トップ猫の文化猫の浮世絵美術館国芳以外の浮世絵師新板ねずみのたわむれ

新板ねずみのたわむれ

 猫の登場する江戸時代の浮世絵作品のうち、新板ねずみのたわむれについて写真付きで解説します。

作品の基本情報

  • 作品名新板ねずみのたわむれ
  • 制作年代1882年(明治15)
  • 作者歌川国政
  • 板元松井英吉
新板ねずみのたわむれのサムネイル写真

作品解説

 「新板ねずみのたわむれ」は、ネズミを擬人化し、その生活様式を描いた作品です。作者は歌川国政(うたがわくにまさ)。主役はネズミですが、猫が名わき役として登場します。
新板ねずみのたわむれ・上段図
新板ねずみのたわむれ・上段図
上段図・解説 積み上げられたまきが見えることから、場面は物置か蔵だと思われます。左上から飛来しているのは商売の神であり、また白鼠を従える神としても名高い「大黒天」。ありがたそうに拝んでいる姿も見受けられます。手前では生まれたての子ネズミを輪っぱの産湯に入れる姿、ゴロ寝した3匹の子ネズミの世話を焼いている親ネズミの姿などがユーモラスに描かれています。
新板ねずみのたわむれ・中段図
新板ねずみのたわむれ・中段図
中段図・解説  後方にふすまが見られることから、場面は室内だと思われます。「いんきょねこ」(隠居猫)と貼られた壁の前ではメガネをはずした猫がゴロ寝、その周辺ではネズミたちがやりたい放題です。ある者は菓子の袋を頭にかぶせようとし、あるものは顔に向かっておもいきり屁を放っています。さらに手前ではアワビの貝殻に盛られた猫のエサに立ちション+脱糞という、下品極まりない攻撃を仕掛けています。猫が現役のとき、よほどひどい仕打ちを受けたのでしょうか?
新板ねずみのたわむれ・下段図
新板ねずみのたわむれ・下段図
下段図・解説  壁に「火の用心」という注意書きが貼ってあることから、場面は台所だと思われます。人間の食べ物をくすねようとしたのでしょうか、手前にはネズミ捕りにつかまってしまった1匹のネズミがさめざめと鳴いています。その周囲では囚われの身となった仲間を思って涙を流す幾匹かの仲間の姿が見られます。「たわむれ」が過ぎるとこういう目にあってしまうのでしょう。