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猫のワクチン接種

 猫のワクチン接種について目的や方法、種類やタイミングなどを一覧でわかりやすくまとめました。獣医さんに相談する前の予習資料としてご利用ください。

ワクチンとは?

 ワクチン接種の目的は、 毒性を無くしたか、あるいは毒性を弱めた病原体を、ヒトを始めとする動物の体内にあらかじめ注入することで体内に抗体(病原体を攻撃する防御システム)を作っておき、感染症にかかったときの症状を軽減することです。
 猫に関しては、以下の感染症に対するワクチンが開発されています。
猫用ワクチン
 上記ワクチンには、化学処理などによって殺したウイルスや細菌を使用した「不活化ワクチン」と、毒性を弱めた微生物やウイルスを使用した「生ワクチン」とがあります。その他に「遺伝子組み換えワクチン」というものもありますが、日本においてはあまり用いられていません。「不活化ワクチン」と「生ワクチン」のそれぞれの特性を一覧化すると、以下のようになります。 2013 AAFP Feline Vaccination Advisory Panel Report
種類と特性不活化ワクチン生ワクチン
特徴化学処理などにより死んだウイルス、細菌、リケッチアなどを使用したワクチン。副反応が出にくい反面、免疫力の持続期間が短い。毒性を弱めた微生物やウイルスを使用したワクチン。獲得免疫力が強い反面、副反応の可能性が高い。
製剤猫ウイルス性鼻気管炎・猫汎白血球減少症・猫カリシウイルス感染症・猫白血病ウイルス感染症・猫エイズウイルス感染症・猫クラミジア感染症・狂犬病・皮膚糸状菌症猫ウイルス性鼻気管炎・猫汎白血球減少症・猫カリシウイルス感染症・猫クラミジア感染症・気管支敗血症
接種の目安3~4週空けて2回 →2回目接種後7~10日で免疫獲得3~4週空けて2回 →2回目接種後7~10日で免疫獲得
接種方法皮下注射・筋肉内注射皮下注射・筋肉内注射
有毒化なし極めてまれ
増殖なしありうる
 不活化ワクチン製剤の一つに「皮膚糸状菌症」がありますが、これはヨーロッパの一部の国だけで認可されているものです。アメリカ、カナダ、日本においては、ワクチンの効能を裏付けるエビデンス(証拠)が不十分という理由で、まだ流通していません。また2008年から日本国内で発売されていた猫エイズ用ワクチン「フェロバックスFIV」は、2012年7月で販売中止となりました。接種を希望する方は、かかりつけの動物病院が在庫を持っているかどうかを事前にご確認ください。
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猫のワクチン接種計画

 万が一病気にかかったときのペットの苦痛を軽減するためには、あらかじめワクチンを接種しておいたほうが無難でしょう。特に病気にかかりやすい6ヶ月齢未満の子猫や、頻繁に外出したり外の猫と接触する機会のある猫では強く推奨されています。
 ワクチンをいつ、何度、何種類接種するかに関する計画は、一般的にワクチネーションプログラム(ワクチン接種計画)と呼ばれます。猫の生育環境によって個体ごとに変動しますので、かかりつけの獣医さんにご相談下さい。

ワクチンの種類

 現在、猫の感染症に関しては6種類のワクチンが開発されており、その組み合わせにより3・4・5・7種の混合ワクチンがあります。接種時に何種類のワクチンを選ぶかという点に関しては獣医師と相談の上で決めます。
 混合ワクチンの内「3種混合ワクチン」は特にコアワクチン(核となるワクチン)と呼ばれ、ぜひとも接種することが望まれる重要なワクチンです。単体ワクチンは、接種することのメリットとデメリットを獣医師とよく相談の上、飼い主の判断で行います。
 なお、やや古いですが平成11年にまとめられた日本獣医師会・小動物診療料金によると、1種ワクチンの料金は平均3,917円で、2種以上の平均は8,185円です。
混合ワクチン一覧表
3~7種までの猫の混合ワクチン一覧表

ワクチン接種のタイミングと回数

 子猫の生育環境により ワクチン接種の回数は変動します。最も大きな要因は、母猫の初乳を飲んだかどうかという点です。
 初乳(しょにゅう)とは分娩後1週間~10日くらいまで分泌される乳汁で、その後に分泌される母乳とは区別されます。固形分、タンパク質、脂肪、灰分が多く、乳糖が少ないこと、また免疫力を高める抗体(IgG、IgA、IgM)や、各種の成長因子(IGF、EGF、NGF)が多く含まれることを最大の特徴としています。すなわち初乳を飲んだ子猫は、飲んでいない子猫に比べて免疫力が強いというわけです。この「初乳を飲んだかどうか」という観点により、おおむね以下のようなワクチネーションプログラムが組まれます。
猫のワクチネーションプログラム
  • 初乳を十分に飲んだ子猫 生後8週(56日ごろ)に1回目接種
    →生後12週(85日ころ)
    →以降、1年に1回接種
  • 初乳を飲んでいない子猫 生後4週ごろに1回目
    →以降4週間ごとに2回、合計3回接種
    →以降、1年に1回接種
もっともくわしい猫の病気百科
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ワクチン接種の注意点

 ワクチンを接種したからといって100%病気を予防できるわけでもありませんし、全くデメリットがないというわけでもありません。以下ではワクチン接種に伴う注意点について時系列に沿って解説します。

ワクチン接種前の注意

ワクチン接種は医師の健康診断を受けてから  ワクチン接種の前夜は特に体調をよく観察しておきます。下痢をしていたり、食欲がなかったり、何かしら体調に不安がある場合は、ワクチン接種を延期します。
 飼い主の目から見てとりわけ問題がないと思われる場合、今度は獣医師によって問診と触診、体温測定、心音聴診、内部外部寄生虫の有無を検査します(便は前日のものを飼い主が持参)。そして、「今ワクチンを接種しても問題がない」という獣医師のお墨付きが取れた時のみ、ワクチン接種を決行します。ワクチン接種後、体調が悪くなったときなどにすぐ対応できるよう、ワクチンは午前中に接種する方がよいでしょう。
 なお、基本的に妊娠中の猫にはワクチン接種を行いません。もしこれから出産を計画している猫がいる場合は、交配の3週間以上前にワクチンを接種して、母猫の抗体を上げておきます。

ワクチン接種時の注意

 毒性を弱めたり無くしたりしても、ワクチンはあくまで「異物」ですから、身体にとってよくない反応、いわゆる副作用・副反応が現れることもあります。以下はワクチン接種時に発生しうる悪影響です。

副作用・副反応

ワクチン接種後、24時間程度食欲をなくしたりぐったりする猫もいますが、それは正常な反応です。  接種してからしばらくの間、元気がなくなったり、食欲がなくなる子もいますが、24時間以内に収まるようであれば、許容できる範囲の副作用・副反応と考えられます。しかし元気のありなしに関わらず、接種後1日程度は、シャンプーや過激な運動を控えるようにしましょう。もし24時間を経過しても元気がなかったり、注射した箇所から出血しているような場合は、念のため獣医師に相談します。
 なおアメリカのバンフィールド動物病院において、2002年から2005年の間に集められたデータによると、約50万頭の猫に対し125万単位のワクチンが接種され、30日以内に何らかの副反応を示した割合は0.52%だったといいます。またそのうち3日以内に何らかの症状を示したものの割合が92%にも達したとのこと。報告があった症状のうち上位のものを列挙すると以下のようになります。
ワクチン接種後の副反応
  • 元気がなくなる=54%
  • 注射箇所の部分的な炎症=25%
  • 嘔吐=10%
  • 顔周辺の浮腫=6%
  • 全身性のかゆみ=2%
 副反応は猫の健康状態や用いられたワクチンの種類によって大きく変動しますが、予備知識として持っていて損にはならないでしょう。

一番怖い「アナフィラキシー・ショック」

 ワクチン接種の副作用で一番恐ろしいのは、アナフィラキシー・ショックと呼ばれる過激なアレルギー反応です。これは体内に入ってきた異物に対し、免疫機構が過剰に反応してしまい、逆に生命に危険を及ぼしてしまう現象です。AAFP(全米猫獣医師協会)によると、1~5ケース/10,000ワクチン(0.01~0.05%)程度の割合で発生すると推計されています。早ければ接種10~15分後くらいで呼吸困難、嘔吐、けいれん、血圧低下などの症状がみられるのが特徴です。
 アナフィラキシーを起こした場合は、早急に治療をしなければショック死してしまうかもしれないので、できれば接種後30分程度は病院内や病院の近くに待機しておいたほうが無難でしょう。ちなみに一度でもアナフィラキシーを起こした猫は、次から同じメーカーのワクチン接種はできませんので、飼い主がワクチン名を覚えておいて下さい。

ワクチン接種後の注意

 ワクチンによる抗体ができるには2~3週間ほど必要です。ワクチン後2~3週間は感染のおそれがあるところに連れて行ったり、他の猫との接触を避けた方が無難です。
 またAAFP(全米猫獣医師協会)の報告によると、0.01%くらいの割合でワクチン接種をした部位が盛り上がって腫瘤(しゅりゅう=こぶ状の盛り上がり)ができてしまうことがあります。ワクチン接種後にできる腫瘤は、炎症性肉芽腫(えんしょうせいにくがしゅ, ワクチン接種部位肉腫)と呼ばれるもので、接種した部位が炎症を起こして腫れ上がった状態になります。もし2~3週間たっても腫れが引かず、手で触知できるしこりが残っている場合は、ごくまれに肉腫(ガン)に変化することもありますので、獣医師にご相談下さい。
AAFPによるワクチン接種推奨部位と非推奨部位  ちなみに、同じ箇所に注射すると肉腫ができやすいことから、従来接種していた背中や肩甲骨付近ではなく、太ももや後ろ脚、しっぽの先に注射する獣医師もいます。これは、万が一背中に悪性腫瘍が出来てしまった場合、手術で切除するのが非常に難しくなるという観点からです。しかし背中よりも、太ももや脚の方が痛みを強く感じる猫が多いため、一長一短と言った所でしょう。飼い主は、注射箇所がなるべく重ならないよう、前回のワクチン注射を体のどの部位に行ったかを記憶・記録しておくようにします。なお右上の図は、AAFPが推奨しているワクチン接種部位です。緑色の部分が推奨部位、×印の付いた部分が非推奨部位になります。 2013 AAFP Feline Vaccination Advisory Panel Report
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