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猫白血病ウイルス感染症(FeLV)~症状・原因から予防・治療法まで

 猫の猫白血病ウイルス感染症(ねこはっけつびょうういるすかんせんしょう)について病態、症状、原因、治療法別に解説します。病気を自己診断するためではなく、あくまでも獣医さんに飼い猫の症状を説明するときの参考としてお読みください。なお当サイト内の医療情報は各種の医学書を元にしています。出典一覧はこちら(🔄最終更新日:2023年3月)

猫白血病ウイルス感染症の原因

 猫白血病ウイルス感染症は、「猫白血病ウイルス」(FeLV, Feline Leukemia Virus)に感染することによって引き起こされる疾患のことです。FeLVはガンマレトロウイルスの一種で、自己複製と粒子生成に必要な「gag」「pol」「env」という遺伝子を有したシンプルな構造をしています。特徴は骨髄、小腸上皮など活発に分裂する細胞内でしか自己複製できないという点です。種特異性が高く、犬や人間といったネコ科以外の動物には感染しません。 猫白血病ウイルス(FeLV)の顕微鏡写真と構造模式図  ウイルスは感染した猫の唾液、鼻粘液、糞、乳、尿に含まれているため、母猫による子猫の保育、グルーミング、食器やトイレの共有などによってすぐにウイルスが広がってしまいます。また感染した母猫から胎盤もしくは初乳を通して子猫に垂直感染するケースもあります。FeLVが「フレンドリーな猫の間で感染が広がりやすい」と言われているのはそのためです。

FeLV感染のリスク

 猫がFeLV(猫白血病ウイルス)に感染するリスクを高める危険因子がいくつか確認されています。さまざまな国で行われた調査で共通して報告されているのは以下に述べる3項目です。
FeLV感染の世界共通リスク
猫白血病ウイルス(FeLV)感染の世界共通リスクは外猫、オス猫、成猫
  • オス猫去勢していないオス猫の場合、放浪癖が強いため感染した他の猫と接触してしまう危険性が高まります。またメス猫を巡って他のオス猫とケンカするという状況も、傷口からウイルスが感染してしまう危険性を高めるでしょう。
  • 屋外アクセス野良猫や屋外に自由に出られる放し飼い猫の場合、不特定多数の外猫とコンタクトする機会がありますので、どうしても感染リスクは高まってしまいます。
  • 成猫長く生きていればいるほどウイルスと出くわすリスクが高まりますので、単純に子猫よりも年長の成猫のほうが感染リスクは高まります。
 FeLVを対象とした疫学調査は膨大にありますが、最大規模のものを一つだけご紹介します。
 2004年の8月から11月の期間、アメリカとカナダにある345の動物病院を受診した猫9,970頭と、145の動物保護施設に収容された猫8,068頭を対象とした大規模な疫学調査が行われました(Levy et al., 2006)。その結果、FeLVの抗原陽性率は2.3%(409頭)、FIV(猫エイズ)の抗体陽性率は2.5%(446頭)、そして両疾患の複合感染率は0.3%(58頭)であることが判明したといいます。さらにFeLV感染の危険因子を統計的に調べたところ、7ヶ月齢未満の子猫よりも7ヶ月以上の成猫のほうが2.5倍、未避妊のメス猫よりも未去勢のオス猫の方が2.4倍、無症状の室内飼い猫よりも症状が現れた放し飼い猫の方が8.9倍も感染リスクが高かったそうです。
 「オス猫」「成猫」「屋外アクセス」という代表的な危険因子がきれいに出揃っていることがおわかりいただけるでしょう。

ネコノミとFeLVの関係

 近年では、ネコノミが猫白血病ウイルス(FeLV)を媒介する可能性が示されています。
 2003年、ドイツの調査チームはウイルスを保有する猫の血液をネコノミに与えた後、ウイルスがどこに行くのかを調査しました(Vobis, 2003)。その結果、ノミの糞からも体内からも検出されたといいます。さらにノミを2つのグループに分け、一方にはウイルスを保有していない血液、他方にはウイルスを保有している血液を再び与えました。すると、ノミの糞や体内からだけでなく、なぜか餌として与えた血液中からもウイルスが検出されたそうです。ノミが血を吸い取る過程で体内に保有しているウイルスが外に出て、血液を汚染したものと推測されます。 猫白血病ウイルス(FeLV)の感染源としてネコノミの存在を無視できない 猫白血病ウイルス(FeLV)は一般的に猫同士の直接的な接触(ケンカ・交尾・グルーミングなど)を通して感染すると考えられていますが、それ以外にもノミによる間接的な感染ルートがあるのかもしれません。この仮説を裏付けるかのように、2002年に日本大学の調査チームが行った報告(Maruyama, 2002)では「ネコノミに感染している猫ではFeLV感染率が高くなる傾向が見られた」とされています。これからはFeLV感染予防の一環として「ノミの駆除」をマスト化する必要がありそうです。 猫のノミ皮膚炎

FeLVの感染率

 放し飼いや完全室内飼いなど、猫の飼育スタイルを度外視して調べたときのFeLVの感染率に関しては国によって大きなばらつきがあります。例えばアメリカ2.3%、ドイツやカナダ3.6%、エジプト4.6%、タイ24.5%などです。
 では日本における感染率は一体どのくらいなのでしょうか?2002年に日本大学のチームが日本全国から集めた1,088の血液サンプルを調べたところ、陽性率が2.9%(32サンプル)だったと報告されています(Maruyama, 2002)。また2008年3月から10月の期間、山口大学の調査チームは47都道府県にある動物病院に協力を仰ぎ、合計1,770の血液サンプルを日本全国から収集しました(Kawamura, 2013)。抗原テスト(SNAP FeLV/FIVコンボ)によってFeLVの有無を調べたところ、全体の12.2%に相当する216サンプルが陽性だったといいます。陽性率は地域によって大きなばらつきがあり、特に南部の地域で高い陽性率が確認されました。具体的な内訳は以下です。 FeLVの陽性率ごとの色分け
北海道・東北北陸関東中部
北海道
3.45%
新潟
7.5%
茨城
10%
山梨
10%
青森
0%
富山
22.5%
栃木
7.5%
長野
7.14%
秋田
5%
石川
5%
埼玉
5.71%
静岡
5%
岩手
15%
福井
5%
群馬
7.5%
愛知
6.67%
山形
15%
-千葉
26.3%
岐阜
2.5%
宮城
10%
-東京
13.04%
三重
7.5%
福島
7.5%
-神奈川
8.11%
-
関西中国四国九州・沖縄
滋賀
10%
鳥取
0%
愛媛
15%
福岡
27.5%
大阪
5%
島根
15%
香川
5%
佐賀
20%
京都
10%
岡山
5%
徳島
15%
大分
7.5%
奈良
11.63%
広島
0%
高知
27.5%
長崎
22.5%
和歌山
20%
山口
10%
-熊本
70%
兵庫
2.44%
--宮崎
20%
---鹿児島
22.5%
---沖縄
2.94%
 都道府県によって感染率に大きな格差が生まれる理由に関してはよくわかっていません。一例では飼育スタイル(放し飼い)、気候、ノミの寄生率、都市化の度合いと猫の密度などが想定されています。

FeLVのサブタイプ

 FeLVには「env」遺伝子に含まれている核酸の配列によってA、B、C、Tというサブタイプがあります。主な特徴は以下です。
FeLVのサブタイプ
  • FeLV-AFeLVに感染したすべての猫がもつタイプ。小腸、肝臓、腎臓、リンパ細胞などで見られる「高親和性チアミントランスポーター1」と呼ばれる細胞受容体を通じて細胞内に入り込み、糞便、尿、唾液、血液といった体液の中に紛れ込んむ。免疫低下に関連しており、このタイプだけが体液を通じて猫同士の間で水平感染する。
  • FeLV-BFeLV-Aとネコゲノムに含まれているFeLVシークエンスの相互作用によって生み出されると考えられるタイプ。細胞のリン酸トランスポーター1を介して感染し、腫瘍の形成に関与していると推測されている。
  • FeLV-CFeLV-Aの「env」遺伝子に変異が生じて発生した亜種で、最も病原性が強く再生不良性貧血の原因となる。
  • FeLV-TFeLV-Aの「SU」遺伝子の配列に変異が生じて発生した亜種で、遺伝子配列は96%Aと同じ。Tリンパ球に取り付き重篤な免疫不全を引き起こす。
 すべての感染猫に共通して見られるのは「FeLV-A」です。その他のサブタイプが体内で発生するかどうかは個体によって変動します。どのサブタイプも検査キットで検出できますが、サブタイプ自体を見分けることはできません。
 興味深いことに、2008年に山口大学が行った調査によると、日本国内には世界とは違う独自の変化を遂げたウイルス系統があるようです。調査チームが日本全国から集められた合計216のFeLV陽性血液サンプルを調べたところ、7つの系統分岐群を含む「GI」、独立した「GII」、2つの系統分岐群を含む「GIII」という日本特有の系統樹に収まることが明らかになったといいます(Kawamura, 2013)。 日本国内における猫白血病ウイルス(FeLV)の系統群分布図(クレイドグラム)  こうした事実から、世界的に用いられている「A、B、C、T」というサブクラスではなく、「GI、GII、GIII」というサブクラスを対象として病原性を調べる必要があるのではないかと考えられています。この分野は今後の課題です。

猫白血病ウイルス感染症の症状

 FeLV(猫白血病ウイルス)に感染して1ヶ月くらいすると、のどや口のリンパ節や血中に侵入したウイルスの影響で急性期の症状が現れます。主な症状は、食欲不振、体重減少、貧血、下痢、発熱、脱水、鼻水、口内炎、リンパ節の腫れなどです。 その後、骨髄へと勢力を拡大して造血幹細胞にとりつき、血液細胞の増殖を抑制します。そのようにして発症するのが「猫白血病」です。

FeLV進行の4形態

 猫白血病ウイルス感染症には進行の速度や特徴によって4つのタイプが存在します。その猫がどのタイプに進行するかは、猫が生まれつき持っている免疫力やワクチン接種の有無によって左右されます。

進行型

 進行型は最も症状が重いタイプです。体内に侵入したウイルスはリンパ組織、骨髄、粘膜層、腺性上皮組織で増殖を繰り返し、やがて猫の免疫力が対抗できなくなって数年のうちに病に屈します。
 不思議なことに、生後4ヶ月齢の時点で人為的にウイルスを移された場合、進行型に発展するリスクは15%程度ですが(Hoover et al., 1976)、生後2ヶ月齢までの間にウイルスに感染してしまった場合はほとんどが進行型に発展し、数年の内に命を落としてしまいます。

退行型

 退行型は猫の免疫応答がウイルスの増殖を押さえ込み、骨髄に侵入する前の段階で体内から駆逐してしまうタイプです。ウイルスはDNA内部に埋め込まれますが、ウイルス自体が複製されたり体外に排出されることはありません。
 感染から2~3週で抗原テストが陽性になった後、2~8週間経過すると自然と血中の抗原が消えます。ただしプロウイルスのDNAおよびウイルスRNAは感染から1週間するとPCR(ウイルスの核酸を検出する技術)によって検出できるようになりますので、抗原テストで反応がなくてもPCR検査で陽性と出ることがあります。輸血で血液を提供する場合は必ず事前にPCR検査を終えていなければなりません。
プロウイルス
レトロウイルスが宿主のDNAに組み込まれているものの、RNAには転写されていない状態のこと。プロウイルスは輸血を通じて他の猫に移行しうる。

未発達型

 未発達型は感染したにもかかわらずウイルス、抗原、ウイルスRNA、プロウイルスDNAを検出できない状態のことです。実験室内における人為的感染の後で稀に見られるレアケースです。

局所型

 局所型はウイルスが脾臓、リンパ節、小腸、乳腺など局所にとどまるレアケースです。

FeLVによる症状

 進行型のFeLVに発展した場合、赤血球の減少に関連した貧血、および白血球の減少に関連した免疫不全症状がよく見られます。2005年から2007年の期間、スペイン国内で31頭のFeLV陽性猫を対象とした調査が行われました(Domenech, 2012)。その結果、以下のような割合で臨床症状が見られたといいます。
猫白血病ウイルス感染症の症状
猫白血病ウイルス感染症の代表的な症状一覧(多い順)
  • 元気喪失=44.4%
  • 食欲不振=40.7%
  • 粘膜蒼白化=40.7%
  • 口内の病変=40.7%
  • 呼吸疾患=37.0%
  • リンパ腺拡大=29.6%
  • 結膜炎=29.6%
  • 皮膚の病変=22.2%
  • 体重減少=18.5%
  • 消化管疾患=18.5%
  • 脱水症状=3.7%
  • 神経系疾患=3.7%
 特徴は「1歳未満の感染が多く重症化しやすい」「オス猫の感染が多く重症化しやすい」という点です。「口内の病変」には潰瘍性口内炎、「神経系疾患」にはホルネル症候群、尿失禁、瞳孔不同、散瞳、中枢性盲目などが含まれます。以下は上記した症状のうちとりわけ多く見られるものの詳細な解説です。

FeLV性貧血

 FeLVが骨髄に達すると、そこにある造血幹細胞に感染することによって血液細胞の正常な分化を妨げるようになります。このようにして発症するのが血小板減少症、好中球減少症、そして赤血球異常による再生不良性貧血です。大赤血球症や再生性の溶血性貧血が見られることもありますが、通常は10%未満に過ぎません。貧血に陥った猫では歯茎が白っぽく変色します。

FeLV性白血病

 骨髄の中にある造血幹細胞にFeLVが感染すると、正常な白血球が作られなくなり、悪性化したリンパ球によるリンパ性白血病を発症します。急性の特徴は未熟なリンパ芽球が血中に増加するという点、慢性の特徴は逆に成熟した悪性リンパ球が増加するという点です。
 正常なリンパ球が減れば減るほど免疫力が低下しますので、原虫、寄生虫、ノミやダニといった通常であれば病原性が低い外敵にも対抗できなくなり、日和見感染症に発展してしまいます。またヘルペスウイルスカリシウイルスといった病原性ウイルスへの抵抗力も落ち、感染症にかかりやすくなります。

FeLV性流産

 FeLVに感染したメス猫が妊娠すると、妊娠中~後期において胎子の子宮内吸収、死亡、胎盤退縮が起こります。子宮内での胎子の死亡は、特に好中球の数が減少している母猫の子宮内膜症のリスクも高めます。またたとえ子猫が生きた状態で生まれたとしても、胎盤や初乳を通してウイルスを保有した状態ですので、生後間も無くして死んでしまうことがよくあります。原因不明の「新生子衰弱症候群」の中には、先天性のFeLVもたくさん含まれていることでしょう。

FeLV性リンパ腫

 猫の悪性リンパ腫にはFeLVがかかわっていることは間違いないようです。具体的には「FeLVを体内に保有している猫がリンパ肉腫を発症する確率は、保有していない猫の62倍」(Shelton, 1990)、「リンパ肉腫のうち70%はFeLVが原因」(Rojko, 1994)といったデータがあります。また猫エイズウイルス感染症(FIV)も増悪因子の一つです。FIVは猫白血病ウイルス感染症の発症率を6倍に高め、結果としてリンパ肉腫の発症率を77倍にまで押し上げてしまいます。
 明確な発症メカニズムは解明されていませんが、腫瘍の発症と関係が深いサブタイプ「FeLV-B」が何らかの関わりを持っているのかもしれません。

猫白血病ウイルス感染症の検査

 FeLVに感染しているかどうかを調べる際は、ウイルスの存在を示す何らかの目印を体内から検出します。具体的にはウイルスが保有する「抗原」や「DNA」、体内で作られる「抗体」などです。

FeLV検査のタイミングは?

 病歴がわからない猫に関しては全頭に対してFeLV検査をすることが推奨されています。具体的には以下のような猫です。
  • 迎え入れたばかりの野良猫
  • 拾ったばかりの子猫
  • 脱走後に帰ってきた飼い猫
  • 放し飼い猫
  • 見知らぬ野良猫と庭先で接触した飼い猫
 上記したような、FeLVに感染した可能性を否定できない猫に対してはすべて検査を行うことが理想です。院内で行う検査精度が100%でないという事実を考慮し、テスト結果にかかわらず30日あけて再テストするのがよいでしょう。これは十分な量の抗原が血中に現れるのを待つためです。 シェルターにおいてはすべての猫に対してFeLV検査を行うこと!  来歴がわからないたくさんの猫が集まる保護猫シェルターや動物保護施設においても、全頭に対して検査を行う必要があります。少数の猫をサンプルとして検査し、その結果から全体を推し量るという方法は推奨されていません。なぜなら、FeLVの感染率はそもそも数%と低いため、サンプルとして選んだ猫が陰性と判定される確率が圧倒的に高いからです。「この猫が陰性だからまぁ他の猫も大丈夫でしょう」と拡大解釈してしまうと、たった1頭の陽性猫から全体にウイルスが散らばってしまう危険性があります。
 なお2023年、猫白血病ウイルスを保有している猫とヒゲの波打ちとの奇妙な関連性が報告されました。調査によると、波打ちヒゲ(1本の中に2箇所のカーブ×最低2本)を有している猫においてはおよそ90%の確率でFeLV陽性とのこと。この特徴は白血病の簡易チェック項目として有力視されています。詳しくは以下のページにて。 ヒゲが波打っている猫は高確率で白血病(FeLV)陽性

テストキットでのFeLV検査

 テストキットによるウイルス抗原検査とは、FeLV(猫白血病ウイルス)を構成しているコアタンパクの一種「p27」を検出する検査法のことです。血中に抗原が現れるかどうかには個体差がありますが、一般的に感染から30日で検出できるようになります。「抗体」を検出するわけではありませんので、ワクチンによって結果に紛れが生じることはありません。また子猫が母猫由来の移行抗体を保有していても血中抗原は検出可能ですので、子猫の検査はなるべく早い段階で行うことが推奨されています。
 FeLVを院内検査キットで調べる場合、末梢血液中の抗原「p27」を検出します。一部のキットを除き、涙や唾液は汚染されやすいので基本的に使いません。以下は日本国内で流通しているFeLV向けの院内検査キット一覧です。
FeLV検査キット一覧
  • スナップ・FeLV/FIVコンボIDEXX | 1回の採血で血中におけるFeLV抗原、FIV抗体の検出を同時に行う | 10分間で判定 | 検体は血清、血奨または全血
  • ウイットネスFeLV-FIVZoetis | 1回の採血で血中におけるFeLV抗原、FIV抗体の検出を同時に行う | 10分間で判定
  • thinka ネコ 免疫不全ウイルス抗体/ネコ 白血病ウイルス抗原検査 コンボキット FIV/FeLVアークレイ | 1回の採血で血中におけるFeLV抗原、FIV抗体の検出を同時に行う | 10分間で判定 | 約10μL/項目の微量検体で測定
  • チェックマンFeLV共立製薬 | 免疫クロマトグラフ法によりFeLV抗原のみを検出 | 検体は全血、血漿、血清もしくは唾液のいずれか
 2015年に公開された「家庭飼育動物(犬・猫)の診療料金実態調査及び飼育者意識調査」(→出典)によると料金は2,000~5,000円の範囲内で中央値が2,813円となっています。

PCRでのFeLV検査

 PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)検査とはFeLVが遺伝子の中に保有している核酸(プロウイルスDNAやウイルスRNA)を血中から検出する方法です。院内ではできませんのでラボに外注する形になります。
 PCR検査の特徴は、感染からおよそ1週間で見られるようになる「p27抗原」よりもかなり早い段階で検出できるという点、およびテストキットではわからないウイルスのサブタイプまでわかることがあるという点です。サンプルには血液のほか、骨髄、その他の組織、場合によっては唾液も用いられます。一般的に抗原検査よりも検出精度が高く、抗原テストで陰性と判断された猫の5~10%では、PCRで陽性と判定され直すこともあります。

IFAでのFeLV検査

 蛍光染色法抗体テスト(IFA)は血液細胞中の「p27」抗原を検知する外注検査法です。骨髄にウイルスが侵入し、二次的なウイルス血症が生じてから検出が可能になります。骨髄への感染が成立しなかった猫や、感染が成立したものの白血球減少症の猫では偽陰性と判定されやすくなります。

FeLV検査キットの精度は?

 FeLVの抗原を検知する院内テストキットは、一体どの程度の精度を持っているのでしょうか?海外で行われた調査においては以下のような数字が報告されています。オーストラリアの調査(Westman, 2016)ではFeLVに感染した猫72頭(進行型45+退行型27)と未感染の猫491頭、アメリカの調査(Levy, 2017)ではFeLV陽性猫146頭と陰性猫154頭、IDEXXラボの調査(Liu, 2016)ではFeLV陽性猫100頭と陰性猫105頭の血液サンプルが調査対象になっています。なお「感度」とは陽性のものを正しく陽性と判定する確率、「特異度」とは陰性のものを正しく陰性と判定する確率のことです。
2016年・オーストラリア
  • SNAP FIV/FeLV Combo感度=63% | 特異度=94%
  • Witness FeLV/FIV感度=57% | 特異度=98%
  • Anigen Rapid FIV/FeLV感度=57% | 特異度=98%
2017年・アメリカ
  • SNAP FIV/FeLV Combo感度=100% | 特異度=100%
  • Witness FeLV/FIV感度=89% | 特異度=95.5%
  • Anigen Rapid FIV/FeLV感度=91.8% | 特異度=95.5%
  • VetScan感度=85.6% | 特異度=85.7%
2016年・IDEXXラボ
  • SNAP Feline Triple Test感度=98.0% | 特異度=100%
  • Witness FeLV/FIV感度=79.0% | 特異度=97.1%
  • VetScan感度=73.0% | 特異度=97.1%
動物病院で使用される猫白血病ウイルス(FeLV)用院内テストキット一覧  「SNAP FIV/FeLV Combo」(IDEXX)の感度は63~100%、特異度は94~100%。「Witness FeLV/FIV」(Zoetis)の感度は57~89%、特異度は95.5~98%。共に高い感度と特異度を誇っていますが、常に100%の精度ではないという点には注意が必要です。
 各国の調査チームによると、ウイルスを保有していない猫を「ウイルスあり」と誤判定してしまう「偽陽性」のパターンが特に多いといいます。その結果、健康なのに不必要な治療を受けていたり、最悪のケースでは安楽死という憂き目にあっている猫たちが潜在的にかなりいるのではないかとのこと。検査キットの誤判定を避けるためにも、最低30日の間隔をあけた別のキットによる再検査や、PCRでの再検査を行うことが推奨されています。

猫白血病ウイルス感染症の治療

 現在、FeLV(猫白血病ウイルス)を体内から駆逐してくれる夢のような特効薬は存在していません。よって免疫力の低下に伴って現れた様々な疾患を、その場しのぎで抑え込んでいくことがFeLV治療の軸となります。

免疫抑制剤

 糖質コルチコイドを始めとした免疫抑制剤の使用は、重度の口内炎など生活の質を著しく低下させるような炎症性病変を抱えているときにだけ考慮されます。しかし副作用があるため、潰瘍部分のレーザー切除や抜歯などが優先されることもしばしばです。

輸血

 再生不良性貧血やリンパ球の減少がひどい場合は輸血治療が行われます。

抗ウイルス治療

 人間のレトロウイルス患者(HIV患者)に対しては、複数の薬を併用する抗レトロウイルス治療(HAART)が行われ、生活の質が高まったり生存期間を伸ばせることが確認されています。しかし人間用に用いられる抗レトロウイルス薬は猫にとって副作用が大きく、ほとんど転用できません。
 猫において唯一効果が確認されているのは「ジドブジン」(AZT, アジドチミジン)と呼ばれる薬だけです。この薬は実験室内でも生体内でもウイルスの複製を阻害することが確認されています。血中のウイルス量を減らせる可能性がありますので、神経症状や口内炎を抱えた猫に有効と考えられています。主な副作用は再生不良性貧血などです。しかし日本国内では動物用医薬品として使用されていません。

インターフェロン

 ウイルスの増殖や腫瘍細胞の増殖抑制効果がある猫用製剤「ネコインターフェロン-ω(オメガ)」が認可されている国がいくつかあります。インターフェロンとはウイルスや細菌といった病原体やがん細胞といった異物に反応し、体の中にある細胞が分泌するタンパク質の総称です。
 FeLVに感染した猫を対象とした調査では、ネコインターフェロン-ωを投与した猫と投与しなかった猫を長期的にモニタリングしたところ、1年後における生存率が投与グループで有意に高かったとの報告があります(de Mari et al., 2004, 2008)。しかしウイルス量の減少が確認されたわけではありませんので、なぜ生存期間が伸びたのかに関してはいまだに不明です。
 現在日本で使用されているネコインターフェロンは、猫カリシウイルス感染症に対して用いられる「インターキャット」(東レ)だけです。このインターフェロンをFeLVやFIVに対して用いるのは、いわゆる「オフラベル」(ガイダンス外使用)になります。
 なおヒトインターフェロン-αの投与調査も併せて行われましたが、こちらではウイルス量、CD4T細胞量、血液検査値に変化が見られず、また生存期間の延長も得られませんでした(Pedretti et al., 2006)。

免疫調整因子

 アメリカではアメリカ合衆国農務省(USDA)によってFIVとFeLVに対する「LTCI」(T細胞免疫調整因子, Lymphocyte T-cell immunomodulator)の使用が認められています。この製剤の効果は、CD4の分化と成熟を促すことでCD8の活性化を手助けし、病原体や悪性腫瘍細胞への抵抗性を高めるというものです。日本では使用されていません。
CD4/CD8
「CD4」はCD4陽性T細胞(ヘルパーT細胞)、「CD8」はCD8陽性T細胞(キラーT細胞)のこと。「CD」とは免疫細胞の表面に発現している糖タンパクのことで、「CD4」を有している細胞が「CD8」を有している細胞にサイトカイン(IL-2など)やガンマインターフェロン(病原体や腫瘍細胞などに反応して細胞が分泌するタンパク質の一種)を通じてシグナルを送ることで体内の病原体や異物の駆除を促進するというメカニズムになっている。

FeLV陽性猫との暮らし

 FeLV(猫白血病ウイルス)に感染した猫では寿命が短くなってしまうことは確かです。しかし生活の質を保つことはできます。
 FeLVに感染した1,000頭と未感染の8,000頭の生存期間を比較した大規模な調査(Levy, 2006)では、感染猫の生存期間が4.9年だったのに対し、未感染猫のそれが6.0年だったと報告されています。同様に、FeLVに感染した800頭と未感染の7,000頭の生存期間を比較した別の調査では、感染猫の生存期間が2.4年だったのに対し、未感染猫のそれが6.3年だったと報告されています。 猫白血病ウイルス(FeLV)陽性猫と暮らす際のポイントは、室内飼いとストレス管理  ひとたびFeLVに感染してしまうと1~4年寿命が縮んでしまうという事実は否めないようです。しかしすぐに死んでしまうというわけではありませんので、QOL(生活の質)を落とさないように気をつければ数年間は一緒に暮らすことがでるでしょう。気をつけるべきことは、免疫力が低下したときの日和見感染や二次感染を予防するということです。具体的には以下のような項目を遵守することが重要になります。
FeLV猫との生活・注意点
  • 完全室内飼いで病原体との接触を防ぐ
  • 生肉は避ける
  • 内部寄生虫(回虫や条虫)の駆除をする
  • 外部寄生虫(ノミやダニ)の駆除をする
  • 原虫(コクシジウムなど)の駆除をする
  • 半年ごとに健康診断を受ける
  • 定期的に体重計測をする
  • 口内病変をこまめにチェックする
  • リンパ肉腫をこまめにチェックする
 上記した項目のほか、免疫力を落とさないためにストレス管理をするということも非常に重要です。具体的には以下のページをご参照ください。 猫の幸福とストレス

猫白血病ウイルス感染症の予防

 FeLV(猫白血病ウイルス)を予防するための基本は、感染猫と接触する機会をできるだけ少なくすることです。また万が一感染した場合を想定し、ワクチンを打っておくことも有効です。

ウイルスとの接触を断つ

 猫がそもそもウイルスと接触しなければ必然的に感染することもありあせん。FeLV予防のゴールドスタンダードはウイルスとの完全断絶です。
  • 完全室内飼いウイルスを保有した猫との接触機会をなくすため、すべての猫を完全室内飼いに切り替えます。これはウイルスをもらわないためにも、ウイルスを外の猫に撒き散らさないためにもとても重要なことです。
  • メス猫の避妊手術FeLVは胎盤や初乳を通して子猫に感染するため、ウイルスに感染した母猫には避妊手術を施し、今後繁殖を行わないようにします。なお退行型感染の場合、たとえ事前の抗原検査で陰性と出ていても、妊娠に伴う免疫力の低下でウイルスが再活性化し、子猫に移してしまうことがあります。PCR検査を行えば高い確率でその猫がウイルスキャリアーかどうかを判定できますが、それでも精度は100%ではありません。
  • オス猫の去勢手術オス猫には去勢手術を施して放浪癖を弱めると同時に、他のオスと争う機会を減らします。また性衝動に起因するストレスを軽減することは、免疫力が低下したときの二次感染性を防ぐ上でも極めて重要です。
  • 新しい猫を迎えるときの注意子猫であれ成猫であれ、新しい猫を迎え入れる時は必ず事前にFeLVの検査を終わらせておきます。
  • 医原性感染に注意FeLVは消毒薬で簡単に取り払うことができますが、それでも医原性感染の可能性を完全には否定できません。具体的には動物病院内における手術、注射器、診察台、聴診器、チューブ、デンタル機器などを通して院内感染してしまうなどです。過去に行われた調査では、聴診器をしっかり消毒していない獣医師の数がゾッとするほど多いと報告されています。「健康になるために行ったはずの病院で不健康になった」というおかしな現象が生じてしまう可能性だって大いにあります。
     病院から帰ったら、まず飼い主が石鹸でよく手を洗います。そしてペット用のウエットシートなどを用いて猫の被毛表面を軽く拭いてあげましょう。レトロウイルスは生体外での生存力が弱く、消毒液や石鹸などで簡単に死滅します。

FeLVワクチンを接種する

 猫白血病ウイルス感染症に対してはワクチンが開発されています。FeLVは1964年、医師ウィリアム・ジャレットによって初めて報告されてから熱心な研究対象となり、1973年には診断テスト、1986年にはワクチンが開発され、感染率が劇的に減少しました。
 注意すべきは、ワクチンは感染を予防するものではなく、感染してしまったときの症状を抑えるためのものであるという点です。また仮にワクチンを打っていたとしても、十分な免疫力を獲得できない「ワクチンブレーク」の可能性がありますので、100%の確率で症状の悪化が防がれるわけでもありません。現に山口大学が行った調査(Kawamura, 2013)では、FeLVワクチンを受けていた286頭のうち6.3%(18頭)では陽性と判定されています。
 すでに感染が確定している猫にFeLVワクチンを接種しても健康増進効果はありませんので、事前の検査でまだ感染していないことを確認します。2018年3月の時点で日本国内で流通しているFeLV向けワクチンは以下です。アジュバントが含まれている場合は成分も記載してあります。なお2015年に公開された「家庭飼育動物(犬・猫)の診療料金実態調査及び飼育者意識調査」(→出典)によると猫白血病ウイルス感染症(FeLV)を含むワクチンの料金中央値が6,514円程度となっています。 猫のワクチン接種
FeLV向けワクチン
まとめ
 1986年にワクチンが開発されて以来、猫白血病ウイルス感染症の陽性率は少しずつ減っています。しかし日本国内においては10%前後の感染が確認されていますので決して油断はできません。
 現在の医学では骨髄に入り込んだFeLVを駆逐することは不可能です。ウイルスがひとたび骨髄に侵入してしまうと、貧血、血液凝固障害、白血病が引き起こされ、猫の寿命を数年も縮めてしまいますので、何よりも予防が大事ということになります。
 FeLVを予防する際の基本中の基本は猫を完全室内飼いにすることです。ウイルスをもらわないためにも、他の猫にウイルスを移してしまわないためにもこの最低限のルールは絶対に守らなければなりません。コアワクチンではありませんが、FeLVワクチンを打っておくことは飼い主の安心につながるでしょう。