミ生息数の幾何平均が71.2%減少したといいます。また29日後における駆除率は97~98%、44~150日後におけるそれは99.8~100%と算出されました出典資料:Ritzhaupt, 2000)
 イタリアの獣医皮膚病研究所の調査チームはツメダニ症を自然発症した16頭の猫たちを対象とし、フィプロニル10%溶液の効果を検証しました。調査開始時および滴下から14→28日後におけるダニの数と病変部の重症度を調べたところ、滴下後のどのタイミングにおいてもダニが検出されなかったといいます(駆除率100%)。また56%(9頭)では14日以内に症状の軽減が見られ、最終チェック日においては75%(12頭)の猫たちで病変が消えていたとも出典資料:Scarampella, 2005)

フロントライン®プラス

 フロントライン®プラスはフィプロニルおよび(S)-メトプレンを有効成分とする猫向けのノミ・マダニ駆除製品。ピペット滴下式でノミに対しては1~1.5ヵ月間、マダニに対しては約3週間の駆除および新規の寄生防御効果があるとされています。また(S)-メトプレンによりシラミ(ハジラミ)の駆除効果、およびノミのすべての発育ステージ(卵・幼虫・さなぎ)を最大6週間阻害する効果もあります。なおまったく同じ有効成分を含んだジェネリック(後発)商品としては「キャットプロテクトプラス」「フィプロスポットプラスキャット」「マイフリーガードα猫用」がありますが、添加剤まで同じとは限りません。 【公式】フロントライン®プラス・キャット 猫向けフロントラインプラスの製品パッケージ一覧

フロントライン®プラスの使い方

  • いつから使える?使用条件は8週齢以降で体重制限はありません。
  • 使用頻度は?ダニに対する効果が1ヶ月であることから毎月の使用が望ましいとされています。逆に安全性(危険性)の検証が十分でないことから「最低4週間あけること」という注意書きがあります。
  • 使用期間は?ノミやダニは通年性で生息していますので1年中使用することが望ましいとされています。
  • 値段は?動物病院、猫の体の大きさ(体重)、使用頻度によって合計費用は変動しますが、病院で処方される1ピペットの値段は700~900円程度です。なお動物医薬品のため、基本的には獣医師による処方箋がないと使用できません。
  • 付ける場所は?猫の肩甲骨間の被毛をかき分け、使い切りのピペットを皮膚に直接滴下して使います。【公式動画】フロントラインの使い方
  • 使用量は?液剤1mL中に含まれるフィプロニルは100mg、メトプレンは120mgです。犬とは違い体重に合わせた製品のサイズ区分はなく、1頭につき1ピペット(0.5mL)を全量滴下します。
  • 使用上の注意は?使用する際の注意点は「皮膚炎がある部位に使用しない」「ウサギには使用しない」「完全に乾くまで投与部位に触れない(4時間程度)」「滴下後2日間はシャンプー・お風呂禁止(滴下直前の制限はなし)」「人もペットも滴下部をなめない」「使用期限が過ぎたものを使わない」などです。誤って口に入った場合は嘔吐や食欲不振が引き起こされる危険性が示されています。

フロントライン®プラスの効果

 メリアルの調査チームはヨーロッパ7ヶ国に暮らす180頭の猫たちを対象とし、2009年のノミが多い3ヶ月間を利用してフィプロニルとメトプレン混合溶液の効果を検証しました。試験開始日および試験開始から30日と60日後のタイミングで混合溶液を滴下した上で、開始から1ヶ月ごとにノミの生息数をカウントしたところ、試験開始前におけるノミの保有率が47.2% (85/180)だったのに対し、開始から90日後のタイミングにおける保有率が5.2%(9/173, ※一部脱落)にまで減少したといいます。最終的な駆除率は89.4%(76/85)と算出されました出典資料:Beugnet, 2010)
 「Merial SAS」の調査チームはマダニとクロアシマダニに対するフィプロニルとメトプレン混合溶液の効果を検証しました。猫たちをランダムで2つのグループに分け、一方にだけ混合溶液を滴下した上でマダニ(オスメス50匹ずつ)に週に一回のペースで4~6週間に渡って反復的に暴露したところ、37日間における駆除率は未治療グループと比べて93%だったといいます。また同様のデザインでクロアシマダニ(オスメス25匹ずつ)に反復的に暴露したところ、30日間における駆除率は95%に達したとも出典資料:Tielemans, 2014)
 フランス国立獣医大学の調査チームは臨床上健康な猫たちをランダムで2つのグループに分け、フィプロニルとメトプレン混合溶液がもつ殺卵効果を検証しました。溶液を滴下後、週1回のペースで11週間に渡って虫卵を抱えたメスのノミを寄生させ、24時間後の生存数を確認すると同時に、虫卵を回収して人工的に孵化させたところ、最初の3週間における成虫駆除率は100%だったといいます。駆除率はその後漸減し6週目には93.4%にまで落ちました。一方、孵化可能な虫卵数は未治療グループと比較して大幅に減少し、幾何平均では最初の6週で76.9%から96.3%に落ちたとのこと。調査開始から56日間における殺卵効果は100%、76日間におけるそれは98%と算出されました出典資料:Franc, 2007)

(S)-メトプレンの危険性・副作用

 フロントライン®プラスにはフィプロニルのほか(S)- メトプレンと呼ばれる有効成分も含まれています。この物質は昆虫の成長を抑制する効果を有しており、成熟する前の段階で発育を止めることで新たな産卵が起こらないようにします。R体とS体という2つの光学異性体がありますが、昆虫の幼若ホルモンに似た作用を有しているのはS型異性体だけであるため、成分の頭には区別のために(S)が付きます。
 脂溶性が高いため容易に猫の皮脂腺に入り込み、長期に渡って皮脂とともに全身に広がるのが特徴です。成分と接触したメスノミの卵巣内に濃縮すると同時に、産み落とされた虫卵の卵殻に浸透することで孵化を防ぎますが、殺虫効果はありません。
 哺乳動物の体内においては(S)- メトプレンが作用する部位が存在していないため、事実上無毒性と考えられています。48頭の猫を対象とし、推奨量の3~5倍に相当する量を月1回のペースで半年に渡って滴下しても、臨床上悪影響はなかったとされています出典資料:公式技術資料)
 とは言え全く影響がないわけではなく、ラットにおける半数致死量(LD50)は体重1kg当たり5~34mg超、慢性毒性は5000ppm(1kg当たり5g)とされています。また犬の慢性中毒もラットと同じく5000ppmとされていますが、猫に関する毒性データは明記されていません。皮膚を通して吸収した時の半数致死量(LD50)は体重1kg当たり5gと推計されていますが、これはウサギにおけるデータが転用されているようです。

フロントライン®スプレー

 フロントライン®スプレーはフィプロニルを有効成分とする猫向けのノミ・マダニ駆除製品。スプレー式でノミに対しては1~2ヶ月、ダニに対しては1ヶ月程度の駆除および新規の寄生防御効果があるとされています。 【公式】フロントライン®スプレー 猫向けフロントラインスプレーの製品パッケージ一覧

フロントライン®スプレーの使い方

  • いつから使える?添付文書や公式ページにおいて使用制限はなぜか設けられていませんが、他のフィプロニル含有製品と同じく8週齢以降が安全だと思われます。
  • 使用頻度は?ダニに対する効果が1ヶ月であることから毎月の使用が望ましいとされています。逆に頻繁に使用した際の安全性(危険性)が十分に検証されていないため「最低4週間あけること」との注意書きがあります。
  • 使用期間は?ダニは通年性で生息していますので1年中使用することが望ましいとされています。
  • 値段は?動物病院、猫の体の大きさ(体重)、使用頻度によって合計費用は変動しますが、100mL入りボトルの場合は2,100~2,600円、250mL入りボトルの場合は3,600~4,000円程度です。なお動物医薬品のため、基本的には獣医師による処方箋がないと使用できません。
  • 付ける場所は?ボトルを猫の被毛から10~20cm離し、毛並みに逆らう方向で被毛全体にスプレーしてなるべく毛の根元を湿らせるようにします。
  • 使用量は?液剤1mL中に含まれるフィプロニルは2.5mgです。使用量は体重1kg当たり3mL(フィプロニル7.5mg)を基準量とし、毛の長さに応じて6mL(フィプロニル15mg)まで増量できるとされています。
  • 使用上の注意は?エアロゾルとして空気中に噴霧されるため、使用する際は飼い主がゴム手袋を着用すること、および屋外で使用することが推奨されています。また皮膚炎がある部位に使用しないこと、スプレーが完全に乾く4時間程度は被毛を触らないこと、使用期限が過ぎたものを使わないこと、および使用前後の2日間(合計4日間)におけるお風呂やシャンプーを控えることなどが規定されています。姉妹商品と同様、ウサギには使用できません。

フロントライン®スプレーの効果

 フランス南部の動物病院において、猫を対象としたフィプロニルスプレーの有効性が検証されました。調査に参加したのは、動物病院を受診したときにノミの寄生が確認された猫合計41頭(平均3.8kg | 平均4.1歳)。品種や性別はバラバラです。全頭に対しフィプロニル0.25%スプレーを体重1kg当たり3.98mLの割合でスプレーし、2ヶ月後にノミの数をカウントしました。その結果、ノミの寄生が確認されなかった猫の割合が61%(25頭)だったといいます。また最初の1ヶ月間効果が見られなかった割合は7.4%でした。かゆみの症状を示していた割合は受診時の88.2%から2ヶ月後には36.4%に減少し、ただれなどの病変を有していた割合は受診時の20.6から2ヶ月後には12.1%減少したとも出典資料:Postal, 1995)
 猫30頭をランダムで5頭ずつ6つのグループに分け、偶数グループは体重1kg当たり5~6mLのフィプロニルスプレー(0.29%)を施し、奇数グループは比較対照のため何も投与せず効果を検証しました。試験開始2日前のほか、試験開始7→14→21→28日後のタイミングで50匹のネコノミに暴露し、48時間待った上で駆除率を算出したところ、最初の2週間に関しては99.5%の有効性(駆除率)を示したといいます。またネコノミの成虫をカンザス1コロニー(KS1)、フロリダ(R6)、ARCという3つに細分して有効性を比較したところ、30日後における駆除率がそれぞれ89.9%、77.3%、100%だったとも。さらに産卵に対する抑止効果を治療なしグループと比較したところ、30日後における各系統に対する有効性は96.8%、87.3%、100%だったそうです出典資料:Payne, 2001)

フロントライン®スプレーの危険性・副作用

 国内においてフロントライン®スプレーが関係していると思われるいくつかの副作用事例が報告されています。しかし猫の健康状態がもともと悪かったとか、使用状況や使用量が不明瞭などの理由により、製品との因果関係は確定していません。
 スプレーに関してはグルーミングという習性を持っている関係上、犬よりも猫における中毒・副作用事例が多数あります。猫が自分自身の被毛をなめたり、同居猫同士がグルーミングを通してお互いの被毛をなめたり飲み込んだりしますので、スプレーが乾ききるまでは注意深く監督しておく必要があります。また副作用事例でもあるように、疥癬症にかかって皮膚がぼろぼろになった猫に使用すると、ただれた部分から成分が過剰に吸収され、死亡を含めた副作用の危険性が増大しますのでご注意ください。
ノミ皮膚炎」や「マダニ症」もあわせてご覧ください。皮膚症状だけでなく、寄生虫が保有する細菌やウイルスが重大な感染症を引き起こす危険性もあります。