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猫の尾・しっぽ

 マンクスのようにしっぽのない特殊な猫種を除き、全ての猫は大なり小なりしっぽを持っています。以下ではしっぽの解剖学的な構造や種類・役割などについて写真付きで解説していきます。

猫の尾・しっぽの構造

がまの穂はその見た目が猫のしっぽに告示していることから「cat-tail」と呼ばれます。  猫の尾・しっぽには色々な種類があります。一般的には18個の尾椎(びつい=しっぽを支える骨)と、しっぽを前後左右に動かす4つの筋肉、及び細かな動きをつかさどる8つの筋肉から構成されますが、長い尾をもつ種から全くしっぽの無い種まで様々ですので一概には言えません。
 ちなみに「がまの穂」という植物がありますが、これは英語で「キャットテイル(cattail=猫の尾)」といいます。もちろん、見た感じが猫のしっぽに似ているからです。以下では一般的な猫のしっぽの断面解剖図、及び種類を示します。
猫のしっぽの断面解剖図
猫のしっぽの断面解剖図
  • 内背側仙尾筋 内背側仙尾筋(ないはいそくせんびきん)が左右同時に収縮すると、しっぽが上に上がる。右のみ、もしくは左のみの筋肉が収縮すると、斜め上方に持ち上がる。
  • 外背側仙尾筋 外背側仙尾筋(がいはいそくせんびきん)は、内背側仙尾筋と尾横突間筋の補助的な役割を果たす。どちらかの筋が損傷を受けても、この筋肉が機能を補完してくれる。
  • 尾横突間筋 尾横突間筋(びおうとつかんきん)は尾椎一つ一つに付着する非常に小さな筋肉で、主としてしっぽを横に曲げる。部分的に収縮させることで、しっぽの細かい「くねり動作」を生み出すことが出来る。
  • 直腸尾筋 直腸尾筋(ちょくちょうびきん)は左右同時に収縮することでしっぽを下に引きこむ。けんかに負けたオス猫のしっぽを巻き込む動作にはこの筋肉が作用している。
  • 外腹側仙尾筋 外腹側仙尾筋(がいふくそくせんびきん)が左右同時に収縮すると、しっぽが下に下がる。右のみ、もしくは左のみの筋肉が収縮すると、斜め下方に下がる。
  • 内腹側仙尾筋 内腹側仙尾筋(ないふくそくせんびきん)は、外腹側仙尾筋と直腸尾筋の補助的な役割を果たす。どちらかの筋が損傷を受けても、この筋肉が機能を補完してくれる。
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猫の尾・しっぽの種類

 猫のしっぽはその形状によって様々ですが、以下では一般的な分類を示します。
猫のしっぽのタイプいろいろ
形状で分類した猫のしっぽの種類・一覧図
  • 1: Full Tail フルテイルは通常の長いしっぽで、約25~30センチメートルです。
  • 2: Aerial Curled Tail エアリアルカールドテイルは中空でクルッとカールしたしっぽのことです。
  • 3: Flank Curled Tail フランクカールドテイルはカールしたしっぽが脇腹に垂れ下がるタイプです。フランクとは英語で脇腹を意味します。
  • 4: Flat-to-Back Tail フラットトゥバックテイルは折れ曲がったしっぽが、背中に沿って水平に伸びるタイプです。
  • 5: Kinked Tail キンクドテイールはしっぽの先がねじれているタイプです。
  • 6: Corkscrew(Piggy) Tail コークスクリューテイルはしっぽがスクリュー(豚尾)のようにカールしたタイプです。ブタのしっぽにも似ていることからピギー(子豚)テイルとも呼ばれます。
  • 7: Bob Tail ボブテイルは6~7センチメートルの短いしっぽのことです。有名な猫種ではアメリカンボブテイルジャパニーズボブテイルなど、マイナーな猫種ではクリリアンボブテイルメコンボブテイルなどがいます。
  • 8: Rumpy Manx ランピーマンクスはマンクスという種のうちの「ランピー」という亜種のもつ尾のことです。
 なお、しっぽの短い猫(ボブテイル)はとりわけ日本に多いといわれていますが、これには江戸時代の猫股伝説(ねこまたでんせつ)が関与しているのではないかと考えられています。
猫股伝説
 しっぽの短い、いわゆる「ポンポンシッポ」は日本の猫に多いとされ、欧米ではジャパニーズボブテイルという純血種まで作られているくらいです。さてこの「ポンポンシッポ」が日本に多い理由ですが、日本に古くから伝わる「猫股(猫又)伝説」が関与している可能性があります。 日本古来の猫股伝説が、短いしっぽの猫を選択繁殖させる要因だったかもしれない  そもそも「猫股(猫又)」とは、日本の民間伝承や古典の怪談、随筆などにある猫の妖怪で、大別して山中にいるものと、人家で飼われているネコが年老いて化けるといわれるものの2種類があります。
 江戸時代以降には、人家で飼われている猫が年老いて猫又に化けるという考えが一般化し、人の言葉を話したり二本足で歩いたり、果ては人を食い殺したりするとして恐れられていました。しっぽの長い猫は、そのしっぽが二つに分かれて猫又に化けるという迷信も時を同じくして広まり、その反動として、突然変異種であるしっぽの短い猫がもてはやされたのではないかと推察されています。
 つまり、現代に見られるしっぽの短い猫は、大昔に生まれた突然変異種の子孫であり、「猫股伝説」によって作られた日本特有の姿だというわけです。 ジャパニーズボブテイル
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猫の尾・しっぽの役割

 猫の尻尾には様々な役割があります。犬の場合「犬種標準」(けんしゅひょうじゅん=その犬の持つべき理想的な姿)に合わせて、子犬の頃にしっぽを切り取ってしまうこともありますが、猫のしっぽを切ると大変なことになります(もちろん犬も大変でしょうが・・)。以下では猫のしっぽがもつ役割を述べます。

体のバランスを保つ

 猫のしっぽの役割としてはまず、動いているときの体のバランスを保つという点が挙げられます。
 時速100キロ近くで走るチーターというネコ科動物がいますが、チーターが 獲物を追いかけて小刻みに左右に曲がるとき、体がスピードに負けて倒れてしまわないよう、しっぽを巧みに動かしてバランスをとっているのが分かります。これと同じように、猫も走るときやジャンプするとき、あるいは高いところから飛び降りる ときなど、体のバランスを保つためにしっぽを利用していると考えられます。
チーターの走行としっぽ
 以下でご紹介するのは、しっぽでボディバランスをとりながら疾走するチーターの動画です。カーブを切る際にぶるんぶるんとしっぽを回してバランスを取っている瞬間をご確認下さい。 元動画は⇒こちら

防寒具

寒いときに猫は自分のしっぽを顔に巻きつけ、風雨や寒さをしのぐ  猫のしっぽの役割としては、防寒具という側面を無視できません。
 気温が15度を下回ると、猫は体を丸くして眠りますが 、そのときしっぽで顔を隠すような姿勢をとります。これは人間でいうと、ちょうど「マフラー」を首に巻いている状態といえるでしょう。このように、ふかふかのしっぽは状況によって防寒具としての側面も持っています。

マーキング

猫がしっぽをするつけるのは、甘えの表現というよりも、「においつけ」としての意味合いが強い  猫のしっぽは臭いを対象物にこすりつけ、自分の縄張りや所有権を主張するマーキングにも用いられます。
 猫の体には至るところに臭腺(しゅうせん) と呼ばれる、自分固有の臭いを発する器官があり、額の両側、唇の両側、顎の下、肉球、肛門、そしてしっぽなどに存在しています。猫がしっぽを巻きつけている光景をたまに見かけますが、こうすることでしっぽから発せられる自分のにおいを対象物に残しているものと考えられます。

感情を表す道具

 猫のしっぽの役割としては感情を表現する道具という側面もあります。猫に言わせれば、「別に誰かに感情を伝えたいんじゃなくて・・勝手にしっぽが連動するんだよ !」といったところでしょうが、以下に代表的なしっぽと感情の相関関係を示します。
猫のしっぽと感情の関係
しっぽに現れる猫の気持ちいろいろ
  • しっぽをピーンと立ててすりよってくる  写真左に見られる「しっぽをピーンと立ててすりよってくる」という行為は、母猫に依存していた子猫時代の気分が、何かの拍子によみがえった時などに見られます。
     母猫は子猫のお尻をなめて排便を促したり衛生(えいせい)を保ったりしますが、そのとき子猫は「しっぽをピーン」と立てて母猫に身を任せます。つまり大人になった猫が「しっぽピーン」という行動を取ってすりよってきたとき、その猫の心理は子猫時代にタイムスリップしていると考えられるのです。 しっぽを立ててすりよる
  • しっぽをふくらませて弓なりにしたり立たせる  写真中央に見られる「しっぽをふくらませる」という行為は、怒りに駆られたり、逆に恐怖におののいているときに見られます。
     全身の毛やしっぽの毛を逆立てるということは、外敵に対して自分を大きく見せようとする「ハッタリ行為」です。ですからしっぽをふくらませていわゆる「タヌキしっぽ」を作っている猫は、相手を攻撃しようと威嚇しているか、怖さを隠すために怒ったふりをして相手を退散させようとしていると考えられます。 毛を逆立てて歯を見せる
  • しっぽを股の間に挟んで体を小さく見せる  写真右に見られる「しっぽを股の間に挟む」という行為は、自分を小さく見せて敗北と服従を示すときに見られます。
     相手の怒りにこれ以上油を注がないよう、負けを認めてしまうときなどです。見たことの無い奇妙な物体や動物に出会って恐怖心を感じているときや、オス猫がけんかに負けたときなどに見られます
  • しっぽを1秒間隔で根元から小刻みに振る  猫が1秒間隔くらいで、根元から小刻みにしっぽを振っているときは、いらだちやストレスを感じていると疑ってみるとよいでしょう。
     犬はうれしいときにしっぽをフリフリしますが、猫はちょうど逆の心理のときにしっぽをフリフリするとお考え下さい。飼い主がしつこく猫の体をなでようとしたり、子供が乱暴な抱き方をしたときなどに見られます。 しっぽを左右に振る
  • 呼びかけなどに対して2~3度軽くしっぽを振る  猫の名前を呼んだにもかかわらず、2~3度軽くしっぽを振っただけで動こうとしないときは、「聞こえてるよ・・でも今は動きたくないんだ」といった意味合いを持ちます。ちょうど母猫が子猫をいなす感じに近いでしょう。
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