トップ猫の栄養と食事猫のダイエット猫のダイエットが失敗する原因

猫のダイエットが失敗する原因と対策~責任は飼い主にあった!

 猫のダイエット計画を進めていく上で、ついついやってしまいがちな失敗と予防法について解説します。減量の成否は飼い主の管理にかかっていますので、うまくいかないパターンをしっかりと把握しておきましょう。なお基本的なダイエット計画に関しては「猫のダイエットを確実に成功させるには?」をご確認下さい。

盗み食い・おすそ分け

 ダイエットで小腹がすいた猫は、飼い主が見ていないすきを狙って盗み食いしている可能性があります。こうした盗み食いが起こらないよう、食べ物の保存は厳重にしましょう。オートフィーダー(自動給餌器)を用いている場合は、猫が隙間から器用に手を入れてくすねるというケースもありますので要注意です。 ダイエット中の猫は空腹から保存容器やフィーダーからフードを盗むことがある  他の人が善意からくれるおすそ分けも、「ダイエット中」ということを伝えて全て断るようにします。猫を放し飼いにしており、いつ誰が猫にエサを与えているかわからない状況においては、もはやダイエットは不可能です。病気や事故の危険性を避けるためにも完全室内飼いを徹底しましょう。
 多頭飼いの家庭においては、他の猫に用意したエサを別の猫が食べてしまうということがあります。盗み食いをしないようにしっかり監督し、場合によってはダイエット中の猫だけ隔離することも必要です。食器を出しっぱなしにすると食事量の管理ができませんので、時間を区切って餌を与える必要があります。 多頭飼育の過程においては減量中の猫が他の猫からエサを盗まないよう注意する  家族内でダイエットに対する共通理解がないと、せっかく食事制限しているのに、「おばあちゃんが知らない間におやつを与えていた!」という状況が生じるかもしれません。家族全員が肥満のリスクを理解し、行動を統一することが重要です。
盗み食いやおすそ分けの解決策
  • 食べ物の保存は厳重に
  • オートフィーダー(自動給餌器)の隙間に注意
  • 善意のおすそ分けは断る
  • 猫は完全室内飼いに
  • 多頭飼い家庭では盗み食いを監視する
  • エサを出しっぱなしにしない
  • 家族メンバーの裏切りにも注意

要求鳴きの増加

 ダイエット伴う問題点の1つは要求鳴きの増加です。今までもらえていたエサが急にもらえなくなったとき、猫は「何か忘れていませんか? 」という意味を込めてニャーニャーと要求鳴きを繰り出してくることがあります。また必殺技である要求のゴロゴロを発して催促してくるかもしれません。この現象を「消去バースト」と呼びます。
 消去バーストに対する対処法は「無視」の一言です。猫のうるささに根負けして一度でもおやつを与えてしまうと、猫はその経験に味をしめ、今後さらに激しく鳴くようになります。ですから家族全員が首尾一貫して無視を決め込み、一度の例外もなく態度を徹底することが重要です。ちなみに最新の調査では、食事を制限することで猫から嫌われることはないと報告されています。驚くべきことに、逆に飼い主への愛情が深まるとのこと。信頼関係が崩れるわけではありませんので「おなかがすいて可哀想だなぁ…」とか「嫌われるんじゃないか…」と心配する必要はそれほどありません。
要求鳴きの解決策
  • 基本は完全無視
  • 一度でも根負けすると逆効果
  • 家族全員が取り組むこと
  • 逆に飼い主への愛情が増すかも

プラトー

 人間の場合と同様、理論的には正しいことをしているにもかかわらず、なかなか体重が減ってくれないことがあります。これを「プラトー」と呼びます。プラトーの発生理由は、摂取エネルギーの減少に伴い、体全体の代謝が低下して消費エネルギーが減少することです。
  1ヶ月ほど様子を見て体重に変化が見られないようでしたら、摂取エネルギーと消費エネルギーのバランスを微調整し、新しいエネルギーバランスを作り出します。ただし、急激に食事量を減らしたり運動量を増やしたりすると、猫の心身に対する負担が大きいので避けるようにします。例えば、摂取エネルギーを「RER×1.0」にしている場合は、やや減らして「RER×0.9」にするくらいが妥当です。
プラトーの解決策
  • 体重減少の停滞は代謝率が変わった証拠
  • 急に運動量を増やさない
  • 急に食事量を減らさない
  • カロリー制限マイナス10%くらいで

リバウンド

 リバウンドとはダイエットによって一度は減った体重が、しばらくすると元に戻り、逆にダイエット前より増えてしまう状態のことです。フードによる猫のダイエットでも解説した通り、急激な食事量の減少や断食は、体内における脂肪以外の組織(除脂肪体重)を減らしてしまいます。その結果、本来エネルギーを消費してくれるはずの筋肉までが減ってしまい、太りやすい体質になってしまうのです。
 タンパク質不足のほか、このリバウンドが起こりやすいのは以下の3つのタイミングです。飼い主はこうした落とし穴にはまらないよう注意しておく必要があります。
リバウンド危険期と解決策
  • ダイエット開始直後今まで適当な感覚で行っていた給餌を厳密なルールに従って行うようになると、飼い主は面倒臭さを感じて食餌量を戻してしまうことがあります→日記やデジタルデータで毎日の給餌量を記録しておく
  • プラトー期理論的に正しいことをしているにもかかわらずなかなか結果が出ないと、「やっても無駄だ!」という具合にモチベーションが低下し、食餌量を戻してしまうことがあります→人間のダイエットと同様、体脂肪を減らすことはそれほど簡単ではないことを理解する
  • 計画終了直前ある程度の結果が出て緊張の糸が切れてしまうと、ご褒美と称していつもより多めの食事を与えてしまうことがあります→カロリーの摂取は3秒で完了するけれども、同じカロリーを消費するには3日必要であることを肝に銘じる

不妊手術の影響

 オス猫でもメス猫でも、不妊手術後は体重が増加する傾向にあります。もしダイエットで体重を減らした後に手術した場合、それまでと同じ食事量を与えていると再び太ってしまう危険性がありますので要注意です。
 不妊手術を施した猫は一日あたりのエネルギー要求量が24%から33%減少するといいます。こうした消費エネルギーの減少に合わせ、避妊・去勢手術をした後の摂取カロリーは、安静時エネルギー要求量×1.2とするのが一般的です。この計算式から必要カロリー数を導き出し、体重や体型の変化をモニターしてみましょう。体重が増加傾向にある場合はカロリー数を減らし、逆に減少傾向にある場合はカロリー数を少し増やして調整します。なお猫の安静時エネルギー要求量に関しては摂取カロリーを調整するをご参照ください。
不妊手術の解決策
  • オス猫でもメス猫でも不妊手術後に何もしないと体重が増えるので注意
  • 摂取カロリーは安静時エネルギー要求量×1.4→1.2に減らす
  • 放浪衝動がなくなった分、おもちゃを使って運動量を増やしてあげる

肥満の再発

 せっかくダイエットに成功したにもかかわらず、再び肥満に陥ってしまうことがたびたびあります。猫の肥満再発を予防する際、最も重要な事は飼い主の意識を変えることです。猫が肥満に陥る原因は、肥満を誘発する内科的病気を除けば、ほとんどが飼い主の管理不足です。日々の摂取エネルギーを管理している飼い主の意識を変革しなければ、また容易に猫の肥満は再発してしまうことでしょう。例えば以下に列挙するような考え方はすべて改めなければなりません。
飼い主に必要な意識変革
  • 自分も太っているので、猫の肥満を責められない
  • 太っている方が可愛く見える
  • 肥満を病気だと思っていない
  • 餌を与える自分を神のように扱ってくれるのが嬉しい
  • 太っているのは生活が豊かな証である
 こうした意識が飼い主の中にある限り、猫の肥満が再発する危険性は常に潜んでいるといえます。何よりも重要なのは、肥満は病気の一種であるという危機感を持つことです。
 「ペットに暴力をふるって骨折させた」ということと「猫にエサを与えすぎて太らせた」ということは、一見全く違うことのように思えます。しかし「猫の健康を損ない苦痛を与えている」という点においては、実は同レベルなのです。