トップ猫の体猫の生理現象猫のいびき

猫のいびきは寝息とは違う!~音が大きいときは病気が隠れていることも

 猫が見せる生理現象のうち「いびき」について解説します。急にいびきを出すようになったり音があまりにも大きいときは、病気の可能性を考えなければなりません。

正常ないびき

 いびき(snoring)とは、呼吸器が発する雑音のことで、就寝中に起こる生理現象です。空気の通り道のどこかに障害物があると発生します。
 人間の場合、「ガ~ゴ~」という大きな音が出ているときの原因は、仰向け姿勢でのどに落ちた口蓋垂(のどちんこ)や舌の根元、腫れた扁桃腺、肥満やアレルギーによって狭められた気道などです。一方「ピーピー」と高い音が出ているときの原因は、鼻水、鼻くそ、鼻ポリープといった鼻腔内の異物だと考えられます。
 猫の場合、ほとんどが鼻腔が発する「ピーピー」タイプのいびきです。出す音も小さく、「いびき」というよりは「うるさい寝息」といったほうが正確かもしれません。ペルシャエキゾチックショートヘアといった、鼻腔狭窄(びくうきょうさく)傾向のある鼻ぺちゃタイプの猫が多く見せます。
猫のいびき
 以下でご紹介するのは、猫がいびきをする瞬間をとらえた動画です。猫は仰向けで寝ることが少ないため、気道閉塞に伴う「ガ~ゴ~」といういびきはほとんどかきません。 元動画は⇒こちら

いびきに現れる病気の徴候

 たまに寝息が大きくなる程度でしたら問題ありませんが、寝ていると必ずいびきをしたり、起きているときでも呼吸からいびきのようなノイズがもれているようなときは要注意です。以下に述べるような可能性が考えられますので、念のため獣医さんに相談しましょう。
いびきから考えられる病気
 以下では具体的な症例や見分け方をいくつかご紹介します。

異物

 異物(foreign body)とは鼻の奥に何かが詰まってしまった状態のことです。鼻の病変で受診した猫77頭を後ろ向きに調査したところ、8頭で異物が確認されたと言います。具体的には針、小石、エアガンの弾、葉っぱ、植物の種などでした(Henderson, 2004)
 「エアガンの弾」などは明らかに虐待の証拠ですので、放し飼いにせず完全室内飼いを徹底することが重要でしょう。鼻腔内で止まるならまだしも、気管に詰まってしまうと最悪のケースでは窒息死してしまいますので要注意です。 小さな虫が猫の口の中に入ると気管をふさいで窒息死につながることあり

短頭種

 短頭種(brachycephaly)とは人為的な選択繁殖により猫の骨格を強引に変形してマズルが短くなってしまった状態のこと。ペルシャエキゾチックショートヘアなどで顕著に見られます。 ペルシャ猫に特有な鼻ぺちゃ顔貌  英国のプリマス大学とエジンバラ大学からなる共同チームが行なった調査では、マズルが短く鼻ペチャになればなるほど呼吸に障害が生じることが確認されています。具体的な症状は起きている時のいびき呼吸(stertor)や寝てる時のいびきなどです。すぐ呼吸困難に陥るため、「運動したがらない」とか「遊びの誘いに乗ってこない」という症状も見られるでしょう。 短頭種猫の鼻腔内部を閉塞する鼻甲介  持って生まれた骨格はどうしようもありませんが、あまりにも呼吸困難がひどい時は鼻咽頭部にある軟部組織を切除するという選択肢もあります。 猫が鼻ぺちゃであるほど呼吸に難があることが判明

鼻咽頭虚脱

 鼻咽頭虚脱とは鼻腔から咽頭部に連なる空気の通り道がぺちゃんこになってしまう状態のことです。
 上気道感染症を発症した後、炎症性の粘膜が鼻腔内を占拠して空気の通り道を閉塞するという症例が報告されています(Mitten, 1998)。特徴的な症状はゼーゼーという苦しそうな息遣い、鼻咽頭部からのいびきのような音、進行性の摂食・嚥下困難、数ヶ月間の持続、上気道感染症の治療に反応しないなどです。自然に縮まらない場合は外科的な手術で切除する必要があります。 猫ウイルス性鼻気管炎 猫カリシウイルス感染症

クリプトコッカス症

 クリプトコッカス症とは、酵母の一種であるクリプトコックスネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)に感染することで発症する病気のことです。
 主な症状はいびき、いびき呼吸、呑気症(どんきしょう=空気を飲み込むこと)、呼吸困難などで、進行すると鼻に肉芽種が形成されます。 クリプトコッカス症によって形成された猫の肉芽種性病変  鳥の糞便に汚染された土壌や空気の近くで過ごすことで、呼吸器からクリプトコッカスを吸い込んで感染します。詳しくは以下のページで解説してありますのでご参照ください。 クリプトコッカス症

アスペルギルス症

 アスペルギルス症はアスペルギルス属の真菌によって引き起こされる局所~全身性の疾患。菌はほこり、麦わら、刈りとられた草や干し草といった場所に広く生息しており、猫よりも鼻腔面積が広い犬の方が感染しやすいとされています。
 宿主の免疫力が落ちたタイミングで猛威を振るう「日和見(ひよりみ)感染症」の一種で、鼻腔からの粘液膿排出、くしゃみ、いびきといった症状を示します。 アスペルギルス症によって鼻周辺部に変形をきたしたロシアンブルーの顔写真  死亡例も確認されていますので、なによりも猫の免疫力を落とさないことが大切です。 アスペルギルス症による猫の珍しい死亡例が報告される

肺虫症

 肺虫症はメタストロンギロイデス科に属する線虫によって引き起こされる呼吸器疾患の一種。感染性を有した幼虫をネズミ、鳥類、爬虫類、両生類といった動物が食べ、これらの中間宿主を猫が経口的に摂取することで終宿主となります。
 フランスで肺虫(Eucoleus aerophilus)に感染した放し飼い猫(メス | 2歳)の症例では、呼吸困難や咳に発展する前、いびきや発声障害といった初期症状を見せていたそうです(Khatat, 2016)
 肺虫症は室内飼いを徹底し、幼虫を体内に取り入れた中間宿主と猫との接触を断てば簡単に予防することができます。 猫肺虫症に関する基礎知識

アクロメガリ

  アクロメガリ(先端肥大症)は成長期が終わってから成長ホルモンが過剰に分泌され、骨格や内分泌機能が悪影響を受ける病気。
 イギリスで行われた調査では、2型糖尿病を発症した猫のうちおよそ4頭に1頭では潜在的にアクロメガリーを抱えていると報告されています。こうした猫では骨格がすることにより鼻腔が狭くなりいびきを発症する可能性が高まります(Forcada, 2015)アクロメガリ(先端肥大症)を発症する前と後における猫の顔面骨格の変化  猫が糖尿病を抱えている場合、先端肥大症の可能性も考慮する必要があります。定期的に同じ角度から写真を撮影しておけば、微妙な変化にも気づきやすくなるでしょう。 猫の先端肥大症

腫瘍性病変

 腫瘍性病変とは鼻の奥を占拠するような様々な病変の事。鼻咽頭疾患を抱えた53頭の猫を対象とした調査ではリンパ肉腫(26頭=49%)、炎症性ポリープ(15頭=28%)が多かったと報告されています(Allen, 1999)。またその他(12頭=23%)の疾患としては扁平上皮腫、腺がん、リンパ形質細胞性鼻咽頭炎、横紋筋肉腫、メラノーマなどが確認されました。
 リンパ肉腫を発症した猫の平均年齢は10.7歳(5~19歳)、ポリープを発症した猫のそれは3歳(4ヶ月齢~7歳)でした。
 鼻にだけ疾患を抱えた猫と鼻と咽頭部の両方に疾患を抱えた猫を比較したところ、症状に以下のような違いが見られたと言います。
症状の違い(鼻のみ | 鼻咽頭)
鼻だけに病変を抱えた猫と鼻咽頭の両方に病変を抱えた猫の症状の違い
  • 鼻からの分泌物=79.0% | 47.0%
  • くしゃみ=62.5% | 36.0%
  • いびき呼吸=29.0% | 49.0%
  • 体重減少=0.0% | 9.0%
  • 発声障害=4.0% | 17.0%
 鼻咽頭部に疾患を抱えた猫では「いびき呼吸」や「発声障害」(声が変わるとか声が出ない)が頻繁に見られるようです。また11%では片側もしくは両側の目やにが確認されたと言います。飼い主は猫が見せるこうした変化にいち早く気づいてあげる必要があります。
いびきには様々な病気のサインが隠れています。猫のいびきが「寝息」というには大きすぎる場合は動物病院に相談しましょう。動画に撮影しておくと診察がスムーズに進みます。