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猫の骨格解剖図

 猫の骨格は、同じネコ科動物に属(ぞく)するライオンとほぼ同じで、違うのは大きさだけだと言われています。言い換えれば、肉食動物として獲物を捕獲するために都合よく進化した骨組みをしているともいえます。以下では猫の骨について詳しく解説していきます。

猫の骨格解剖図

猫の骨格解剖図  イエネコの骨格は、ライオンやトラなど大型のネコ科動物とほぼ同じで、違うのはサイズだけです。
猫の柔軟な骨格可動性は、チーターのような柔らかな身のこなしを可能にする。  いわゆる猫背という言葉がありますが、猫は完全肉食性のため、他の動物に比べて比較的腸が短くても生きていけます。ですから脊柱が腸を始めとする内臓を支える必要性が低く、そのかわり柔軟性に富んでいるのです。この柔軟性が「猫背」を可能にし、すばやく走るときのチーターのような走行フォームを実現させています。
 また骨と骨をつなぐ靭帯(じんたい)や背骨と背骨の間にある椎間板(ついかんばん)と呼ばれるクッションは非常に柔軟で、背中や自分の顔以外は、体をねじって自分でなめることが出来ます。猫はきれい好きでいつも体がピカピカなのは、この柔軟性であらゆる場所を毛づくろいしているからなのです。
 性ホルモンは成長ホルモンを抑制する働きがあるらしく、早い段階で避妊手術をして性ホルモンの分泌が分断された猫においては、成長ホルモンに対する抑制が無い分、ほんのわずかですが、足の骨が長くなるとも言われています。
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猫の頭と首

 猫の頭と首周辺の骨格解剖について解説します。
猫の頭蓋骨の写真~所々に見えるのが頭蓋縫合と呼ばれる骨同士の継ぎ目

猫の頭蓋骨

 猫の頭蓋骨(とうがいこつ)は、複数の骨が組み合わさって出来ており、大きくは頭蓋部と顔面部に分かれます。
 頭蓋部は後頭骨(こうとうこつ)、頭頂骨(とうちょうこつ)、蝶形骨(ちょうけいこつ)、前頭骨(ぜんとうこつ)、側頭骨(そくとうこつ)など11種の骨から構成され、主として脳を保護します。生まれたばかりの子猫の頭部を触ると、若干やわらかい感じがしますが、これは母猫の産道を通過しやすいように、頭蓋骨の結合が中途半端な状態になっているからです(これは人間の赤ん坊も同じです)。何らかの理由により頭蓋内圧が高まってしまい、骨格が変形してしまった状態を水頭症(すいとうしょう)といいます。
 顔面部は下顎骨(かがくこつ)、上顎骨(じょうがくこつ)などから構成され、目や鼻などの感覚器を支えます。エキゾチックショートヘアペルシャヒマラヤンなどは、顔面部の骨が未成熟のままで成長するよう選択繁殖された鼻ペチャ顔の猫種です。 猫の頭蓋骨~頭頂骨・後頭骨・前頭骨・側頭骨・下顎骨・上顎骨  猫の顔は犬の一種・ジャーマンシェパードのように長く伸びておらず、いわゆる「短頭」型です。しかし頭蓋骨の容量が小さくても、猫の嗅覚、および嗅覚に関連する嗅上皮の面積は犬よりも小さく、また歯の数も犬より12本少ない(成犬42本:成猫30本)ため、十分間に合うというわけです。
 猫の脳の重量はおおよそ27~32グラムで、体重に対する割合では約1%を占めています。脳の重量を体重の2/3で割り、適当な係数を掛けた値を「脳化指数」(のうかしすう)と呼びますが、猫を含む代表的な動物の脳化指数は以下です。脳化指数は一般的にその動物の知能を反映すると言われており、賢いといわれている動物はやはり上位にランキングしているようです。
いろいろな動物の脳化指数
  • ヒト~7.4
  • イルカ~4.8
  • チンパンジー~2.2
  • カラス~1.25
  • イヌ~1.2
  • ネコ~1.0

猫の頚椎

 猫の頚椎(けいつい)は首を支えている骨で、人間と同じく7つあります。第一頚椎は「環椎」(かんつい)、第二頚椎は「軸椎」(じくつい)と呼ばれ、この二つの連動が首の回旋運動を可能にしています。環椎は全ての脊柱の中で最も幅が広い骨です。
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猫の胴体・体幹

 猫の胸から腰の部分にかけての骨格解剖について解説します。
猫の胴体(体幹)は、胸椎と肋骨、および腰椎からなります。

胸椎と肋骨

 猫の背中の骨である胸椎(きょうつい)は人間より一つ多く、全部で13個あり、それと連動して肋骨も人間より1本多く13本もっています。肋骨のうち上部9本は胸骨(きょうこつ=胸の前にある細長い骨)につながっていますが、残りの下部4本はつながっていません。肋骨で囲まれた胸郭(きょうかく)は、肋間筋(ろっかんきん=肋骨の間をつなぐ細い筋肉)の作用で呼吸を行うと同時に内臓を保護します。
 猫の胸をなでたときに感じるごつごつした突起が胸骨です。人間の胸骨が平べったいのに対して猫の胸骨は細長いため、こうした手触りになります。また人間の胸郭を輪切りにして上から見ると、左右に伸びた楕円形で体の前面が「胸板」を形成しているのに対し、猫のそれは前後に伸びた楕円形で体の前面が「胸山」を形成しています。以下の図は、人間と猫の胸郭断面を図示したものです。 人間と猫の胸郭を輪切りにし、上から見た比較図  なお、第10胸椎の棘突起(きょくとっき=体の表面に向かって飛び出している突起状の部分で、背中をなでたときごつごつ触れる部分のこと)が後方に飛び出しているのに対し、第11胸椎のそれが前方に飛び出していることから、ここが胸椎の運動中心だと考えられます。

腰椎

 猫の腰の骨である腰椎(ようつい)は人間より2つ多く、全部で7つあります。2つ多い分、人間よりも脊柱を柔軟に動かすことが出来ます。猫は高いところから落下した時、器用に体をねじって着地しますが、腰椎の数が多く、脊柱を柔軟に回転させることが出来ることが、その能力の一因と言えます。直立二足歩行をする人間とは違い、腰椎が山形(要するに凸形)に湾曲している点が特徴です。
 腰椎を構成している7つの椎骨間には「椎間板」(ついかんばん)と呼ばれるクッションが挟まっていますが、強い力が加わってこの椎間板が破壊されてしまった状態が椎間板ヘルニアです。しかし犬と比較すると発症はまれです。
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猫の骨盤としっぽ

 猫の骨盤からしっぽにかけての骨格解剖について解説します。
猫の骨盤は仙骨・寛骨・腸骨という3つの骨によって構成されており、またしっぽには尾椎と呼ばれる骨が入っています。

骨盤

 骨盤は「寛骨」(かんこつ)、「腸骨」(ちょうこつ)、「恥骨」(ちこつ)、「坐骨」(ざこつ、)及び「仙骨」(せんこつ)からなる半球形の骨格です。
 仙骨は3~4個の骨が1つに融合して出来ており、腰椎の最下部に位置しています。「寛骨」には人間と同様「寛骨臼(かんこつきゅう)」と呼ばれるソケット状の半球があり、そこに大腿骨がすっぽりと収まる形になっています。猫の股関節(すなわち大腿骨と寛骨臼からなる関節)は、「滑膜性関節」(かつまくせいかんせつ)といって他の関節よりも脱臼を起こしやすい傾向にあります。しかし柔軟な靭帯が大腿骨と寛骨臼とをつなぎとめているので、激しい運動にも耐えることが出来るのです。

尾椎

 尾椎(びつい)は猫のしっぽを支える骨ですが、一般的には18~19個の骨から構成されます。しかし猫によって増減が激しく、少ないもの(マンクスなど)では4個、多いものでは24個もの骨を持っています。猫の体に存在する全ての骨の数を一概に言えないのは、この尾椎の数が個体によって大きく変化するためです。日本原産の猫として有名なジャパニーズボブテイルなどは、突然変異で生まれたしっぽの短い猫を、長い時間をかけて選択繁殖した結果生まれた猫種だとも言われています。
 先っぽに行くにしたがって小さく細くなるのが特徴ですが、脊髄(せきずい=背骨の中を通り、運動や感覚の信号を伝達する神経線維の束)を通す「椎孔」(ついこう)は、おおよそ第9尾椎あたりで途切れ、そこから先は小さな溝状になっていきます。 猫の尾・しっぽ
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猫の前足

 猫の肩から前足の先っぽまでの骨格解剖について解説します。
猫の前足(前肢)は、上から肩甲骨・上腕骨・橈骨・尺骨、そして手根骨から構成されます。

肩甲骨

 肩甲骨(けんこうこつ)は背中側の肋骨の上を滑るように動く骨で、前足の筋肉と体幹とをつなぐ役割を果たします。
 ライオンなどの大型ネコ科動物と同様、猫が歩くときは肩甲骨が背骨よりも上に上がります。

鎖骨

 「鎖骨」(さこつ)は、首の付け根にあり、様々な筋肉の土台となっている骨です。かなり小さな骨なので、触って見つけることは困難でしょう。
 人間の鎖骨との決定的な違いは、「他の骨と連結しておらず、宙に浮いた状態にある」という点です。この特異な骨格構造により、猫は自分の頭が通る場所であれば、首から下を頭の幅まで狭めて通過することが出来ます。 人間と猫の鎖骨の違い~人の鎖骨は連結されているが、猫の鎖骨は宙ぶらりん  鎖骨に付着している筋肉としては、「鎖骨僧帽筋」(鎖骨より上)、「鎖骨上腕筋」(鎖骨より下)、「鎖骨乳突筋」(鎖骨の内側端)などがあります。

上腕骨

 上腕骨(じょうわんこつ)は、人間で言うと「力こぶ」をつくる筋肉(上腕二頭筋)が付着する骨です。猫の場合は四足歩行ですので、もっぱら移動する際に使います。後足の大腿骨が常に「空気椅子」状態であるのに対し、前足の上腕骨は常に「腕立て伏せ」状態で保持されています。

前腕骨

 解剖学上「前腕骨」という用語はありませんが、橈骨(とうこつ)と尺骨(しゃっこつ)の2本の骨を合わせて、便宜上こう呼びます。
猫は橈骨と尺骨を自力でねじることで、自分の手のひらを舐めることができる  猫の場合、この2本の骨がねじれあうことで、人間ほど器用ではないものの手の平をひっくり返すことが出来ます。これは、前腕骨の間をまたぐ回内筋(かいないきん)や回外筋(かいがいきん)が発達しているからです。猫が自分の前足をねじって顔を洗うことが出来るのは、こういう理由なのですね。
 ちなみに犬はこの動きができず、その代わり、2本の骨によって地面からの衝撃をスプリングのように受け止めます。 

手根骨

 手根骨(しゅこんこつ)とは、人間で言うと、手首辺りにある小さな骨のかたまりを指します(人間の場合、舟状骨、月状骨、三頭骨、有頭骨、有鉤骨、豆状骨、大菱形骨、小菱形骨の8つ)。1個の骨で出来ているよりも細かい骨がいくつかつながっていた方が、強い衝撃を受けた際に、骨と骨の間にある靭帯(ケーブルのような繊維組織)の柔軟性を用いて力をうまく分散することが出来るという仕組みです。
 手根骨の下には「中手骨」(ちゅうしゅこつ)があり、前足には5本並んでいます。中手骨の末端には「指骨」(しこつ)があり、人間の足の裏同様、地面と接する役割を果たします。猫は「指行性」(しこうせい)という歩き方をしますが、指骨を地面につけて移動するためこう呼ばれているわけです。
 「指骨」はさらに基節骨(きせつこつ)、中節骨(ちゅうせつこつ)、そして末節骨(まっせつこつ)に分かれますが、最後の「末節骨」の先端には爪が生えています。この末節骨が滑車のように回転することにより、爪の出し入れが可能になるという構造です。 猫の足
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猫の後足

 猫の太ももから後足の先っぽまでの骨格解剖について解説します。
猫の後足(後肢)は、大腿骨・腓骨・脛骨、および足根骨から構成されます。

大腿骨

 大腿骨(だいたいこつ)は、いわゆる太ももの骨です。猫の場合「指行性」(しこうせい)という歩行様式のため、常にひざを折り曲げた形で歩いたり走ったりします。直立二足歩行で大腿骨が垂直のまま移動する人間からすると、猫はちょうど「空気椅子」をしながら歩いているような感じですので、やや奇異な印象を受けます。
 ひざの部分には人間と同様「膝蓋骨」(しつがいこつ=いわゆるひざの”お皿”)があり、下腿の動きをスムーズに導きます。この膝蓋骨が正常なルートから外れてしまった状態が膝蓋骨脱臼です。

下腿骨

 解剖学的に「下腿骨」という用語はありませんが、脛骨(けいこつ)と腓骨(ひこつ)を併せて便宜上こう呼びます。人間と同様、2本の骨によって地面からの衝撃をスプリングのように受け止めます。

足根骨

猫の足根骨、および中足骨  足根骨(そくこんこつ)とは、人間で言うと、かかとを含めた足首辺りにある小さな骨のかたまりを指します。1個の骨で出来ているよりも細かい骨がいくつかつながっていた方が、強い衝撃を受けた際に、骨と骨の間にある靭帯(ケーブルのような繊維組織)の柔軟性を用いて力をうまく分散することが出来ます。
 足根骨の下には「中足骨」(ちゅうそくこつ)があり、後足の場合は4本です。中足骨の末端には「趾骨」(しこつ)があり、この趾骨が地面と接する骨で、人間で言うと足の裏に相当します。猫は「指行性」(しこうせい)という歩き方をしますが、趾骨を地面につけて移動するためこう呼ばれているわけです。ちなみに猫の体は、前足の「中手骨」よりも中足骨の方が2倍ほど長く設計されています。よって猫は常に後足をやや折り曲げた形にしなければ前足との高さが合いません。しかしこの歩行様式が結果として、忍者のような抜き足差し足に役立っているのです。
 なお、猫が他の動物を威嚇するときは、普段は折り曲げている後足を目いっぱい伸ばしてお尻を持ち上げ、自分の体がいかに大きいかをアピールします。 猫の足
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