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猫の白内障の原因として最も多いのはぶどう膜炎

 白内障と診断された200頭を超える猫を対象とした調査により、老化よりもぶどう膜炎の方が発症原因として多いことが明らかになりました(2018.3.14/フランス)。

詳細

 調査を行ったのは、フランスにあるアルフォール国立獣医学校のチーム。2010年1月から2017年6月の期間、大学附属の眼科専門ユニットを受診した猫2,054頭の中から白内障と診断された猫だけを選別し、発症要因や発症時の年齢といった疫学データをまとめました。その結果、有病率が13%(268頭)、発症時の年齢中央値が9.5歳だったといいます。その他の主な結果は以下です。
白内障の疫学(268頭/383眼)
  • 発症パターン両目=42.9% | 片目=57.1%
  • 視力視力あり=61.1% | 視力なし=38.9%
  • 進行度初期=42.8% | 未熟=33.2% | 成熟=14.1% | 過熟=5.2%
白内障の発症原因
猫における白内障の発症要因一覧 Epidemiology and clinical presentation of feline cataracts in france: A retrospective study of 268 cases
Alexandre Guyonnet, Elise Donzel, et al., Veterinary Ophthalmology. 2018, DOI: 10.1111/vop.12567

解説

 白内障は加齢に伴って発症するというイメージが強いですが、意外なことに原因のトップは「ぶどう膜炎」(35.8%)というまったく別の眼科系疾患でした。猫のぶどう膜の模式図~脈絡膜・毛様体・虹彩  ぶどう膜とは虹彩(こうさい)、毛様体(もうようたい)、脈絡膜(みゃくらくまく)など血管に富んだ膜の総称のことで、今回の調査では96頭(オス63+メス33)のうち92.7%が慢性前部ぶどう膜炎92.7%、7.3%が汎ぶどう膜炎という内訳となりました。
 またぶどう膜炎の発症要因は以下です。特発性(原因を調べたけれどもわからない)と原因不明(そもそもデータが欠落している)を合わせて75%となっていますので、「なんだかよく分からないけれども発症する」というケースが圧倒的に多いようです。 猫におけるぶどう膜炎の発症要因  ぶどう膜炎の次に多かったのが先天性の白内障です。過去に行われた調査ではベンガルバーマンブリティッシュショートヘアペルシャロシアンブルーにおいて発症しやすいとされていますが、今回の調査では、新たにシャルトリューエキゾチックショートヘアメインクーンノルウェジャンフォレストキャットサイベリアンといった品種の名前が挙がってきました。さらなる調査が必要ですが、上記した品種においても白内障を発症しやすくなる何らかの遺伝性があるのかもしれません。
 目の怪我が原因となる白内障も7.8%(21頭)で確認されました。眼球に何かが刺さるケースが71%(15頭)、鈍器による損傷が29%(6頭)という内訳です。部屋の中から鋭利なものを排除するとか、高い所に重量のあるものを置かないといった配慮によって多くの場合は予防が可能でしょう。 猫の白内障の原因として最も多いのはぶどう膜炎  犬においては、およそ8割が「眼球の混濁」を主訴として病院を受診するのに対し、猫においてはほとんどが「ぶどう膜炎」を主訴として来院し、たまたま白内障が発見されるケースが多いといいます。今回の調査でもぶどう膜炎が原因となって白内障を発症するケースが多いことが判明しましたので、飼い主は「目の濁り」「片方の瞳孔だけ縮んでいる」「涙や目やにが増える」といった初期症状にいち早く気づいてあげたいものです。 猫のぶどう膜炎 猫の白内障