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猫はなぜ足をぶつけずに歩ける?~かなり長い時間に渡って保持される障害物記憶の不思議

 進路上に障害物がある場合、猫たちは驚くほど器用に前足と後ろ足を連動させ、歩行中に足をぶつけることはめったにありません。こうした芸当を可能にしているのは、特殊な記憶力のようです。

猫の障害物記憶実験方法

 歩いているときに猫が障害物に出会うと、足を適度に高く挙げながら進もうとします。ぶつからずに歩くには、まず前足をやや高く挙げて障害物を乗り越え、次いで後ろ足を同じ高さまで挙げることが必要です。後ろ足を動かすまでのほんの短い間、前足の高さを覚えておく能力は「障害物記憶」と呼ばれ、この記憶力がないと障害物に出会うたびに後ろ足をぶつけて痛い目にあいます。猫は四本足で歩くのでこの障害物記憶を持っていますが、一体どのくらいの時間保持されるのでしょうか? 猫が足をぶつけずに障害物を超えられるのは特殊な記憶力のおかげ  調査を行ったのはカナダにあるアルバータ大学心理学部のチーム。猫の目の前に障害物を設け、前足がそれを乗り越えたタイミングでエサを提示し、数秒~数分の中断を挟むことで一体どの程度障害物記憶が持続するのかを検証しました。

猫の障害物記憶実験結果

 実験の結果、10~200秒ほどの中断を挟んでも、猫たちは前足と同じ高さまでちゃんと後ろ足を挙上できたといいます。中には10分もの長い間記憶を保持したケースもあったとのこと。
 見たものを覚える猫の作業記憶に関しては、10~30秒程度で急激に消えていくとされています。この事実から考えると、障害物記憶は作業記憶とは別の神経回路で処理されているのではないかと推測されています。具体的に示唆されているのは、頭頂皮質後方にあるエリア5と呼ばれる部位です出典資料:McVea, 2009)
Long-Lasting Memories of Obstacles Guide Leg Movements in the Walking Cat
D.A.McVea, K.G.Pearson, Journal of Neuroscience 25 January 2006, 26 (4); DOI:10.1523/JNEUROSCI.4458-05.2006