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スコティッシュフォールドに多い病気~原因・遺伝性から検査・治療法まで

 スコティッシュフォールドがかかりやすい病気を原因、遺伝性、検査法、治療法などに分けて一覧リストでご紹介します。なお出典データには海外のものも含まれているため日本に暮らしている猫には必ずしも当てはまらないことがあります。

骨軟骨異形成(骨瘤)

 骨軟骨異形成(骨瘤)とは文字通り、骨や軟骨が正常に形成されず関節に痛みが発生して正常な運動能力が損なわれる病気。診断はエックス線や超音波検査、CTスキャンやMRIなどを通して下されます。根本的な治療法はなく、痛み止めや放射線療法によって症状の悪化を防ぎながら病気と付き合っていくしかありません。 骨軟骨異形成の症状・原因・治療

骨軟骨異形成の症状

 骨軟骨異形成の主な症状は、動きたがらない、歩き方がおかしい、高い場所にジャンプできない、高い場所から降りられない、関節を伸ばすと痛がる、しっぽの付け根が硬直するなどです。早ければ生後数週齢の頃から症状を見せ始めます。病気は進行性で、年齢を重ねるごとに手足の先端が変形して膨れ上がり、「骨瘤」と呼ばれる骨の塊が形成されていきます。 スコティッシュフォールドの後ろ足に発生した骨瘤のエックス線およびCT画像

骨軟骨異形成の原因

 2016年、アメリカとオーストラリアの共同研究チームがヨーロッパ、オーストラリア、アメリカから集められたスコティッシュフォールド44頭、スコティッシュショートヘアー(耳折れ個体の同腹仔で耳が折れてないもの)22頭、ブリティッシュショートヘア14頭、セルカークレックス13頭、ペルシア5頭を対象として大規模なDNA検査を行いました。その結果、細胞のカルシウム透過性イオンチャンネルに関わる「TRPV4」と呼ばれる遺伝子の「V342F」という部位が、どうやら骨や軟骨の異常に関わっているらしいことが明らかになったといいます。これまでスコティッシュフォールドの耳折れ遺伝子は、便宜上「Fd」と表記されてきましたが、正確には上記「TRPV4遺伝子中のV342Fという部位」である可能性が大ということになります。調査に関する詳しい内容は以下のページをご参照ください。 スコティッシュフォールドの耳折れと病気に関わる遺伝子が特定される  2008年に日本の調査チームが行った調査では、不完全優性遺伝で子孫に伝わるとのこと(→出典)。「優性遺伝」とは両親どちらかから1本でも耳折れ疾患遺伝子を受け継いだら発現するというもので、「不完全」とは遺伝子を受け継いだからといって100%発現するわけではないという意味です。要するに耳折れ遺伝子を受け継いでも、ごくまれに耳折れや骨軟骨異形成を発現しない個体がいるということですが、こうしたイレギュラーが生じる原因についてはよくわかっていません。

骨軟骨異形成の治療

 骨軟骨異形成に根本的な治療法はありません。鎮痛薬で痛みを抑えるという方法がありますが、そもそも猫に長期的に投与した時の安全性が確認されている鎮痛薬は存在しません。ですから一生涯投与するとしたら、多かれ少なかれ副作用を覚悟する必要があるいということになります。
 放射線療法という治療法もありますが、変形した手足が治るわけではなく、あくまでも痛みの緩和が目的です。また照射のたびに全身麻酔を掛ける必要があり、麻酔のリスクのみならず全身もしくは照射部位に放射線障害が起こる可能性も否定できません。当然高額な治療費もかかります(→出典)。 スコティッシュフォールドにスコ座りが多いのは、体が柔らかいからではなく手足の関節が痛いから  スコティッシュフォールドの特徴の1つとして「スコ座り」というものがありますが、これは人間に対して愛想を振りまいているのではなく、手足にかかる体重を減らすための苦肉の策です。猫自身が編み出した「緩和ケア」といったところでしょうか。決して「かわいい~!」と呼べるものではありません。 猫がスコ座りをする理由

スコティッシュフォールドの将来

 世界各国でスコティッシュフォールドを繁殖すること自体が虐待であるという流れに変わりつつあります。
 イギリスでは1974年の時点で既に、聴覚障害やしっぽと手足の変形を理由に繁殖することが禁止されています。1999年、スコティッシュフォールドの関節炎について初期の報告を行ったオーストラリアのチームは、この猫を苦しみから解放する確実な方法は、耳折れの個体を繁殖に用いないことであると警告しています(→出典)。2015年、重度の関節炎を患うスコティッシュフォールドに関する調査報告を行ったトルコの医療チームは、この品種が一般的におとなしいとされているのは、関節の痛みを我慢しているからではないかとの懸念を表明しています。またおとなしいからといって痛みとうまく付き合っているわけではないとも(→出典)。さらに2015年、同じく重度の関節炎を患うスコティッシュフォールドに関する調査報告を行った日本獣医生命科学大学の医療チームは、耳が折れた個体を繁殖することは残酷であると断言しています(→出典)。
 そして近年、猫の福祉向上を目指す国際チャリティー「International Cat Care」(ICC)は、スコティッシュフォールドを安易に繁殖することの非倫理性を強い口調で非難しました。ICCはオーストラリアの獣医学者リチャード・マリク氏の発言を引き合いに出し、「この品種を繁殖することは残酷な虐待であり、ブリーダーは非難されるべきである」とかなり強い口調で糾弾しています。ICCがスコティッシュフォールドの乱繁殖を改めて糾弾 スコティッシュフォールドの耳折れは「TRPV4」遺伝子によって生み出されている  上記したように、世界的にはスコの繁殖=虐待という認識が広まりつつあります。それに対し日本では、いまだにこの品種が人気品種トップ3に当たり前のように入っており、動物を扱うテレビ番組でも頻繁に子猫を登場させています。しかしペットショップも、テレビ番組も、ブリーダーも、このページで説明したような骨軟骨異形成に関する詳細な情報は教えてくれませんし、そもそも知識すら持ち合わせていません。運良くこのページにたどり着いた方は、スコティッシュフォールドが置かれている現状と苦しみを理解し、なるべく多くの人に伝えていただければと思います。

尿管結石

 尿管結石とは、腎臓と膀胱とを結ぶ「尿管」と呼ばれる管状の組織内に結石が生じてしまった状態。猫ではシュウ酸カルシウム結石が大半を占めています。診断は尿内の結晶検査やエックス線撮影で下します。治療は結石の除去と食事療法がメインです。 腎結石の症状・原因・治療

発症リスク

 2007年4月~2014年3月の期間、麻布大学附属動物病院が尿管結石と診断された猫64例を元に統計データを作成した所、結石を生じやすい猫としてスコティッシュフォールド、アメリカンショートヘアヒマラヤンといった純血種の名が浮上してきたと言います。そしてそのリスクは標準に対して2.3倍だったとも(→詳細)。

下部尿路症候群

 下部尿路症候群(LUTD)とは、膀胱から尿道口をつなぐまでのどこかに結石などを生じてしまう病気。猫ではシュウ酸カルシウム結石やストラバイト結石が大半を占めています。診断は尿内の結晶検査やエックス線撮影で下します。治療は結石の除去と食事療法がメインです。 下部尿路症候群の症状・原因・治療

発症リスク

 ミネソタ大学の調査チームが1981年から1997年の期間、ミネソタ尿石センターを受診した尿路疾患を抱えた猫(シュウ酸カルシウム結石7,895頭+ストラバイト結石7,334頭)と北米とカナダの動物病院を受診した尿路疾患を抱えていない猫150,482頭のデータを比較したところ、スコティッシュフォールドがシュウ酸カルシウム結石を発症する確率は標準の6.1倍に達することが明らかになったといいます(→出典)。

コロナウイルス(?)

 コロナウイルスとは、ウイルスの表面にまるで太陽のコロナのような突起を持つ一本鎖RNAウイルスの総称。猫では病原性の弱い「猫腸コロナウイルス」(FeCV)と、病原性の高い変異種「猫伝染性腹膜炎ウイルス」(FIPV)があります。今現在、病原性の低い「猫腸コロナウイルス」(FECV)と致死性の高い「猫伝染性腹膜炎ウイルス」(FIPV)を事前に見分ける有効な方法は存在していません。ひとたび後者を発症してしまうと効果的な治療法がなく、二次感染を防ぐための抗生物質の投与、免疫力を高めるためのネコインターフェロンの投与、炎症を抑えるための抗炎症薬の投与などで様子を見るというのが基本方針です。猫伝染性腹膜炎の症状・原因・治療

ウイルス保有率

 2001年から2010年の期間、麻布大学の調査チームが日本国内に暮らす17,392頭の猫を対象としてネココロナウイルス(FCoV)の抗体検査を行ったところ、雑種の陽性率が31.2%だったのに対し、純血種のそれが66.7%と非常に高い値を示したといいます。さらに品種別で見たところ、スコティッシュフォールドが79.40%(313/394頭)という標準以上の値になったとも。 詳細な原因に関しては不明ですが、繁殖施設における密飼いがウイルスの伝播を促しているのではないかと推測されています(→出典)。

レーベル先天黒内障

 レーベル先天黒内障とは、眼球に外見的な異常はないのに生まれつき目が見えない眼科系疾患。根本的な治療法はありませんので、猫も飼い主も視力障害と付き合いながら暮らしていくことになります。

疾患遺伝子

 2016年、猫の遺伝子を全て解析するプロジェクト「99 Lives Cat Genome Sequencing Initiative」は、3頭の猫を対象とした全ゲノムシーケンス(WGS)を行い、ペルシャでたびたび報告されているレーベル先天黒内障という眼科系疾患の原因遺伝子特定を試みました(→出典)。その結果、「AIPL1」と呼ばれる遺伝子の変異(c.577C>T)が疾患の発症に関わっている可能性が浮上してきたといいます。その後さらに40品種に属する1,700頭の猫を対象として「AIPL1」の変異を調査してみた所、ペルシャの血統が混じった品種でのみ確認され、その保有率は1.15 %であることが明らかになったとのこと。調査チームは具体的な品種名としてペルシャのほか、スコティッシュフォールド、セルカークレックスブリティッシュショートヘアエキゾチックショートヘアヒマラヤンを挙げています。