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猫は生態系を破壊している

 猫の都市伝説の一つである「生態系を破壊している」について真偽を解説します。果たして本当なのでしょうか?それとも嘘なのでしょうか?

伝説の出どころ

前足で鳥をしとめようとしている猫  「猫が生態系を破壊している」という都市伝説が生まれる大きなきっかけとなったのは、2013年1月に公開された「アメリカにおける放浪猫が野生動物に及ぼす影響」(PDF・英文)と題された論文だと考えられます。この論文では具体的な数字とともに、自由に外を出歩くことができる猫が、野生動物に対してどのような影響を及ぼしているかが示されました。概要は以下です。
放浪猫と野生動物
  • 年間14億~37億羽の鳥類が犠牲になっている/犯人の69%は飼育者のいない野良猫である
  • 哺乳動物年間69~207億頭の哺乳動物が犠牲になっている/犯人の89%は飼育者のいない野良猫である
  • 爬虫類年間2億5,800万~8億2,200万匹の爬虫類が犠牲になっている
  • 両生類年間9,500万~2億9,900万匹の両生類が犠牲になっている
 論旨をまとめると、「猫が野生環境において動物を無差別に大量殺戮しており、世界における外来種・ワースト100にリストアップされているのも無理からぬことである」といった感じになります。
 論文の中で示された数字が、一瞬目を疑うような莫大なものであったため、読んだ人へのインパクトは絶大でした。その結果、さまざまなメディアで取り上げられるようになり、「猫が野生動物を減らしている」という記事の見出し部分だけが一人歩きするようになりました。「猫が生態系を破壊している」という都市伝説は、このようにして生まれたのだと推測されます。
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伝説の検証

 都市伝説が示しているように「猫が生態系を破壊している!」と声高に叫ぶ人がいます。その一方、「いや猫は生態系の破壊に関わっていない!」と主張する人も同時に存在しています。この両者にはそれぞれ問題点があり、そのせいで、一番肝心な真実がぼやけてしまっているのが現状です。

「反猫派」の問題点

 猫を快く思っていない人たちが情報操作をすることで、猫に対するネガティブキャンペーンを展開している可能性が示唆されています。
 冒頭で紹介した「アメリカにおける放浪猫が野生動物に及ぼす影響」(PDF・英文)という論文に関しては、実は後日談があります。まず、アメリカ国内で猫の福祉向上に努める「Alley Cat Allies」では、この論文を「ニセ科学」(junk science)と糾弾し、続いてCNNのジャーナリスト、エリン・バーネットも「どうもおかしい」という疑義を呈し始めました。そこで、第三者であるマサチューセッツ大学の統計学者グレゴリー.J.マシューズ博士に査読を依頼したところ、論文には重大な欠陥が見つかったといいます。概要は以下。 Junk science gets cats killed
論文の欠陥部分
  • 査読が入っていないデータがある
  • 1930年代の非常に古いデータが含まれている
  • 同じデータを2回カウントしている箇所がある
  • メタ分析がなされていない
  • 季節、地域、狩猟機会の変動が考慮されていない
 上記したような重大な欠陥を見つけた博士は、「もし大学の新入生がこのようなレポートを提出したら、落第点だろう」と結論付けています。
 このことをきっかけとして、論文を提出した研究者、およびそれを支援した機関に対し、「最初からアメリカ国内にいる数百万頭の野良猫たちを大量処分することが目的だったのではないか?」という疑いの目が向けられるようになりました。言うなれば、「反猫派による情報操作」といったところです。

「親猫派」の問題点

 猫好きの人たちは、生態系の中における猫のハンターとしての立場から目をそむけているのではないかとの指摘もあります。
 2012年、屋外を放浪している猫の効果的なマネジメント方法を探る目的で、「猫派」の人々338名と「鳥派」の人々239名に対する意識調査がアメリカで行われました。その結果、両者の間には大きな意識格差があることが明らかになったといいます。 Opinions from the Front Lines of Cat Colony Management Conflict 「猫が狩りをするのは自然なことであるか?」に対する猫派と鳥派の回答
「島以外で生態系に影響を及ぼすか?」に対する猫派と鳥派の回答  「猫が狩りをするのは自然なことであるか?」という質問に対して「猫派」の人々は、「当然」と「多分」を合わせて59%の人が賛意を示した一方、「鳥派」の人々は88%が「とんでもない」と否定的な意見を寄せています。また「島などの閉鎖された空間以外でも猫は生態系に影響及ぼすか? 」という質問に対し、「猫派」の人々は39%が「当然」と回答した一方、「鳥派」の人々は90%と、大多数の人が賛意を示す結果となりました。
 このように「猫派」の人々と「鳥派」の人々の間では、猫が生態系に及ぼす影響に関し、非常に大きな認識の隔たりがあることがわかります。ここで注目すべきは、「猫が病原体の拡散源になりうるか?」という質問に対する回答です。猫派の人々は、72%もの人が「とんでもない」と回答しています。猫エイズ、猫白血病ウイルス、カリシウイルス、ヘルペスウイルスなど、猫の間で容易に蔓延する病気があるにも関わらずこうした回答をしているということは、よほどの無知か、よほど現実から目をそらしているかのどちらかです。
 もし猫派の人々が、猫に恋するあまり盲目となり、相手が持つ「病気の拡散」や「過剰な捕食行動」といった負の側面から意図的に目を背けているのだとすると、それは情報を意図的に操作するのと同じくらい問題でしょう。
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伝説の結論

 外を自由に出歩くことのできる猫が、野生動物を殺して生態系に悪影響を及ぼしているという議論は、未だ決着を見ていません。
忍び足で白鳥を狙っている猫  「反猫派」の人々は、「猫は毎年大量の野生動物を仕留めて生態系を壊している!」と主張しますが、「猫=悪者」という結論に向かって出来レースをしている可能性を否定できません。一方「親猫派」の人々は、「猫は環境に無害である!」と主張しますが、それは猫に恋するあまりの盲目現象なのかもしれません。真実はおそらく、両者の中間のどこかにあるのでしょう。それがどこなのかがはっきりするまでは、もう少し時間がかかりそうです。
 今の段階で確実に言えることは、猫にはたとえ空腹でなくても獲物を殺してしまう「満腹狩り」という習性があるということです。外出許可を与えてしまうと、目についた小動物に対して狩猟本能が目覚め、無益な殺生を行ってしてしまうかもしれません。それが生態系にどう影響するかまでは不明です。しかし生態系を保存すると同時に、野生動物から感染する病気(クリプトコッカス・レプトスピラetc)を予防し、また糞尿による環境汚染を減らすためには、猫を外出禁止にするに越したことはないでしょう。
猫の外出禁止令
Birdsbesafe®
 「Birdsbesafe®」は猫の狩猟行動の犠牲になる鳥を減らすために開発された首輪です。Birdsbesafeを装着した猫 特に赤色と虹色の首輪において、鳥やトカゲといった小動物の持ち帰り率が50%以上低下するという研究結果をもとにして作られました。ただし、基本的に夜行性で色覚が乏しいネズミなどのげっ歯類の持ち帰りに関してはあまり効果がありません。 Birdsbesafe®(amazon)
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