トップ猫の心を知る猫の習性ゴロゴロとのどを鳴らす

ゴロゴロとのどを鳴らす

 猫の習性の一つであるゴロゴロとのどを鳴らすという点について解説します。
 猫をなでていると、どこからともなくゴロゴロという振動が手に伝わってきますが、猫はなぜこのような行動を取るのでしょうか?

猫がのどを鳴らす理由

 猫がゴロゴロとのどを鳴らす理由として最も有名なのが、ライハウゼンの赤ちゃん返りのゴロゴロ説です。
猫がゴロゴロとのどを鳴らす理由として最も有名なのは、「赤ちゃん返り」説  ドイツ人動物学者パウル・ライハウゼン(Paul Leyhausen)は、子猫が母猫の乳房からミルクを吸っているとき、よくゴロゴロという音を出すことに気づきました。のどを鳴らす理由としては、「間違って母猫に押しつぶされないようにするため」や、「母猫に安心感を伝えるため」などが考えられます。音と振動の両方で居場所を伝えれば、たとえ母猫の耳が聞こえなくても触覚によってどこにいるのかがわかるので安心ですよね。ちなみに2017年にスウェーデン農業科学大学が行った調査では、飼い主と離れ離れになっている時間が30分のときよりも4時間のときのほうが、再会したときのゴロゴロが増えたと報告されています(→詳細)。猫は孤独を好むと思われがちですが、あまりにも長い時間一人ぼっちにされると、寂しさから気分が「子猫モード」に戻り、親猫とみなしている飼い主と再会したときに思わずゴロゴロが出てしまうのかもしれません。
 いずれにしても、成長した猫がまるで子猫のようにゴロゴロとのどを鳴らすのは気持ちが子猫に戻り、幸せや安心感を抱いているからとするのがライハウゼンの「赤ちゃん帰り説」で、現在最も広く信じられているものです。
 以下でご紹介するのは、世界一大きな「ゴロゴロ」を鳴らすことでギネス記録に公認された猫「マーリン」の動画です。1メートルの距離で測ったときの大きさは「67.8デシベル」で、これは通常の猫(25デシベル)の2.5倍に相当します。 元動画は⇒こちら
猫ののど鳴らしには「要求のゴロゴロ」というバリエーションがある  一方、猫のゴロゴロにはもっと違う役割があると指摘する人もいます。2009年、イギリス・サセックス大学の研究グループは、幸せのゴロゴロとは違う要求のゴロゴロがあることを発見しました。
 この「要求のゴロゴロ」は、猫が飼い主に対して何らかの要望を抱いているときによく発するもので、ゴロゴロ音の中に高周波の声を含んでいるのが特徴です。音声分析で高周波の声だけを取り出して被験者に聞かせると、猫を飼ったことがない人でも、なぜか「緊急性がある」という印象を持ったとのこと。逆に高周波の声を除去したゴロゴロを聞かせたところ、通常の「幸せのゴロゴロ」と判断されるようになったとも。
 このことから研究チームは、哺乳類の養育本能を刺激する謎の「高周波の声」を含んだ、「要求のゴロゴロ」というものがある可能性を明らかにしました。人間が容易に「猫の奴隷」になってしまうのは、この声のせいかもしれません。なお「通常のゴロゴロ」はこちらから、そして「要求のゴロゴロ」はこちらから確認できます(YouTube)。 The cry embedded within the purr
猫のゴロゴロは骨密度の維持に役立っている可能性がある  さらに、猫ののど鳴らしには医学的なゴロゴロがあると唱える人もいます。
 2003年、カリフォルニア大学デービス校の研究チームは、猫がのどを鳴らすとき、吸気相でも呼気相でもほぼ25ヘルツで固定されている点に着目しました。そしてこの周波数が、骨に刺激を与えて新陳代謝を活発化することに気づきます。
 このことから研究チームは、猫のゴロゴロは、骨に含まれる骨芽細胞や破骨細胞を活性化し、骨密度の維持に役立っているという可能性を突き止めました。研究が進めば、運動不足による骨密度の低下が常に問題視される宇宙飛行士への応用も考えられるとしています。「猫には9つの命がある」という伝説の背景には、こうした自然治癒能力があるのでしょうか。 Why do cats purr?
 このように、一言で「のど鳴らし」といっても、非常に多くの意味があるようです。上記した以外にも、病院の診察台で見られる「不快ののど鳴らし」、パニックに陥ったときの「鎮静ののど鳴らし」、死の直前で出される「最期ののど鳴らし」など、色々なヴァリエーションがあります。その解釈は臨機応変にしなければならないでしょう。
猫がのどを鳴らす理由
  • 子猫時代の名残
  • 満足感から
  • 不満・不快の表明
  • 要求を伝えたい
  • 自分を落ち着かせる
  • 死期が近い

猫はどうやってのどを鳴らす?

 実はこの「ゴロゴロ」という音は、音の出所がはっきりとはわかっていませんでした。以下に述べるような様々な説がありましたが、現在は最後の「喉頭筋説」で決まりだろうとされています。
のど鳴らしの色々な仮説
  • 胸腔説 静脈血が腹部から胸部へ入るとき血流が胸くう内で反響するという説。
  • 軟口蓋説 のどの奥の軟口蓋(なんこうがい)が動くという説。
  • 血管説 動脈の血管壁に血液が強く当たって音が鳴るという説。
  • 喉頭説 喉頭の筋肉が細かく痙攣(けいれん)し、声門を振動させることで鳴るという説。
 最後の「喉頭筋説」は1972年、RemmersとGautierが「ゴロゴロは声門がすばやく開閉することによって圧の上昇と下降が急速に起こることで発生する」と予測したことが始まりです。それからおよそ20年後の1991年、FrazerやSissomなどの研究により、「30~40ミリ秒(30/1000~40/1000秒)という非常に短いサイクルで、収縮と弛緩を繰り返す神経発振器が、声門を動かす喉頭筋を動かしている」ことが確認されています。ちなみに猫は26.3ヘルツの振動数で長時間ゴロゴロを続けることができ、音程は年をとっても変わらないとのこと(参考:「ドメスティック・キャット」/チクサン出版社)。フランスでは、猫のゴロゴロ音を治療やリラクゼーションに取り入れた「ゴロゴロ・セラピー」なるものもあるとか。
 なお、同じネコ科の動物でも、チーター、リンクス(オオヤマネコ)、マウンテンライオン、オセロットなどはのどを鳴らし、ライオン、トラ、ヒョウ、ジャガー、ピューマはのどを鳴らさないことが分かっています。