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耳折れのスコティッシュフォールドを繁殖することは動物虐待

 耳折れのスコティッシュフォールドを繁殖すると、高い確率で関節の障害(骨軟骨異形成)を発症することが判明しています。にもかかわらず、なぜ猫のブリーダーたちは繁殖をやめないのでしょうか?理由はお金が儲かるからです。これから猫好きたちが目指すべきゴールは、拝金主義のブリーダーやペットショップを駆逐し、スコティッシュフォールドを遺伝病から開放してあげることです。

耳折れと関節疾患を生みだす遺伝子

 スコティッシュフォールドは前方に折れ曲がった小さな耳を特徴とする猫の一種。1960年の初頭、スコットランドの農場で偶然発見された「スージー」という名のメス猫が持っていた突然変異遺伝子を固定し、強引に作られた品種です。 現在生存しているすべてのスコティッシュフォールドの始祖「スージー」  2016年、アメリカ・ミズーリ大学の遺伝学チームが行った調査により、この耳折れを作り出しているのは猫D3染色体に含まれる「TRPV4」と呼ばれる遺伝子の変異である可能性が浮上しました。そしてこの遺伝子は、耳折れと同時に軟骨細胞内の反応を変化させて形成不全を引き起こす可能性が高いことも同時に明らかになりました。要するに耳が折れている個体は、この品種の遺伝病である「骨軟骨異形成」を発症しやすいということです。 スコティッシュフォールドの後ろ足に発生した骨瘤のエックス線およびCT画像 耳折れと筋骨格系疾患とが切っても切れない関係にあることが明白であるにもかかわらず、日本を含む世界中でこの品種の繁殖が繰り返されています。病気を発症するリスクがあるのになぜ繁殖を止めないのでしょうか?理由はお金が儲かるからです。

猫の品種協会と金儲け

 国際的に見ると、猫の品種の証明書とも言える「血統書」を発行している団体には「CFA」「TICA」などがあります。こうした品種業界が定めているスコティッシュフォールドに関するスタンダード(理想的な姿形に関する規定)を見てみましょう。「耳」に関する部分だけを抜粋してあります。
スコティッシュフォールドの理想的(?)な耳
  • CFAThe Cat Fanciers' Association版
    前下方に折り畳まれている。大きな耳や緩やかな折れ方をしている耳よりも、小さくギュッと折れ曲がっている方が好ましい。両耳は丸い頭蓋骨を強調するよう、帽子をかぶるような感じでついていること。耳の先は曲線であること(→出典)。
  • TICAThe International Cat Association版
    前下方に折り畳まれていること。小さくてぎゅっと丸まっている状態のほうが望ましい。丸い頭蓋骨が存分に見えるよう帽子をかぶるような感じでついていること。頭頂部に付いている状態は望ましくない。位置や折れ方さえしっかりしていれば耳の大きさは重要ではない。耳の先端は円形であること(→出典)。
  • ACAAmerican Cat Association版
    前下方に折り畳まれており、小さいこと。前下方に折れている限り、どの程度ぎゅっとたたまれているかはさほど重要ではない。耳の先端は円形であること。丸い頭蓋骨が存分に見えるよう、帽子をかぶるような感じでついていることが望ましい(→出典)。
  • WCFWorld Cat Federation版
    耳は小さく前方に折り畳まれていること。耳の先端はやや円形で頭の中央に向いていること。頭の両側に離れて付いており、頭蓋骨にぴたっと寄り添うように寝ていること。しっかり寝ていないものは失格とする(→出典)。
 上記したのは一例ですが、すべてに共通しているのは前方に折れ曲がった小さな耳がスコティッシュフォールドにとって1番望ましいという基準です。下の写真でいうと「トリプルフォールド」の状態が理想的とされています。 スコティッシュフォールドの耳折れの度合い~シングル・ダブル・トリプル
  • ストレートイヤー耳折れを生み出す「TRPV4」遺伝子を受け継がなかった個体。通常は生まれてきた子猫たちの半分がストレートイヤーになるはず。呼び方は品種団体によってまちまちで、一例は「スコティッシュショートヘアー」「スコティッシュストレート」など。
  • シングルフォールド耳の先っぽだけが折れ曲がったタイプ。「TRPV4」遺伝子を1本受け継ぎ、不完全優性遺伝により折れ方が軽くなった場合に現れやすいと考えられる。折れ方が軽いからと言って2本保有している可能性を否定はできない。
  • ダブルフォールド耳の中央から折れ曲がったタイプ。「TRPV4」遺伝子を1~2本受け継いだ場合に現れやすいと考えられる。
  • トリプルフォールド耳が根本から倒れて頭にペタンと寄り添っているタイプ。「TRPV4」遺伝子を両親から1本ずつ、合計2本受け継いだ場合に現れやすい。骨軟骨異形成を早期に発症し、重症化しやすいのはこのタイプ。
 こうした基準を元に各品種協会は品評会(キャットショー)を主催し、耳が小さくきれいに折れ曲がった猫をチャンピオンとしてもてはやします。そしてそのチャンピオンを元に繁殖を行い、生まれた子猫に血統書が付けられて一般の飼い主に販売されます。要するに骨軟骨異形成を最も発症しやすい耳折れ個体(トリプルフォールド)を元に繁殖を行い、愛らしい風貌と共に疾患遺伝子を世界中にばらまきながらお金儲けをしているということです。品種協会の収入源は血統書の登録料を支払うブリーダー、ブリーダーの収入源は血統書にお金を払う一般の購入者(飼い主)です。

日本におけるブリーダー

 日本国内でも「チャンピオン」の血統を受け継ぐスコティッシュフォールドを海外から輸入したり、国内で独自のキャットショーを開催して強引に「チャンピオン」を作り出すことにより、繁殖が繰り返されています。その猫が本当にスコティッシュフォールドであるかどうかは血統書で確認しますが、血統書を発行している団体が掃いて捨てるほどあることには驚かされます。以下は一例です。中にはホームページもなく、正式名称すらわからないような団体もあります。「?」のついている団体がそれです。
日本の猫品種団体
 上記したような団体がどのような基準で血統証を発行しているのかは定かではありません。多くの場合、ブリーダーが血統書申請フォームに母猫と父猫の情報やキャッテリ名を記入し、それを受け取った品種協会が事務的に血統書を発行するという流れになっています。
 「耳折れ同士を繁殖させてはいけない」という最低限のルールがあるのかどうかは不明です。仮にルールがあるとして、ブリーダーがそのルールに則っているのかをしっかりとチェックするシステムが整っているのかはさらにわかりません。要するに日本では、来歴(遺伝子型)がよくわからない耳が折れた猫を元に繁殖を行い、よくわからない私設の団体がその猫に対して血統書を発行し、よくわからない「純血種」という付加価値を付けてペットショップに卸したり飼育者に直接売りさばいているということです。
 ちなみに現在許容されているのは耳折れ遺伝子(F)を1本だけを保有したスコティッシュフォールドと耳折れ遺伝子を全く保有していない猫との掛け合わせだけです。これ以外の掛け合わせだとどのようなパターンでも耳折れ遺伝子を2本保有した個体が生まれてしまい、重度の骨軟骨異形成を発症するリスクが高まります。下記の表では「F」が耳折れ優性遺伝子で、1本でも含まれていると耳が折れます。「FF」は耳折れの度合いが強く関節疾患の発症リスクが高い個体、「ff」は通常の立ち耳で疾患リスクが低い個体、「Ff」は耳の折れ方も発症リスクも中間の個体です。 耳折れのスコティッシュフォールドどうしを繁殖に用いてはいけない  日本では28万~133万頭のスコティッシュフォールドが飼育されていると推定されます。こうしたすべての猫たちが最低限の掛け合わせルールを守って生まれてきたとは、残念ながら考えられません。なぜなら人気があって高く売れる耳折れ個体を効率的に出産させるため、悪徳ブリーダーが「耳折れ同士の掛け合わせ」というタブーを冒していないとは断言できないからです。また同時に、両親の遺伝子型をしっかりとチェックするシステムが存在していないからです。

ブリーダーの倫理

 CFAのブリーダー倫理には以下のような記載があります(→出典)。
私は病気あるいは伝染性の病気が現れるかも知れないどのような仔猫/猫も発症以前であるからとして売ることをしません。
私は猫種を改良する目的で、また健康で幸福な仔猫を作る目的で繁殖をします。
 耳が折れた個体が高い確率で骨軟骨異形成を発症することはすでに40年前から警告されています。そして2016年に行われた調査により、「TRPV4」と呼ばれる遺伝子の変異によって耳折れと関節疾患が同時に生み出される可能性が指摘されました。こうした知識がある場合、まともな倫理観を持ったブリーダーなら「健康で幸福な仔猫を作る」ため、耳が折れた個体を繁殖に用いる事はいさぎよく放棄するでしょう。しかし日本国内では依然として耳が折れたスコティッシュフォールドの繁殖が日夜せっせと行われています。理由は耳が折れた容姿が可愛らしくて人気があり、よく売れるからです。そこには倫理観のかけらもありません。

これから猫好きが進むべき道

 今後は世界的に「耳折れ個体の繁殖=動物虐待」という認識に変わっていく事は明白です。日本においてもこの流れをいち早く汲み取り、耳が折れたスコティッシュフォールドの繁殖を1日でも早く撲滅することが望まれます。

耳折れのスコを認めない

 品種協会の中には遺伝的な疾患を固定するわけにはいかないという観点から、スコティッシュフォールドを品種として認めていない団体がいくつかあります。具体的には「FIFe」(Federation Internationale Feline)と「GCCF」(Governing Council of the Cat Fancy)です。この品種を骨軟骨異形成の苦しみから救ってあげるためには、CFA、TICA、WCFといった国際的な品種協会が勇気を持って立ち上がり、FIFeやGCCFと同じように「耳折れ個体の繁殖を禁止する」というポリシーを打ち出す必要があります。こうした方針転換が実現すれば、日本国内にいる不勉強なブリーダーや、疾患リスクを認識しているにもかかわらずお金儲けのために繁殖を続けている非倫理的なブリーダーも、大手(おおで)を振って商売できなくなるでしょう。

耳折れの繁殖は虐待

 猫の福祉向上に勤める国際チャリティー団体「ICC」では、耳が折れたスコティッシュフォールドを繁殖することは残酷な虐待であるという立場を表明しています。また近年、スコティッシュフォールドの祖国であるスコットランドにおいて、疾患遺伝子を抱えた猫を繁殖することを法律のレベルで禁止する案が検討されています。さらに日本においても動物愛護法の延長線上にある環境省規定の細目(動物の管理・第五条の三)において「遺伝性疾患等の問題を生じさせる恐れのある組み合わせによって繁殖をさせないこと」と明記されています。要するに耳折れ個体の繁殖に関わっている時点で動物虐待になる時代が近づきつつあるということです。

すでに飼っている場合

 もうすでに耳折れのスコティッシュフォールドを購入してしまった場合は、オスでもメスでも不妊手術を施して繁殖できないようにすることが望まれます。素人が面白半分で繁殖に手を染めてしまうと、疾患遺伝子の拡散のみならず多頭飼育崩壊すら招くことがありますので要注意です。以下は2018年8月、神戸市の素人繁殖家がスコティッシュフォールドばかりを増やした挙げ句、遺棄しようとしたときの写真です。多くは地元の団体に保護されましたが、トランクの中ですでに息絶えていた猫もいたといいます。 動物と共生するまちづくりの会 神戸市の素人繁殖家が車のトランクに詰め込んだ多数のスコティッシュフォールドたち  耳折れ個体の遺伝子型が心配な場合は遺伝子検査も可能です。この検査では上述した「TRPV4」の有無を調べてくれます。一般的に、ヘテロ型(耳折れ遺伝子1本だけ保有)の場合、疾患の発症は緩やかで症状も軽めです。一方、ホモ型(耳折れ遺伝子2本保有)の場合、発症は早ければ生後7週齢から始まり、症状も重症化する傾向があります。通常ホモ型の個体はいないはずですが、先述したように耳折れの出産率を高めるため耳折れ同士をかけ合わせている悪徳ブリーダーがいないとも限りません。特に耳折れの度合いが強く、ぺたっと頭にくっついているようなトリプルフォールドの個体が要注意です。
 いずれにしても、耳が折れている時点で骨軟骨異形成を発症するリスクを抱えていることは否めない事実です。スコ座りしている姿を見たら「かわいい」と叫んでSNSに投稿するのではなく、「ひょっとすると足が痛いのかな?」といたわってあげてください。スコティッシュフォールドの骨軟骨異形成は、人医学においては「ビールス症候群」(先天性拘縮性クモ指症)や「変容性骨異形成症」に近いと考えられています。疾患に苦しんでいる人を見て「かわいい」とはまさか言わないでしょう。
  • ビールス症候群ビールス症候群は常染色体優性遺伝する疾患。折れ曲がった耳、関節の拘縮、指の折れ曲がりなどを特徴とする。長く細い指趾から「先天性拘縮性クモ指症」とも。関連遺伝子は細胞外マトリックスの細線維「フィブリン2」の形成に関わるFBN2遺伝子。ビールス症候群(先天性拘縮性クモ指症)患者に特徴的な折れ曲がった耳
  • 変容性骨異形成症変容性骨異形成症は脊椎の変形、手足にある大きな関節の腫大、手足の短縮化などを特徴とする骨系統疾患。関連遺伝子はスコティッシュフォールドの骨軟骨異形成症と同じTRPV4遺伝子。カルシウムイオンチャネルの機能が損なわれることにより、猫でも人間でも軟骨が正常に形成されず短くなる。変容性骨異形成症患者の手足で見られる関節の拘縮や短縮化

もう「知らなかった」は通用しない

 以下はスコティッシュフォールドの健康問題に関して海外で報告されている様々な文献を日本語に翻訳したものです。以下のページを参照し、耳折れ個体を繁殖することや「耳が折れていて可愛い!」と叫ぶことの倫理性を見直す時が来ています。インターネット上に無料で公開してありますので「原文が英語なので分からなかった」とか「専門書や論文が入手できなかった」いう言い訳はもう通用しません。日本国内で行われている狂騒的な耳折れ個体の繁殖を1日も早く撲滅するため、なるべくたくさんの人に伝えてあげてください。
スコティッシュフォールドのすべて
  • 品種の歴史スコティッシュフォールドは前方に折れ曲がった小さな耳を特徴とする猫の一種。1960年の初頭、スコットランドの農場で偶然発見された「スージー」という名のメス猫が持っていた突然変異遺伝子を固定し、強引に作られた品種です。 スコティッシュフォールドの歴史
  • 耳折れ遺伝子2016年、アメリカ・ミズーリ大学の遺伝学チームが行った調査により、スコティッシュフォールドの耳折れと関節の障害を同時に生み出していると考えられる原因遺伝子が特定されました。 耳折れと病気に関わる遺伝子が特定される
  • 遺伝好発疾患スコティッシュフォールドはたった1頭に生じた突然変異を固定して作り出された品種です。遺伝子プールを広げるためさまざまな種類の血統が用いられてきましたが、それでも品種特有の疾患があります。 スコティッシュフォールドに多い病気
  • 折れ耳と関節疾患折れ耳同士のスコティッシュフォールドを交配させることは禁忌とされています。しかし「折れ耳×立ち耳」のような交配で健康優良児が生まれるかというと、そういうわけではありません。このことは40年以上前から警告されています。 折れ耳と立ち耳をかけ合わせると高い確率で関節に異常が生じる
  • 骨瘤の治療スコティッシュフォールドに多い骨瘤は一度発症すると治療法がありません。副作用のある鎮痛薬を一生飲み続けるか、全身麻酔を伴う放射線治療を6回に分けて受ける必要があります。それすらできない場合、痛みを抱えながら「スコ座り」をして生きていかなければなりません。 骨瘤に対する治療法はない
  • 繁殖への非難猫の福祉向上に勤める国際的なチャリティ団体「International Cat Care」(ICC)は、耳が折れたスコティッシュフォールドを繁殖することの非倫理性を改めて強調しました。 ICCがスコティッシュフォールドの乱繁殖を非難
  • 猫好きの進むべき道これから猫好きたちが目指すべきゴールは、拝金主義のブリーダーやペットショップを駆逐し、スコティッシュフォールドを遺伝病から開放してあげることです。このページを冒頭からお読みください。