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猫伝染性腹膜炎

 猫の猫伝染性腹膜炎(ねこでんせんせいふくまくえん)について病態、症状、原因、治療法別にまとめました。病気を自己診断するためではなく、あくまでも獣医さんに飼い猫の症状を説明するときの参考としてお読みください。なお当サイト内の医療情報は各種の医学書を元にしています。出典一覧はこちら

猫伝染性腹膜炎の病態と症状

 猫伝染性腹膜炎とは、コロナウイルスの一種である猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)によって引き起こされる一連の症状を指します。
 猫伝染性腹膜炎ウイルスは自然界には存在せず、多くの猫が保有している猫腸コロナウイルス(FECV)という病原性に乏しいウイルスが、ある時、猫の体内で突然変異して出現します。突然変異を起こす原因は一様ではありませんが、子猫(3ヶ月~3歳)、老猫(10歳以上)、ストレスを抱えた猫など、免疫力が衰えた猫に多く発症するという点は共通です。FECVを保有した猫の内、猫伝染性腹膜炎を発症するものは10%以下と推計されています。
 猫伝染性腹膜炎の症状には以下のようなものがあります。症状の現れ方は一定せず、急激に発現することもあれば、数ヶ月かけて徐々に進行することもあります。予後は非常に悪く、ひとたび典型的な症状が現れると、致死率がほぼ100%という恐ろしい病気です。
猫伝染性腹膜炎の主症状
  • 乾性型  乾性型は「ドライタイプ」や「非滲出型」とも呼ばれ、化膿を伴う肉芽腫性の病変を特徴としています。食欲不振や体重減少などの慢性症状のほか、腎臓、肝臓、腸、神経(運動失調)、目(ブドウ膜炎脈絡網膜炎)などに様々な症状が現れます。免疫反応が通常よりもやや劣る個体に多いとされます。
  • 湿性型  湿性型は「ウェットタイプ」や「滲出型」とも呼ばれ、タンパク質を多く含んだ漏出液が、胸腔、腹腔、心膜腔といった体内のあらゆる隙間に貯留するのが特徴です。腹部に水がたまって異様に膨らむ腹水(ふくすい)や、胸膜炎、及び胸腔に水がたまる胸水(きょうすい)などの症状が現れ、結果として呼吸困難に陥り、数日~数ヶ月の内に死亡します。免疫反応が通常よりも悪い個体に多いとされます。 猫伝染性腹膜炎の湿性型を発症した猫~腹部に水がたまる「腹水」を視認できる
 今現在、病原性の低い「猫腸コロナウイルス」(FECV)と致死性の高い「猫伝染性腹膜炎ウイルス」(FIPV)を事前に見分ける有効な方法は存在していません。しかし2013年に行われたコーネル大学の研究では、腸コロナウイルスの表面にあるスパイク蛋白を調査することで、それが猫伝染性腹膜炎ウイルスなのかどうかを知ることができるという新発見がありました。この発見により、効果的なワクチンや新たな治療法が今後開発されるかもしれません。
コロナウイルス
 コロナウイルスの「コロナ」は、表面に存在する突起(スパイク蛋白)が、まるで太陽が放つ「コロナ」(corona)のように見えることから名付けられました。コロナウイルスのスパイクタンパクと太陽の放つコロナ 猫における「猫腸コロナウイルス」のほか、犬に感染する「犬コロナウイルス」(コロナウイルス性腸炎の原因)、豚に感染する「伝染性胃腸炎ウイルス」(豚伝染性胃腸炎の原因)、そして人間に感染する「SARSコロナウイルス」など、非常に多くの亜種が存在しています。最期の「SARS」とは「重症急性呼吸器症候群」の略であり、2002年11月に中国で発生し、2003年7月までに700人を超える死亡者を出したことは記憶に新しいでしょう。なお現在は鎮圧されています。
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猫伝染性腹膜炎の原因

 猫伝染性腹膜炎の原因としては、主に以下のようなものが考えられます。予防できそうなものは飼い主の側であらかじめ原因を取り除いておきましょう。
猫伝染性腹膜炎の主な原因
  • 接触感染  猫伝染性腹膜炎ウイルスは感染力が弱く、通常の接触では容易に感染しないといわれます。しかし乾燥した有機物の表面で7週間も感染力を維持したというデータもありますので油断はできません。ウイルスは感染猫の唾液や尿中に混じっているため、これらに汚染された媒介物に長時間接触すると、感染してしまう危険性があります。
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猫伝染性腹膜炎の治療

 猫伝染性腹膜炎の治療法としては、主に以下のようなものがあります。なおこの病気が強く疑われる場合、安楽死が推奨されることもあります。しかし現在、病気に侵された臓器を免疫組織染色を用いて病理組織学的に検査すること以外、信頼性の高い診断方法は存在していません。特にドライ型に関しては、熟練した獣医師にとっても生前診断が最も難しい疾病の一つとして数えられています。安楽死が本当に人道的な対処法であるかを判断するには、熟考を要することは言うまでもないでしょう。詳しくは猫の安楽死をご参照ください。
猫伝染性腹膜炎の主な治療法
  • 対症療法  猫伝染性腹膜炎ウイルスを根絶する薬剤は開発されていません。よって現れた症状が悪化しないようにする対症療法がメインとなります。具体的には二次感染を防ぐための抗生物質の投与、免疫力を高めるためのネコインターフェロンの投与、炎症を抑えるための抗炎症薬の投与などです。
     湿性型(ウェットタイプ)で腹水や胸水がたまっているときは、注射針を用いて水を抜きます。しかしこのタイプは予後が悪く、多くは数日~数ヶ月の内に命を落としてしまうというのが現状です。
  • 隔離 多頭飼いやキャッテリ(猫の繁殖施設)においてFIPVへの感染が疑われる猫がいる場合、感染猫と他の猫が接点を持たないよう隔離します。もし感染猫が母猫である場合は、移行免疫が切れる前の生後4週齢頃を目安に、子猫を母親から隔離します。
  • 猫の免疫力を落とさない  猫の免疫力を低下させる猫免疫不全ウイルス猫白血病ウイルスへの感染を予防するためのワクチン接種が望まれます。なおアメリカなどではFIP用の鼻腔内ワクチンも入手可能ですが、その有効性は約70%程度で、また16週齢以上の猫にしか接種できないことから、その有効性に対して疑問を持たれています。AAFP(全米猫医療協会)の2013年度版ワクチンガイドライン(PDF)では、「効果が不明なため推奨されない」と断言しているほどです。
     ワクチン以外の方法としては、ストレスの原因となるような環境(狭い空間における多頭飼いなど)を改善することも、病気の発症予防につながります。 猫を飼う室内環境
  • 猫のストレスチェック
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