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猫は飼い主の外出時間が長くなるほど強く寂しさを感じる?

 猫と飼い主の別離時間が長くなるほど、再会したときのゴロゴロが増えることが明らかになりました(2017.10.23/スウェーデン)。

詳細

 調査を行ったのはスウェーデン農業科学大学が中心となったチーム。ウプサラ大学キャンパスやネットなどを通じて猫の飼い主を募り、猫と離れている時間が双方の行動にどのような影響を及ぼすのかを検証しました。 別離時間が長いほど猫の寂しさは募る  調査に参加したのはもっぱら室内飼いされている14頭の猫(メス9頭 | 6.2歳)と14人の飼い主(女性10名)。猫が普段暮らしている室内にカメラを設置し、「飼い主との別離時間30分」と「飼い主との別離時間4時間」というバリエーションを設け、あらかじめ決めておいた時間帯における行動を録画観察しました。具体的には以下です。
猫と飼い主の別離
  • 30分別離前5分→別離後5分→別離中コマ切れで10分→再会前10分(5分で分割)→再会後5分
  • 4時間別離前5分→別離後5分→別離後20~25分の間→別離中コマ切れで10分→再会前10分(5分で分割)→再会後5分
 観察の結果、別離時間の長さによって「別離前」、「別離直後」、「再会直前」の行動に変化は見られなかったと言います。違いが観察されたのは「別離中」と「再会直後5分」の行動で、前者では「4時間別離の時寝転んでいる時間が長い」、後者では「4時間別離の時だけストレッチとのどをゴロゴロ鳴らす行動が多い」という特徴が見られたと言います。
 「ストレッチが増えた」という変化に関し調査チームは、単純に別離中の休息時間が伸びた結果ではないかと推測しています。一方「ゴロゴロが増えた」という変化に関しては、長時間飼い主と離れ離れになった結果、社会的交流に対する欲求が高まった結果ではないかと推測しています。
Cats and owners interact more with each other after a longer duration of separation.
Eriksson M, Keeling LJ, Rehn T (2017) PLoS ONE12(10): e0185599. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0185599

解説

 30分別離よりも4時間別離の時にのどをゴロゴロ鳴らすという行動が増えました。この現象に関しては単純に「お腹が空いていたから」という説明が可能でしょう。アメリカ・ノースカロライナ州立大学のチームが行った調査では「猫の活動パターンは人間の生活リズムとシンクロしている」と報告されていますので(→詳細)、餌をねだって飼い主に対する働きかけが増えたという可能性は大いにありえます。しかし今回の調査では、ほとんどの猫がいつでも好きなだけご飯を食べられる自由摂食でした。また時間を決めて餌を与えている少数の飼い主と自由摂食の飼い主を比較しても、猫の反応に明白な違いは見られなかったといいます。こうしたことから、猫のゴロゴロが増えた理由はご飯の催促ではなく、飼い主との社会的交流を求めた結果である公算が強いと推測されています。 猫のゴロゴロは飼い主に対する挨拶  ゴロゴロが増えたことに対する別の説明としては「飼い主が猫に対してコンタクトを求めたから」というものがあります。今回の調査でも、長い間別離した後、猫に対して働きかける行動が一部の飼い主で観察されたことは事実です。しかし猫への挨拶行動が増えた飼い主と、とりわけ増えなかった飼い主を比較したところ、猫のリアクションに違いは見られなかったと言います。こうしたことから、猫のゴロゴロが増えたのは飼い主からの働きかけに応じた結果ではなく、猫の方から自主的に発することで飼い主との社会的交流を求めたからではないかと考えられています。
 飼い主との社会的な交流を求めるならば、ゴロゴロのほか「頭を擦り付けてくる」といった行動が増えてもよいはずです。しかし今回の調査ではヘッドバット(頭突き)やフランクラビング(脇腹の擦り付け)といった匂い付け行動の増加は観察されませんでした。過去の報告では、家庭内で飼われている猫よりも野良猫の方が匂い付け行動しやすいと報告されていますので(Turner, 1991)、家の中で長い間生活したことにより、こうした行動パターンが弱まってしまったのかもしれません。
 猫の甘えん坊モードは多くの場合気まぐれですが、ある一定のパターンを示すこともあります。今回の調査対象となった「長時間の別離」以外では、「朝起きたとき」や「動物病院に行った日の夜」などがあります。これらに共通しているのが「不安や恐怖を感じた」という点だとすると、猫にも人間で言う「寂しさ」に近い感覚があり、その感覚を解消するため人間との接触を求めるという子供っぽいところがあるのかもしれません。過剰な擬人化は禁物ですが、猫を飼っている人ならば直感的に同意できるでしょう。 猫には人間による日常的な社会的接触が必要  猫は孤独な動物と思われがちですが、今回の調査で示唆されたように人間との社会的な交流を求める寂しがり屋な一面も持っています。多頭飼育の家庭においては「仲間がたくさんいるから寂しくないだろう」と考えがちですが、のどをゴロゴロ鳴らしたりミャーミャー鳴くといった行動はもっぱら人間に対してだけ見せます。猫からみた人間には特別な存在価値がありますので、1頭1頭に対して十分なふれあい時間を設ける必要があるでしょう。1頭に必要なふれあいタイムが1日最低30分とすると、10頭飼っている家庭においては300分(5時間)を社会的交流に当てる必要があります。「猫の粗相が治らない」と嘆いている多頭飼育家庭は、まず上記ふれあいタイムが十分満たされているかどうかを見直してはいかがでしょうか。 猫の分離不安 猫のトイレの失敗 猫マッサージ