トップ2016年・猫ニュース一覧9月の猫ニュース9月15日

ある特定疾患へのリスクを抱えた猫の特徴

 純血種と雑種の両方を含む8000頭以上の猫を対象とした統計調査により、ある特定疾患へのリスクを抱えた猫の特徴が明らかになりました(2016.9.15/フィンランド)。

詳細

 調査を行ったのは、フィンランド・ヘルシンキ大学獣医生物科学部の調査チーム。13品種に属する4,406頭と、6つの品種グループに属する2,224頭、および特定の品種に属さない1,545頭を対象とし、19のカテゴリに属する227の病気と、猫のプロファイルとの間にどのような関連性があるかを統計的に調査しました。主な結果は以下です。 Health and Behavioral Survey of over 8000 Finnish Cats
Katariina Vapalahti, imageAnna-Maija Virtala, et al. 2016

オス猫とメス猫

 「生殖器系疾患」を除外して平均化した場合、メス猫(59%)よりもオス猫(66%)の方が有病率が高いことが明らかになりました。メス猫の方が高い有病率を示した疾患は、「生殖器系疾患」と「腫瘍性疾患」だけで、残りの17カテゴリは全て同等かオス犬の方が優勢だったといいます。オス猫の方が外をうろつきまわる機会が多く、その分感染症、寄生虫、事故、怪我などに遭遇する危険性が高まってしまうからかもしれません。

純血種と雑種

 「最低でも1つの疾患を抱えている」というくくりで見たとき、純血種(63%)よりも雑種(78%)の方が有病率が高いという傾向が見いだされました。しかし、この傾向は「飼い主による自己診断を除外する」および「寄生虫症を除外する」という条件で見直すと、統計的な格差はなくなったと言います(純血52%:雑種55%)。純血種(5%)よりも雑種猫(36%)の方が寄生虫の感染率が高い理由は、単純に外をうろつきまわる機会が多いからでしょう。ちなみに純血種の方が高い有病率を示した疾患は「生殖器系疾患」と「心血管系疾患」だけだったそうです。

年齢

 年齢の上昇とともに有病率も上昇した疾患としては、歯・口腔疾患、尿路疾患、消化管疾患、皮膚疾患、腫瘍性疾患がありました。一方、1歳未満と11歳以上の年齢グループで有病率に格差が見られなかったのは、「遺伝性の発育障害」と「オス猫の生殖器系疾患」だけだったと言います。

不妊手術の有無

 不妊手術を施していない猫よりも施した猫の方が全般的に高い有病率でした。この背景には、純血種と雑種との間で見られる不妊手術率の違いがあるのかもしれません。雑種の手術率が92%だったのに対し、純血種のそれはわずか67%でした。この格差により、手術済みの猫の中に雑種がアンバランスに多く含まれた可能性があります。雑種猫は「寄生虫」の有病率が36%と高いため、結果として「不妊手術済みの猫の有病率が高い」という現象として現れたのかもしれません。

多い疾患

 品種にかかわらず最も多い疾患は歯・口腔疾患で、有病率は28%でした。より詳しい内容は補助資料3(Excelファイル)でも確認可能です。 有病率が高い猫の疾患カテゴリ
  • 歯・口腔=28%
  • 生殖器系(メス)=17%
  • 皮膚・腺=12%
  • 泌尿器系=12%
  • 消化器系=11%
  • 寄生虫・原虫=11%
  • 眼=10%
  • 筋骨格系=10%
  • 問題行動=9%
  • 呼吸器系=8%
 疾患名で見ると、歯石が21%、歯肉炎8%と、やはり口腔疾患が筆頭に来ています。より詳しい内容は補助資料3(Excelファイル)でも確認可能です。 有病率が高い猫の病名
  • 歯石=21%
  • 歯肉炎=8%
  • 帝王切開=6%
  • 内部寄生虫=5%
  • 死産=5%
  • 外部寄生虫=5%
  • 嘔吐=4%
  • しっぽの奇形=4%
  • 歯根吸収=4%
  • 尿路感染症=4%

行動特性

 飼い主に対して行ったアンケート調査の中には、猫の行動特性に関する項目もありました。その結果、行動特性と品種との間に統計的な関連性が確認されたと言います。以下はその一例で、「%」は品種内における行動発生率を示しています。なお、より詳しい内容は補助資料4のタブA(Excelファイル)でも確認可能です。

品種固有疾患

 病名ごとの有病率を統計的に調査したところ、32の病気に関しては、ある特定の品種においてとりわけ高い有病率が確認されました。例えば以下は、特定疾患の発症リスクが標準の10倍を超える品種のリストです。数字はオッズ比で、「10=10倍発症しやすい」を意味しています。なお、より詳しい内容は補助資料7のタブC(Excelファイル)でも確認可能です。
 17の病気に関しては、今回の調査で新たに品種固有性が確認されました。例えば以下は、特定疾患の発症リスクが標準の10倍を超える品種のリストです(※アビシニアン系=アビシニアン・オシキャット・ソマリ)。数字はオッズ比で、「10=10倍発症しやすい」を意味しています。なお、より詳しい内容は補助資料7のタブD(Excelファイル)でも確認可能です。