トップ猫の老化老猫の介護の仕方

老猫の介護の仕方・完全ガイド~注意点から介助の方法まで

 2017年度における猫の平均寿命は15.33歳と報告されています。猫のシニア期が7歳から始まるのだとすると、7歳から15歳までの8年ほどが「老猫との暮らし」に相当することになるでしょう。飼い主は一体どのような点に気をつけて介護を行っていけばよいのでしょうか?詳しく解説します。

老猫と暮らす時の注意

 若い猫に比べて7歳を超えた老猫では、飛んだり跳ねたりする身体能力のほか体の状態を一定に保つホメオスタシスの能力が低下しています。部屋の中を再チェックし、老猫にとって負担になっている部分がないかどうかをチェックしましょう。 猫が7歳を超えた頃から室内環境のチェックを念入りに

温度設定に注意

 老猫になると自律神経系が衰えますので、若い頃に比べて体温調整が下手になります。部屋の中の温度設定が暑すぎだったり寒すぎだったりすると、たとえ室内であっても熱中症や低体温症にかかる危険性がありますので、適温であることをチェックしましょう。もし放し飼いという飼育スタイルの場合は、事故や病気の危険性をなくすためにも完全室内飼いに切り替えて下さい。 猫が喜ぶ部屋の作り方

病院の受診回数を増やす

 老猫に発症しやすい病気の中には早期発見・早期介入がカギになるものがたくさんあります。例えば甲状腺機能亢進症糖尿病慢性腎不全などです。最後の慢性腎不全に関しては近年、ベラプロストナトリウムを含有した薬が登場したことにより、他の病気と同じように症状の進行を抑えられる可能性が示されました(→詳細)。定期的に動物病院を受診していればいち早く病気の兆候に気づき、早い段階で症状を食い止めることもできるでしょう。
 若い猫の場合1年に1回程度の健康診断で十分ですが、7歳を超えた頃からは1年に2回(半年に1回)の頻度で病院を受診するようにします。

室内を安全に

 猫が年老いて耳が遠くなったり目が悪くなったりすると、住み慣れた部屋の中においても事故に遭ってしまう危険性が高まります。例えば棚の上から落下する、お湯の入った浴槽でおぼれてしまう、着地に失敗して前足をくじいてしまうなどです。こうした不慮の事故にあわないよう、部屋の中を猫に優しいキャットプルーフの状態にしなければなりません。改めて部屋を確認し、猫にとって危険な場所は立入禁止にしてしまいましょう。 猫が喜ぶ部屋の作り方 猫に立ち入り禁止をしつける

バイタルサインを確認

 体温、血圧、心拍数、呼吸数は一般的にバイタルサインと呼ばれ、正常値からずれている場合は何らかの病気の兆候を示していると考えられています。日常的にバイタルサインをチェックしていれば、いち早く体の異常にも気付くことができるかもしれません。具体的なやり方は以下のページをご参照ください。 猫の「正常」を知る

老猫の介護の仕方

 高齢を迎え、自分で多くのことを出来なくなった老猫を介護するのは飼い主の責任です。以下では一般的な老猫の介護の仕方をご紹介します。また猫の症状一覧を参考にしながら、猫の体、排出物、習慣、動作に変化や異常が無いかどうかを常にチェックすることを習慣化しましょう。 猫が10歳を超えた頃から介護が必要になることも

老猫のブラッシング

 体の柔軟性がなくなった老猫は、後足や肛門など、体を曲げないと届かない場所の毛づくろいをしなくなります。そうした場所の毛づくろいは、飼い主がブラッシングという形で代わりにやってあげましょう。ただし毛が抜けやすくなっていますので、あまり激しく乱暴にブラシをかけるのではなく、今まで以上に優しくゆっくりとブラッシングするのがポイントです。 猫のブラッシングの仕方
介護のポイント
 毛並みが悪くなってつやを失った状態や白髪が増えた状態はそれほど珍しくありません。しかし毛が部分的にごっそり抜けていたり、左右対称で薄くなっているような場合は内分泌系の病気を抱えている可能性も考えられます。ブラッシングのついでに猫の毛並みをよく観察し、異常の徴候がないかどうかに目を光らせましょう。 甲状腺機能亢進症を発症した猫では毛づやが悪くなる  フケに関しては皮脂の分泌量が減る分、皮膚がかさかさになって出やすくなっています。少量であれば問題ありませんが、あまりにも大量のフケが1ヶ所からボロボロと落ちるような場合は扁平上皮癌の可能性もあります。皮膚の上に変色部分や妙なコブがないかどうかをしっかりチェックするようにしましょう。 猫の皮膚の変化や異常 猫の被毛の変化や異常

老猫のシャンプー

 運動量の減った老猫は体が極端に汚れることもありませんので、今までよりシャンプーの回数を減らしましょう。口の周りや肛門など、気になる部分の「部分シャンプー」も利用します。シャンプーをする場合は、お湯の温度に気をつけて老猫の体が冷えてしまわないようすばやく乾かしてあげましょう。 猫のシャンプーの仕方
介護のポイント
 口の周りに赤いカサカサ(紅斑)やかさぶたができていることがありますが、軽度であれば許容範囲です。病変部分が急速に広がっていないことだけ確認するようにします。免疫力が低下している分、あごの下にできる猫ニキビが悪化したり治りにくくなるかもしれません。温かい濡れタオルなどで軽くこすってケアしてあげましょう。黒いプツプツを取ろうとしてゴリゴリこすると雑菌が入り、「せつ腫症」などより重篤な症状に発展する危険性がありますのでご注意下さい。
 お尻の周辺に関しては、肛門を締め付ける筋肉(括約筋)が弱っている分、肛門嚢の中の分泌液(肛門嚢液)が溜まりやすい状態になっています。ベッドや毛布の上に悪臭を放つグレー~茶色い液体がどこからともなく現れた場合は漏れ出した肛門嚢液です。肛門嚢炎に発展する前に飼い主が肛門嚢をしぼり、中に溜まった液体をしっかりと絞り出してあげましょう。 猫のお尻の変化や異常 猫の肛門嚢炎

老猫の歯磨き

 噛み砕く力が弱った老猫には、通常ウェットフードなど比較的柔らかいエサを与えるようになります。しかしその反面、歯の間に歯垢などの汚れが溜まりやすくなるというデメリットがありますので、歯周病予防の観点からも飼い主がこまめに老猫の歯磨きをやってあげましょう。 猫の歯磨きの仕方
介護のポイント
 7歳を超えた猫の歯にはかなりの確率で歯石が蓄積しています。歯石を取り除こうとする場合、動物病院で行っているデンタルクリーニングをフルコースで受けることになりますが、全身麻酔をかけた上での施術になりますので、いつでも気軽に受けられるわけではありません。 全身麻酔下で行わないデンタルクリーニングには予防医学的な意味があまりない  「無麻酔デンタル」を売りにしているところもありますが、こうしたサービスにできるのは歯の表面に付着している歯石の一部を削り取ることであって、歯周病の発症と関係が深い歯の根元(歯肉溝)の歯石までは取り除けませんので注意してください。要するに「体を押さえつけて猫に大きなストレスをかけたにもかかわらず大した意味がない」ということです。
 猫が歯磨きを受け付けてくれず、なおかつ全身麻酔下での歯石クリーニングにも耐えられないという場合は、マウスクリーナーや歯石予防効果があるというフードなどで、なるべく歯石の形成を抑えるしかありません。 猫の口の変化や異常

老猫の爪切り

 猫の爪は通常、ケーブル(靭帯)の張力で自動的にさやの中に収まるように出来ています。しかし老猫の場合はこの靭帯の張りがなくなり、爪がずっと出たまま戻らない状態になります。この状態で体をかきむしると体中傷だらけになりますので、老猫の爪は飼い主がこまめに切ってあげるようにします。 猫の爪切りの仕方
介護のポイント
 爪の根元に焦げ茶色のカス(爪カス)が溜まっていることがあります。これはウンチがこびりついたものではなく、皮脂を栄養源として繁殖したマラセチアなどの微生物です。健康に重大な影響を及ぼすことはありませんが、気になる場合は削り取ってあげましょう。また若い猫に比べて爪が厚くなり、今まで使っていた爪切りではうまく切れないことがあります。そういう場合は少し大きめの犬用爪切りで代用するようにしましょう。 老猫では爪の先にカスが溜まったり爪全体の肥厚化が起こる  後足にはありませんが前足には親指がありますので、ここの爪も忘れずにカットしてあげます。伸びすぎると肉球に食い込んでしまうことがありますので要注意です。猫が肺がんを患っている場合、ガン細胞が指先に転移して肉腫を生じる「肺指症候群」を示すことがあります。手首や足首から先の痛みや腫れとしてあらわれることが多いため、指先や足先へのタッチを嫌がる場合は注意するようにしましょう。 肺がんが転移して指先の病変として現れる肺指症候群

老猫の食事

 老猫は噛む力が低下し、また歯も弱ってきますので、硬いドライフードなどを食べることが困難になってきます。キャットフードを利用するときは柔らかめのものを選んだり水でふやかしたり、「シニア用」「老猫用」など、年老いた猫のために調整されたフードを選ぶようにしましょう。
 フードをチェンジする際はいきなり総交換するのではなく、全体の10%→20%・・・という具合に、少しずつ新しいフードの割合を増やしていってください。また1度に食べられる食事の量も減ってきますので、今まで1日2回のペースで給餌していた場合は、食事の1回量を減らして少しずつ回数を増やしてあげましょう。
 運動量が低下していますので、基本的には今まで与えていたエサの量より徐々に減らしていくようにして肥満を予防します。ただし老猫では10~12歳で必要栄養量が上昇し、12歳以降はさらに増えるという奇妙な現象も確認されていますので、最終的な食事量は個々の猫に合わせてください。 キャットフード一覧
介護のポイント
 噛む力のみならず飲み込む力も弱っていますので、フードは小粒のものを選んだほうがよいでしょう。若い猫の場合、気に入らないものはすぐにカッコンカッコンして吐き戻すことができますが、老猫の場合は横隔膜の力が弱っているため胃の内容物をうまく吐き出すことができません。有毒なものや栄養を持たないものを誤飲誤食すると命に関わってきますので、今まで以上に注意するようにします。 部屋から危険なものをなくす  若い頃に比べて鼻が悪くなっている場合、フードの匂いをうまく感じることができず食欲不振と増進に陥るかもしれません。軽く温めるなど匂いが強くなるような工夫をしてみましょう。ただし人間の場合と同様、死期が近づいたときは動物自らがそのことを悟り、本能的に食事量を減らします。そのような状態の猫にチューブなどで強制的に給餌することは、逆に猫を苦しめてしまいかねませんので獣医師と共に十分考えるようにします。
 喉の渇きに鈍感になりあまり水を飲まないようになると脱水症状や尿の濃縮が起こってしまいます。脱水症状は慢性腎不全、尿の濃縮は結石の原因ですので、水飲み場を増やすとか湧き上がるファウンテン式の給水器を用いるといった工夫をし、なるべく猫が水を飲んでくれるようにセッティングしてあげましょう。

老猫のトイレ

 老猫は足腰が弱っていますので、トイレが余りに遠くにあるのは酷です。変形性関節症を患っており、移動するたびに痛みを覚えるような時はトイレの場所をなるべく近くに設置してあげる配慮が必要となるでしょう。トイレのヘリが高くてまたぐたびにしんどい思いをするという場合は、スロープなどを設けて足への負担を減らしてあげます。
 粗相(そそう=おもらしのこと)がひどい場合はペット用のオムツも市販されていますので利用しましょう。トイレに行く途中で我慢できずにおもらししてしまうような場合は、トイレの周辺にあらかじめ吸水性の良いペットシーツを敷いておくといった工夫もあります。
 おしっこやウンチをする前に「ミャー」と鳴いて飼い主を呼ぶ習慣がある場合は、たとえ睡眠中でも嫌がらずトイレに付き合い安心させてあげましょう。 猫用おむつ一覧
介護のポイント
 老猫においては慢性腎臓病の有病率がぐんと高くなりますので、定期的な健康診断のほか腎不全の兆候にも目を光らせるようにします。具体的には「おしっこの回数が多い」「水をよく飲む」「体重減少」「食欲不振」などです。また老猫では大腸内での食べ物の移動速度が遅くなり、便秘になりやい状態になっています。飼い主は日常的に下腹部をマッサージし、腸の蠕動運動を促してあげましょう。 猫のおしっこの変化や異常

老猫のベッド

 老猫は抜け毛が多くなり、被毛の量が若い頃に比べると少なくなってしまいます。また自律神経系の衰えから、うまく体温調整できないことも多くなります。老猫が寒がらないよう、温かいベッドや毛布は常に清潔に保ってあげましょう。ただし服を着せることは猫のストレスになりかねないので避けるようにします。体が弱って抵抗できない状態を「気に入ってくれたようだ」と勘違いしてしまうのはかわいそうです。
介護のポイント
 温かい寝床を用意してあげることは非常に重要ですが、冬場に人間用の電気毛布や電気あんか(湯たんぽ)を用いてしまうと低温火傷熱中症、脱水症状にかかる危険性があります。使用する場合はペット用の熱くなり過ぎないホットパッドを用いるようにしましょう。
 体力が極端に衰えて寝ている間に姿勢を変えることができないような場合は、体重が1ヶ所に集中しないよう、全身を包み込むようなやわらかいクッションを敷いてあげます。また床ずれ予防のため飼い主が寝返りを打たせてあげるとなおよしです。 猫用ベッド・マット一覧