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老猫の介護と痛みの管理

 2017年度における猫の平均寿命は15.33歳と報告されています。猫のシニア期が7歳から始まるのだとすると、7歳から15歳までの8年ほどが「老猫との暮らし」に相当することになるでしょう。飼い主は一体どのような点に気をつけて介護を行っていけばよいのでしょうか?

老猫と暮らす時の注意

 若い猫に比べて7歳を超えた老猫では、飛んだり跳ねたりする身体能力のほか体の状態を一定に保つホメオスタシスの能力が低下しています。部屋の中を再チェックし、老猫にとって負担になっている部分がないかどうかをチェックしましょう。 猫が7歳を超えた頃から室内環境のチェックを念入りに

温度設定に注意

 老猫になると自律神経系が衰えますので、若い頃に比べて体温調整が下手になります。部屋の中の温度設定が暑すぎだったり寒すぎだったりすると、たとえ室内であっても熱中症や低体温症にかかる危険性がありますので、適温であることをチェックしましょう。もし放し飼いという飼育スタイルの場合は、事故や病気の危険性をなくすためにも完全室内飼いに切り替えて下さい。 猫が喜ぶ部屋の作り方

病院の受診回数を増やす

 老猫に発症しやすい病気の中には早期発見・早期介入がカギになるものがたくさんあります。例えば甲状腺機能亢進症糖尿病慢性腎不全などです。最後の慢性腎不全に関しては近年、ベラプロストナトリウムを含有した薬が登場したことにより、他の病気と同じように症状の進行を抑えられる可能性が示されました(→詳細)。定期的に動物病院を受診していればいち早く病気の兆候に気づき、早い段階で症状を食い止めることもできるでしょう。
 若い猫の場合1年に1回程度の健康診断で十分ですが、7歳を超えた頃からは1年に2回(半年に1回)の頻度で病院を受診するようにします。

室内を安全に

 猫が年老いて耳が遠くなったり目が悪くなったりすると、住み慣れた部屋の中においても事故に遭ってしまう危険性が高まります。例えば棚の上から落下する、お湯の入った浴槽でおぼれてしまう、着地に失敗して前足をくじいてしまうなどです。こうした不慮の事故にあわないよう、部屋の中を猫に優しいキャットプルーフの状態にしなければなりません。改めて部屋を確認し、猫にとって危険な場所は立入禁止にしてしまいましょう。 猫が喜ぶ部屋の作り方 猫に立ち入り禁止をしつける

バイタルサインを確認

 体温、血圧、心拍数、呼吸数は一般的にバイタルサインと呼ばれ、正常値からずれている場合は何らかの病気の兆候を示していると考えられています。日常的にバイタルサインをチェックしていれば、いち早く体の異常にも気付くことができるかもしれません。具体的なやり方は以下のページをご参照ください。 猫の「正常」を知る
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老猫の介護の仕方

 高齢を迎え、自分で多くのことを出来なくなった老猫を介護するのは飼い主の責任です。以下では一般的な老猫の介護の仕方をご紹介します。また猫の症状一覧を参考にしながら、猫の体、排出物、習慣、動作に変化や異常が無いかどうかを常にチェックすることを習慣化しましょう。 猫が10歳を超えた頃から介護が必要になることも

老猫のブラッシング

 体の柔軟性がなくなった老猫は、後足や肛門など、体を曲げないと届かない場所の毛づくろいをしなくなります。そうした場所の毛づくろいは、飼い主がブラッシングという形で代わりにやってあげましょう。ただし毛が抜けやすくなっていますので、あまり激しく乱暴にブラシをかけるのではなく、今まで以上に優しくゆっくりとブラッシングするのがポイントです。 猫のブラッシングの仕方
介護のポイント
 毛並みが悪くなってつやを失った状態や白髪が増えた状態はそれほど珍しくありません。しかし毛が部分的にごっそり抜けていたり、左右対称で薄くなっているような場合は内分泌系の病気を抱えている可能性も考えられます。ブラッシングのついでに猫の毛並みをよく観察し、異常の徴候がないかどうかに目を光らせましょう。 甲状腺機能亢進症を発症した猫では毛づやが悪くなる 猫のまぶたに形成されたかさぶた状の扁平上皮癌  フケに関しては皮脂の分泌量が減る分、皮膚がかさかさになって出やすくなっています。少量であれば問題ありませんが、あまりにも大量のフケが1ヶ所からボロボロと落ちるような場合は扁平上皮癌の可能性もあります。皮膚の上に変色部分や妙なコブがないかどうかをしっかりチェックするようにしましょう。 猫の皮膚の変化や異常 猫の被毛の変化や異常

老猫のシャンプー

 運動量の減った老猫は体が極端に汚れることもありませんので、今までよりシャンプーの回数を減らしましょう。口の周りや肛門など、気になる部分の「部分シャンプー」も利用します。シャンプーをする場合は、お湯の温度に気をつけて老猫の体が冷えてしまわないようすばやく乾かしてあげましょう。 猫のシャンプーの仕方
介護のポイント
 口の周りに赤いカサカサ(紅斑)やかさぶたができていることがありますが、軽度であれば許容範囲です。病変部分が急速に広がっていないことだけ確認するようにします。免疫力が低下している分、あごの下にできる猫ニキビが悪化したり治りにくくなるかもしれません。温かい濡れタオルなどで軽くこすってケアしてあげましょう。黒いプツプツを取ろうとしてゴリゴリこすると雑菌が入り、「せつ腫症」などより重篤な症状に発展する危険性がありますのでご注意下さい。 免疫力の低下に伴い猫ニキビが重症化することも  お尻の周辺に関しては、肛門を締め付ける筋肉(括約筋)が弱っている分、肛門嚢の中の分泌液(肛門嚢液)が溜まりやすい状態になっています。ベッドや毛布の上に悪臭を放つグレー~茶色い液体がどこからともなく現れた場合は漏れ出した肛門嚢液です。肛門嚢炎に発展する前に飼い主が肛門嚢をしぼり、中に溜まった液体をしっかりと絞り出してあげましょう。 猫のお尻の変化や異常 猫の肛門嚢炎

老猫の歯磨き

 噛み砕く力が弱った老猫には、通常ウェットフードなど比較的柔らかいエサを与えるようになります。しかしその反面、歯の間に歯垢などの汚れが溜まりやすくなるというデメリットがありますので、歯周病予防の観点からも飼い主がこまめに老猫の歯磨きをやってあげましょう。 猫の歯磨きの仕方
介護のポイント
 7歳を超えた猫の歯にはかなりの確率で歯石が蓄積しています。歯石を取り除こうとする場合、動物病院で行っているデンタルクリーニングをフルコースで受けることになりますが、全身麻酔をかけた上での施術になりますので、いつでも気軽に受けられるわけではありません。 全身麻酔下で行わないデンタルクリーニングには予防医学的な意味があまりない  「無麻酔デンタル」を売りにしているところもありますが、こうしたサービスにできるのは歯の表面に付着している歯石の一部を削り取ることであって、歯周病の発症と関係が深い歯の根元(歯肉溝)の歯石までは取り除けませんので注意してください。要するに「体を押さえつけて猫に大きなストレスをかけたにもかかわらず大した意味がない」ということです。
 猫が歯磨きを受け付けてくれず、なおかつ全身麻酔下での歯石クリーニングにも耐えられないという場合は、マウスクリーナーや歯石予防効果があるというフードなどで、なるべく歯石の形成を抑えるしかありません。 猫の口の変化や異常

老猫の爪切り

 猫の爪は通常、ケーブル(靭帯)の張力で自動的にさやの中に収まるように出来ています。しかし老猫の場合はこの靭帯の張りがなくなり、爪がずっと出たまま戻らない状態になります。この状態で体をかきむしると体中傷だらけになりますので、老猫の爪は飼い主がこまめに切ってあげるようにします。 猫の爪切りの仕方
介護のポイント
 爪の根元に焦げ茶色のカス(爪カス)が溜まっていることがあります。これはウンチがこびりついたものではなく、皮脂を栄養源として繁殖したマラセチアなどの微生物です。健康に重大な影響を及ぼすことはありませんが、気になる場合は削り取ってあげましょう。また若い猫に比べて爪が厚くなり、今まで使っていた爪切りではうまく切れないことがあります。そういう場合は少し大きめの犬用爪切りで代用するようにしましょう。 老猫では爪の先にカスが溜まったり爪全体の肥厚化が起こる  後足にはありませんが前足には親指がありますので、ここの爪も忘れずにカットしてあげます。伸びすぎると肉球に食い込んでしまうことがありますので要注意です。猫が肺がんを患っている場合、ガン細胞が指先に転移して肉腫を生じる「肺指症候群」を示すことがあります。手首や足首から先の痛みや腫れとしてあらわれることが多いため、指先や足先へのタッチを嫌がる場合は注意するようにしましょう。 肺がんが転移して指先の病変として現れる肺指症候群

老猫の食事

 老猫は噛む力が低下し、また歯も弱ってきますので、硬いドライフードなどを食べることが困難になってきます。キャットフードを利用するときは柔らかめのものを選んだり水でふやかしたり、「シニア用」「老猫用」など、年老いた猫のために調整されたフードを選ぶようにしましょう。
 フードをチェンジする際はいきなり総交換するのではなく、全体の10%→20%・・・という具合に、少しずつ新しいフードの割合を増やしていってください。また1度に食べられる食事の量も減ってきますので、今まで1日2回のペースで給餌していた場合は、食事の1回量を減らして少しずつ回数を増やしてあげましょう。
 運動量が低下していますので、基本的には今まで与えていたエサの量より徐々に減らしていくようにして肥満を予防します。ただし老猫では10~12歳で必要栄養量が上昇し、12歳以降はさらに増えるという奇妙な現象も確認されていますので、最終的な食事量は個々の猫に合わせてください。 キャットフード一覧
介護のポイント
 噛む力のみならず飲み込む力も弱っていますので、フードは小粒のものを選んだほうがよいでしょう。若い猫の場合、気に入らないものはすぐにカッコンカッコンして吐き戻すことができますが、老猫の場合は横隔膜の力が弱っているため胃の内容物をうまく吐き出すことができません。有毒なものや栄養を持たないものを誤飲誤食すると命に関わってきますので、今まで以上に注意するようにします。 部屋から危険なものをなくす  若い頃に比べて鼻が悪くなっている場合、フードの匂いをうまく感じることができず食欲不振と増進に陥るかもしれません。軽く温めるなど匂いが強くなるような工夫をしてみましょう。ただし人間の場合と同様、死期が近づいたときは動物自らがそのことを悟り、本能的に食事量を減らします。そのような状態の猫にチューブなどで強制的に給餌することは、逆に猫を苦しめてしまいかねませんので獣医師と共に十分考えるようにします。
 喉の渇きに鈍感になりあまり水を飲まないようになると脱水症状や尿の濃縮が起こってしまいます。脱水症状は慢性腎不全、尿の濃縮は結石の原因ですので、水飲み場を増やすとか湧き上がるファウンテン式の給水器を用いるといった工夫をし、なるべく猫が水を飲んでくれるようにセッティングしてあげましょう。

老猫のトイレ

 老猫は足腰が弱っていますので、トイレが余りに遠くにあるのは酷です。変形性関節症を患っており、移動するたびに痛みを覚えるような時はトイレの場所をなるべく近くに設置してあげる配慮が必要となるでしょう。トイレのヘリが高くてまたぐたびにしんどい思いをするという場合は、スロープなどを設けて足への負担を減らしてあげます。
 粗相(そそう=おもらしのこと)がひどい場合はペット用のオムツも市販されていますので利用しましょう。トイレに行く途中で我慢できずにおもらししてしまうような場合は、トイレの周辺にあらかじめ吸水性の良いペットシーツを敷いておくといった工夫もあります。
 おしっこやウンチをする前に「ミャー」と鳴いて飼い主を呼ぶ習慣がある場合は、たとえ睡眠中でも嫌がらずトイレに付き合い安心させてあげましょう。 猫用おむつ一覧
介護のポイント
 老猫においては慢性腎臓病の有病率がぐんと高くなりますので、定期的な健康診断のほか腎不全の兆候にも目を光らせるようにします。具体的には「おしっこの回数が多い」「水をよく飲む」「体重減少」「食欲不振」などです。また老猫では大腸内での食べ物の移動速度が遅くなり、便秘になりやい状態になっています。飼い主は日常的に下腹部をマッサージし、腸の蠕動運動を促してあげましょう。 猫のおしっこの変化や異常

老猫のベッド

 老猫は抜け毛が多くなり、被毛の量が若い頃に比べると少なくなってしまいます。また自律神経系の衰えから、うまく体温調整できないことも多くなります。老猫が寒がらないよう、温かいベッドや毛布は常に清潔に保ってあげましょう。ただし服を着せることは猫のストレスになりかねないので避けるようにします。体が弱って抵抗できない状態を「気に入ってくれたようだ」と勘違いしてしまうのはかわいそうです。
介護のポイント
 温かい寝床を用意してあげることは非常に重要ですが、冬場に人間用の電気毛布や電気あんか(湯たんぽ)を用いてしまうと低温火傷熱中症、脱水症状にかかる危険性があります。使用する場合はペット用の熱くなり過ぎないホットパッドを用いるようにしましょう。
 体力が極端に衰えて寝ている間に姿勢を変えることができないような場合は、体重が1ヶ所に集中しないよう、全身を包み込むようなやわらかいクッションを敷いてあげます。また床ずれ予防のため飼い主が寝返りを打たせてあげるとなおよしです。 猫用ベッド・マット一覧
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老猫の慢性痛と向き合う

 「猫の慢性痛の見つけ方」でも解説した通り、猫の慢性的な痛みは「通常見せる行動の減少」もしくは「異常行動の増加」という形で現れます。しかしこうした痛みの徴候は、年老いた猫が見せる老化現象と非常に似通っており、両者を見分けることは非常に困難です。例えば、以下のような項目が挙げられます。
慢性痛 & 老化現象
  • 寝る時間が多くなる
  • ひきこもりの時間が多くなる
  • 元気がない
  • 以前ほど交流したがらない
  • 睡眠サイクルが変化する
  • 攻撃性が増す
  • 遊びたがらない
  • 食欲が減って体重が落ちる
  • ルーチンが変更する
  • 粗相が増える
  • 高い場所にジャンプできない
  • 高い場所から降りられない
  • 通常であればひとっ飛びできる場所にも中間地点を経由する
  • 敏捷性を失う
  • 動きがたどたどしい
  • 飛び上がった後の着地に失敗する
  • 高いから飛び降りる前に躊躇する
  • 歩き方が変わる
 上記したような生活習慣の変化が急激に起こった場合は何とか気付きますが、変化がゆっくりと進行した場合、単なる老化現象と慢性痛の徴候とを区別することは極めて困難です。ですから特に老猫の慢性痛を見つけようとする場合は、行動やしぐさの変化を日ごろから観察すると同時に、日常的に体を触って痛がったり嫌がったりする部位がないかどうかを確認するようにします。このチェック習慣はマッサージのついでに行うと一石二鳥でしょう。ある特定の場所を触るとビクンと反応したり、嫌がって身をよじるようなしぐさが見られた場合は、何らかの痛みを疑うようにします。 猫の慢性痛を見つける 猫マッサージ
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病院で行う慢性痛管理

 「猫の慢性痛の見つけ方」および日常的なマッサージを通して猫に慢性痛の徴候が見られた場合、一旦動物病院で診察してもらいます。慢性痛の原因となっている基礎疾患が明らかになると、次の段階で行われるのが 「多面的疼痛管理」(Multimodal Pain Management)です。慢性痛は鎮痛薬だけではなかなか抑え込むことができないため、投薬治療のみならず、様々な学問分野から知識を集約して多角的(集学的)に鎮痛効果を狙います。大きく分けて「病院で行う鎮痛管理」と「自宅で行う鎮痛管理」とがありますが、ここではまず病院施設において施される痛みの管理法をご紹介します。

非ステロイド系抗炎症薬

 「非ステロイド系抗炎症薬」(NSAIDs)とは、ステロイド構造を含まない薬剤の総称です。一般的な薬効は、鎮痛、解熱、抗炎症作用とされています。国によって認可されている薬が変動するため、ある国では使用できる薬でも、他の国では使用できないといった状況がまま起こります。以下は、猫に対して用いられることが多いNSAIDsの一覧です。
猫に用いられるNSAIDs
  • メロキシカムメロキシカム(Meloxicam)は、現在ヨーロッパとオーストラリアで、猫の慢性的な筋骨格系の痛みに対する長期使用が唯一認可されている薬です。日本では「メタカム」という商品名で流通しています。
  • カルプロフェンカルプロフェン(Carprofen)は、日本では「リマダイル」という商品名で流通しています。
  • ケトプロフェンケトプロフェン(Ketoprofen)は、日本では「ケトフェン」という商品名で流通しています。
  • ロベナコキシブロベナコキシブ(Robenacoxib)は、日本では「オンシオール」という商品名で流通しています。
 他の薬剤同様、絶対的に安全なNSAIDsというものは存在しません。全てのNSAIDsにおいて胃腸障害性、肝臓障害性、腎臓障害性が認められていますので、使用量が多すぎたり、使用期間が長すぎたりすると、時として薬効よりも副作用の方が大きくなり、逆に動物を苦しめてしまいます。また、薬を使用してはいけない「禁忌」というものも存在します。例えば、ステロイドと併用するとか、慢性腎不全を抱えた猫に対して用いるなどです(→出典)。こうした禁忌を無視すると、重大な副作用を引き起こしてしまうことがあります。
 変形性関節症を患う犬を対象とした調査によると、NSAIDsの長期的な使用によってポジティブな効果が認められたとされています(→出典)。また人間を対象とした調査では、NSAIDsを長期的に使用した方が、断続的に使用した時よりも疼痛管理をうまくコントロールできたとも(→出典)。猫に対しても同様の効果があると期待されますが、NSAIDsを長期的に投与する際は、以下に示すような安全性に関するガイドラインを順守しなければなりません。
NSAIDsの長期使用に関するガイドライン
  • 治療する前に患者の体質とNSAIDとの相性を考慮する
  • 投薬する際は除脂肪体重を基準とする
  • 併存している他の病気に合わせ使用量を適宜減らす
  • 家庭における投薬を受け持つ飼い主に対し十分な知識を与える
  • 投与量を間違わないよう明確な指示を与える
  • 投与する際は、食事と一緒か食後すぐのタイミングで与える
  • 嘔吐、下痢、食欲不振といった副作用が見られる場合は直ちに使用を中止する
  • 薬に関する反応によって投与量を最小限にまで抑える
  • 多面的療法と供に用いる
 猫に対するNSAIDsの長期使用に関しては、「国際猫医学会」(ISFM)と「全米猫診療所協会」(AAFP)が共同ガイドライン(英語)を公開していますので、こちらも資料として役立ってくれるでしょう。

鎮痛薬

 「鎮痛薬」とは痛みの緩和を目的とした薬の総称です。人間や動物が「痛い!」という感覚を体感するまでには、末梢の受容器→求心性神経線維→脊髄・脳といった複雑な情報伝達ルートが存在しています。鎮痛薬を投与する目的は、上記した伝達ルートのどこかを薬の力でブロックし、痛みの伝達を途中でせき止めてしまうことです。以下に、一般的な鎮痛薬と、その薬が対象としている作用部位を示します。
鎮痛薬とその作用部位
猫の体における痛みの伝導路~末梢受容器・末梢神経・脊髄・脳
  • 末梢器官に作用局所麻酔薬・非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)・オピオイド
  • 脊髄に作用NMDA薬・オピオイド・α2作動薬・ガバペンチノイド・大麻類
  • 脳に作用オピオイド・α2作動薬
  • 疼痛抑制系に作用三環系抗うつ薬(TCA)・トラマドール
 上記した鎮痛薬は、単独で用いられたり、他の薬と併せて用いられたりします。複数の薬を同時に投与する方法は特に「多剤併用療法」と呼ばれ、メリットとして「薬剤同士が相乗効果を生む」、「急性痛から得られた豊富な臨床データがある」、「個々の薬剤使用量を少なく抑えることができ、その分副作用の危険性が減少する」といった側面を含んでいます。
 しかしメリットばかりではありません。人間を対象とした調査では、慢性疼痛を抱えた被験者のうち、約半数は30%の疼痛緩和を報告しているものの、必ずしも機能の向上や回復には結びついていないとの結果が出ています(→出典)。また特に猫においては、薬剤とその効果に関する明確なデータが欠如しており、多剤を服用した時の副作用に関しても不明な部分が多く残されています。ですから、仮に人間や犬で効果がある投薬でも、猫では副作用が激しくて逆に苦しみを助長してしまうという可能性が常にあるわけです。

非投薬的治療

 投薬治療の目的は「痛みを感じさせなくする」ことに限られますが、薬を用いない非投薬的治療の目的は、時として「痛みを引き起こしている根本原因を取り除く」ということまで含まれます。以下はその一例です。

外科的な治療

 痛みを引き起こしている部位を外科的に切り取ったり置き換えたりすることで、慢性痛を解消するという選択肢があります。具体的には、股関節の変形性関節症に対する関節置換術や、潰瘍性口内炎に対するレーザー切除、悪性腫瘍(ガン)の切除などです。
 「関節置換術」に関しては、犬の股関節形成不全症に対してよく適応されますが、猫に対してはほとんど行われていませんでした。しかし2009年の報告によると、人間や犬同様、ある程度の治療効果があるようだとの結論に至っていますので、今後はこうした整形外科的なアプローチが普及してくる可能性もあります(→出典)。

幹細胞療法

 治療が難しいことで悪名高い猫の「潰瘍性口内炎」に対し、脂肪由来の幹細胞を用いた再生医療が奏功したという報告があります。
 2015年に新設されたカリフォルニア大学デーヴィス校の「獣医再生医療研究所」(VIRC)は、猫の脂肪細胞から取り出した「脂肪幹細胞」を、潰瘍性口内炎を抱えた猫の静脈内に注射したところ、約70%において「完全治癒」もしくは「著しい改善」が見られたと報告しています(→出典)。治療メカニズムに関してはまだ不明な部分があるものの、恐らく幹細胞が免疫T細胞の活動を変化させ、炎症を抑制しているのではないかと予測されています。
 従来はレーザー切除によって対処することが多かった潰瘍性口内炎ですが、将来的には幹細胞療法が治療の第一選択肢になるかもしれません。

放射線療法

 悪性腫瘍(ガン)に起因する慢性的な痛みに対し、放射線療法が適用されることがあります。腫瘍にたくさんの神経が付着しているわけではないため、それ自体が痛みの原因になることは少ないものの、他のルートを通じて痛みを引き起こすことがあります。具体的には以下。
ガンによる痛みの発生機序
  • 腫瘍によって圧迫された組織の機械的な痛み
  • 腫瘍周辺で発生した炎症による化学的な痛み
  • 局所的な神経機構の変性と痛覚過敏
  • 局所的なpHの変動
  • 腫瘍細胞が放出する炎症性化学物質
 上記したような痛みは、放射線によって腫瘍組織さえ除去してしまえば、すっきりと霧消してくれる可能性があります。しかし放射線療法は100%安全というわけではないため、適用に際しては副作用の危険性と慢性痛による苦痛とを、厳密に差引勘定することが必要です。

代替医療

 西洋医学以外の様々な治療法は一般的に「代替医療」と総称されます。この医療は人間界のみならず、獣医学の領域にも浸透してきているようです。一般的には以下のようなものがあります。
動物と代替医療
  • ホメオパシー
  • アロマテラピー
  • カイロプラクティック
  • 鍼灸
  • 漢方
 様々な種類がある中で、近年コンセンサスを得つつあるのが「鍼灸治療」です。科学的な調査報告と効果に関する逸話的な報告が増えてくるにつれ、頭ごなしには無視できない存在になってきています。「アメリカ国立衛生研究所」(NIH)では、鍼治療の適応症として疼痛管理をリストに入れていますし、日本においてもペットの保険会社が、鍼治療だけは保険の対象とカウントしているところもあるくらいです。 猫に対して鍼灸治療を施している様子  猫に対する具体的な症例としては、「切断した後ろ足が引き起こす幻肢痛への鎮痛効果」(→出典)や「避妊手術前の鍼灸により鎮痛薬の投与量が減った」(→出典)といったものがあります。鎮痛メカニズムとして想定されているのは、特異的なツボに鍼を打つと、様々な神経伝達物質の放出が促され、痛みを伝えるC線維からの入力がブロックされると同時に、中枢の疼痛抑制系が増幅されるというものです。また、鍼を通して様々な波長の電気刺激を与えると、エンドルフィン、セロトニン、ノルエピネフリンといった神経伝達物質が放出されると想定されています。重大な副作用がないというのも大きな利点の一つでしょう。
 日本においても鍼灸治療を取り入れているクリニックが徐々に増えつつありますので、選択肢としては覚えておいてよいと思われます。 ペットの代替医療
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自宅で行う慢性痛管理

 複数の鎮痛アプローチを同時に行う「多面的疼痛管理」(Multimodal Pain Management)においては、病院で処方される抗炎症薬や鎮痛薬のみならず、猫と一緒に暮らしている飼い主も非常に重要な役割を担うこととなります。飼い主に求められるのは、処方された薬剤を継続的に投与すること、自宅でもできる鎮痛療法を実践すること、そして突破痛の出現に備えることです。「突破痛」(Breakthrough Pain)とは、鎮痛薬の効果を突破して突然発生する極めて強い一過性の痛みの事であり、慢性痛を抱えた動物でしばしば観察されます。ですから飼い主は、慢性痛の徴候に気を配ると同時に、急性痛の徴候にも気を配っておく必要があるのです。詳しくは「急性痛の見つけ方」をご参照ください。
 以下では、主に自宅において飼い主自身が行う痛みの管理法をご紹介します。

機能性食品

 「機能性食品」とは、体調を整える機能を持った食品の総称です。日本国内では似たような表現がたくさんあるため、やや混乱の様相を呈しています。

人間用の機能性食品

 人間用に製造販売されている機能性食品は、ちょっとした定義の違いによって幾つかの種類に分類されており、消費者の頭をいたずらに混乱させる原因になっています。以下は具体的な種類です。ある特定の条件を満たした時のみ、パッケージにその機能を表示することが許可されています。
人間用機能性食品の種類
  • 特定保健用食品特定保健用食品」(トクホ)とは、国が効能を審査した後、個別に許可した食品のことです。
  • 栄養機能食品栄養機能食品」とは、国の規格基準に適合した食品のことです。
  • 機能性表示食品機能性表示食品」とは、「トクホ」のように国の審査は経ていないものの、事業者が科学的根拠と共に機能性を保証している食品のことです。

動物用の機能性食品

 人間用の「特定保健用食品」や「機能性表示食品」とは違い、動物用機能性食品に関しては科学的根拠を示す必要はありません。メーカーが「ある特定の機能を持っている!」とほのめかしているものもありますが、パッケージの内容を信じるかどうかは、消費者の判断に任されてるといったところでしょう。医薬品と間違うような治療効果をパッケージに明記したり、よほどの大ウソを記載しない限り、法的にとやかく言われることがないというのが現状です。
 犬や猫の慢性痛の原因として多い変形性関節症の症状軽減に効果があるとされる機能性食品は、全てひっくるめると30ほどあります。具体的にはグルコサミン、コンドロイチン、オメガ3脂肪酸、アボカド、大豆、ムラサキイガイ、ウコン(ターメリック中のP54FPと呼ばれる物質)、ボスウェリアなどです。しかし、グルコサミンやコンドロイチンは人間の変形性関節症に対しては鎮痛効果がなかったといった情報があるなど、その効果に関してははっきりとした結論が出ていません(→出典)。また一般的に機能性食品は薬とは違って副作用がなく安全と言われていますが、そうとも限りません。例えば日本では1970年代にクロレラ関連商品によって日光皮膚炎が引き起こされた先例がありますし(→出典)、アメリカではつい最近の2015年、カリフォルニア州で藍藻類を原料としたサプリメントの摂取が原因と考えられる肝障害の症例が報告されています(→出典)。
 このように「科学的根拠を示す必要がない」という緩いルールのせいで、いいものと悪いものとが玉石混交の状態になりやすいという点が、動物用機能性食品のデメリットと言えるでしょう。
 数ある動物用機能性食品の中で、唯一「オメガ3脂肪酸」だけは、人間や犬を対象とした調査で目覚ましい効果があったとされています(→出典)。また、複数の機能性食品(EPA, DHA, グルコサミン, コンドロイチンetc)を含んだ食事を猫に対して長期的に与えたところ、慢性痛評価と日常的な動作頻度の両方が改善したという報告もありますので(→出典)、動物用機能性食品という選択肢を頭ごなしに除外してしまうのは、ややもったいないかもしれません。

環境整備

 痛みを誘発するような動きを生活の中から極力なくす「環境整備」は、慢性痛を抱えた猫の生活の質(QOL)を向上させる上で極めて重要です。具体的には以下のような方法があります。
慢性痛を抱えた猫の環境整備
慢性痛を抱えた猫に対して行う一般的な環境整備の一例
  • 高い場所にワンステップ入れる
  • 段差にスロープを設ける
  • 給餌皿を高めに設定する
  • トイレのヘリを低くする
  • フローリングからカーペットにする
 運動能力の低下から退屈になりがちな日常生活に刺激を与えるため、室内に「環境エンリッチメント」を施すことも重要です。これは、猫が本来の動きや習性を思う存分発揮できるよう環境を整えてあげることです。具体的には以下のページにまとめてありますのでご参照ください。 猫の欲求

リハビリ・理学療法

 リハビリテーションとは、筋肉や関節の機能を改善して運動能力を回復させることです。よく用いられるのは加熱、冷却、音、電気、マッサージ、運動のような物理的刺激を用いた治療法で、これらは総称して「理学療法」と呼ばれます。
動物のリハビリ・理学療法
  • 徒手療法マッサージ | 他動的可動域運動 | 関節モビライゼーション | ストレッチ | 脊髄反射刺激
  • 運動療法陸上運動(補助的/自発的) | 水中運動
  • 物理療法冷却療法 | 温熱療法 | 低レベルレーザー療法(コールドレーザー療法) | 低周波電気療法 | 超音波療法 | 電気鍼灸療法
 「物理療法」に関しては、専門の知識と設備が必要となりますので、動物のリハビリテーションに力を入れている病院を見つけ出し、定期的に通う必要があるでしょう。しかし猫の場合、環境の変化を嫌う傾向ありますので、外出・通院すること自体がストレスの原因になりかねません。十分にメリットとデメリットを比較する必要があります。一方、飼い主が自宅でできるリハビリもあります。具体的には徒手療法や運動療法です。
 「徒手療法」のメインとなるマッサージに関しては、頭や顔、首といった部分をタッチすることによって内因性オピオイド(快楽物質)や絆を深めるオキシトシンなどの物質放出を促しますので、日常的に行うことが推奨されます。詳しくは「猫のマッサージ」というページにまとめてありますのでご参照ください。猫のマッサージ  「運動療法」に関してはトイレ、寝床、食事場所をなるべく遠く離してみることから始めてみるとよいでしょう。生命の維持に直結した欲求は強いため、その欲求を満たすために猫は無理にでも体を動かそうとします。それが適度な運動につながってくれれば成功です。慢性痛を抱えた猫の飼い主は、痛みが発生しないよう、じっとしていた方が良いと考えがちですが、この考え方は全てのケースに当てはまるわけではありません。動物の体には「廃用性萎縮」というメカニズムがあり、体を使わなければその分、器官が萎縮してしまいます。つまり「慢性痛→運動不足→筋肉・末梢神経・中枢神経への刺激不足→筋肉と神経細胞の萎縮」というルートを通じ、運動能力と脳の機能の両方が退化してしまうのです。ですから「過ぎたるはなお及ばざるが如し」の格言通り、全く運動させないよりは多少運動させた方が良い場合もあるというわけです。しかしもちろん、その運動自体が激しい痛みを引き起こしていたり、おしっこを我慢するあまり膀胱炎になってしまうようだったら無理にする必要はありません。
3Dプリンターとリハビリ  近年は3Dプリンターの発達により、簡単に人工装具や補装具を作ることができるようになりました。例えば、後ろ足が動かない猫に車椅子を装着したり、片前足が拘縮している猫に対し補装具を装着するなどです。まだまだ未発展の分野ですが、非常に広い可能性を持っています。 3Dプリンターは動物用の人工装具を作る時に活躍してくれる

体重管理

 猫が太った状態にあると、それだけ関節への負荷が大きくなり、変形性関節症やそれに起因する慢性痛を引き起こしやすくなります。ですから猫の体重を管理することは、慢性痛の発生や悪化を防ぐために絶対必要な項目です。
 2015年に行われた調査によると、変形性関節症を抱えた肥満の猫では、通常の猫よりも前足にかかる体重の割合が多くなるといいます(→出典)。このことはつまり、ひとたび肥満に陥ってしまうと「膝が痛くなる→前足への負荷が増える→今度は肘も痛くなる→最終的に動かなくなる」という悪循環に陥り、肥満変形性関節症がさらに促進されてしまう危険性があるということです。 太った猫は関節炎にかかりやすいため、理想体重の猫よりも運動不足に陥りやすくなる  猫が上記したような肥満による負のスパイラルに陥らないよう飼い主がすべきことが、肥満予防であることは言うまでもないでしょう。そしてもし万が一、猫が太ってしまった場合は、次善策としてダイエットによる体重管理が必要となってきます。
 関節に痛みを抱えた猫に対して運動療法は推奨されませんので、ダイエットをする際は必然的に食事療法がメインとなります。具体的な方法は以下のページにまとめてありますのでご参照ください。また、猫に好き放題食べさせる事は愛情の証でもなんでもなく、単なる「ネグレクト」(怠慢飼育)であり、猫を太らせることは一種の動物虐待であるという意識を、飼い主自身が持つことが何よりも重要となります。 猫のダイエット
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老猫との別れの準備

 死期が近づいた猫の飼い主にとって、愛猫との別れの瞬間を想像しておくことは避けては通れない道の一つです。猫が天国に召される場所は病院、ホスピス(老猫ハウス)、自宅のうちどこがベストなのでしょうか?ペットロスに陥らないよう事前にシュミレーションしておきましょう。なお猫を放し飼いにしている場合、交通事故などでごみ収集車に回収され死に目に会えないという最悪のシナリオが待っています。まずは完全室内飼いに切り替えて下さい。

自宅で看取る

 長年付き添った愛猫を自宅で看取るというのは、飼い主にとってまず最初に考えるべき選択肢です。ちょっと外出して帰ったら既に息を引き取っていたとか、突然棚の上から落ちてそのまま動かなくなったとか、腕の中で眠るように息を引き取ったなど様々な状況がありますが、猫の死に目に会える確率が高まることだけは確かです。
 動物病院の冷たいケージの中ではなく、暮らし慣れた自宅で息をひきとったという事実は、「最後に寂しい思いをしなかったはず」という飼い主の確信につながってくれるかもしれません。また「腕の中で息を引き取った」という事実は、「最後に苦しまなかった」とか「最後にしっかり愛を伝えることができた」という飼い主の自信につながってくれるでしょう。こうした確信や自信はともにペットロスの予防に役立ってくれます。

動物病院に入院させる

 老猫が何らかの慢性疾患にかかって動物病院に入院している場合、不測の事態に対応しやすいというメリットがある反面、飼い主が猫の死に目に立ち会えなくなるという大きなデメリットがあります。「見慣れない病院の中でおびえながら息を引き取るのであれば、暮らし慣れた自宅で看取ってあげるんだった…」とはよく聞かれる後悔の言葉です。こうした後悔は時としてペットロスにつながりますので、慢性病を抱えた老猫を入院させるのか自宅で看護するのかは慎重に考えなければならないでしょう。
高度獣医療  高度獣医療とは最新の医療機器をそろえていたり専門性の高い認定医がいる動物病院のことです。老猫では腫瘍性の疾患を発症する確率が高まりますが、こうした高度獣医療を行うことができる病院にかかれば多少の延命をはかれるかもしれません。例えばペット用のCTスキャンで腫瘍の広がりを綿密に調査するとか、最新の半導体レーザーで出血を最小限にとどめつつ腫瘍を切除するなどです。
 病気を完治させる事は難しいかもしれませんが、「生きているうちにできることはすべてやった」という飼い主の自信につながれば、飼い猫が天国に行ったときペットロスに陥ることを避けることができるでしょう。ただしペットが入院している場合、死に目に会えないこともあります。

老猫ハウスに預ける

 近年「老猫ハウス」という施設が増えてきました。これは年老いた猫を預かり、寿命を全うするまで預かるというホスピスのような施設のことです。何らかの事情でどうしても猫の介護ができないという場合は最後の選択肢として考えてもよいでしょう。
 しかしこうした施設は、お金さえ払えば本来飼い主はやるべき身の周りの世話をすべて肩代わりしてくれるというメリットがある反面、ペットが亡くなったときペットロスに陥る危険性が高まるというデメリットもあります。
 例えば、突然老猫ハウスから電話が来て「お宅の猫ちゃんが死んでしまいました…」という報告を受けたらどう感じるでしょう?猫に対して深い愛情を抱いている場合「腕の中で行かせてあげたかった…」とか「ひとりぼっちで寂しくなかったかな?」などいろいろなことを考えてしまい、気分が鬱々としてしまいます。また「お金を払ってペットをやっかい払いしたのではないか?」という自問自答に延々とさいなまれるかもしれません。一方、多少大変でも自宅で猫の介護を行っていれば、こうした後悔や自責の念も少なくなり、結果としてペットロスに陥る危険性も低下してくれるでしょう。

安楽死

 安楽死とは、飼い主の意志によって猫の命を断つことです。人間に対して行うと殺人罪や自殺幇助罪に問われますが、犬や猫と言ったペット動物に行っても法律違反になるということはありません。
 安楽死を行うかどうかの判定基準は「それが猫にとってベストであり、他に代わる方法がない」と断言できることです。例えば腎不全や肺炎が悪化して猫が耐え難い苦痛を味わっていると判断できるような時がそれに相当するでしょう。最大の特徴は「ペットの死に目に立ち会える」という点です。これはペットロスを予防する上で極めて重要なポイントになります。
 安楽死はペットに対する飼い主からの最後のプレゼントになることもあれば、飼い主の心を後悔の念で押しつぶすボディーブローにもなり得る諸刃の剣です。考えるときのポイントや注意点に関しては猫の安楽死で解説してありますのでご参照ください。
猫の老化現象については→猫の老化・老衰
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