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猫伝染性貧血

 猫の猫伝染性貧血(ねこでんせんせいひんけつ)について病態、症状、原因、治療法別にまとめました。病気を自己診断するためではなく、あくまでも獣医さんに飼い猫の症状を説明するときの参考としてお読みください。なお当サイト内の医療情報は各種の医学書を元にしています。出典一覧はこちら

猫伝染性貧血の病態と症状

 猫伝染性貧血とは、マイコプラズマ(真性細菌)のうち、赤血球表面に取り付いて機能不全に陥れる性質を持った「ヘモプラズマ」(Hemotropic Mycoplasma)と呼ばれる種によって引き起こされる貧血のことです。 かつては「ヘモバルトネラ・フェリス」(Haemobartonella felis)が病原菌と考えられていましたが、遺伝子検出技術の向上により現在では「マイコプラズマ・ヘモフェリス」(Mycoplasma haemofelis)という区分に修正されつつあります。 赤血球に潜んだマイコプラズマ・ヘモフェリス(Mycoplasma haemofelis)  貧血症状を引き起こすヘモプラズマのうち、猫に感染するものとしては以下の3種が確認されています。最も頻度が高いのは一番最初の「マイコプラズマ・ヘモフェリス」です。
猫に感染するヘモプラズマ
  • M. haemofelis
  • Candidatus M. haemominutum
  • Candidatus M. turicensis
 血液中の赤血球表面に取り付いたマイコプラズマ・ヘモフェリスは、通常であれば血液中に約30%程度ある赤血球数を20%程度まで減少させ、急性の貧血症状を引き起こします。また何らかの理由で免疫力が低下している猫では、体内の病原菌を正常に駆逐することができず、貧血が重症化する傾向にあります。感染した猫を治療しないまま放置した場合、死亡率は30%にも達するといわれていますので、以下に示すような症状を早期に発見することが重要です。
猫伝染性貧血の主症状
正常な猫の歯茎と貧血状態の猫の歯茎の色
  • 発熱
  • 食欲不振
  • 貧血症状(結膜や口腔粘膜の蒼白化)
  • 呼吸困難
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猫伝染性貧血の原因

 感染経路に関しては未知の部分もありますが、猫伝染性貧血の原因としては以下のようなものが考えられます。
猫伝染性貧血の主な原因
  • 猫同士のケンカ  猫同士がケンカすることにより体に傷が付き、そこから病原菌が入り込むというルートです。2016年にドイツで行われた調査では、オス猫の感染率はメス猫の3.6倍、外を出歩く猫は外に出ない猫の9.6倍、多頭飼い猫は単頭飼い猫の8.7倍感染リスクが高いと報告されています(→詳細)。これら全てが示しているのは、「出血を伴うような敵対的闘争」が感染率を高めているという可能性です。感染猫の唾液、歯茎、爪などには菌が付着していることから、恐らく噛み傷や引っかき傷を通して病原菌が体内に侵入してしまうのでしょう。
  • 外部寄生虫  ノミやダニなど、猫の血液を吸い取る外部寄生虫が、ヘモプラズマごと感染猫から他の猫に移動するというルートです。
  • 免疫力の低下  猫白血病ウイルス感染症猫エイズにかかっている猫、脾臓を摘出した猫、糖質コルチコイド投薬を受けている猫、老猫など、何らかの理由で免疫力が低下している個体においては体内に潜伏していた菌が増殖し、突如として症状を発現することがあります(日和見感染)。
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猫伝染性貧血の治療

 猫伝染性貧血の治療法としては、主に以下のようなものがあります。
猫伝染性貧血の主な治療法
  • 投薬治療  抗生物質の投与がメインとなり、発症後すぐに適切な治療を行えば、ほとんどの場合症状が消えます。しかしヘモプラズマが完全に駆逐されず、そのまま体内に保有するキャリアになることも少なくありません。これらのヘモプラズマは、猫の免疫力が低下したタイミングを見計らって増殖する、いわゆる日和見感染(ひよりみかんせん)を見せることもあります。 
  • 輸液・輸血 貧血が重度で、生命に危機が及んでいるような場合は輸液の静脈内投与や輸血が行われることもあります。
  • 飼い主の側の注意  想定しうる感染経路を日常生活からなくすことが予防につながります。具体的には去勢・避妊手術を施して完全室内外にし、猫同士のケンカを減らすこと、およびノミやダニなどの駆除をしっかりと行うことです。 猫を飼う室内環境 猫の不妊手術 
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