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緑イ貝~安全性と危険性から適正量まで

 キャットフードのラベルに記された「緑イ貝」。この原料の成分から安全性と危険性までを詳しく解説します。そもそも猫に与えて大丈夫なのでしょうか?また何のために含まれ、猫の健康にどのような作用があるのでしょうか?

緑イ貝の成分

 緑イ貝(Perna canaliculus, Green-Lipped Mussel)はイガイ科に属する二枚貝の一種。日本語では「モエギイガイ」とも呼ばれます。 キャットフードの成分として用いられる「緑イ貝」(モエギイガイ)  ニュージーランド固有のムール貝の仲間で、貝殻の周辺部が緑色に縁取られているのが最大の特徴です。養殖が盛んに行われており、大きさは最大で24cmに達します。
 緑イ貝が食習慣の一部となっているマオリ族では西洋人に比べて関節炎の発症率が低いという事実から、栄養補助食品(nutraceutical)としての研究が熱心に行われ、現在では様々なメーカーがサプリメントを発売するようになっています。

緑イ貝は安全?危険?

 緑イ貝を猫に与えても大丈夫なのでしょうか?もし大丈夫だとするとどのくらいの量が適切なのでしょうか?以下でご紹介するのは緑イ貝に関して報告されている安全性もしくは危険性に関する情報です。

重金属

 1997年、香港で緑イ貝の養殖を行っている3つの地域からサンプルを採取し、中に含まれている重金属の濃度が調査されました。検査項目はカドミウム、クロム、銅、鉛、ニッケルです出典資料:S.T Chiu, 2000
 その結果、カドミウムの濃度がすべての地域において高い濃度で検出されたと言います。具体的には7年前の1990年に行われた調査時よりも2倍高いというものでした。

トキソプラズマ

 ニュージーランド国内で市販されている人間向けの生の緑イ貝製品が、一体どの程度の割合で原虫に汚染されているのかが検証されました出典資料:Coupe, 2018
 8ヶ所の市場から合計104のサンプルを集め、PCRと呼ばれる手法で原虫のDNAを検出したところ、クリプトスポリジウムは検出されなかったもののジアルジアがおよそ1%の確率で含まれていたと言います。また13のサンプルではトキソプラズマが検出され、そのうち4つは感染能が強いスポロゾイトという形態だったとも。トキソプラズマによる推定汚染率は16.4%で、冬に収穫されたものよりも夏に収穫されたものの方が汚染リスクが高かったそうです。

関節炎の軽減

 ノースカロライナ州立大学の調査チームは痛みを感じ動きに支障がある変形性関節症の猫を対象とした給餌試験を行いました。
 40頭の猫たちをランダムで2つのグループに分け、一方には調整フード(緑イ貝抽出物+DHA+EPA+グルコサミン+コンドロイチン硫酸)、もう一方には比較用フードを9週間給餌した後、飼い主への聞き取り調査、獣医師による整形外科的な検査、及び速度計による活動性の分析を行いました。
 その結果、比較用フードを摂取していたグループでは活動性が有意に低下したのに対し、調整フードグループでは逆に増加したと言います。
 こうしたデータから調査チームはEPAやDHAを主体としたサプリメントを猫に給餌することで、活動性の改善につながるかもしれないとしています。ちなみに調整フード1,000kcal中に含まれていた成分はオメガ3脂肪酸は2.9g、オメガ6脂肪酸は8.03g、EPA+DHAは1.88gです。
 上記した試験では関節炎に対する有効性が示唆されましたが、テストフードの中には緑イ貝抽出物のほか脂肪酸やグルコサミンが含まれていました。ですから厳密にどの成分が抗炎症作用をもたらしたのかは分かっていません。個々の成分がもつ有効性を検証する際は、以下のページが役に立つでしょう。 コンドロイチンとグルコサミンが犬猫の関節に良いというのは本当? 猫にオメガ3脂肪酸(DHA・EPA)を与えると何がどう変わる?
猫における緑イ貝の安全性、危険性、および適正量に関してはよくわかっていません。原虫感染症の危険がありますので貝を生の状態では与えないでください。