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猫の細菌性膀胱炎~症状・原因から検査・治療法まで

 猫の細菌性膀胱炎(さいきんせいぼうこうえん)について病態、症状、原因、治療法別に解説します。病気を自己診断するためではなく、あくまでも獣医さんに飼い猫の症状を説明するときの参考としてお読みください。なお当サイト内の医療情報は各種の医学書を元にしています。出典一覧はこちら。また猫の採尿と尿検査についてはこちらをご参照ください。

細菌性膀胱炎の病態・症状

 膀胱(ぼうこう)とは腎臓から送られてくる尿を一時的に溜める袋状の器官であり、左右の腎臓から尿管を通して尿を受け取り、尿道を通して体外に排出します。猫の細菌性膀胱炎とは膀胱内に侵入した細菌が接着・増殖・定着して炎症反応を引き起こした状態のことです。寄生虫、ウイルス、真菌が膀胱炎の原因になることもありますが、猫の場合は全て合わせても全体の1%にも届かず、ほとんどが細菌によるものです。 膀胱と尿管・尿道との位置関係模式図

細菌性膀胱炎の病態

 細菌性膀胱炎は多くの場合、消化管に生息している細菌がいったん体外に出た後、尿道を上行して膀胱に至ったり、医療器具(カテーテル)に付着していた細菌が尿管を下降して膀胱に至ることから、別名「尿路感染症」(UTI)と呼ばれることもあります。
 猫において高い頻度で見られる特発性膀胱炎との最大の違いは、膀胱穿刺によって尿を膀胱内から直接取り出して培養した際、何らかの細菌が尿1mL中1000CFU超という高密度になるという点です。
 感染した細菌の種類によって以下のような特徴的な病変が引き起こされます。
細菌性膀胱炎の種類
  • 気腫性膀胱炎気腫性膀胱炎とは大腸菌を始めとしたグルコース発酵性の細菌が膀胱壁や膀胱内腔でガスを生成して貯留した状態です。
  • 結痂性膀胱炎結痂性膀胱炎とはCorynebacterium urealyticumを始めとした尿素分解菌によって膀胱粘膜にプラークが蓄積した状態のことです。
  • ポリープ様膀胱炎ポリープ様膀胱炎とはプロテウス属の感染により膀胱粘膜が広範囲にわたって肥厚し、腫瘤のような増殖が見られる状態のことです。

細菌性膀胱炎の症状

 猫の細菌性膀胱炎では主に以下のような症状が見られます出典資料:ISCAID, 2019)。「尿路感染症状」とは頻尿(おしっこの回数が増える)、排尿障害(おしっこがなかなか出ない)、有痛性尿症(排尿時に痛みが生じる)、血尿(尿日が交じる)などのことです。なお「潜在性細菌尿」の診断基準は炎症症状が見られないことですが、便宜上ここで解説します。

潜在性細菌尿

 潜在性細菌尿とは膀胱穿刺で採取した尿中に1000CFU以上の細菌が検出されるにもかかわらず、尿路感染症状が見られない状態のことです。「無症候性細菌尿」とも呼ばれます。
 ノルウェー国内に暮らす健康な猫108頭(平均年齢4歳)を対象とした調査では0.9%、6歳を超える猫179頭を対象とした調査では6.1%、高窒素血症を呈していない7歳超の猫67頭を対象として5回に分けて検査した調査では10~13%だったと報告されていますので、年齢が高くなるほど有病率も高まる傾向があるようです。またほぼすべての調査に共通しているのは「メス猫における有病率が高い」という項目です出典資料:Dorsch, 2019)

散発性細菌性膀胱炎

 散発性細菌性膀胱炎とは過去12ヶ月のうち細菌性膀胱炎の突発的な発症が多くとも2回にとどまる症例のことです。尿路の解剖学的及び機能的な異常が見つからず、尿路に影響を及ぼし得る共存症も発見されません。妊娠していないメス猫や去勢済みのオス猫に多いとされます。

再発性細菌性膀胱炎

 再発性細菌性膀胱炎とは過去12ヶ月間における細菌性膀胱炎の突発的な発症が少なくとも3回に達する症例、もしくは過去6ヶ月間における発症が少なくとも2回に達する症例のことです。
 投薬治療や免疫システムで体内に駆逐されずに生き残っていた既存の病原菌が勢いを取り戻して再発するパターンや、今までとは全く別の病原菌に新たに感染してしまうというパターンがあります。
旧分類法
かつては尿路の解剖や機能に異常が見られないものの症状が見られる状態を「単純性」、尿路の解剖や機能に異常が見られたり共存症がある状態を「複雑性(複合性)」と分類していました。古い文献の場合こちらの分類法で記載されていることがあります。

細菌性膀胱炎の原因

 細菌性膀胱炎を始めとする尿路感染症が発生する原因は、体に備わっている防御メカニズムが一時的もしくは恒常的に破綻して病原体の接着・増殖・定着を許してしまうことです。「防御メカニズム」には尿道内の高圧エリア、細菌を物理的に捕捉する尿道近位の縦ヒダ、尿道の蠕動による体外排出ルート、膀胱粘膜のグリコサミノグリカン層、尿路の常在細菌叢、宿主の免疫機能などが含まれます。
 犬に比べて猫では細菌性尿路感染症の発症頻度が低いとされています。理由は猫の尿が濃縮されて比重が大きくなり、尿素、有機酸、抗菌性ペプチドの濃度が高くなって細菌が繁殖しにくい環境に保たれているからだと考えられています。
 以下は猫における細菌性膀胱炎の原因として有力な項目です出典資料:Litster, 2009 | 出典資料:ISCAID, 2019 | 出典資料:Dorsch, 2019)

加齢・高齢

 アメリカ国内にある二次診療施設で若齢猫を対象とした調査では、尿路感染症の有病率が3%未満だったといいます。一方、10歳を超えた老猫においては下部尿路症候群のうち40~45%で尿路感染症が見られたとの報告もあります。下部尿路症候群の症状を呈した22,908頭を対象とした大規模な疫学調査では、10歳以上の高齢猫における尿路感染症の割合が高かったとされていますので、「加齢」が発症リスクになっているという面は否定できないでしょう。

メス猫

 オス猫と比較した場合、メス猫は潜在性細菌尿や散発性の細菌性膀胱炎の発症リスクが高いという複数の調査報告があります。理由はオスよりもメス猫の尿道が広くて短いため、体外から病原菌が容易に尿道を逆行して膀胱内に侵入してしまうからだと考えられています。

共存症

 尿路感染症もしくは潜在性細菌尿を抱えた猫では75~87%という高い割合で危険因子となりうる共存症が確認されています。膀胱がんや膀胱結石など泌尿器系の疾患もありますが、最も多いのは「慢性腎臓病」「糖尿病」「甲状腺機能亢進症」です。
 細菌尿が見られた猫のうちおよそ1/3では慢性腎不全が見られたという報告がある一方、逆に慢性腎臓病を抱えた猫では細菌尿の陽性率が22~29%、下部尿路症候群の症状を呈するものの割合が8~28%という報告もあります。
 糖尿病と診断された猫に関しては細菌尿の陽性率が12~13%、下部尿路症候群の症状を呈する割合が4~44%と報告されています。
 甲状腺機能亢進症と診断された猫に関しては細菌尿の陽性率が12%、下部尿路症候群の症状を呈する割合が33%と報告されています。

尿道カテーテル挿入

 閉塞性の下部尿路症候群と診断された18頭の猫に尿道カテーテルを挿入したところ、滅菌状態で施術したにも関わらず24時間後には17%、48時間後には33%の割合で細菌尿が見られたといいます。また留置型のカテーテルを入れてから48時間後には22%(8/37)の割合で細菌尿が見られたとの報告があります。

会陰尿道造瘻術

 会陰尿道造瘻術(尿の通りを良くするためオスの性器の形状自体を外科的に変えてしまう手術)を受けた猫では22~53%という高い割合で尿路感染症が見られるといいます。また会陰尿道造瘻術を受けた猫の23%は細菌性の尿路感染症を発症し、15%は最大で10回にわたる再発を経験したとも。再発性もしくは慢性的な尿道閉塞症を患う9頭の猫および去勢手術済みの健康な10頭の猫を対象として尿道造瘻術を行ったところ、患猫中2頭では再発性尿路感染症を発症したのに対し、健常猫では0頭だったとの報告もあります。
 尿道造瘻術が全ての猫に対してリスクになるわけではなく、泌尿器系に何らかの疾患を抱えている猫に対して施術した場合、リスクファクターになりうると考えられます。

尿管の病変

 尿管閉塞症を患う猫における細菌尿の割合は2~33%とされています。また経皮的尿管バイパス術やステント留置術の後における主要な合併症は細菌性の尿路感染症で最大31%に達するとの報告もあります。 猫の尿管閉塞症に対するステント留置術の効果は?

長毛?

 アビシニアンペルシャにおけるリスクが散発的に報告されています。股間が自分の尿や便で汚れやすい上、何らかの病気にかかると長い被毛でグルーミングが行き届かなくなり、不衛生な状態が続いて腸内細菌が尿路に侵入しやすくなるものと推測されています。尿失禁(粗相・トイレ外でのおもらし)を尿路感染症のリスクファクターとして報告している調査があるのも同じ理由でしょう出典資料:Ruzafa, 2012)

免疫力の低下?

 現時点で猫エイズウイルス(FIV)、猫白血病ウイルス(FeLV)が細菌尿のリスクファクターであるというエビデンスは見つかっていません。また糖質コルチコイドやシクロスポリンといった免疫抑制剤による長期的な治療を受けた32頭の猫では、潜在性細菌尿や尿路感染症との間に関連性は見られなかったと報告されています。

細菌性膀胱炎の検査・診断

 細菌性膀胱炎の検査に際しては、膀胱と直接的に接触する尿を通じて間接的に細菌の有無を確認します。

尿の採取方法

 尿の採取方法は色々ありますが、特殊な理由がない限り人為的な汚染が最も少なくて済む膀胱穿刺が採用されます。これは腹部から注射を膀胱内に挿入し直接尿を吸い取る手法のことで、採取する際は超音波で膀胱の位置を確認し、尿石や腫瘤の有無を同時に確かめることもあります。 猫の採尿と尿検査 猫の採尿方法~自然排尿・カテーテル・膀胱穿刺

尿沈渣検査

 新鮮な尿を採取したら院内で尿沈渣検査を行い、赤血球、白血球、結晶の有無を確認したり染色を施した上で細菌の有無を観察したりします。その後、共存症の可能性や培養や経験的な治療が必要かどうかを判断します。 院内で行う尿沈渣検査では血球、細菌、結晶の有無を確認する

尿の培養

 尿培養が必要と判断された場合は採取した尿サンプルをすぐに冷蔵し、できれば数時間以内、遅くとも24時間以内にラボに送って検査しなければなりません。理由はpHの変化、白血球や上皮細胞の溶解、結晶の形成、微生物の増殖もしくは死滅につながり、正確な診断ができなくなるからです。
 尿培養は通常、有酸素環境に置いて18~24時間で十分ですが、コリネバクテリウムのように増殖が遅い細菌の場合は最大で5日を要することもあります。
 猫における尿路感染症の8割以上は単一の細菌によって引き起こされ、複数の細菌によって引き起こされるケースは留置型のカテーテルや局所性の共存症を抱えている場合です。
 以下は猫の細菌性膀胱炎の原因として多く報告されている細菌の一覧ですが、調査地域や時期によって流行菌は変動しますので、日本国内の猫にそっくりそのまま当てはまるわけではありません出典資料:Dorsch, 2019)
グラム陰性菌
  • 大腸菌:42.3~59.3%
  • プロテウス:1.3~3.9%
  • クレブシエラ:0.3~3.9%
  • パスツレラ:1.0~5.5%
  • シュードモナス:1.0~5.2%
  • エンテロバクター:1.0~2.8%
グラム陽性菌
  • 腸球菌:6.6~21.3%
  • スタフィロコッカス:7.8~22.9%
  • ストレプトコッカス:2.0~19.2%
  • ラクトバシラス:3.2%
  • コリネバクテリウム:1.4~2.1%
尿培養で確認された大腸菌と腸球菌の肉眼初見

補助的な検査

 細菌性膀胱炎の補助的な検査としては以下のようなものがあります。どれも病気に特異的な結果を返してくれるわけではありませんので、単一の検査だけで診断を下すことはできません。
診断の補助検査項目
  • 尿比重検査同じ細菌でもグラム陰性菌では尿比重が小さくなり、グラム陽性菌では尿比重が陰性菌や無菌尿より大きくなる傾向にあります。その他「S.felis」では大きくなるとか「E.coli」では小さくなると言った特徴がありますので、尿比重の診断的な価値はそれほど高くありません。
  • 潜血検査尿に含まれる潜血は潜在性細菌尿の28~77%、尿路感染症の35~100%、特発性膀胱炎の70%、尿石症や膀胱がんのほとんどで見られる所見ですので、この検査だけから細菌性膀胱炎を診断することはできません。
  • 膿尿検査尿に含まれる膿は非特異的な所見で、特発性膀胱炎の77%、膀胱結石の50%でも見られるとされています。

細菌性膀胱炎の治療

 ISCAID(コンパニオンアニマル感染症国際協会)は2019年、猫の細菌性尿路感染症に関する診断と治療のガイドラインをアップデートしました。以下はその概要です出典資料:ISCAID, 2019)

潜在性細菌尿の治療

 そもそも潜在性細菌尿が膀胱炎のリスクになっているかどうかは分かっていません。67頭の猫から採取した256の尿サンプルを調べたところ、潜在性細菌尿は10~13%の割合で見られ、生存期間との関連はなかったとされています。また人医学の分野では潜在性細菌尿に対する治療は必要ないとされています。高齢猫における無症候性細菌尿の割合と危険因子  医学的な証拠(エビデンス)が揃っていない状況で抗菌薬を用いた予防的な治療を行うと、耐性菌の出現リスク、不要な治療に伴う無駄な出費や体への負担、副作用の危険性が生じるため、ISCAIDでは治療は必要ないとしています。また予防的な治療が推奨されていないことから、臨床症状を示していない動物からわざわざ尿を採取して培養し、「潜在性細菌尿」と診断を下すことには意味がないとも指摘しています。
 潜在性細菌尿が疑われる患猫に対して例外的な抗菌薬治療を行うのは主に以下のような場合です。
  • 脊髄損傷などで下部尿路症状を発現できない
  • 発熱など全身症状が現れている
  • プラーク形成性細菌が関わっている
  • ウリアーゼ産生性細菌が関わっている
  • 尿路の内視鏡検査や手術中
  • 尿路外の感染源として膀胱が疑われる

散発性細菌性膀胱炎の治療

 共存症がない細菌性膀胱炎の場合、人医学の領域では鎮痛薬の投与だけでも抗菌薬と同じくらい効果を発揮できると報告されています。この事実からISCAIDではまずNSAIDsなどの鎮痛薬を投与し、3~4日しても症状が消えない場合は細菌感受性テストの結果を元にした抗菌薬投与へと切り替えるという治療法を推奨しています。
 猫においては細菌性膀胱炎よりも微生物が関与しない特発性膀胱炎の発症頻度の方が圧倒的に高いため、細菌培養をしている間の経験的治療は正当化されません。これは不要な抗菌薬投与で耐性菌が出現する危険性があり、トータルではメリットよりデメリットが上回ってしまうからです。ただし急性の腎盂腎炎が疑われるなど特殊なケースにおいては治療が考慮されることもあります。
経験的治療
培養結果は出ていないものの、過去の発症頻度や地域性から原因菌に当たりをつけ、それに応じた抗菌薬治療を行うこと。細菌性膀胱炎ではグラム陽性菌に対するアモキシシリン、グラム陰性菌に対するアモキシシリン/クラブラン酸など。ただしクラブラン酸の有効性に関するエビデンスは獣医学の分野では欠落している。
 獣医療におけるエビデンスは限定的ですが、抗菌薬治療の理想的な期間は3~5日間とされています。またバンコマイシン、カルバペネム系薬、ニトロフラントイン、フルオロキノロン、第3世代セファロスポリンは耐性菌が発生するリスクが高いことから、極力使用を控えることが推奨されています。
 抗菌薬治療を開始してから48時間以内に症状の改善がみられない場合は、当てずっぽうで薬剤を変更するのではなくしっかりと再評価を行い、本当に膀胱炎なのか、共存症はないかを確認します。
 カテーテルを通して薬剤を膀胱内に直接的に流し込むことは推奨されません。効果に関するエビデンスが欠落しているだけでなく、猫においては逆に医原性の感染症を引き起こしたり膀胱壁に傷をつけてしまう危険性があるためです。
 治療後に症状の改善が見られた場合、不要な尿検査や尿の培養は行いません。

再発性細菌性膀胱炎の治療

 再発性細菌性膀胱炎では多くの場合共存症が一次疾患になっているため、繰り返し抗菌薬治療を行うよりも根本的な原因となっている一次疾患へのアプローチを優先します。
 超音波検査、X線検査、膀胱鏡検査を行い、隠れている疾患を見つけ出します。また膀胱鏡検査を行う際に膀胱粘膜の組織サンプルを採取し、深い層に生息している病原体を培養します。
 その他、診断は正しいけれども治療法が間違っている可能性も考慮し、抗菌薬濃度や投与量が正しいかどうか、患者のコンプライアンスは保たれているかどうかを再確認します。
 再感染症例に対しては3~5日間の短期治療、難治性症例に対しては7~14日間の長期治療を行いますが、必ずしも確固たるエビデンスに支えられているわけではありません。

代替治療

 人医学の領域では再発性の尿路感染症を予防する目的で抗生剤投与以外の方法が模索されています出典資料:Tewary, 2015)。具体的には以下ですが、獣医療の分野で科学的に有効性が実証された物はまだありません。

クランベリー抽出物

 クランベリー抽出物に含まれるポリフェノールの一種「プロアントシアニジン(proanthocyanidin, PACs)」が猫の尿路感染症の発症リスクを低下させる可能性が示されています。
 メカニズムは完全に解明されていませんが、大腸菌が上皮細胞に接着するときに利用する尿路上皮細胞の粘膜上皮と、ポリフェノールに含まれる二重結合(A-type)が 構造的に似ているため、菌と競合して粘膜に接着する数を相対的に減らしてくれるというものが想定されています。 出典資料:Howell, 2010) クランベリー~安全性と危険性から適正量まで

プロバイオティクス

 再発性尿路感染症を発症した閉経前の女性100人をランダムで2つのグループに分け、抗菌薬と共に一方にはラクトバシラスの一種「Lactobacillus crispatus」を含んだ性器内に直接留置するタイプのプロバイオティクス、他方には偽薬を5日間にわたって与え、その後は週1のペースに切り替えて10週間にわたって症状の変化をモニタリングしました。
 その結果、プロバイオティクスグループにおける再発率が15%(7/48)だったのに対し、プラセボグループにおけるそれが27%(13/48)で、前者における相対リスクがおよそ半減することが明らかになったと言います。濃度に関しては16S RNA遺伝子コピー数がスワブ検査で100万以上になった場合、相対リスクが0.07にまで減少したとも。
 この菌株は猫に対して用いられておらず、また投与方法も限られています出典資料:Stapleton, 2011)

生きた生物学的製剤

 健康な犬6頭と再発性細菌性膀胱炎を患う9頭に対し、大腸菌を利用した生物学的な製剤「ASB E.coli 2-12」をカテーテル経由で膀胱内に直接注入し、2週間にわたって症状の変化をモニタリングしました。
 その結果、健康な犬では副作用や臨床症状が見られなかったのに対し、患犬では14日目までに4頭が完璧もしくは完璧に近い治癒に至ったといいます。注入を行った日に軽い発熱が見られた以外重大な副作用はなかったとも出典資料:Segev, 2018)。猫に関する報告はありません。
 脊髄損傷に伴う神経因性膀胱を発症した21人の男女に対し、大腸菌製剤「E.coli 83972」を膀胱内に注入したところ、13人では平均12.3ヶ月という長期に渡るコロニー化が認められ、主観評価で症状の改善を報告したといいます。1年の尿路感染症は3.1回にとどまり、コロニー化が持続している間の発症はなかったとも。一方、コロニー化が成功しなかった4名およびコローニ化した後で自然に滅菌した7名では尿路感染症を発症しました出典資料:Hull, 2000)。猫に関する報告はありません。

ワクチン

 マウスを対象とし、大腸菌(E.coli)の単離株「NU14 DeltawaaL」 を膀胱内に注入したところ、8週間ほど持続する免疫が獲得され、複数種の病原性大腸菌への防御能を示したといいます。弱毒化生ワクチンとして有効であると期待されています出典資料:Billips, 2009)

D-マンノース

 大腸菌はマンノースと結合するFimHアドヘシンを先端に有したタイプ1線毛を使って尿路上皮に接着し、細胞内に侵入した細菌は増殖・成長して濃密なバイオフィルムを形成します。この感染プロセスを遮断する目的で α-d-マンノースをベースとしたFimH阻害剤を使用すると、実験室レベルでは細菌の尿路上皮接着および細胞内への侵入とバイオフィルム形成を阻害できることが確認されています出典資料:Wellens, 2008)。生体内(in vivo)における効果は証明されていません。

グリコサミノグリカン

 尿路上皮を覆うグリコサミノグリカンのバリアが崩壊すると、尿に含まれる成分が膀胱壁内に侵入し、神経のC線維や肥満細胞の活性化を促してヒスタミンが放出され、さまざまな臨床症状が引き起こされます。
 ヒトの間質性膀胱炎患者を対象とし、ヒアルロン酸塩(1.6%)とコンドロイチン硫酸(2%)を成分として含んだ「Ialuril®」 と呼ばれる製剤を静脈経由で投与したところ、排尿回数の減少、1回排尿量の増加、臨床症状の改善、生活の質の向上が見られたと言います。また尿路感染症患者を対象として同様の実験を行ったところ、年間発作回数が比較対照群に比べておよそ90%減少し、発作間の寛解期間が3.5倍に延長したとも出典資料:Bassi, 2011)。猫に関する報告はありません。
猫の膀胱炎で圧倒的に多いのは細菌が絡まない特発性膀胱炎の方です。猫のおしっこを日常的に観察し、下部尿路症状(頻尿・排尿困難・血尿 etc)が見られたら速やかに動物病院を受診しましょう。猫の排尿に現れる健康と病気