トップ猫の健康と病気猫の循環器の病気猫の心臓の病気猫の心筋症

猫の心筋症~症状・原因から予防・治療法まで

 猫の心筋症(しんきんしょう)について病態、症状、原因、治療法別に解説します。病気を自己診断するためではなく、あくまでも獣医さんに飼い猫の症状を説明するときの参考としてお読みください。なお当サイト内の医療情報は各種の医学書を元にしています。出典一覧はこちら

猫の心筋症の病態と症状

 猫の心筋症とは、心臓の筋肉である心筋(しんきん)になんらかの異常が起こり、心臓の機能が損なわれた状態を指す広い概念です。
 心筋症はその原因により数種類(肥大型・拡張型・拘束型)に分類されますが、いずれも発症理由はよく分かっていません。心臓を構成している4つの部屋(右心房・右心室・左心房・左心室)のうち、左心室で多く発症することがわかっています。 正常な心臓と各種心筋症(肥大型・拡張型・拘束型)の比較図  猫の心筋症の症状としては以下のようなものが挙げられます。
猫の心筋症の主症状
  • ぐったりして元気がない
  • 食欲不振
  • 乾いた咳
  • 息が苦しそう
  • おなかがふくらむ(腹水)
  • 後肢麻痺(大動脈血栓)
  • キャピラリテスト陽性
キャピラリテスト
 「キャピラリテスト」とは、「毛細血管再充満時間テスト」のことで、血圧が低下しているかどうかを知る際の簡易チェックとして用いられます。具体的なやり方は、猫の歯茎を白くなるまで指で押し、離してから赤みが戻るまでの時間をチェックするだけです。血圧が正常であれば2秒未満で色が戻りますが、血圧が低下している場合は2秒以上かかります。必ずしも正確な検査法とは言えませんが、家庭で日常的にできるチェック方法としては便利です。 猫の血圧チェック方法

猫の心筋症の原因

 猫の心筋症の原因としては、主に以下のようなものが考えられます。多くの場合原因不明ですが、ウイルス感染、自己免疫疾患、遺伝などの可能性が指摘されています。
猫の心筋症の主な原因
  • 肥大型心筋症  肥大型心筋症(ひだいがたしんきんしょう)とは、左心室の筋肉が肥大することで心室容量が減少し、1回の収縮で送り出す血液量が減ってしまう病態を言います。
     6~10歳くらいの短毛のオス猫に発症しやすいと言われていますが、原因はよくわかっていません。またアメリカンショートヘアペルシャメインクーンにおいては遺伝が関係していると考えられています。
  • 拡張型心筋症  拡張型心筋症(かくちょうがたしんきんしょう)とは、心筋が細く伸びてしまい、左心房と左心室の壁が薄くなって収縮力が低下し、十分な血液を送り出せなくなってしまった病態を言います。血流不足から低体温や脱水症状といった症状を見せることもあります。
     原因としては、必須アミノ酸の一種であるタウリンの摂取不足が挙げられます。1987年、この病気とタウリンの因果関係が発見されてからペットフードにタウリンが配合されるようになり、発症率が劇的に低下したという逸話もあるくらいです。しかしタウリンが十分であるにもかかわらず発症するケースもあり、そういう場合は「特発性」、すなわち「原因がよくわからない」という表現が当てられます。なお遺伝的にはシャムアビシニアンに発症しやすいと言われています。
  • 拘束型心筋症  拘束型心筋症(こくそくがたしんきんしょう)とは、心臓内部にある線維が肥厚し、心臓の壁が固くなってうまく伸縮しなくなった病態を言います。心臓の伸展性と収縮力の両方が失われるため「中間型心筋症」と呼ばれることもあります。
     原因はよく分かっていませんが、10~12歳くらいの老齢猫に多く発症し、心筋炎が何らかの関わりを持っていると推測されています。他の2型(肥大型・拡張型)を併発することもしばしばです。

猫の心筋症の治療

 猫の心筋症の治療法としては、主に以下のようなものがあります。多くの場合、一度変性した心臓の機能を回復することは困難ですので、病気の根治を目指すというよりは、症状の悪化を防ぐ対症療法が治療のメインとなります。またどの型においても、心臓への負担を減らすため猫のストレスを最小限にとどめることは基本事項です。
猫の心筋症の主な治療法
  • 肥大型心筋症  肺に水がたまって肺水腫を併発しているときは利尿薬を与え、余分な水分を尿として体外に排出させることを促します。その後心臓が広がりやすくなる薬や心臓の肥大を抑える薬などを投与して症状の悪化を防ぎます。
     また血栓予防のためにアスピリンが投与されたり、すでに形成されてしまった血栓を溶かす薬が用いられることもあります。
     心拍数が200以下の猫の方が長生きしたというデータもあるため、日常生活の中からストレスを排除し、なるべく猫の心臓に負担のかからないライフスタイルを続けることも重要です。
  • 拡張型心筋症  低体温を起こしているときは体を温め、脱水しているときは輸液などで体液を補給します。また、胸腔内に水がたまる「胸水」(きょうすい)と呼ばれる状態を併発している場合は、注射針を用いて慎重にたまった水を吸い出します。
     心臓に対しては血管拡張薬、利尿薬、場合によっては強心薬などが投与され、心臓の機能を回復すると同時に血栓予防が図られます。うっ血性の心不全を併発している場合は、入院を余儀なくされることもしばしばです。
     また、食事中のタウリン不足が病気の一因ですので、タウリンを十分に含んだえさに切り替えるようにします。AAFCO(米国飼料検査官協会)による基準値は、フード100kcal中25mgです。 猫とタンパク質 猫に必要なアミノ酸・脂肪酸一覧
  • 拘束型心筋症  肺に水がたまって肺水腫を併発しているときは利尿薬を与え、余分な水分を尿として体外に排出させることを促します。その後血管拡張薬や血栓予防薬を投与し、体を安静に保って症状の悪化を防ぎます。予後はあまりよくなく、生存期間はおおむね3~12ヶ月の間で、2年もてば良い方とされます。