トップ猫の心を知る猫の幸福とストレス猫のストレスチェック

猫のストレスチェック

 生活環境を見直し、猫が不要なストレスを感じていないかどうかをチェックしましょう。猫の好き嫌いや、生まれつき持っている欲求に関する知識が役に立ちます。

猫の好き嫌いチェック

 猫の好き嫌いで抑えたポイントを元にして、生活空間をチェックしてみましょう。もし欠けている部分があれば補い、環境エンリッチメントにつなげます。「環境エンリッチメント」とは、動物の心と体をより良い状態に保つため、環境に変化を加えることです。
猫の好き嫌いチェック
  • 室内や屋外に大きな音は無いか  猫は突発的な刺激が苦手。ドアチャイム、電話の呼び出し音など、調整できるものに関してはボリュームを下げる。
  • 蛍光灯は付いていないか  猫の目には点滅して見える。この光を非常にわずらわしく感じる個体もいるため、LEDライトなどへ切り替えることも考える。
  • 仲の悪い動物と同居していないか  進化の過程で「外敵」として学習した種がいる。例えばヘビなど。
  • 室内で急に変わった部分は無いか  猫は環境の変化をあまり好まない。特に食器やトイレなど、日常的に用いるものを交換する際は要注意。
  • 電気機器の起動音など低く響く音は無いか  猫は低い音をあまり好まない。パソコンや洗濯機など、長時間低い音を立てるものは、あまり猫のそばに置かない方がよい。また、話しかけるときも声は高めで。
  • 室内に芳香剤の匂いが充満していないか  猫は石鹸やフローラル系調合香料に用いられる「メチルノニルケトン」の匂いが苦手。不必要に部屋に充満させない。
  • 飼い主の服に香水は付いていないか  猫は香料や化粧品に用いられる「中鎖トリグリセリド」の匂いが苦手。猫と接するときは極力無香料を心掛ける。
  • 部屋の中でアロマを使っていないか  エッセンシャルオイルや、それを薄めたアロマオイルは、猫に中毒症状を引き起こす。アロマを焚いたり、オイル入りの洗剤を用いたり、アロマ入浴剤などの使用は避ける。
  • 猫を叩くように触っていないか  猫はポンポンと叩かれることをあまり好まない。触るときは母猫が子猫を舐めるように優しく。
  • 猫の苦手な部分を無理矢理触っていないか  猫はおなかや足の先などへの接触をあまり好まない。無理やり触ると、身を守ろうとして反撃してくることもあるので注意が必要。
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猫の欲求チェック

 猫の欲求で抑えたポイントを元にして、生活環境をチェックしてみましょう。もし欠けている部分があれば補い、環境エンリッチメントにつなげます。「環境エンリッチメント」とは、動物の心と体をより良い状態に保つため、環境に変化を加えることです。
猫の欲求チェック
  • 猫の食事は足りているか  タンパク質が不足すると脂肪肝のような病気を発症することがある。
  • 猫の飲み水は足りているか  猫は体重1キロ当たり、60~70mlの水を必要とする。夏場に不足すると、脱水症状や熱中症になることも。
  • 室内は適温か  猫は汗をかかないので、体温を下げるときはあえぎ呼吸(パンティング)に頼っている。人間と違い、夏場でも毛皮を羽織っていることを考慮に入れて室温調整をする。
  • 寝床は整っているか  猫は1日の大半を寝て過ごす。常に柔らかくて清潔な寝床を用意しておくことを心がける。
  • 猫のトイレは清潔か  トイレが気に食わないと、全く別の場所で粗相をしてしまうことがある。マメに掃除することが重要。
  • 猫のトイレは頭数分あるか  他の猫とトイレを共有することを好まない個体もいる。トイレは頭数分用意しておいたほうが無難。
  • 爪とぎは古くなってないか  猫にとっての「爪とぎ」は、人間にとっての「お風呂」。数日やらないでいると非常に気分が悪くなるので、引っ掛かりのよい爪とぎを常に用意してあげる。
  • 日光は十分か  猫は暗がりを好む一方、日向ぼっこも好む。猫が思う存分日光浴できるようなスペースを確保し、ゴロ寝しやすいベッドも置いてあげる。
  • 刺激は足りているか  余りにも単調な生活は、猫に「退屈」というストレスを与える。外を眺めさせるなどの配慮を。ただし、ハーネスを装着して外を散歩させることは、時に夜鳴きの原因になるため、あまりお勧めできない。
  • 適度な緊張感は抱いているか  耳を立てて瞳孔を開く程度の適度な刺激は必要。例えるなら、自習時間のだらけた教室に、急に先生が入ってくる感じ。一瞬にして背筋がピンと伸びる。動画サイトで他の猫や犬、鳥の声などを聞かせるのも一案。ただし、神経質な猫には弱い刺激から。
  • エサを得るまでに障壁はあるか  あまり簡単にエサが手に入ってしまうと、猫もつまらない。トリートボールなどを用いて、ごほうびに障壁を設けることも、たまには必要。
  • 遊びは足りているか  猫の狩猟欲求は遊びによって飼い主が解消してあげる。特に2歳までのやんちゃ盛りの猫には重要。遊びを怠ると、他の猫や人の足に向かって攻撃を仕掛けることもある。
  • 十分なスペースはあるか  猫は通常、他の個体から距離を置いて過ごす。余りにも狭い空間に複数の猫を押し込むと、その空間自体がストレスになる。人間で言うと「満員電車」。最低でも2メートルは離れていられるスペースを確保する。
  • 隠れ家は確保されているか  猫はストレスを感じたとき、隠れ家に身を潜めることで心を落ち着かせる。クレートやキャットハウスなど、外界から遮蔽された空間を用意してあげることは必須。
  • 飼い主とのスキンシップは足りているか  マッサージを始めとするスキンシップは、人間にも猫にもプラスに作用することが確認されている。ただし、無理強いするのではなく、猫の方から求められたときに応じてあげた方が効果的。
  • 他の猫とのスキンシップは足りているか  猫は本来、他の猫と多くの社会行動を行う動物。場合によっては、多頭飼いも考慮する。ただし、迎える条件がそろっていないのに、見切り発車でもう1匹飼おうとするのは厳禁。
  • 不妊手術は済ませてあるか  不妊手術には、繁殖予防の他、病気の予防、性衝動の抑制という効果がある。生まれてくる全ての子猫に責任をもてないなら、不妊手術を施すのが飼い主の責務。
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猫のストレスチェック

猫の満足と不満の度合いは、ストレススコアや異常行動から間接的に判断する  猫が生活環境に満足しているかどうかを判断するときには幾つかの方法があります。血中のコルチゾールや性ホルモンの濃度を計測するというのもそうした方法の一つですが、普通の飼い主にもできる方法は「猫の行動を観察する」というものです。詳細は猫のストレススコアにまとめましたのでご参照ください。
 逆に、生活の中に嫌いなものがあったり、何らかの欲求が満たされていないとき、猫は以下に述べるようなストレスの徴候を見せると考えられます。もしこうした徴候を発見した場合は、猫の好き嫌い猫の欲求、および当ページを頭から再読し、一体何が猫のストレスの原因になっているのかを見極めます。

ストレス反応

 「ストレス反応」とは、ストレスを感じている動物が、原因となっている不快な刺激を取り除こうとして体内環境を変化させたり、具体的なアクションを起こしたりすることです。
 ストレス反応を時間的に分類したときのモデルとしては、Selyeが提唱した汎適応症候群(はんてきおうしょうこうぐん, GAS)が有名です。
汎適応症候群(GAS)
  • 警告反応期  急性のストレスに対する反応。交感神経系によって「闘争/逃走」反応が引き起こされる。無期限に維持できるものではないため、数時間~数日の内に死んでしまうこともある。
  • 抵抗期  ストレスがなかなか解消されないときの反応。ストレス下でも機能が果たせるように心身を適応していく期間。免疫障害が起こり、疾病に罹患しやすくなる。
  • 疲憊期(ひはいき)  ストレスがかなり長期化したときの反応。動物の生物学的機能が損なわれ、環境に適応することができなくなる。生理学的機能が損なわれた結果、動物は死んでしまう。

猫の一般的なストレスサイン

 猫がストレスを感じたとき、飼い主が自分の目で確かめることができるリアクションには幾つかのパターンがあります。以下は2005年にBradshawらがまとめた、猫の一般的なストレスサインです。日頃から猫の様子を観察し、該当する項目が無いかどうかを確認するようにします。
猫のストレスサイン
  • 行動の抑制 歩いたりジャンプしたりといった移動行動が減少する。
  • セルフメンテナンスの抑制 グルーミング、エサを食べる、水を飲むといった、生命を維持するためのメンテナンス行動が減少する。
  • 遊びの抑制 おもちゃを噛んだり追いかけるといった遊び行動が減少する。
  • 引きこもり 隠れ家に入り込んだまま出てこなかったり、敷物の下などにもぐりこむなどの引きこもり行動が増える。
  • 防御 うなり、威嚇(シャー)、スピット(のどの奥をカッと鳴らす)、噛み付き、引っ掻きなどの自己防衛的攻撃行動が増える。
 また、ストレスの中でも特に「体の痛み」を感じているとき、動物はある一定のリアクションを見せます。以下は2004年、Gregoryが発表したデータに基づく一覧リストです。猫の場合、悪い環境に置かれると、積極的に異常行動を示すというよりも、むしろ不活発になると言います(McCune, 1992)ので、特に隠れ家に引きこもってなかなか出てこないようなときが要注意です。猫の急性痛を見つける猫の慢性痛を見つけるを参考にしつつ、必要とあらば獣医さんの診察を受けます。 動物園学(文永堂出版, P230)
動物の痛みのサイン
  • 異常な姿勢、足取り、速度、警戒行動
  • うめく、くんくん鳴く、キーキー鳴く、叫ぶ、うなる、シャーという威嚇音を出す、吠える
  • 移動、あるいは触診の際に攻撃や後ずさりをしたり身を引いたりする
  • なめる、かむ、咀嚼する、引っかく
  • 頻繁に姿勢を変える、そわそわする、転がる、身もだえする、蹴る、尾を振る
  • 呼吸パターンの乱れ、浅い呼吸、速い呼吸
  • 筋肉の緊張、振るえ、けいれん、ひきつけ、いきみ
  • うつ状態、不活発、隠れる、横たわって動かない、隠れ場所にこもる、不眠

極端なストレスサイン

 ストレスがなかなか解消されないとき、猫を始めとする動物は葛藤行動(かっとうこうどう)と呼ばれるおかしな行動を見せることがあります。こうした行動が見られた場合、動物に強いストレスが掛かっていると疑うのが基本です。具体的には以下。アニマルウェルフェア(東京大学出版会)
動物の葛藤行動
  • 転位行動(てんいこうどう)  転位行動とは、拮抗する2つの欲求がぶつかり合い、相殺しあった結果、本来の目的とは全く別の行動となって現れることです。例えば、怒られた猫が急に毛づくろいを始めるなど。
  • 転嫁行動(てんかこうどう)  転嫁行動とは、本来の対象とは違う対象に向けられた行動のことであり、平たく言うと「八つ当たり」です。例えば、狩猟欲求の満たされない子猫が、獲物の代わりに飼い主の足にちょっかいを出すなど。
  • 真空行動(しんくうこうどう)  真空行動とは、対象が無いにもかかわらず行う行動のことです。例えば、猫が何もない空間に向かって飛びつくなど。
 さらに、葛藤行動の原因が取り除かれないまま長期化すると、動物は異常行動(いじょうこうどう)と呼ばれる病的な行動をとり始めることがあります。こうした行動が見られたら、動物に掛かっているストレスが、かなり長期化しているのではないかと疑うようにします。
動物の異常行動
  • 常同行動(じょうどうこうどう)  常同行動とは、明確な目的が無いまま単一動作を長時間繰り返すことです。猫では、「頭と首を一定に水平方向に動かし続けること」、「ケージの入り口付近のような特定の場所に立ち、ふんふんと鼻を鳴らすこと」などが多く観察されます。
  • 異常反応  異常反応とは、環境からの刺激に対する反応が過剰だったり、逆に無反応だったりすることです。例えば、猫があらゆる刺激に対して無関心になるなど。
  • 異常生殖行動  異常生殖行動とは、正常な生殖行動を営めなくなることです。例えば、騒音の多い場所でオスの個体がインポテンツになったり、メスが育児放棄・カニバリズム(仔を食べてしまうこと)、授乳拒否、仔殺しをするなど。
  • 変則行動  変則行動とは、動物が本来持っている固定的な動作パターンが変化してしまったものです。例えば、猫が犬のように片足を挙げておしっこをするなど。
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